贈り物をするときに欠かせないラッピング。素敵にラッピングされたギフトは、もらったほうも渡すほうも心がときめきます。ところが最近では、プラスチックごみや過剰包装といった環境問題とも向き合わなければならないのが現状です。
そこで今回は、家にある紙モノでできるギフトラッピングを紹介しましょう。身近な素材を使ったラッピングを考案されている“包装作家”の正林恵理子さんに、バレンタインに実践したい、サステナブルなラッピングを教えていただきました。
CONTENTS
バレンタインにおすすめ!
サステナブルなラッピング5選
家にある紙モノや使い切れずに余ってしまった素材を使って簡単にできるギフトラッピングをご紹介していきます。ラッピングをより美しく仕上げるためのポイントやアレンジについても、それぞれ教えていただきました。
封筒1枚でいい!
折るだけでできる舟型の袋
「封筒1枚あればできるので、初心者の方におすすめです」と正林さんが教えてくれたのが、封筒を折って作る舟型の袋。底にマチを作ることで袋の幅が広がり、形が安定します。個包装のチョコレートやパウンドケーキといったお菓子はもちろん、ちょっとした小物を入れたいときにも便利です。
【材料】
・封筒1枚(今回は洋形2号を使用)
【使用する道具】
両面テープ、ハサミ
【作り方】
1.封筒の下を折る
封筒の下から2センチくらいのところに折り目を付けます。折り幅の2倍の長さがマチになるため(2センチ幅で折るとマチは4センチ)、入れたいものの大きさによって好みで調整を。ただし封筒の下半分の範囲で折るようにしましょう。また、折り目は爪でしごくようにしながら両面に付けるときれいに仕上がります。
2.折り線に沿って組み立てる
折り目を付けたら底を広げ、折り線に沿って組み立てていきます。両端の三角の部分を両面テープで底に貼り付けたら、完成!
【アレンジ例】
海外の古い印刷物をコピーして作ったオリジナルのラベルを貼りました。ラベルを両面テープで貼り付けるときに、上の部分だけ貼らずにあけておくと、メッセージカードなどが入るポケットに!
「蚤の市のほか、雑貨屋やフリー素材で手に入る海外の古い領収書や絵葉書、手紙などの一部をコピーし、切って貼るだけで、オリジナルのラベルがすぐに作れます。そのほか、袋の口の部分に穴あけパンチで穴をあけてリボンや紐を通してもかわいく仕上がりますよ!」
好みの大きさにアレンジしやすい、
紙袋で作るふた付きボックス
続いてご紹介する紙袋2枚を使って作るボックスは、パウンドケーキ、マドレーヌ、フィナンシェなどのお菓子を入れるのにぴったり。使う袋のサイズや袋を折り込む回数を変えることで、ボックスの大きさや高さを変えることができます。
【材料】
・紙袋2枚
・底板用の段ボールや厚紙(あれば強度が増しますが、なくてもOK)
【使用する道具】
(底板を敷く場合)定規、カッター
【作り方】
1.紙袋を折る
紙袋を半分より3ミリ程度端から離して折ります。折り目は爪でしごくようにして、両面にしっかりと付けましょう。
2.上の部分を内側に折り込む
折り線に沿って袋の上半分を内側に折り込みます。紙がぐしゃっとなっても気にせず、思い切って折り込んでしまってOKです。
3.1・2の工程を繰り返す
1・2の工程を繰り返し、さらに折り込み、半分の高さの箱を作ります。四隅もきちっと折り目を付けて形を整えましょう。入れるものに合わせて、もう一度折っても!(折り込む回数が増えると側面の強度が増します)
4.もう1枚の袋も同じように作る
もう1枚の袋も1~3の工程で同じように作ります。底板を敷く場合は、箱の底の縦横の長さよりそれぞれ5ミリくらい小さくなるようにカットして、底に敷きましょう。2つの箱をふたと箱で組み合わせたら完成です!
【アレンジ例】
絵本の一部を印刷して切り取り、ラベルに。紙袋の底に入っていたサイズ表記などの文字も上手に隠すことができました。
「絵本、ポストカード、布、地図、パッケージの一部分などを印刷して切り取れば、オリジナルのラベルや包装紙になります。『これは使えそう!』と思ったものは、ぜひデコレーション素材として取っておいてください!」
ホームパーティーでも大活躍!
