トレンドのボブヘアやショートヘア。洗髪が楽になったと思いきや、意外とハネや広がりが出やすく、朝のセットにコツも時間も必要なヘアスタイルです。忙しい朝、ヘアスタイリングをスムーズにするポイントと、サポートしてくれるマストアイテムとは?
ショート&ボブスタイルの仕上がりに定評のある、東京・恵比寿の人気ヘアサロン「MINT」の代表で美容師のMisakiさんに、髪の健康を守りながら時短できるスタイリング術を教えていただきました。
時短のポイントは
前夜に仕込む“扱いやすい髪”
ショートやボブヘアの人のスタイリングの悩みには、どういったものが多いでしょうか?
「髪質や、なりたい髪型で異なりますが、ショート・ボブの3大悩みは、『クセ』『トップのペタンコ』『広がり』です。こうした悩みが出てしまうと、スタイリングを始める前に、まずは取り除くことから始めなくてはならないため、手間と時間がかかります。
クセや広がりの原因の多くは、『髪の乾燥』が原因。髪の洗いすぎや、ドライヤーを使わない自然乾燥、濡れたままで寝るなど、寝る前の間違った行動が乾燥につながります。つまり、髪の乾燥は正しいお手入れで防ぐことができるのです。乾燥を防ぎ、“扱いやすい髪の毛”の土台ができれば、7割方の悩みは解決したといってもいいでしょう」(「MINT」代表・ヘアメイク Misakiさん、以下同)
時短を叶えるマストアイテムは?
ヘアスタイリングの7種の神器
「扱いやすい髪とは、水分と油分バランスが整い、余分なクセがないことです。その土台を作るためにはずせない工程は、『汚れを落とし』『髪を補修し』『しっかりと乾かす』こと。とくに濡れたまま放置するのはNGです。髪を守るキューティクルは、濡れているとき開き、乾くと閉じます。開いていると、髪から水分や栄養が蒸発してしまいます。さらに、そのまま濡れた状態で寝てしまうと、枕でこすられたり髪が絡まったりなど、刺激でダメージを受けてしまいます」
早速、扱いやすい髪の土台を作り、朝のスタイリング時間を短縮できる、“7種の神器”を見ていきましょう。
1.【シャンプー】洗浄力が強すぎないもの
「洗髪の時に大切なのは、スタイリング剤や皮脂汚れなど、髪に付着している汚れをしっかりと落とすことです。でも、“洗いすぎ”は禁物。洗浄力の強いシャンプーを使うと、髪や頭皮の潤いを奪う原因に。汚れをしっかり落としながらも洗浄力の強すぎないシャンプーを選ぶには、洗浄成分に注目しましょう。成分表には配合の多い成分から順に記載されるので、水の次に記されている成分を確認します。ドラッグストアなど、身近なお店で購入するならば、タウリン系、ベタイン系の洗浄成分配合のシャンプーがおすすめです」
タウリン系……成分表に、ココイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNaなど「タウリン」と記載されたもの。
ベタイン系……成分表に、コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタインなど、「ベタイン」が記載されたもの。
2.【トリートメント】髪の内部まで補修効果のあるもの
「トリートメントは、髪の“水分”と“油分”のバランスを整えるために使います。洗顔後、肌に化粧水をつけるように、髪にも栄養が必要。リンスやオイルなどの、表面をコーティングする役割だけではなく、内部までしっかりと補修するトリートメントを選びましょう」
3.【洗い流さないトリートメント】エマルジョンタイプがベスト
「ドライヤ—前に使用するトリートメントには、エマルジョンタイプがおすすめ。エマルジョンとは、水の中に油が均一に分散している、乳液のような状態のこと。栄養が髪に浸透し、ドライヤ—の熱から髪を保護することも期待できます」
4.【ドライヤー】髪を傷めない速乾タイプ
「濡れた髪は、水分を残さずしっかりと乾かすのが基本。とはいえ、ドライヤーの長時間の使用は、髪の内部の水分まで蒸発させてしまいます。髪を熱のダメージから守る速乾力に優れたドライヤーがおすすめです。また、ドライヤー前のタオルドライで、しっかり水分を取り除き、ドライヤーの時間を短縮させることも大切です」
5.【デンマンブラシ】持ちやすく、適度な重さのあるもの
「“デンマンブラシ”とは、髪の毛をのばすブローブラシのこと。ドライヤーによって毛並みが散らばった髪の毛を、同じ方向にまとめ整えます。まとまった状態で髪型が安定すれば、寝ている間のクセもつきにくくなります。半円状のブラシでとかすことで、髪にほどよくテンションがかかり、髪を伸ばす効果があります。ブラシを選ぶときは、持ちやすく、テンションをかけるための適度な重さがあるものを選びましょう」
6.【オイル】伸びがよく、なじみのよいもの
