SUSTAINABLE 私たちを取り巻くSDGs

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ペットの殺処分という人間の身勝手を失くすために。人も動物も幸せに暮らせる社会を目指し、
私たちが「動物愛護」についてできること

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動物愛護のために、私たちができること

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「難しく考える必要はなく、自分のできる範囲で一歩踏み出していただければいいと思います。動物を飼っている人なら、その動物を最後まで大切に飼育する。飼っていない人は、動物達を見かけたら優しく接する。それだけでも、立派な動物愛護だと思います。温かく見守ってくれる人が増えれば、幸せな犬や猫が増えていくはずです」

動物愛護に対する思いを行動に移したい、ボランティアをしてみたいと考えている人は、「地域の保護施設を調べて見学をしてみて欲しい」と廣瀬さんは言います。

「各自治体には動物愛護センターが存在します。保護活動や譲渡会などを行っており、見学もできますので、そうした施設に出向いて現状を理解し、正しい知識を身につけ、周囲に啓発していくことも一つの方法です。実際に動物を飼う場合には、保護団体や動物愛護センターから迎え入れるということも検討してほしいですね」

 

動物に対するモラルが問われている

フランスの犬猫販売禁止法案について聞いてみると、「すべてを否定するのではなく、良いペットショップ運営のための模索が必要である」と廣瀬さん。

「すべてのペットショップやブリーダーが悪いわけではありません。彼らが飼い主の良き相談相手になっている場合もあります。ただ、動物の命を商売道具としか考えていないような業者の存在は淘汰されるべきだと考えています。現在ペットショップやブリーダーの開業は登録制で、簡単に開業できてしまいます。それを、今後は免許制にすることも必要ではないでしょうか」

そしてこの問題は、動物を提供する側だけでなく、動物を迎える側のモラルも問われています。「その一目惚れ、迷惑です。」という公共広告は、飼い主への啓発も目的だといいます。

「一目惚れが悪いわけではないですし、大切に飼育している方はたくさんいらっしゃいます。ですが、今はさまざまな動物がお金さえ出せば手に入ってしまいます。やはり動物を飼いたいと思ったら、一時的なブームに踊らされないでほしいのです。動物の生態をきちんと調べたり、飼育環境を整えたり、もしもの時の受け皿を考えておいたり、近所の動物病院の所在を確認したりと、最低限の準備をしてから迎えてほしいと思います。また、動物たちはファッションでもおもちゃでも、健康器具でもありません。飼えないのであれば“飼わない勇気”を持つことも大切です」

また、廣瀬さんはコロナ禍でペットの飼育数が増えている状況にも危惧しています。

「動物に癒しを求める気持ちは良くわかります。しかし、今後普通の日常に戻った時に、『飼えなくなった』、『思ったより懐かない』、『大きくなりすぎた』と人間の都合で手放されてしまう犬や猫をはじめとした動物が増えるのではないかと思うと心配です」

こうした状況を防ぐために、日本動物愛護協会では、「ペットの寿命まで飼育する覚悟があるか」「世話をする体力や時間があるか」といった飼う前の準備の指針を飼い主に必要な10の条件として掲げています。

動物を飼いたいと考えている人は、ぜひチェックしてみてください。

 

きちんと理解した上で行動してほしい

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動物に対して無責任な関わり方をしないためには、まず動物についての知識を深めることが大切です。「きちんと考えてから行動してほしい」と廣瀬さんも言います。それは、動物を飼う時ばかりではありません。

「寄付などの支援は、私達の活動を広げることにつながりますので大変ありがたいことです。しかし、自分の大切なお金がどのように使われているのかを把握し、ホームページなどを確認のうえ信頼できる機関に支援していただきたいです。
日本動物愛護協会では、動物のことだけでなく、協会の活動に関することなども電話やメールで相談を受ける場合がありますが、納得していただいた上で行動に移してほしいので、丁寧な対応を心がけています。
ご支援は絶対に無駄にできませんので、私達の行動が動物のためになるのか、寄付者や会員の方を裏切ることにならないか、協会のためになっているのか、この3つを必ず頭に入れて行動しています」

 

最後に、廣瀬さんが動物愛護の活動を始めたきっかけを聞いてみました。はじまりは、ある捨て猫との出会い。当時、転勤先での慣れない生活に疲れていた廣瀬さんを、命を助けた猫が自分を救ってくれたと言います。

「動物との関わり方は人それぞれですし、自分の置かれている状況によっても変わります。動物を助けることで、自分自身が救われることもあるかもしれません。皆さんもぜひこの機会に、動物愛護について考えてみてはいかがでしょうか」

Profile

日本動物愛護協会 常任理事・事務局長 / 廣瀬章宏

ある捨て猫との出会いをきっかけに証券会社を退職し、2012年日本動物愛護協会入職。現在は常任理事・事務局長として「動物の命を守る活動」、「命の大切さを知ってもらう活動」、「社会への提言活動」という3つの柱を軸に、活動を続けている。動物を遺棄やペットの衝動買いなどに対して問題提起を行う公共広告を手掛けるなど、啓発活動に力を入れている。

日本動物愛護協会HP:https://jspca.or.jp/

 

取材・文=小野口真絹・室井美優(Playce)