FOOD グルメ・レシピ・クッキング

シェア

カルシウムたっぷりな発酵食の奥深い味わい。専門店に教わる
ワンランク上のチーズ選び

TAG

フランス料理では“第一のデザート”と呼ばれ、食事を終えたあとに食後酒と楽しむのがスタンダードとされているチーズ。原産地の気候や植えつけるカビの種類や熟成度合い、さまざまな製法によって香りや味、硬さなどに違いが生まれ、その種類は1000を超えると言われています。

ところがその豊富さゆえ、ワインと同じように「知識がないと選ぶのが難しい」と感じることも。今回は、チーズ専門店ではじめて購入するときの注意点や、食べ慣れていない人でも口当たりよく感じるチーズの選び方などを、神楽坂のチーズ専門店「アルパージュ」のオーナー・森節子さんに教えていただきました。

 

コンセプトを決めてチーズ専門店に出かけてみよう

知識がなく、どれを購入してよいかわからないという人におすすめしたいのが、「コンセプトを決めてチーズ専門店に行ってみる」ということ。たとえば「お気に入りのワインの銘柄や味と合わせたい」「恋人とふたりでDVDを見ながらおつまみにしたい」などと、用途が決まっていると相談しやすく、また選びやすいでしょう。

「基本的にご自分の好みで決めていただくのがいいと思うのですが、食べたいチーズのイメージや合わせたい食材やお酒があると、選びやすいかもしれません。専門知識があるスタッフと話しているうちに、おいしそうと思っていただけるものが見えてくることもありますから、知識がなくても興味があれば、楽しんで選んでいたただけると思います。また、専門店のチーズは切りたてで提供することができ、食べたい日に合わせて熟成度合いを選ぶことができます」(アルパージュ・森さん、以下同じ)

 

何にでも合う、チーズの持つ底力

チーズは、ワインやシャンパンのお供や、パンやパスタなどの西洋料理と一緒でないと……、と思っている方が多いかもしれませんが、実は何にでも合うと森さんは話します。

「チーズにはさまざまな味がありますから、これとは合わない、というものを探すほうが大変だと思います。たとえば、味噌漬けにした和風テイストのチーズ(後述)や、はちみつやジャムと一緒にデザートのように食べられるチーズなどもありますから、“チーズは食後にいただくもの“などと決め打ちしなくてよいと思います。当店では“このチーズにはこれ”という相性のよいものもお伝えしていますが、いろいろな食べ方にチャレンジしていただきたいと思います」

 

20180720_cheese_01

製法別に見る、チーズの種類

チーズは、その製法によって一般的に7つのカテゴリーに分けることができます。

1.フレッシュタイプ……作りたてで熟成させていないチーズ
2.白カビタイプ……白カビを植えつけたチーズ
3.青カビタイプ……青カビを植えつけたチーズ
4.ウォッシュタイプ……お酒や塩水で洗い流しながら熟成させたチーズ
5.シェーヴェルタイプ……山羊のミルクでつくったチーズ
6.セミハードタイプ……非加熱で圧力をかけて熟成させ、水分量が38~46%のチーズ
7.ハードタイプ……加熱して圧力をかけて熟成させ、水分量が38%以下のチーズ

 

それでは実際に「アルパージュ」で取り扱いのあるチーズを例に、7タイプを具体的に紹介していきましょう。

 

1.熟成させずすっきり食べやすい《フレッシュタイプ》

20180720_cheese_03

できたての、熟成させないチーズをフレッシュタイプと呼びます。すべてのチーズの原型となるもので、水分量が多く、ふわっとした食感のものやペースト状のものがあります。軽い酸味と柔らかさが特徴です。

「マスカルポーネやモッツァレラもこの種類に入ります。『ブリアサバラン』はフランス・ブルゴーニュ産で、甘くないチーズケーキのような軽い食感です。あまりクセがないのでブラックコーヒーや紅茶にもよく合い、食後のデザートやブレイクタイムに食べるのもおすすめです」

「ブリアサバラン」
863円/100g

 

