雑誌にとって冬の時代。だからこそのチャレンジ意欲
元木:これまたビックリしたんですが、本物のロボットを付録にした別冊が登場しました。ロボット付きだなんて……世界初なのでは?
齋藤:組み立て式ではなく、完成品のロボットというのは世界初ですね。2020年から、小学校でプログラミング教育が必修化されることが決まっています。プログラミング教育とは、文部科学省によると「子どもたちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育成するもの」とされています。
元木:そうした背景があって、発売を決められたんですね。
齋藤:はい。ロボットの名前は「TABO8(ターボエイト)」といいまして。専用アプリをインストールしたタブレット端末に乗せて利用します。ロボットの動きをスクリーンが感知し、コンテンツと連動してタブレット上を動き回るんです。まずは試してみましょう。
元木:わ〜、かわいい! 「エアホッケー」ですか? 点数取られて、ちょっと悔しそうなそぶりや音もいいですね。これまた小学生じゃなくて、ロボット好きな大人もハマリそうです。それにしても、小さなときからタブレットやらスマートフォンが身近にあるんですね、今の子どもたちには(笑)
齋藤:キーボードを使わずプログラミングができる。海中都市や空想の街といった“おはなし”の舞台をつくって、ターボエイトをプログラミングすれば、子ども自身が考えた“おはなし”の通りに動かすことができるんです。
元木:子どもたちの創造力を高めて、論理的な思考力を育むんですね。すごいなぁ。
このロボットは別冊の特別号ですが、2月発売予定の第6号の付録には「スマホでプラネタリウムキット」や「錯視工作」など、一歩先行く齋藤編集長に“やんちゃ”な印象を持っているんですが(笑)、「あちゃー、失敗したぁ」というネタってあるんですか?
齋藤:やんちゃというか、『小学二年生』時代に、「みえるくん」というのを付けまして。
元木:「みえるくん」ってなにが見えるんですか?
齋藤:「みえるくん」は身長80センチのバルーンなんです。そこに人体模型の絵を描きまして。片方は“内臓が見える”、もう片方は“筋肉が見える”という。できれば実際の二年生の子の大きさにしたかった! でも「気持ち悪くて、この号だけ買いませんでした」という声が続出して。いあやぁ、感慨深い付録ですねぇ(笑)
元木:齋藤さんは、小学生のお子さんがいらっしゃるんですよね?
齋藤:2年生の男の子と5年生の女の子がいます。
元木:常に子ども目線でネタを探しているとか?
齋藤:24時間いつも、ってワケじゃありません。僕自身がおもしろいと思ったものを、小学生に下げるようにはしますけれどね。うちの子どもたちは、僕に気を遣ってか、僕には感想をとくに言いません(笑)。カミさんに聞くと「読んでいるよ」というので、ま、認められているとは思っています。
元木:編集部のスタッフは総勢何名ですか?
齋藤:僕を含めて計3名。少人数ですから話が早い。「こんなおもしろいネタあるんですが」と言えば、「じゃあ、やってみよう」となる。なにかおもしろいニュースが出たなら、それを入れ込むなど臨機応変にやりたいことをやっています。
元木:そのいろいろな情報が『小学8年生』の魅力ですものね。
齋藤:若いころ、「台割は生き物だ」なんて言われても、一度も“生き物チック”なところを見たことありませんでしたが、まさか自分の台割(雑誌一冊分の構成をページ順に並べた一覧)がそうなるとは……(笑)。とにかく、これからもどんどんいろんな話題を提供していきたいですね。
Profile
小学8年生 編集長 / 齋藤 慎
株式会社小学館 児童学習局 学習雑誌編集室『小学8年生』編集長。大学では水産学部に学び、図鑑を手掛けたいと小学館に入社。学年誌に配属され、一度デジタル部署に転属したものの、「基本、ずっと子ども関係」のメディアづくりを行っている。二児のパパ。趣味は海釣り。
小学8年生 公式サイト https://sho.jp/sho8
ブックセラピスト / 元木 忍
ココロとカラダを整えることをコンセプトにした「brisa libreria」代表取締役。大学卒業後、学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とつねに出版に関わり、現在はブックセラピストとして活躍。
取材・文=山﨑 真由子 撮影=田口陽介