共働きで冷凍食品を週末にまとめ買いする家庭が増えている近年。2022年に入ってからは相次ぐ値上げや、さらに防災の観点からも、食品や日用品をストックすることが多くなっています。とはいえ、節約や安心のために買ったものも、消費期限内に使いきらなければかえって無駄になってしまいます。
ストックを生かすも殺すも収納次第。管理しやすく、かつ見た目もよく、と両立させるにはどうしたらいいのか、整理収納アドバイザーの佐々木奈美さんに教えていただきました。
冷凍庫のストック食材は
縦置きで場所を固定
まずは、日常的な食品や食材から。佐々木さんは、冷蔵庫や食品棚にあるストック食材は、基本的に物の量と種類を決めているといいます。
「冷凍庫の中はストックしたい食材のサイズに合う無印良品の整理ボックスで仕切り、冷凍うどん、カットピザ、ごはん、そのほかのおかずなどの収納場所を決めています。すべてサッと1アクションで取り出せるような縦収納にし、在庫が少なくなってきたら同じものを買い足して後ろに追加する。この流れを作っておけば、買う食材に悩むことはありませんし、常に在庫も把握できます。古い物から順に消費していくので、ムダが出ることもありません」(整理収納アドバイザー・佐々木奈美さん、以下同)
常温のストック食材は
スーパーの陳列棚を参考に
常温の食材の収納には、スーパーの陳列棚を参考にするのがコツだそう。
「スーパーの棚を見ると、常温食材は立てて面出しして、消費期限の早いものを手前に置いてありますよね。あの状態をなるべく自宅でも再現できるように意識しています。食品は丸い箱よりも四角い箱の方が陳列しやすいですね。無印良品のファイルボックスのようなものや、四角い箱が収まりやすい収納BOXを用意しましょう。このとき、収納アイテムはなるべく3つ以上、同じものを並べて面ができるようにします。こうすることでスッキリとした空間になります」
軽くてかさばるものは
籠に入れて上段へ収納
インスタントラーメンやお菓子など、かさばるものは籠に入れて高い場所に配置。
「いざというときに便利なインスタントラーメンやインスタント味噌汁、大袋のお菓子などはキッチン上の籠に入れています。こうしておけば、空間が有効に使えるし、見た目もおしゃれな雰囲気になるので気に入っています」
続いて、防災の観点からも、ストックの収納術を教えていただきました。
何をどれだけストックする?
防災のための“ローリングストック”
ローリングストックとは、あらかじめやや多めに買っておき、使った分だけ買い足していくストック方法をいいます。食品や日用品のローリングストックをする中で欠かせないのが、災害時の活用。佐々木さんは、非常時に備えて、どのようなものをどこに保管しているのでしょうか?
「冷凍庫の中や食品棚にある常備品のストックは、置き場所に収まる量に合わせて買い足すようにしていますが、防災用のアイテムは逆の流れで考えています。まずは、どんな災害が予想され、どう逃げるのか、避難したときにどんなものが必要になるのかを洗い出します。
わたしが住んでいる地域は地震よりも豪雨の被害が起きやすいので、豪雨で床上浸水をしたときに2階へ避難したことを想定した備えをしています。川や海の近くに住んでいるのか、山の近くに住んでいるのか、住宅密集地に住んでいるのか、一軒家かマンションか、など、ご自宅の状況に合わせて、地震や台風などが起きたときに、どんな被害が予想され、どう避難していくのか。自宅で待機するならば、どんな備えがあるといいのかを考えてみるといいと思います」
重たい水は、
頑丈なBOXに縦収納
災害時に欠かせないものといえば、水。佐々木さんの自宅では、2L容器の水9本がすっぽり縦に収まる無印良品のポリプロピレン頑丈収納BOXを愛用しています。
「2Lの水は重たいので、上に引き出せる形で収納できると取り出しやすくて便利です。わが家は豪雨の被害に遭ったら2階へ避難するという経路ができているので、このBOXは2階で保管しています。また、消費期限を収納BOXの表面に記入して、いつでも目に入るようにしています。こうすることで、水の消費期限を常に把握できている状態になるので、期限が近づいたら使うようにしています」
飲料水の一部は
普段使いをしながらローリングストック
500mlのペットボトル飲料も玄関の横にストックしているそう。
「子どもたちがスポーツをしているのですが、自分の水筒だけでは足りなくなりそうなとき、ここから500mlのペットボトルを取って出かけられるようにしています。手前から取り出すようにして、買い足したものは奥に追加。こうすることで、防災時にはBOXごと2階へ持っていけるし、車に積み込むのも簡単。いざというときに備えつつも、日常使いでも重宝しています」
キャンプアイテムも
防災に活用
ガスや電気が止まってしまったときを想定してストックするレトルト食材や缶詰は、キッチンの棚には入れず、キャンプ用のクーラーBOXで保管しています。
「普段はほとんど食べることはなく、防災用にストックしておきたい保存食は、ここに入れて収納しています。カセットコンロやガスボンベ、鍋ややかん、簡単な調理道具もまとめて収納しておくことで、キャンプのときはこのまま持っていけるし、2階へ避難するときも車で避難するときも、持ち運びができて便利です。キャンプ用のアイテムは防災対策としても使えるので、どちらでも活用できるような状態にしておくと安心できます」
災害時を想定して
タオルとトイレットペーパーは数カ所にストック
タオルやトイレットペーパーは2階にもストック。
「豪雨の災害が多い我が家の場合は、2階に避難する段取りのイメージを家族で共有しています。被災時にどこで待機するのかを考えたとき、タオルやトイレットペーパー、除菌シートなどはまとめてあるといいと感じたので、収納BOXに入れて災害対策としてストックしています」
「また、防災用のリュックは、子どもたちが昔使っていた古くなったものやママバッグとして使っていたものを防災用に。リュックの横には着替えを数枚備えています。おそらく逃げるときは雨が降っているので、着替えが濡れないように衣類はチャック付きのビニール袋に入れています」
専用の防災グッズでなくてもOK!
なるべくあるもので備える
防災リュックに入れる物は、普段使いのもので揃えることでコストをカット。
「市販の防災リュックの中身を参考にしながら必要なものを備えていますが、100円ショップで買えるポーチやなるべく家にあるものを集めています。子どもたちにも自分で防災用のリュックにグッズを入れさせていて、ストック食材も含めて、3月11日と豪雨被害の増える前の5月末の2回、みんなで中身の点検をしています。古くなったものは普段使いに回して、新しいものに入れ替えるようにしています。年に2回、日程を決めて見直すことで、ムダにすることなくアップデートができていますね」
普段使いの食材は、キッチン収納スペース内の居場所を決めて、同じものを買い足すことで流れをキープ。防災グッズは、実際にどんな災害が起きやすくて、どう避難するのかをイメージして必要な量を決める。整理収納の観点と住む地域で想定される災害への対策を合わせて考えている佐々木さんのストック収納法。考え方や具体的なノウハウを参考にしたいですね。
Profile
整理収納アドバイザー / 佐々木奈美
整理収納アドバイザー、Life customize主宰。8年のアパレル勤務を経て独立。「家事は肩の力を抜いて、ラクをしながら丁寧に暮らしたい」この思いを大切に、インテリアを収納でカスタマイズしながら、時短家事、家事効率化を暮らしに導入。住まいが整うと思考もクリアになり、メンタルにも好影響があることを実感し、お客様にも感じてもらえるように活動をしている。夫と男の子3人と5人暮らし。
HP https://www.life-customize.com
取材・文=今井美由紀(Neem Tree) 撮影=佐々木奈美