LIFE 健康・美容・仕事・遊び・家事

シェア

コロナ前後で価値観に変化。ウェディングプランナーが教える、
「結婚式」の新しい形とマナー

TAG

ウェブ招待状やフォトウェディングが登場するなど、コロナによって結婚式の当たり前は大きく変わりました。2023年の結婚式のトレンドや参列する側が押さえるべき最新マナーとは、いったい何なのでしょうか? フリーウェディングプランナーの遠藤佳奈子さんにお話を伺いました。

コロナ禍で「人数」「招待状」「余興」に変化

コロナ禍で自粛ムードが続いた結婚式ですが、2022年秋ごろからは再開の流れになっています。実際、2020年に遠藤さんが担当した結婚式はわずか2.3件だったものの、2023年は既に10倍もの依頼がきているそう。お盆などの結婚式に向かない時期を除くと、ほぼフルで予定が埋まっているといいます(遠藤さんが担当する結婚式は1か月で最大3件)。コロナ前と後では結婚式にどんな変化が起きているのか、教えていただきました。

・変化1.参列者がより厳選されるように

「以前は参列者をたくさん集めて、式を少しでも豪華に見せたいという方が一定数いました。ところが2020年以降はコロナ禍で外出しづらくなったうえ、密を避けるため各会場の収容人数も減ったので、社交辞令はなしで、本当に来てほしいと思う友人・知人だけを招待するようになったんです。人数の規制は緩和されましたが、個人的には今後も続いていくべき、よい変化だと思っています」(ウェディングプランナー・遠藤佳奈子さん、以下同)

・変化2.ウェブ招待状が増加

「もともとは、コロナで挙式が延期になった新郎新婦たちがウェブ招待状を使いはじめました。延期した日時を案内する際に、紙の招待状を印刷し直すと費用がかさむこと、また再び延期になるかもしれないという懸念が背景にありました。それが、徐々に1回目からウェブ招待状を選ぶ人が増えていったのです

ただ、未だ浸透しておらず参列者の混乱を招くこともしばしば。上司世代などは紙の招待状が礼儀と思っている方が多いので『ここはウェブでの案内をよしとしているのか!』と会場に連絡がきたことがありました。また、会費制の結婚式(ご祝儀が不要)ではコロナ前からウェブ招待状を使うこともあったので『会費制の結婚式なの?ご祝儀は必要?』と問い合わせがきたことも。まだまだ一定数、ウェブ招待状は失礼と捉える方もいらっしゃるので、ウェブが一般化するのか、紙に戻るのか……今が節目だという気がします」

・変化3.余興の代わりにオリジナルムービー

「歌などの余興がコロナでNGになったので、その代わりとしてオリジナルムービーを流す人が増えました。当方でも10~20万円でプロが撮影・編集をしてくれるプランを用意しているのですが、とても人気です。中にはスマホのアプリを使ってプロ並みのムービーを自作してくる方もいらっしゃいます。新郎新婦が主演の映画などバラエティー豊かで面白いですよ」

令和の花嫁の特徴とは?

これまでたくさんの結婚式をコーディネートしてきた遠藤さんは「時代とともに新郎・新婦のオーダーも変化している」と話します。令和の新郎・新婦たちには一体どんな特徴があるのでしょうか?

・挙式にこだわらず、本人たちがやりたいことを優先!

「日本人の特徴として『憧れのあのホテルにはチャペルがあるからキリスト教式にする』など、施設先行で挙式スタイルを決める方が多いんです。海外の方からするとキリスト教徒でもないのに、結婚式だけ神に誓うのはおかしいと感じるみたいですよ(笑)。

でも最近はその違和感に気づき、無宗教だから披露宴だけ、親族のみで神社で神前式、けじめとして指輪の交換などはしたいから皆に証人となってもらう人前式など、やりたいことから挙式スタイルを決める方もちらほら出てきました。ちなみに私の担当した新郎新婦もキリスト教徒以外の方はほとんど人前式を選ばれています」

・高価なウェディングドレス一着で勝負!

