カビに悩まされる季節がやってきました。パンは早めに冷蔵庫へ、浴室の換気は長めにするなどのカビ対策をしている家庭は少なくないでしょう。さらにもうひとつ、しっかりと対策しておきたいのが衣類のカビです。服がびっしりとかけられたクローゼットや、衣類を詰め込んだ密閉状態の衣装ケース内は、気温も湿度も上昇しやすく、カビにとっては好条件の住みかになります。
家族の衣類をウォークインクローゼットの1室にまとめている整理収納コンサルタントの森山尚美さんは、この時期になると、除湿機をかけたり定期的に扇風機を回したりして、ウォークインクローゼットの室温の上昇を抑え、湿気がこもらないようにしているそう。
「扇風機を回したりエアコンをつけたりして部屋を涼しくするとき、つい、クローゼットの扉を閉めてしまいがちです。クローゼットの中の衣類は、蒸し暑いとカビに狙われるので、クローゼット内の空気の入れ替えや室温を下げるケアをこまめに行いましょう」(整理収納コンサルタント・森山尚美さん、以下同)
クローゼットの換気に加え、衣類のしまい方でもカビを抑制できるという森山さん。どんな工夫をしているのでしょうか?
1. 湿気がこもらない収納アイテムを取り入れる
森山さんが冬物衣類をしまう際に使っているのは、プラスチック製の衣装ケースと滑り止め付きの薄型ハンガー、チャック付きビニール袋の3点です。
「衣類をしまうときに絶対に使ってはいけないのが、段ボール。空気中の湿度を段ボールが吸収して、カビが生えたり虫が湧きやすくなったりします。アルバムや大事な書類を段ボールで保管する場合も、カビの発生には注意しましょう。クローゼットに衣類をかけるときは、ドイツ製のMAWAハンガーのような薄型タイプのハンガーがオススメです。衣類の収納幅がスリムになるので、その分、クローゼット内に風が通りやすくなります。ダウンジャケットやセーターなどのかさばる衣類は、1着ずつチャック付きビニール袋に入れて圧縮し、コンパクトにしてから衣装ケースへ。密封できるので、この時期のカビの発生を防げます」
2. 衣装ケースは個別に用意! しっかり拭き掃除をしてから使う
冬物衣類を収納するプラスチック製の衣装ケースは、家族ごとに分けている森山さん。深さ30cmと18cmの2種類を4人分用意し、その中に冬物衣類を収納しています。
「大容量の衣装ケースに家族のものをまとめて入れると、服のサイズに統一感がなく、結果的に衣類のすき間を埋めるように詰め込んでしまいがち。これでは、衣類が傷みやすくなるし、防虫剤や除湿剤の効き目が悪くなります。ひとりずつ専用のケースに衣類をしまうほうが、全体量の把握もしやすく、服の増えすぎも防げます」
ただし、衣装ケースの中は一見キレイに見えますが、衣類から落ちた繊維の汚れやハウスダスト、カビの胞子が付着している場合も。そのため、冬物衣類を入れる前には、除菌スプレーをかけて乾拭きします。
「私は衣装ケースにアルカリ電解水を吹きかけ、乾いた布で拭いています。アルカリ電解水は水100%にもかかわらず、手垢や皮脂などの汚れ落ちと除菌ができるので、小さなお子さんの衣類をしまう収納ケースにも安心して使えますよ」
クローゼットの換気や掃除のついでに衣装ケースを取り出し、衣類の点検をするのもオススメ。
「雨が続いた後の晴天時には、お部屋の掃除に力が入りますよね。そんな日には、衣類にカビの付着がないかのチェックを兼ねて、冬物衣類の衣装ケースを開けてみるのはいかがでしょうか。衣装ケース内を拭き直し、不必要な衣類をしまい込んでいないかをチェック。カビ防止だけでなく、衣類の把握と整理ができます」
3. クリーニング保管を利用してクローゼットにゆとりを生む
