クリスマスの象徴といえば「クリスマスツリー」。子どものときに飾りつけをした思い出がある人も多いのではないでしょうか。いまも毎年飾っているという人も少なくないかもしれませんが、大人だけの世帯やひとり暮らし世帯のなかには、もう何年も飾っていないという人もいるでしょう。
今回は、ツリーデコレーターとして活躍する池田かおりさんに、子どもはもちろん大人も楽しめるツリーデコレーションのコツをうかがいました。
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専用のオーナメント以外を使ってもOK
自由にデコレーションしよう
街中がクリスマスムードに包まれる12月。きらびやかなツリーデコレーションを見かける機会が増えてきました。
しかし一方で、「場所がない」「手間がかかる」「いまのお部屋に合わない」といった理由から、自宅にツリーを飾らない人も多いのではないでしょうか。「そんな方にこそ、ツリーを飾ることを楽しんでほしい」と池田さんは話します。
「ツリーのデコレーションは、自分の好きなものを自由に取り入れられるところが魅力。飾りつけは必ずしも専用のオーナメントである必要はありません。たとえば、お気に入りのぬいぐるみや小物を使ってデコレーションしてもいいんです。ぜひ、自分らしく飾りつけたツリーをお部屋に取り入れて、クリスマスを楽しみましょう」(ツリーデコレーター・池田かおり、以下同)
見え方にも気をつけて!
ツリーのサイズと置く場所選びのコツ
自分でデコレーションする室内用ツリーは40cm前後のものから、約3mと天井よりも高いものまでサイズはさまざま。飾りたい場所に合わせて選ぶことになりますが、その際に注意しておきたいポイントをご紹介します。
・卓上タイプ(40~120cm程度)
「テーブルやチェスト、テレビ台の上などに飾れるタイプ。ツリーを置くときのポイントは、視界に入ったときにツリーを見下ろす構図にならないようにすること。なぜならツリーの魅力は、下から見上げたときに最も引き立つからです。部屋のどの位置から眺めることが多いかを考え、ツリーのサイズや置く場所の高さを選びましょう」
・床置きタイプ(150cm以上)
「150cm以上のツリーは、基本的には床置きタイプに分類されます。数字だけ見ると大きく感じるかもしれませんが、ツリーは三角形なので、先端にいくにつれて空間の占有面積が小さくなり、サイズの割にすっきり見えます。日本の一般的な天井高は約240cmなので、大きなツリーを飾りたいという方は、思い切って210cm前後のツリーを選ぶのもいいと思います」
・壁掛けタイプ
「お部屋の壁や玄関ドアなどにも飾ることができるので、卓上タイプや床置きタイプを飾るスペースがない方にぴったりです。こちらも、目線の高さよりも上に設置しましょう」
プロが解説!
ツリーを美しく飾りつける6つのポイント
せっかく飾るなら素敵に仕上げたいもの。初心者がツリーを美しく飾りつけるためのポイントも教えていただきました。
1.ツリーの「テーマ」を決める
「飾りつけを始める前にテーマを決めておくと、物語性と統一感のあるツリーを作ることができます。たとえば、『ファッション』をテーマにして、ハイヒールやバッグなどのオーナメントを取り入れたり、『宇宙』をテーマにロケットやUFO、星などのオーナメントを取り入れたり。ほかにも色をテーマにして、同系色のオーナメントで統一するのも素敵です」
2.オーナメントは「ちょっと大きめ」を選ぶ
「クリスマスツリーといえば、『トッパー(ツリーの先端に飾る星型などの飾り)』を頂点に飾るイメージが強いですが、実はこれは必須ではなく、『グラスボール』というガラス製のオーナメントと電飾(イルミネーション)さえあれば、十分魅力的に飾れます」
「グラスボールに限らずオーナメントは、ツリーのサイズに対して少し大きめのものを選ぶこと。そして電飾は球数が多いものを使うこと。そうすると、よりインパクトのある飾りつけができます」
3.ツリーが「三角形」になるように整える
「ツリーの美しさは、ツリー自体をいかにきれいな三角形に整えるかで決まります。飾りつけをする前に、きれいな三角形のシルエットになるようにツリーの形を整えてあげましょう。このひと手間で、仕上がりが格段に美しくなります」
「ただ、生木のツリーを使う場合は調整が難しいので、枝が多少飛び出ていても大丈夫。その場合は、飛び出ている部分を除外した三角形のエリア内にオーナメントを配置しましょう。そうすればきれいにバランスを取ることができます」
4.「上から下へ」を意識して飾りつける
「オーナメントを飾りつける際は、サイズのグラデーションを意識することが大切です。小さめのオーナメントは、ツリーの三角形を崩さないよう上部に、大きなオーナメントは下部に配置すると、自然で美しいバランスになります。実際に飾りつけるときの手順も、上から下へ。そうすれば全体のバランスを確認しやすく、飾りつけがスムーズに進みます」
5.ツリーに統一感を出すポイントは「色」
「ツリー全体に統一感を出すには、洋服をコーディネートするときと同様、色の組み合わせが大切。たとえば黒のオーナメントをメインにしたいのであれば、反対色である白の小さな飾りをアクセントに加えると、メリハリが生まれます」
「同じ色味で揃えたいときは、単調にならないための工夫が必要です。さまざまなサイズのオーナメントを組み合わせたり、素材や質感などのニュアンスを変えたりすることで、ツリーに動きを加えることができます。同系色でグラデーションを作ってみるのも楽しいですね」
6.客観的にバランスを見ながら配置する
「飾りつけの作業はツリーの近くで行うことになりますが、時々、離れて全体のバランスを確認するようにしましょう。近くではオーナメントの間隔が均等に見えても、遠くから見るとバランスが崩れているということがよくあります」
「おすすめは『全体を写真に撮る』こと。人の目には見えているものを都合のいいように補正してしまう特性があるからです。直接ではなく写真で確認すれば、意図したバランスや形になっているかどうかを客観的に判断できます」
シンプルなお部屋にはどう飾る?
