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“ロスフラワー”から考えるエシカルな暮らし「フラワーサイクリスト」に教わる
ドライフラワーの作り方

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「ロスフラワー(もしくはフラワーロス)」という単語を聞いたことがありますか? これは、出荷基準に満たなかったり売れ残ってしまったり、「捨てられる運命にある花」を指す言葉です。実は最近、若年層を中心とした消費者の花離れに加え、新型コロナウイルスでイベントの中止が続いたことにより、このロスフラワーの数が非常に増えているといいます。

そんな状況を救うべく、日々活動しているのが「フラワーサイクリスト」という存在。ミュージカル俳優として活躍するかたわら、フラワーサイクリストとしても活動する春日希さんに、廃棄される花の現状や活動内容、さらに花を長く楽しみロスを減らすための、「ドライフラワー」の楽しみ方などを教えてもらいました。

「ロスフラワー」の実態

歓送迎会や誕生日などのお祝いの場で贈られるほか、レストラン・冠婚葬祭の装飾にも使われることが多い花。何気なく目にする機会も多いかと思いますが、一体どのくらいの量が廃棄されているでしょうか? 実は、花農家が出荷した花のうち、約3~4割は廃棄されてしまうのです。

その現状を知り、何か救う手はないかと活動を始めたのが、株式会社RINの代表を務める河島春佳さんです。捨てられる運命にある花を「ロスフラワー」と名付け、新たな価値を生み出し始めました。そして、その志に共鳴し、一緒に花を救う活動をしているのが、春日さんを含むフラワーサイクリストたちだといいます。

「私は元々、“エシカル”な暮らしに興味があって、『フードロス』や『リサイクル』などといったワードをよくチェックしていたんです。その流れで『ロスフラワー』という言葉を知り、『なんだこれは⁉』と物珍しさから調べ始めました。本業の舞台でいただく機会も多く、私自身が少なからず、お花に縁があったことも大きいですね。

それまでは“枯れたら捨てる”という選択肢しかなかったのですが、ロスフラワーの存在を通じて、実は“花は再利用できる”ということに気が付きました。『お花には想像以上にたくさんの可能性があるのかもしれない』。そう感じたことが、フラワーサイクリストになったきっかけです」(春日希さん、以下同)

花束をもらったら部屋に飾り、枯れた部分が目立ってきたら捨てる、という人が多いかもしれません。
花束をもらったら部屋に飾り、枯れた部分が目立ってきたら捨てる、という人が多いかもしれません。

「フラワーサイクリスト」は実際、何をしている?

フラワーサイクリストの方々は、一体どんな活動をしているのでしょうか。

「主には、RINが主催するイベントの運営や、ロスフラワーの認知を広めるための情報発信を行っています。そのほか、アロマワックスサシェやハーバリウムなど、ロスフラワーを使った作品を制作したり、廃棄されそうなお花の情報をもらったら、フラワーサイクリストの仲間に呼びかけて引き取ってもらえる人を探したり……。“お花のリサイクルをする人たち“と覚えてもらうのが良いかもしれません」

春日さんが作ったアロマワックスサシェ。ドライフラワーからポロポロと落ちてしまった花びらを再利用しています。
春日さんが作ったアロマワックスサシェ。ドライフラワーからポロポロと落ちてしまった花びらを再利用しています。

フラワーサイクリストの大切な仕事のひとつだという、ロスフラワーへの理解を広める活動とは、具体的にどういった内容なのでしょうか。

「友人にロスフラワーで作られたスワッグ(花や葉を束ねて壁に飾る飾り)やアクセサリーをプレゼントしたり、ミュージカル俳優としてお花にまつわる歌を歌ったり、ロスフラワーについて説明するきっかけ作りを積極的に行っています。すぐに大きな変化が生まれるような活動ではないですが、私たちの生活に身近な存在だからこそ、まずはお花の大切さを知ってもらうことが大事だと思っています。そうすることで、一輪だけでも買ってくれる人が増えたらうれしいです。みんながお花を楽しむだけで廃棄が減り、結果的に現状を変えることにも繋がるって、すごく素敵なことですよね」

