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集中できない・寝ても疲れが取れない…実はそれ「脳疲労」かも?
疲労外来ドクターが教える回復方法と予防術

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情報があふれる現代において、私たちは10年前と比べて約300倍もの情報を脳で処理していると言われています。仕事ではPCを使い、通勤時にはスマホをチェック、自宅でもネットサーフィン…と、つねに情報に触れていることで、気づかぬうちに「脳疲労」を抱えている可能性があります。

今回は、数多くのメディアにも出演されている女性専門の疲労外来ドクター・工藤孝文先生に、脳疲労のサインから回復方法、予防術までうかがいました。

見逃しがちな「脳疲労」のサインとは?

脳疲労とは、その名のとおり脳が疲れている状態のこと。脳疲労が蓄積していくと、原因不明の頭痛や耳鳴り、気分の落ち込み、寝つきの悪さといった、“なんとなく不調を感じる状態”に陥ってしまいます。

この“なんとなく不調を感じる状態”は、動けないほどの不調ではないうえ、それが常態化することで“いつものことだから”と、症状を見逃しやすくなります。大切なのは、以下の症状が出てきたら「脳疲労かも?」と疑い、疲労の回復に努めることです。

【脳疲労のサイン】
・集中力が続かない
・気分や感情が安定しない
・朝起きても疲れが取れない
・つねに「休みたい」と思ってしまう
・腸の調子がよくない(便秘や下痢が続く)
・寝つきが悪く、ぐっすり寝たという感覚がない(夜中に目が醒める)

ちなみに、「なんとなく不調の状態」が一週間以上続いている場合は、何らかの病気が隠れている可能性があるので、自分で判断せず、病院で診てもらいましょう。

脳疲労は、脳だけが疲れている状態と考えられていて、脳(心)と体のバランスが取れていない状態とも言えます。生活に支障が出るほどの不調が続いている場合は、内科にご相談ください。一緒に原因を探りましょう」(疲労外来ドクター・工藤孝文先生、以下同)

工藤先生によると、病院を受診する際は、「いつからその症状が出ているのか」「どのような症状に悩んでいるのか」といったことを事前に紙に書いておくといいとのことです。

今日からできる「脳疲労」の回復方法

1日でもはやく「脳疲労」を回復させるために、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。具体的な方法を3つ教えていただきました。

1.ゆっくり眠れない人は、朝の過ごし方を変えてみる

眠りが浅い、寝つきが悪いなど睡眠に不調を抱えている人は、朝の過ごし方を見直してみましょう。

毎朝起きる時間を決めて、日光を必ず浴びる習慣をつけることが大切です。また、朝食にタンパク質をしっかり摂ることも快眠への近道。夜なかなか眠れないという方は、朝に牛乳をコップ1杯飲むのがおすすめです」

牛乳に含まれるトリプトファン(アミノ酸の一種)は、14〜16時間かけてメラトニン(睡眠ホルモン)に変換されます。

2.「トータル7時間睡眠」を目指す

個人差はありますが、一般的に人は、最低でも6時間、可能なら7時間の睡眠が必要だと言われています。しかし、忙しくてゆっくり眠れないという人もいるでしょう。工藤先生は「トータル7時間睡眠」でも大丈夫と言います。

「どうしても十分な睡眠が取れない人は、細切れでも構いませんので、合計で7時間の睡眠をとるようにしましょう。日中に仮眠を20分取るだけでも、脳の疲労回復につながりますよ」

睡眠不足は、生活習慣病やうつ病の原因にも。夜にまとめて寝るのが難しければ、トータルで7時間睡眠を意識してみましょう。

3.運動できないなら「NEAT」を意識しよう

脳疲労は、脳(心)と体のバランスが取れていない状態。つまり、脳だけが疲れている可能性があるので、体を動かして、脳と同じくらいの疲労感を体でも感じることが大切なんだそう。

「もちろん運動で体を動かすのがベストですが、ジムに行く時間がない、そもそも運動が苦手という方もいるでしょう。そういった方におすすめなのは、NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis/非運動性活動熱発生)です。
NEATとは運動以外の生活活動で消費されるエネルギーのこと。エスカレーターの代わりに階段を使う、座っている時間よりも立っている時間を増やすなどして、家事や日常生活のなかで体を動かしましょう」