インテリアに合わせたツリーのアイデア
ツリーを飾ってみたら、お部屋の雰囲気に合わず浮いてしまったという経験がある人もいるでしょう。そうならないためにはどういったことを気をつければよいのでしょうか?
・インテリアの色味や質感に合わせてツリーを選ぶ
「日本で最も一般的なのが、松やもみの木を模したツリーです。その多くは鮮やかな緑なので、シンプルなインテリアややわらかな色味で統一されたお部屋に置くと、主張が強くなりすぎてしまうことがあります。
その場合は、白や淡い青緑色のツリーを選びましょう。これなら落ち着いた雰囲気に仕上がり、お部屋にも調和します」
「反対に、白を基調としたお部屋やモノトーンで統一されたお部屋の場合は、黒に近いダークトーンのツリーを選んで、アクセントにするのもおすすめです」
・お部屋のテイストに合ったツリーやモチーフを選ぶ
たとえば和室や、和モダン、ジャパンディなど和のテイストを取り入れたお部屋には、和の要素を全面に取り入れたツリーを飾るのがおすすめだそう。
「和風のお部屋には、生木や白いブランチ(枝)、または茶色い枯れ木を使ったツリーがとてもよく合います。イルミネーションを巻くだけでも、和の雰囲気にうまく溶け込む落ち着きと上品さが生まれますよ」
「オーナメントには、和のモチーフや和紙を使った小物を取り入れてみましょう。和紙素材の折り紙でサンタクロースや星を折ったり、折り紙で風船のような立体的な形をつくって、提灯のように飾ったりするのもおすすめです。ファミリー世帯なら、親子で一緒に折り紙を折ってツリーに飾れば、楽しい思い出作りにもなりますね」
・「統一感」よりも「華やかさ」を意識して
お部屋の雰囲気に合わせることも大切ですが、統一感を優先しすぎると、きれいにまとまりすぎて単調に感じる場合もあります。
「この時期にだけ楽しめる独特の華やかさも、クリスマスツリーの魅力。そのため、部屋に溶け込みすぎると、ツリーらしさが失われてしまいます。完全に部屋と同化させるのではなく、適度に差し色や目を引くポイントを加えて、ツリーの存在感を際立たせましょう」
完璧を求めすぎなくていい
自分だけのクリスマスツリーを楽しんで
ツリーを美しく飾りつけるためのテクニックは、ご紹介したもの以外にもまだまだたくさんありますが、池田さんは「何より大切なのは『楽しんで作ること』。これに尽きます!」と語ります。
「不思議なことに、つくっているときの楽しい気持ちは、ツリーの仕上がりにそのまま表れます。完成度の高さにこだわりすぎず、まずは飾りつけ自体を楽しみましょう。
できるだけ早い時期から飾りつけを始めて、毎日少しずつ手を加え、クリスマス当日に完成させるのもおすすめです。私自身仕事柄、一年中ツリーを飾っているので、だんだんと飽きてきてよく途中で配置を変えています。クリスマスに向けて、ツリーが少しずつ変化していく過程も素敵な思い出になるはずです」
「日本のクリスマスシーズンは海外とくらべるとかなり短いので、ぜひ早めにツリーの飾りつけをして、クリスマスシーズンを少しでも長く楽しんでほしいですね」と話す池田さん。
自分だけのツリーを完成させる時間は、クリスマスのワクワク感をより高めてくれるはず。しばらくツリーがご無沙汰だった人も今年は、お部屋でツリーを楽しんでみてはいかがでしょうか。
Profile
デザイナー・ツリーデコレーター / 池田かおり
2016年からクリスマスデコレーション専門ブランド「ナターレ」を展開。オーナメントのデザインからツリーのスタイリングまで手がける。主なデコレーション作品は、恵比寿ガーデンプレイスや新東京ビル、代官山蔦屋書店など。
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取材・文=粟屋芽衣(Playce)