技術の集大成!
いよいよ登場した「新紙幣」に搭載された技術とは?
2024年7月3日からいよいよ発行される新紙幣。この紙幣に施された偽造防止技術は、これまで印刷局が歩んできた紙幣発行の歴史の集大成ともいえるでしょう。
これまでのE券に採用されている技術は、新紙幣でも引き続き取り入れられています。今回新たに採用された技術には、大きく2つあるそう。
・高精細すき入れ
「1つ目は伝統的な“白黒すかし” をさらに強化した“高精細すき入れ”という技術です。これまで、すかしに入っていた絵柄は肖像だけだったのですが、今回から肖像の背景に細かな柄が入るようになりました」
・3Dホログラム
「2つ目は“3Dホログラム”です。紙幣を傾けると、ホログラムに入っている肖像が角度に合わせて顔の向きが変わる技術です。この技術を紙幣に採用するのは世界初になります」
今回の改刷の目的は、偽造防止のほかにも存在した
また、今回の新紙幣改刷の理由には、偽造防止の強化の他に、ユニバーサルデザインの向上もあったそう。
「識別マークなどの部分は触るとザラザラする“深凹版印刷(ふかおうはんいんさつ)”という方法で印刷されています。
下図の通り、従来の識別マークは種類ごとに異なる形状でしたが、新紙幣では11本の斜線となっています。そのうえで、これまでは紙幣でも表面の左下・右下に配置していたマークを、種類ごとに配置を変えて識別しやすいように変更しています」
「また、外国の方や小さな文字が見えづらい方にも紙幣の数字が判別しやすくなるよう、額面の数字を大きく、そしてアラビア数字に変更しています。アラビア数字の部分は、一万円札と千円札とで数字の1の形状を変えて、判別しやすくしています」
新しい技術を開発しながらも、古くから使われる技術もうまく取り入れることで、総合的に偽造を防ぎつつ、紙幣の使いやすさにも配慮して紙幣が作られています。こうした紙幣に込められた技術の歴史を知ることで、新紙幣を手にしたときの感慨もひとしおではないでしょうか。
Profile
独立行政法人 国立印刷局 お札と切手の博物館
昭和46年、印刷局創立100年を記念して開設。明治期以前・以後の紙幣、海外の紙幣や切手、紙幣の製造と深いかかわりをもつ銅版画など、様々な資料を常設展示しており、紙幣の歴史、偽造防止技術などについて解説している。
所在地=東京都北区王子1-6-1
公式サイト
取材・文=棚橋千秋(Playce) 撮影=三木匡宏 写真協力=国立印刷局