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自分のままで幸せになるには。幸福学研究者が教える“幸せになる思考習慣”
第2回 いつも“ごきげん”でいるための考え方

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いま誰もが、忙しい日々に追われ周囲の視線を気にして、自分を見失っているのではないでしょうか? 毎日がもっと楽しくて、幸せに感じられるものならいいのに——。落ち込む時代の空気に反比例するように“ウェルビーイング”が重視されるなか、幸せを科学的に研究・実証する「幸福学」が注目されています。

幸福学とは、心理学を基礎として、統計的にどういう人が幸せなのかを明らかにしていく学問のこと。この連載では、幸福学を研究する前野マドカさんに、さまざまな視点から幸せを感じる習慣や思考法など、「幸せになる方法」を教えていただきます。第2回のテーマは、いつも“ごきげん”で心地よくいるためのコツ。

ごきげんでいるためには、
ストレスと上手に付き合うこと

———第1回では「幸せとは何か?」についてお話しいただきました。幸せとは、自身で決めて感じるものであり、『幸せの4つの因子』を伸ばしていくことが大切なんですね。

「幸福学では、以下に挙げる4つの幸せの因子を伸ばしていくことが、幸せをより感じやすくなると定義しています。今の自分にはどの因子が足りていないのか、俯瞰して考えてみると幸福度を高めていけるはず。いつも“ごきげんな状態”でいられます」

幸福学の第一人者で、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授との夫妻で研究、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事なども務める、前野マドカさん。

幸せの4つの因子

■「やってみよう!」因子
・主体的にやりたいことに取り組んでいる人
・得意なことがあり、それを伸ばそうと努力をして強みをさらに高める人
・好きなことがあり、それを突き詰めようと打ち込んでいる人

■「ありがとう!」因子
・人の喜ぶ顔を見たいと思う人
・困っている人を支援したいと思う人
・他者とのあたたかい付き合いに感謝している人

■「なんとかなる!」因子
・考えすぎず物事を決断できる人
・失敗しても気持ちを切り替え立ち直るのが早い人
・自己受容できている人

■「ありのままに!」因子
・地位財形型の競争を好まない人
・自己像が明確な人
・他者への許容度が広い人

———幸せかどうかは自分が決めるとわかっていても、周りからのストレスに押しつぶされてしまうことがありますよね。ストレスに負けず、常にごきげんな状態を保つにはどうしたら良いのでしょうか?

「多くの人は、『ストレスは悪いもの』というイメージを持っているのではないでしょうか。実は、自分のモヤモヤやイライラなど、心と体の疲れに気づかせてくれるありがたい存在なのです。ストレス=悪だと思うから、そこに蓋をしよう、我慢しよう、逃げようと思ってしまいますが、しっかりと自分で感じ取ることが大切。自分の心が、怒っているな、悲しいな、悔しいなとストレスからどんな感情を受けているのか、まず把握しましょう」

———ストレスを受けないように、とばかり考えてしまいがちですよね。

「ストレスを受けても、そのストレスに侵されなければいいんです。ストレスを把握できたら、あとはそれを発散するだけ。発散方法は、音楽を聴く、甘いお菓子を食べる、銭湯に行く、カラオケに行く……なんでもいいんです。私の周りにいる“いつもごきげんな人”は、ストレス発散が上手な人が多いんですよ」

———みなさん、どのように発散されているのでしょうか?

「ある企業で代表をされている方は、以前はストレスを受けても根性で歯を食いしばって乗り越えていたそうです。しかし、心がつぶれてしまった。それ以降、ちょっとでもストレスを感じたら、『自分で自分を甘やかしている』そうです。コーヒーをゆっくり飲んだり、お友達とカラオケに行ったり、どんどんストレス発散をしてコントロールできるようになったと教えてくれました。

ほかにも、『ストレスを感じたら30分で立ち直る』と決めている方もいらっしゃいました。その方は、心のざわつきを感じたら30分ほど時間をとって、鍵付きの日記帳に自分の心の素直な気持ちを書き綴るのです。ポイントは誰にもみられない場所で、誰にも読まれないものに書くこと。とにかく30分は誰にも邪魔されず素直な自分と向き合えるので、残りの1日を幸せに過ごせると教えてくれました」

———発散方法は人それぞれでいいんですね。

「自分の取り扱い説明書を作るように、自分が何をしたら元気になるか、どうしたらストレスを発散できるか、いくつかの方法を把握しておくことをおすすめします。海釣りに行くと全部を忘れて幸せを感じる、テーマパークに行くと幸せになれる、無心でキャベツの千切りをすると元気になるなど、なんでもいいですから」

———悲しい時や怒っている時など、さまざまな感情の取り扱い説明書ができると、ストレスと上手に付き合えそうですね。

「仕事でイライラしたら、人間関係に疲れたら、恋愛でモヤモヤを感じたら、家族とギクシャクしたらなど、日頃さまざまな感情を感じているはずです。ストレスを感じた時『私は怒っていたんだな』と自分を客観的に感じるだけでも、心は落ち着いてくるでしょう。ストレスに蓋をせず、上手に発散していくことが、幸せに一歩近づくコツです」

幸せになる思考習慣……「ストレスはありがたい存在」

・ストレスと上手に付き合う
・いつでもごきげんな人はストレス発散が上手
・自分なりのストレス発散法(取り扱い説明書)を携えておく

ストレス発散がわからないという人は、自分自身が何をしている時に楽しみ、うれしく感じ、リラックスできるのか、そこから考えてみてもいいかもしれません。次回のテーマは「自分が幸せになれば、周りの人も幸せにできる?」です。

Profile

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社)などがある。

取材・文=つるたちかこ 撮影=鈴木謙介