森山さんのお宅では、コートやスーツなど、オフシーズンの大切な衣類や冬用布団などはクリーニング店の「保管サービス」を利用しています。1着あたり1回数百円で利用できる上に、クローゼットにゆとりができるので、カビ予防につながっているそう。
「かさばるコートや冬物スーツをクリーニングに預けることで、夏の間のクローゼットにゆとりが生まれます。カビ対策のために扇風機を回せば、ハンガーにかけた衣類がフワフワと揺れる余裕があるので、衣類に付着したカビの胞子やハウスダストなどの汚れ落しにもつながります」
クリーニングから戻ってきたコート類は、ビニール製カバーを外してからクローゼットへ戻すことを忘れずに。
「ビニール製のカバーは静電気でホコリを寄せ付けやすく、また湿気が逃げにくいので、カビの温床につながります。カバーをつけて保管したい場合は、通気性のよい防虫防カビ仕様のタイプを使いましょう」
4. 衣類用の圧縮袋を用意しなくてOK! 家にあるチャック付きビニール袋でスマートに
ダウンジャケットやセーターなどの防寒着は、チャック付きビニール袋に圧縮して入れている森山さん。
「衣類用の圧縮袋をわざわざ用意する必要はありません。どのご家庭にもあるようなチャック付きビニール袋の大きめサイズで大丈夫。1着ずつ小さくたたんで入れて、下からクルクルと巻き上げながら空気を抜けば、コンパクトに圧縮できます。1着ずつ管理することで、なにが入っているのかが一目瞭然。1着だけ取り出したいときも便利です。圧縮する前には、『衣類は清潔か』『完全に乾いているか』という状態チェックをしてください。完全に乾いていない衣類や、洗濯後に一度でも袖を通したものを圧縮してしまうと、カビやダニが発生してしまいます。ポケットにゴミが残った状態で圧縮するのもNGです」
5. カビの生えやすい皮製バッグやシューズは風通しよく保管
革製のバッグは、主成分がカビの好物であるたんぱく質です。その上、皮脂やレザークリームなどが付いているので、カビが生えやすくなります。バッグにカビが生えてしまうと、なかなか落ちにくく、二度と使えなくなってしまうことも。
「革製のバッグは、上からフタをせず、日の当たらない風通しのよい場所で保管します。しばらく使わないものは、やわらかいタオルや新聞紙を入れて、形崩れと湿気を防ぎましょう」
6. 冬物衣類をしまう前は3日間干してしっかりと乾かす
カビの栄養源は、垢、フケ、皮脂といった、タンパク質、炭水化物、アミノ酸、脂肪などです。衣類に付いた汚れは、すべてカビの栄養になります。
「衣類をしまう前には、一度でも着た服はしっかりと洗い、洗った服は3日くらい干して完全に乾かすことが大切です。衣類を大切に保管するのは手間がかかるので、着なくなった服や似合わなくなった服は早めに手放し、ムダな衣類を多く持たないようにしましょう」
衣類も人間と同じように蒸し暑さが苦手……そう思うことで、クローゼットのこまめな換気に意識が向きそうです。着なくなった衣類がないかをチェックして、衣類在庫のスリム化を心がけたり、クリーニング店の保管サービスやトランクルームを活用したりすることで、カビを寄せ付けない環境をつくることも心がけたいですね。
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Profile
整理収納コンサルタント / 森山尚美
シンプルライフスタイリスト、整理収納コンサルタント。看護師として病院勤務ののち、11年間の専業主婦時代を通して片づけ、シンプルライフに開眼し、2012年整理収納アドバイザー1級を取得。SIMPLUSを立ち上げ、「もっと素敵に、私らしく暮らしたい」人への片づけレッスンや、各種セミナーの講師として活動。「整理収納からはじめるシンプルライフ」を伝えている。
https://moriyamanaomi.com
取材・文=今井美由紀(Neem Tree) 撮影=矢部ひとみ