【関連記事】ボタニカルデザイナーに教わる「ハーバリウム」を手作りする方法

一輪から始める、花のある暮らし

花は特別な日に買うものというイメージがありますが、そんなに身構えなくても大丈夫。春日さんは「まずは一輪、買ってみて欲しい」と話します。

「近所のお花屋さんに寄ってみて、キュンときたものがあれば買ってみてください。花瓶がなければグラスでも空き瓶でも、お家にあるもので気軽に楽しんでもらえるとうれしいです。あとは、お友達に渡す手土産やプレゼントに一輪添えるのもおすすめです。とても粋な贈り物になると思いますよ」

フラワーサイクリストの春日希さん。
フラワーサイクリストの春日希さん。

とはいえ、「お花を買ってもすぐに枯らしてしまう」と躊躇する人も多いかもしれません。そこで試してほしいのが、ドライフラワー作りです。ドライフラワーと聞くと作るのが難しそうな気がしますが、実はとっても簡単! ズボラな人にもピッタリなんです。

早速、春日さんに作り方やコツをレクチャーしてもらいましょう。

ドライフラワーを作ってみよう!

【準備するもの】

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・花(好きな花でOK。今回は、左からカーネーション2色、ヒペリカム、バラを用意)
・輪ゴム
・紐
・S字フック

「初心者の方には、カスミソウ・スターチス・カーネーション・ユーカリなどがおすすめです。菊やコスモスなどの花びらが細いものは、乾かす過程で散ってしまうことが多く、少し難しいかもしれません。また、少しずつ色が抜けてしまうので、できるだけ色の濃いものを選んだ方がきれいな仕上がりになります」

【作り方】

1.生花の前処理
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束ねた時に邪魔にならないよう、茎についているとげや葉っぱを切ります。

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用途に合わせて必要な長さに切っていきましょう。スワッグを作るなら飾る時にちょうど良い長さに。アロマワックスサシェやハーバリウムに使う場合は、あらかじめ短く切っておくと、後々作業しやすくなります。

2.花を束ねる
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好きな組み合わせで束ねていきましょう。たくさん束ねすぎると渇きにくくなってしまうため、数本ずつに分けて束ねるのがポイントです。また、花同士が重ならないように少しずらすことで、乾き方にムラが出るのを防ぎます。

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もし1本の茎から複数のお花が咲いているものがあったら、根本を切って重ならないようにします。

3.輪ゴムで束ねて、紐を結ぶ
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花は乾燥すると茎がしぼんでしまうので、乾かしている途中で抜けないように、きつめに輪ゴムで束ねましょう。

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つるした時にちょうどいい長さになるよう調節しながら、紐を結びます。

4.吊るす
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日光があまり当たらない、通気性の良い場所に吊るしましょう。夏はエアコンの下、冬は換気のために開閉する窓の近くなど、できるだけ風の当たる環境がベスト。1週間くらい乾かしたら完成です。

「乾かす過程も楽しめるのがドライフラワーの魅力! 毎日朽ちてくる様子を見ながら『どんな色になるんだろう』と想像しながら楽しんでみてください」

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「吊るしたまま飾っておくのも良いですが、花瓶に入れるともっと可愛くなります」と春日さん。お部屋の雰囲気に合わせて、自分なりにコーディネートしてみてはいかがですか。

日常の“無駄”を見直すきっかけに

「フラワーサイクリストとして活動し始める前は、お花は枯れたら捨てるものだと思っていました。しかしロスフラワーについて勉強し、ドライフラワーなどの活用方法を知ることで『本当はもっと長く続く“命”だったんだ』って気付かされたんです。それを機に、食べ物は? 使っているお水は? 出しているゴミは? というふうに、他のものにも目を向けるようになりました。もっとたくさんの人たちが、お花をきっかけに自身のライフスタイルを見直すようになったらうれしいですね」

Profile

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フラワーサイクリスト / 春日 希(かすが まれ)

ミュージカル俳優を本業に、地球に優しいエンターテイナーとして環境保護活動にも励む。2019年からRIN公認のフラワーサイクリストとして活動し始め、Twitter・Instagram・YouTubeなどで、ロスフラワーに関する情報発信を行う。
「RIN」HP
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取材・文=横塚瑞貴(Playce) 撮影=真名子