「広がりやパサつきを抑えてまとまりのある髪にスタイリングをするために使います。とくに、ツヤを出したいときにおすすめ。手や肌のスキンケアにも使用できるタイプが人気です。テクスチャーの重いオイルは、量の調節がむずかしく、失敗すると洗髪していない髪の毛のような状態になってしまうことことも。サラッと伸びが良く、手肌にスーッとなじむ軽い使用感のオイルを選ぶと良いでしょう」
7.【バーム】天然成分のものがおすすめ
「髪にうるおいとつやを与えながら自然な毛流れや束感をつくります。ナチュラルなセット力も魅力。なかでも、天然成分のみで作られたオーガニックバームが人気。全身どこにでも使用できる肌にやさしい成分のため、手に残ったバームを洗い流す必要がなく、時短にもおすすめです」
8.【ストレートヘアアイロン】これひとつでスタイリングがラクに
「ショート・ボブの方は、これ一本あれば確実に朝のスタイリングが楽になることでしょう。クセを矯正したり、カールを付けたり、ボリュームアップも叶う優れモノ。不器用な方もコツさえつかめば簡単に扱えます」
続いて、7種の神器を使った、ヘアスタイリングの秘訣を時系列で見ていきましょう。
前夜の仕込み編
1.【シャンプー】たっぷりの泡で洗う。生え際や襟足も忘れずに
「シャンプーは、しっかり泡立てて洗髪するのがポイント。泡の吸着力で汚れをやさしく落とすので、頭皮や髪への負担が少なく済みます。また、意外と忘れがちなのは生え際周りや、襟足。残った汚れは、その後のトリートメントの妨げになるので、指を立て、指の腹でしっかりと洗いましょう。水気を切ったら、トリートメントは直接頭皮につけないように、髪の毛の中間から毛先を中心につけて5分ほど放置し、洗い流します」
2.頭皮の水分をぬぐうようにしてタオルドライ
「ドライヤーの髪への負担を少なくするためにも、タオルでしっかりとふき取ることが大切です。水分をオフするときに意識したいのは、髪の毛ではなく頭皮。頭皮についた水分を取るように、タオルで地肌をジグザクと軽くこすりながら水分をとりましょう」
3.【洗い流さないトリートメント】指の間まで丁寧に広げ、手ぐしで塗布
「500円玉ほどの量の洗い流さないトリートメントを手のひらにとったあと、全体に伸ばし、指の間にも行き渡らせましょう。ここで、コームを使う必要はありません。手ぐしで髪全体になじませます。洗髪後のトリートメントと同様に、地肌に付けないよう、髪の毛の中間から毛先を中心にまんべんなく塗布します」
4.【ドライヤー】指先を使いながら、根元を中心に乾かす
「まずは、髪型の中心となる前髪から乾かします。前髪は割れやすく、クセがつきやすい場所のため、根元を指で左右にこすりながら乾かして行きます。そうすることで、髪の毛が左右に引っ張られ、根元を起こし髪をのばしながら乾かすことができます。次に、前から後ろへ順番に乾かしていきます。この時もコームは必要ありません。手ぐしで根元を起こしながら、根元を中心に乾かしていきます。髪の9割ほどが乾いたら、デンマンブラシを使用して、毛流れをまとめましょう」
5.髪の熱が冷めてから就寝
「ドライヤーで髪を乾かしたら、最後にもうひとつ気をつけて欲しいことがあります。それは、髪がホカホカの状態で寝ないこと。髪の毛は温めると柔らかくなり、冷めると形が固定されます。そのため、温かいまま寝てしまうと、せっかく整えた髪の毛がつぶれた状態で安定してしまいます。寝るのは、髪の毛がきちんと冷めてからにしましょう」
翌朝のスタイリング編
1.【ドライヤー】左右に温風をあてることで、クセを治す
「ドライヤーを使って、寝ている間についてしまったクセを治しましょう。土台さえしっかりしていれば、ドライヤーの熱だけで、クセを取ることができます。洗い流さないトリートメントは前夜に塗布しているので、重ねづけは不要。クセを取りたい髪の毛を、右へ左へと、真逆の方向に動かしながら乾かすことでクセを伸ばします。このとき、ドライヤーは、髪の毛に対し垂直にあてるのがポイント。耳にかけることでクセが付きやすいサイドの髪の毛は前へ、潰れやすい後頭部は上へ引っ張りながら、ドライヤーをあてていきましょう」
2.【スタイリング】全体になじませたら、指先を使ってクセづけする
「シースルーバングや斜めに流した束感のある前髪など、ワックスで作りこむほどではなく、自然な毛流れを出したいときに大活躍するのがバームです。小指の先ほどの量を手のひらに出したら、洗い流さないトリートメントと同様、手の指の間にまでしっかり伸ばしてから髪の毛に塗布していきます」
「ショート・ボブヘアのスタイリングのポイントは、前髪の形と襟足をスッキリさせること、そしてトップのボリューム感です。まずは、手ぐしで襟足部分全体をつかみ押さえつつ、髪の中間から毛先を中心に髪全体になじませていきます。束感やクセ付けしたい部分に、ひとつひとつ丁寧になじませて形づくります。最後に手に残ったバームで、前髪をスタイリングすれば完成です」
手ぐしスタイリングにプラス!