掃除などの家事に没頭していると、脳は何も考えない「マインドフルネス」の状態になれるのだとか。NEATを意識するだけで、日常の運動量が変化します。

【NEATの例】
・電車で座らない
・バスも電車も一駅ぶん歩いてみる
・エレベーターやエスカレーターは使わず、階段を使う
・スタンディングデスクで作業する
・家電を使うときはリモコンを使うのではなく、端末まで近づき直接スイッチを押す
・食事中の噛む回数を増やす
・最寄りではなく少し離れた場所にあるコンビニやスーパーに行く
・床の雑巾がけをする

いつも元気で過ごしたい!
脳疲労を防ぐ生活習慣

せっかく脳疲労を回復できても、同じライフスタイルを続けていたら、また疲労が蓄積してしまいます。そうならないために、脳疲労自体を予防する方法も教えていただきました。

1.エナジードリンクの代わりに「水出し緑茶」

もうひと踏ん張りしたいときにエナジードリンクに手を伸ばす人も多いのではないでしょうか。しかしエナジードリンクは、脳を覚醒させ、さらに働かせてしまうため脳疲労が悪化する要因に。工藤先生は、「今日は疲れたな〜」と感じたら、夜に「水出し緑茶」を飲むのがおすすめだと言います。

「夜に緑茶を飲むと聞くと、『カフェインを摂ったら眠れなくなりそう』と心配になる方もいるでしょう。実は緑茶のカフェイン量は、水出しにすると少なくなるんです。さらに、水出し緑茶に含まれるテアニンは、リラックス効果があり不眠解消に最適な成分。脳がリラックス状態になるとα波が出るので、脳疲労の回復にもつながります」

2.毎日100gの「鶏むね肉」で疲れ知らずに

日々の食事でも疲労回復につながる食材を取り入れましょう。工藤先生のイチオシは「鶏むね肉」とのこと。どのような効果が期待できるのでしょうか?

「忙しい女性におすすめしたいのが、疲労回復効果が期待できる成分『イミダペプチド』が含まれる鶏むね肉です。夕食にサラダチキンやグリルチキンなどを100gプラスすれば、疲れを感じにくくなるでしょう。高タンパクで低カロリー、かつ低脂質なところも魅力です」

3.日が暮れたらコーヒーは控え、疲労回復にレモン水を飲む

コーヒーに含まれるカフェインは、4〜8時間で体内の残留量が半分になると言われています。入眠時にカフェインの影響を受けないよう、日が暮れたらカフェインは控えるのがよいでしょう。どうしてもコーヒーが飲みたいときには、カフェインレスコーヒーを。

疲労回復効果を狙いたいのなら、クエン酸が含まれた「レモン水」がおすすめです。

だらだらスマホが一番危険。
情報を発信して、脳疲労とサヨナラしよう!

私たちの生活に、もはやなくてはならないスマートフォン。工藤先生は「上手にスマホを活用すれば、脳疲労やストレスの発散になる」と話します。

「理想を言えば、日が暮れたらコーヒーと同じようにスマホも触らないほうがいいです。つねに情報を吸収し続けることが脳疲労につながるので、1日のなかでもスマホ断ちする時間を決めておくとよいでしょう。
また、スマホで情報収集している人が大半だと思いますが、スマホを活用し情報を発信する側になれば、自ら能動的に考え行動できるので脳疲労は感じにくくなります。情報を与え続けると脳と体のバランスが崩れてしまいますが、スマホをアウトプットの場にすれば脳疲労を感じにくくなる可能性はあります」

ゲームやSNSで情報を受動的に吸収するだけの時間は、脳疲労の原因に。なんとなく不調を感じている人は、だらだらスマホから見直してみましょう。

Profile

内科医 / 工藤孝文

福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。糖尿病・ダイエット治療・漢方治療を専門とし、NHK「ガッテン!」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」へ肥満治療評論家・漢方治療評論家として出演するなど、メディア出演多数。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本抗加齢医学会・日本東洋医学会・日本女性医学会・日本高血圧学会・小児慢性疾病指定医。
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取材・文=つるたちかこ