SUSTAINABLE 私たちを取り巻くSDGs

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環境にも人・動物の健康にも配慮。話題の「ヴィーガンネイル」って何?

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マニキュアとも呼ばれる「ネイルポリッシュ」。最近では、ビューティ業界でも「サステナビリティ」を重視しようという考え方がトレンドとなっており、このネイルポリッシュなどネイルケア製品を扱う企業やブランドでも、環境や人権に配慮した取り組みが進みつつあります。そのひとつが「ヴィーガンネイル」です。

環境問題やSDGsに関心を持ち続け、サステナブルな暮らしなどをテーマに活動しているエコライター・エディターの曽我美穂さんに、サステナビリティの観点からネイルを中心としたビューティ業界を取り巻く現状と、ヴィーガンネイルの特徴、いま買えるヴィーガンネイルブランドについて、教えていただきました。

サステナビリティに配慮した化粧品とは?

2015年、サステナブルな(持続可能な)社会の実現に向け、国連のサミットで、2030年までに世界各国が取り組むべき17の目標「SDGs(持続可能な開発目標)」が掲げられました。この中には、環境問題や貧困、経済など幅広いジャンルの目標が含まれており、ビューティ業界においても無視することのできない課題がたくさんあります。

では、化粧品ではSDGsにどのようなアプローチをしているのでしょうか? 曽我さんは、「製造段階から環境に配慮することが大切」と話します。

「化粧品は、製造段階から動物実験や工場から排出される有害な物質の処理などの課題を抱えています。また、深刻化している海洋プラスチック問題のことを考えると、容器に使用するプラスチックの使用削減への取り組みも重要です。」(曽我美穂さん、以下同)

この問題に対して、企業はどのような取り組みを行なっているのでしょうか?

「動物実験を行わないことを『クルエルティフリー』と呼びますが、今これを掲げている企業が増えていて、認証マークを製品に表記しています。また、プラスチック容器の不使用や、自然エネルギーの活用、量り売りなどの取り組みをしている企業もあります」

取り組みの実例を、曽我さんに教えていただきました。

【AVEDA(アヴェダ)】
・プラスチックボトルのリサイクル使用。
・製造過程で動物実験を行わない。
・すべての製品をヴィーガン素材のみで製造。

【NEAL’S YARD REMEDIES(ニールズヤードレメディーズ)】
・絶滅の危機に瀕している、ボスウェリアサクラ種のフランキンセンス精油について、種の存続を図るべく、植樹から栽培、精油抽出に至るまでの全工程を管理する独自の取り組み「プロジェクトフランキンセンス」を実施。
・店舗の運営において自然エネルギーを活用。
・表参道の店舗は100%自然エネルギーのみで運営。

【LUSH(ラッシュ)】
・空容器回収率100%を目指したプログラム「BRING IT BACK」を実施。

LUSHのプログラムでは、空の容器を店舗に持っていくと、対象容器1つにつき30円を買い物に使う事ができ、5つでフレッシュフェイスマスクと交換できるそう。もちろん、「返却」した容器は新たなLUSHの製品に生まれ変わるというわけです。

一方、消費者の環境意識も少しずつ高まってきているようです。2022年8月10日~15日に、化粧品や美容フードなどを中心とした美容コンサルティングを提供する株式会社EcoVia Intelが実施した「サステナブル化粧品に関する実態調査」では、「サステナビリティという言葉をよく聞く」と回答した消費者が22%と昨年度の18%より4ポイントアップ。また「環境配慮に対する具体的な策については「なかなか実行できていない」と回答した人が昨年度は全体の74%だったのに対して、今年は55%と低下し、意識の変化を着実に感じられる結果となっています。

自分の体も守るために。
知っておきたいネイル成分の有害物質

このように企業も消費者もサステナブルな化粧品への意識を高めているなか、消費者として私たちが知っておくべきこととは何でしょうか? 曽我さんは、「ネイルの有害物質」をそのひとつに挙げます。ネイルの成分に有害物質が含まれているということは、近年ニュースでも取り上げられたことがあるので知っている人も多いでしょう。では、具体的にどのような物質が「有害」なのでしょうか?

曽我さんによると、「とくにリスクが高いのは、トルエン、フタル酸ジプチル、ホルムアルデヒド」だそう。購入前にネイルの成分表を見て、確認してみましょう。

【ホルムアルデヒド】
・発がんリスクがもっとも高い化学物質として、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)により、「グループ1(人に対する発がん性が認められる)」に指定されている。
・日本では「化粧品」への配合が禁止されている。

【トルエン】
・ラッカーなどの塗料を薄める有機溶剤である「シンナー(うすめ液)」として使用される。
・過剰に摂取すると、腎臓や肝臓に損傷を与えるリスクがある。
・生殖機能、または胎児への悪影響のおそれがある。

【フタル酸ジプチル】
・アレルギー性皮膚反応を起こすおそれや、呼吸器への刺激のおそれがある。
・生殖機能や胎児への悪影響の危険性も指摘されている。
・欧州を中心に規制が高まっている。

自然由来の爪にも環境にも配慮した
「ヴィーガンネイル」とは?

