対策4. ライフライン寸断への備え
台風で飛ばされた物が電線を損傷したり、大雨による土砂崩れで電柱が倒れたりすると、停電が起こります。送電線の破損がひどい場合は、数週間の停電になる可能性も……。
「大型台風の上陸が予想された段階で、ペットボトルに8割ほどの水を入れて凍らせ、停電中の冷蔵庫内の保冷キープに備えましょう。溶けた水は飲料になります。乾電池の予備やライト、ろうそく、カセットコンロやガスボンベのストックを確認し、手に取りやすい場所に常備しておきます。リスクを分散するために、2階や玄関などに複数の場所に備えておくことも大切です」(小西さん)
「大型台風が近づき3〜4時間後に居住区を通過することが予想される場合は、入浴や食事を済ませてください。停電が起きたりライフラインが止まったりする場合に備えて、簡易に食べられる物を用意します。災害に特化した非常食でなくても、おにぎりやパンなどでもいいですよ。これにより、保存食に手をつけずに数日分の食事を確保できます」(小西さん)
対策5. 食糧の備蓄
長期化する停電や高範囲に渡る被害が出ると、救援物資が届くまでに日数がかかります。日頃から日持ちのする食材ストックを確保しておくことが大切です。
「水道、電気、ガスといったライフラインが使えなくなった場合に備えて、食糧と水を最低でも3日分、できれば1週間分ストックしておきましょう。免震構造などの対策が充分に施されているタワーマンションや築浅マンションの場合、倒壊や全壊のような被害は少ないので、避難せずに自宅で過ごせる可能性が高くなります。とはいえ、エレベーターが使えないことで物資不足が起こりやすくなるので、非常食や水などのストックは多めに備えておいた方がいいでしょう」(小西さん)
対策6. 生活必需品の備蓄
停電になると、電気やガスだけではなく、トイレやお風呂も使えなくなってしまうことがあるので、非常時に使うアイテムは手に取りやすい場所に保管しましょう。
・ランタン……停電した際のリビング、キッチン、トイレなどの照明に。3個以上はあると便利。
・非常用トイレ……下水道が使えなくなったときのトイレとして。
・マスク……数十枚入った使い捨てタイプの箱入りのものが好ましい。
・アルコール消毒スプレー、ハンドジェル……普段用のストックを兼ねて3~5本を常時しておくと安心。
・カセットコンロとガスボンベ……ガスボンベ1本で約1時間の加熱調理が可能。
・ラジオ……スイッチを入れたらすぐにラジオが聞けるようにチューニングを済ませておく。
・ポリタンクとキャリーカート……ポリタンクに断水時の水を入れ、キャリーカートを使って運ぶことを想定。マンションのエレベーターが使えない場合を想定し、階段移動に使える大きめのリュックも備えておきたい。
・口腔ケア用のウエットティッシュ……水道が使えなくなった際に歯ブラシ代わりとして使用。口の中に入れられ、アルコール不使用なので、体や食器拭きなど、多用途で使える。「災害時は水や口腔ケア用品不足で、口腔ケアが疎かになりがちです。その結果、口の中にバイ菌が繁殖し、感染症や肺炎を引き起こす可能性もあります。必ず、多めにストックしておきましょう」
・ラップ……断水時にお皿に敷いて使う。応急手当や体に巻いて防寒具としても使える。
・カイロ……雨に濡れたり、避難所生活をしたりすると体が冷えやすいので必要。
「災害用伝言ダイヤル171」を活用しよう
災害時は、通信障害が起きることもあります。普段、スマホで簡単に連絡が取れる生活に慣れているので、急にネット環境が途絶えてしまうと、パニックになりかねません。
「一番連絡がとりやすいのは『災害用伝言ダイヤル171』です。平時は利用できませんが、毎月1日や防災週間などに体験利用ができるので、試してみるといいでしょう。ほかにも、『避難などで家を離れるときは、ここにメモをおいておくね』などと、アナログでできる連絡手段を共有しておくこともおすすめです」(小西さん)
【伝言を録音する場合(暗証番号なし)】
1.「171」に電話をかける
2.「1」を押す
3. 被災地の方の「市外局番からの電話番号」または「携帯電話番号」を押す
4.「1」を押す(ダイヤル式電話の場合はそのまま待つ)
5. 伝言を録音する
6.「9」を押す(ダイヤル式電話の場合はそのまま待つ)
【伝言を再生する場合(暗証番号なし)】
1.「171」に電話をかける
2.「2」を押す
3. 被災地の方の「市外局番からの電話番号」または「携帯電話番号」を押す
4.「1」を押す(ダイヤル式電話の場合はそのまま待つ)
5. 伝言を聞く(次のメッセージを聞く場合には「3」を押す)
災害用伝言ダイヤルの使い方
『災害用伝言ダイヤル171』体験可能日
・毎月1日、15日 0:00~24:00
・お正月三が日(1月1日 0:00~1月3日 24:00)
・防災週間(8月30日 9:00~9月5日 17:00)
・防災とボランティア週間(1月15日 9:00~1月21日 17:00)
ほかにも、普段から備えておくこととして、避難場所や避難経路を確認しておく、家屋や車などが被害に遭ったときの補償はどうなっているか「火災保険」「車両保険」「傷害保険」などの条件や補償の範囲、最高補償額をチェックしておくことも大切だと小西さん。
「日頃から大型台風に備えた準備や対策をしておくことで、台風が近づいてきたときに、自分がどう行動するべきか、冷静に判断できるようになります。情報キャッチ力も上がっていくので、ご近所のみなさんをサポートできたり心強い協力体制が育まれたりします。まずは、できることから始めていきましょう」
Profile
防災士 / 小西玲奈
ひょうご防災リーダー ・ 応急手当普及員。危機管理室と協働で小学生の親子向け減災教室や乳幼児を子育て中のママ向けの減災セミナーを開催しているほか、これまでに2700人以上を対象に90回以上の講演活動やワークショップを行う。一児の母。
取材・文=今井美由紀(Neem Tree) ©️NASA