2.とろりとクリーミーな印象の《白カビタイプ》

20180720_cheese_04

カマンベールやブリーでおなじみの白カビタイプは、表面が真っ白いカビに覆われています。短期間で熟成させているものが多く、熟成が進むほど内側はとろりとクリーミーになってきて、チーズが溶け出すほどになるものもあります。

「『パヴェ・ダフィノワ』は、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏産で、手のひらサイズのキューブ型で見た目がかわいらしく、当店でも人気があります。ミルクの甘いコクがあり、赤ワインに大変よく合うチーズです」

「パヴェ・ダフィノワ」
1733円/1個 150g

 

3.濃厚でツンとした酸味のある《青カビタイプ》

20180720_cheese_05

チーズの内部に植えつけた青カビが繁殖していき、濃厚な味と独特な香気、深みをつくっていきます。

「ゴルゴンゾーラで有名な青カビタイプには強い香りと風味があり、クラッカーにつけて食べるほか、ドライフルーツともよく合います。『フルム・ダンベール』は、良質なミルクがとれる酪農地域として有名なフランスのオーヴェルニュ産で、ねっとりと丸みがあり、ブルーチーズの中では食べやすくしっとりした味わいです。赤ワインとの相性は抜群ですし、パスタなどに使ってもよいでしょう」

フルム・ダンベール(メメ)A.O.P
930円/100g

 

4.その土地の個性が光る《ウォッシュタイプ》

20180720_cheese_06

表面を塩水や酒で何度も洗いながら熟成させたチーズを「ウォッシュタイプ」と言います。その土地のワインやブランデーなどで洗うので、土地柄や風土を感じられる独特な個性があるチーズが多くあります。

「『ラングル』は、フランスのラングル高原が原産。シャンパンや白ワイン軽めの赤ワインとよく合います。当店で追熟したのちに、マールと呼ばれるお酒で仕上げています」

ラングル A.O.P
2300円/1個 180g

 

5.山羊ミルクでつくる独特の風味の《シェーヴルタイプ》

20180720_cheese_07

シェーヴルとは、フランス語で山羊のこと。山羊の乳を原料としていますが、熟成させないあっさりとしたものから、熟成させた深いコクを感じられるものまでさまざまです。

「『ブシェット・ド・プロヴァンス』は、山羊や羊の飼育がさかんなフランスプロヴァンス地域原産のもの。乾燥させたサリエットと呼ばれるハーブつきで、無殺菌の乳でつくられています。山羊のチーズのなかでは食べやすくあっさりとしていて、見た目もかわいらしいので、パーティーなどの持ち寄りにもおすすめです」

ブシェット・ド・プロヴァンス
1825円/1個 100g

 

6.日本人の口に合いやすい《セミハードタイプ》

20180720_cheese_08

セミハードタイプは、水分量が低いので保存に適していて、扱いやすいでしょう。日本人の口に合いやすい、あっさりとした味わいです。

「『サンネクテール』はルイ14世が食べていたチーズと言われ、有名です。さやいんげんを茹でたような青っぽい香りが特徴で、ヘーゼルナッツのような風味が楽しめます。パンと一緒に食べるのにちょうどよく、コクがしっかりしているけれどクセがなくて、比較的さっぱりとした印象のチーズです」

サンネクテール A.O.P
1008円/100g

 

7.濃厚なコクを楽しめる《ハードタイプ》

20180720_cheese_09

加熱温度を上げ、水分を抜いて硬く仕上げるチーズをハードタイプと言います。熟成期間が長くて保存性に富み、濃厚なコクが楽しめます。パスタによく使う「パルミジャーノレッジャーノ」や「コンテ」なども、ハードタイプの仲間。「ペコリーノ」とは、羊のミルクからつくられたチーズのことを示します。

「紀元前1世紀頃にはつくられていた古いチーズです。塩気が強く、カルボナーラをつくるのに適しています。スライスして食べるのもおすすめです」

ペコリーノ・ロマーノ(羊乳)DOP
820円/100g

 

上の7種に大別されるほか、和のテイストを織り込んだ、ちょっと珍しく初心者にも食べやすいチーズも紹介しましょう。