こうした懸念を払拭し人体にも環境にも配慮する取り組みのひとつに「ヴィーガンネイル」があります。 ヴィーガンネイルとは、上記の有害物質のほか、動物由来の成分を使用せず、動物実験を行っていないクルエルティフリーのネイルのこと。その中身も容器も、できるかぎり製造、廃棄の際に自然に戻っていく素材を使う事を目指しています。

「ヴィーガンネイルはSGDsの17目標のうち3つの目標にかかわりがあると思っています」と曽我さんは言います。その目標とは以下の3つ。

【ヴィーガンネイルとかかわりの深いSDGs目標】
目標12 つくる責任つかう責任
目標14 海のゆたかさを守ろう
目標15 陸のゆたかさも守ろう

SDGsの17目標 外務省「持続可能な開発目標(SGDs)と日本の取り組み」より

「とくに、目標12は大切なことだと思います。製造過程においてできるかぎり自然由来の成分を使うこと、そして動物実験を行わないことを目指しているヴィーガンネイルは、まさに目標12で掲げる『つくる責任』を大切にしているといえるでしょう。
『つかう責任』は、私たち消費者が意識すべき点です。次々にネイルを買って結局最後まで使い切れなかった、なんてこともあるかもしれませんが、廃棄の際に環境への負担を少なくするためには、そうしたことは避けた方がいいですね。瓶も各自治体の分別方法を守って、しかるべきかたちでリサイクルされるように廃棄することが大切です」

ヴィーガンネイルを選び、さらに責任を持って使い、廃棄することが求められています。

日本で手に入る注目のヴィーガンネイル3選

オシャレを楽しみながらサステナブル社会の実現へアプローチするヴィーガンネイル。曽我さんが今注目しているヴィーガンネイルブランドのなかから、比較的日本でも手に入りやすいブランドをピックアップしていただきました。

・10フリーのヴィーガンネイルで豊富なカラバリが楽しめる「ZAO」

「じゃがいもやとうもろこしなど野菜由来の成分を74%~84%使用したZAOのヴィーガンネイルは、体に悪影響を与える可能性のある10の成分(パラベン、フタル酸ジブチル、トルエン、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド樹脂、キシレン、ロジン、カンファー、スチレン、ベンゾフェノン)を含まないことを明記しています。豊富なカラーバリエーションも魅力のひとつで、絶妙な色合いのネイルを楽しめます」

・フランス発の美しい輝きと仕上がり「Nailmatic」

「地産地消のために工場近くのビジネスパートナーとともに生産を進めていること、動物実験をおこなっていないこと、そして安心・安全な素材を使っていることなどを公約としているブランドです。ネイルは、植物由来の成分を最大84%まで配合していて、環境負荷が低い処方でありながら、伸びの良いテクスチャーや発色の良さなど従来のネイルの特性にもこだわっています」

・圧巻!400色以上のラインナップ展開が魅力の「ZOYA」

「米国発のネイルブランドで、1992年の発売以来トルエン、ホルマリン、フタル酸ジブチルなど人体に害があるとされている成分を極力使わないヴィーガンネイルを作っています。何と400色以上ものラインナップが展開されているので、眺めているだけでも楽しくなりますね。日本では東急ハンズやロフトなどで購入できます」

もうひとつ、「ヴィーガン素材ではないかもしれませんが……」と紹介していただいたのは、ホタテの貝殻を再利用したという「サステナブルネイル」です。

・ホタテの貝殻からできた水性ネイル「CYAN」

「青森県にある山神という会社が展開している、ホタテの貝殻を使用して作られた、自然素材成分を含むネイルを展開しているブランドです。青森県陸奥湾で養殖されているホタテから排出される、約5万トンもの貝殻を再利用するという試みからスタートしたそうです。環境に配慮した7フリー(トルエン、フタル酸ジブチル、カンファー、キシレン、ホルムアルデヒド、スチレン、パラベン)を掲げています。また、爪が弱くて従来のマニキュアやジェルネイルを付けることが難しい人でも使えることを目指して、作られているそうです」

身近なちょっとしたことから意識して、アクションを起こしてみる。そのきっかけは、“我慢”ではなく積極的に取り組める気持ちをもてることがおすすめです。第一歩として、ヴィーガンネイルを使って、おしゃれをしながら地球環境を意識してみてはいかがでしょうか。

Profile

エコライター・エディター / 曽我美穂

子どもの頃から環境問題に関心を持ち続け、英語学校の広報を勤めながらライター活動を開始。2008年にエコライター・エディターとして独立し、現在は雑誌やウェブサイトの編集、撮影、執筆や、企業のCSR支援をおこなっている。主なテーマはサステナブルな暮らしやSDGs、環境問題。

 

構成・取材・文=会田香菜子(@Living編集部)