「ウェディングドレスはこれまでレンタルが主流でしたが、最近は購入する方も増えています。というのも、今は世界中の情報が見られるので、日本ではレンタルできないドレスの人気が高まっていて、なかには200万円もの高価なドレスを買われる方も! 購入の場合はお色直しをせずに最初から最後まで一着で過ごすパターンが多いです。

ちなみにドレスにこだわった結果、演出のひとつであるドレス紹介に時間をかけたいという方がいらっしゃるのですが、新郎新婦と参列者の間で若干の温度差が生まれるので避けるのがベターとお伝えしています」

・写真映えする演出が人気! ただしSNSの情報は鵜呑みにしないこと

「最近はインスタやTwitterで #プレ花 #卒花 といったハッシュタグとともに自身の結婚式の様子を発信されている方がたくさんいるので、それを見て自分たちも真似したいとおっしゃる方が増えました。

ただ、SNSでは人気でも、実は参列者から不評な演出はけっこうあります。例えば、名前とテーブル番号が書かれたカードを頼りに自分の席を探してもらう『エスコートカード』は、おしゃれなカードが受付に並ぶ光景が映えるので人気になりましたが、参列者にとってはカードや席を探す手間が掛かるので喜ばれないこともしばしばです」

エスコートカードの一例。テーブルに並べるほか、コルクボードに貼りつけたり紐で吊るしたりすることで受付を華やかに見せることができます。

「また、会場や参列者の顔ぶれによって演出の向き・不向きがあるので、他の方のベストが必ずしも自分たちにとってのベストかはわかりません。例えば『参列者へのサプライズインタビュー』は、レストランなどのこぢんまりとした会場なら皆で歓談しているような楽しい雰囲気になりますが、大きな会場だと誰が喋っているのか遠くてよくわからない……なんてことも。あとはそもそもお話が苦手な方やあまり乗り気でない方を当ててしまうと、微妙な雰囲気になってしまうこともあります。

SNSによってドレス、ブーケ、ヘアメイクなどのイメージは共有しやすくなりましたが、その他については間違った情報を参考にしてしまう新婦さんが増えており、プランナーの立場からすると情報過多な状況だと感じます。自分は自分、人は人という気持ちで見ることも大切ですね」

令和の結婚式参列マナー

時代とともに変化しているのは結婚式の内容だけではありません。参列する側のマナーについても、一部省略できるものや新しく知っておくべきものが出てきています。

■ 招待状のマナー

・返信の締切を守る

「今も昔も変わらず一番大事なのは、出欠席の返事の締切を守ること。参加人数が確定しないと食事や引き出物、席次表などの手配ができないので、必ず守りましょう」

・アレルギー欄に好き嫌いを書かない

「最近、食品のアレルギー欄に“嫌いな食べ物”を書く人が増えています。書いてある限りは配慮せざるを得ないので、たった一人の好き嫌いによって料理の選択肢に影響を及ぼしてしまいます。アレルギー以外はできるだけ書くのを控えましょう」

・ペンの色は気にしすぎる必要なし

「黒やグレーなどが好ましいとされていましたが、最近はそこまで気にする必要はないように思います。カラフルな“招待状アート”が話題になっているように、新郎新婦が喜ぶものであればOKです」

・欠席連絡は2週間前までに

「直前に欠席の連絡をすると食事や引き出物のキャンセルができません。急用による欠席は2週間前までを目安に。ただし会場によって締切が異なりますので、どうしてもという場合は新郎新婦にリミットを聞いておきましょう」

■ 結婚式準備のマナー

・駐車場を使うときは事前に連絡

「新郎新婦が駐車場代を負担する場合、使う人が事前にわかると準備しやすくなります。車で向かう予定のときは『駐車場を使いたいんだけど、近くにあるかな?』などと連絡するのがおすすめです。もちろん自己負担の場合もあるので、間違っても新郎新婦が駐車場代を出す前提で連絡しないように気を付けてください」