失敗さえも華麗に変身させるストレートヘアアイロン
ドライヤーを使っていたら、一束だけ外ハネしてしまった! 生え際の前髪だけ、うねりが強い! などなど、ショート・ボブのほとんどの悩みを解決するといっても過言ではない、ストレートヘアアイロン。しかも、1すべり3秒でスタイリングのお悩みを解決します。究極の時短アイテムを取り入れてみましょう。
■ ストレートヘアアイロンの基本的な使い方
「ストレートヘアアイロンは、使ってみたことのない方にこそ、一度は使用して欲しいアイテムです。アイロンの温度は、160℃から170℃を目安に。髪にあてる時間は約3秒以内を守ると、熱や摩擦による髪の傷みを最小限に抑えることができます。クセが付きやすい前髪は、アイロンで挟んでまっすぐのばしましょう。とくに生え際はうねりが出やすい箇所です。生え際部分だけでものばすことで、前髪の印象がグッと変わります」
■ 毛先のワンカールに
「毛先をワンカールさせたいときにも、優秀なストレートヘアアイロン。髪の毛を整えたら、中間部分からアイロンを挟み、毛先に近付いたら、手を返すようにゆっくりとカールさせたい方向に滑らせましょう」
■ トップの髪のボリュームをアップ
「トップのボリュームを出したいときには、髪の毛を上に引っ張りながら、弧を描くように下に降ろします」
最後に、小顔効果とトップのボリュームアップが叶う、ショート・ボブのスタイリングテクニックについて教えていただきました。
Q.小顔に見せるには?
「写真を見比べてみてください。片側を耳にかけた髪型の方がスッキリとした印象ですよね。耳を出し、こめかみ部分のおくれ毛をほどよく残すことがポイントです。多すぎても、少なすぎてもキマりません。バランスを見ながら、ちょうどいい分量を探してみてください。手に残ったバームを少しつけて、自然な束感を出すといいでしょう」
Q.簡単にトップにボリュームを出したいなら?
「熱伝導タイプのカーラーをトップに巻きましょう。巻く位置は、頭頂部から後頭部へ続く頭の丸みのちょっと手前。巻いた後、ドライヤーで髪を温め、10分ほど放置すれば、カールが固定し、ほどよいクセがつきます」
ショートヘアやボブヘアは、ナチュラルな毛流れやストレートな前髪など、ヘアスタイルのポイントが顔回りにあることが多いため、日々のスタイリングが欠かせません。とはいえ毎日のことだからこそ、朝のスタイリングはラクにしたいもの。今回Misakiさんに教えていただいたノウハウを、ぜひ実践してみてください。
Profile
「MINT」代表・ヘアメイク / Misaki
恵比寿で20年以上もの間、支持されリピーターが途切れない人気美容室「MINT」のオーナースタイリスト。MINT、MINTing、MINTonariの3店舗を経営する。ジェンダーニュートラルで、どんなユーザーもリラックスして頼れるサロンとして、それぞれのなりたいを叶え“魅力を引き出す”技術を提案。なかでも、ショートボブやボブヘア、韓国ヘアメイクを得意とする。
取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=真名子