・子連れ参列は事前に相談

「最近、事前連絡なしに子連れで参列してしまう方が増えています。食事や席の都合もありますし、連れてきたかったけれど我慢をされた参列者が他にもいるかもしれないので、必ず新郎新婦に事前に相談しましょう」

・ご祝儀は前日までに準備

「ホテルのフロントで新札への交換をお願いしたり、受付でペンを貸してもらったりする人がとても多く、とある結婚式では10人以上がご祝儀を準備していませんでした。必ず前日までに新札を準備し、できれば毛筆で名前を書くようにしてください。持ってくるときには袱紗(ふくさ)に包むのがマナーとされていましたが、ご祝儀袋が汚れなければハンカチで代用してもOKです」

■ 結婚式当日のマナー

・服装はセクシーでなければ大丈夫

「参列者の服装というと、淡い色のワンピースにショールを巻いているイメージがありませんか? でも最近は肩出しや素足が許されつつあるなどマナーがゆるくなっていて、皆さんとてもおしゃれになりました。中には友だちグループでそろって着物を着てくださる方も! 参列者が華やかな服装だと会場全体が明るくなるのでいい変化だと思います。ただ、肩出しがOKとはいえ、胸の谷間が見えるような色気のある服装はNG。あくまで主役は新郎新婦なので変に目立たないよう気を付けてください。また会場の格式にもぜひ配慮をしてください」

・受付が開始してから会場へ

「遅刻がNGなのは言わずもがなですが、早く着きすぎるのも避けるのがベター。というのも最近は式当日に会場のエントランスやロビーで写真撮影をする新郎新婦が多いため、参列者が早めに着くと式前に姿を見られたくないという方の場合は、撮影の妨げになってしまうことも。会場に入るのは受付が始まってからにするのも思いやりです」

■ 挙式・披露宴中のマナー

・席を立つときは1人&短時間で

「複数人でトイレや喫煙所に行く方がいるのですが、一気に同じテーブルから3~5人減ると会場が寂しくなるうえ、進行が中断してしまうことも。席を立つときは1人でさっと行って戻ってきましょう。また、最近は喫煙所が減っていて、往復の移動に数十分かかってしまう会場もあります。一服したいときはスタッフにタイミングを確認するようにしてください」

・入場時だけは撮影をストップ

「ここ数年で気づいたのですが、皆さん撮影に夢中で入場時に拍手が起こらないことがよくあるんです。シーンとした入場は寂しいですので、入場のときくらいは撮影せずにめいっぱい拍手を送ってあげてください。また、いい写真を撮ろうとバージンロードに出たり、新郎新婦が手紙を読んでいる目の前に立ってしまう方がたまにいるのですが、式の雰囲気が壊れるうえプロのカメラマンの邪魔にもなってしまいます。ケーキ入刀などで前に出るのを促されたとき以外は、自分の席から撮影するようにしてください」

・席札を使って引き出物の取り違え防止

「帰り際にどれが自分の引き出物かわからなくなる方が結構います。引き出物の中身は人によって違うこともあるので、適当に持って帰るのはNG。取り違えないためには席札を入れておくのがおすすめです」

リベンジ消費もあり、結婚式に行く機会は今後ますます増えていくでしょう。令和版のマナーをきちんと押さえて、新郎新婦とともに気持ちのいい結婚式をつくりましょう!

Profile

フリーウエディングプランナー / 遠藤佳奈子

2003年新卒で大手式場に入社、2009年独立。フリーウエディングプランナーの先駆者としてラグジュアリーホテル・レストランを中心に、様々な施設での結婚式を手掛ける。組数を限定し1組1組に時間をかけて創り上げるトータルコーディネートウェディングは新郎新婦だけでなく参加ゲストや会場、企業からも評価が高い。現在はホテルやレストランのウェディング立ち上げ、運営を任される他、ウェディングの第一人者として、書籍や雑誌のコラム、セミナーなど幅広く活動している。

HP
Instagram

取材・文=横塚瑞貴(Playce)