紙皿で作る丸い箱
続いては、使い切れずに余ってしまいがちな紙皿を使ったラッピングをご紹介。タルトやキッシュなどの円形のものはもちろん、おすそ分けやランチを入れるのにもおすすめです。
「紙皿はそのままお皿として使ったり、持ち帰り用の容器として使ったりできるので、プレゼントだけでなく、ホームパーティーやピクニックでも活用できるラッピングです」
【材料】
・紙皿2枚(コーティングなどがされていない、薄めのもの)
・お好みのワックスペーパーやレースペーパー、折り紙など
【使用する道具】
(ワックスペーパー、折り紙を使用する場合)鉛筆、ハサミ、両面テープ
【作り方】
1.紙皿のフチを内側に押す
まずは紙皿のフチを餃子の皮のように折り、ヒダをつけていきます。折り幅は、親指の第一関節(約3センチ)くらいが目安。一周ぐるっと折り目を付けたら、指の腹と爪を使ってもう一度しっかりと折り目を付けます。
2.もう一枚の紙皿も同じように作る
もう一枚の紙皿も1と同じように作ります。写真のような形になっていればOK。
3.箱になる紙皿のフチを立たせる
2枚の紙皿のうち1枚(箱になる方)は、1で立たせた根元の部分を3ミリくらい内側へ押し付けるようにしてさらに折り目を付けます。(箱のサイズを少しだけ小さくすると、ふたがしやすくなります)2枚の紙皿を組み合わせたら完成!
4.ワックスペーパーなどをカットし、紙皿の表面に貼る
仕上げに、紙皿のサイズに合わせてワックスペーパーなどお好みのペーパーをカットし、上にかぶせる紙皿の表面に貼り付けます。さらに、贈り物を入れた後は、上下の紙皿が離れないよう輪ゴムや紐でとめておくと安心です。
【アレンジの例】
上下の紙皿はリボンで結ぶだけでも十分素敵ですが、もうひと工夫すればより洗練された雰囲気に。正林さんとっておきの、空き缶のプルトップを使ったベルト風のアレンジをご紹介します。
まずはプルトップを缶から外し、切り口がある方の穴(缶を開けるときに指をかけない方)にリボンを通し、ギザギザした切り口を覆い、リボンの端を両面テープで留めます。
リボンを箱に掛けたら、先ほどの穴に下からリボンを通し、もう一つの穴に上から通してベルトのように整えたら完成!
「このアレンジをするときには、1~1.3センチ幅のリボンを使うのがおすすめです。また今回、リボンとワックスペーパーの色を赤で合わせたのもポイント。アレンジに使う素材の色を揃えると全体がまとまって見えます」
フラワーアレンジメントにも使える、
牛乳パックバッグ
次に紹介するのは、牛乳パックと紙袋の持ち手で作るバッグ。お菓子や小物を入れるのはもちろん、水に強いので小さめのフラワーアレンジメントにも使えるラッピングです。
【材料】
・牛乳パック(上部分はカットするため、容量は気にしなくてOK)
・紙袋の持ち手2枚
【使用する道具】
カッター(またはハサミ)、両面テープ、油性ペンなど(牛乳パックに線を引けるものであればOK)
【作り方】
1.牛乳パックに線を引く
牛乳パックの下部分に紙袋の持ち手を合わせて、持ち手の上部分に沿って線を引いていきます。
2.線に沿って牛乳パックをカットする
全面に線を引いたら、カッターやハサミで線に沿ってカットしていきます。
3.紙袋の持ち手に両面テープを貼る
紙袋の持ち手の片面に両面テープを貼ります。両面テープは、牛乳パックに貼るときにはがれないよう全面に貼るのがポイント。もう一つの持ち手も同じように貼りましょう。
4.牛乳パックに紙袋の持ち手を貼る
牛乳パックの中央に紙袋の持ち手の中央が重なるように貼り、余った持ち手の端はそのまま側面に沿わせて貼り付けます。向かい側も同じように貼ったら完成!
【アレンジの例】
黒い画用紙をカットして貼り付けると、黒板のようなメッセージボードに。白いペンやチョークを使って文字を書くとおしゃれに仕上がります。
さらに、持ち手部分に小さなリボンを結び、アクセントをプラスしました。
「黒い画用紙の代わりに、駐車券やチケットの裏などを使っても良さそうです。自宅で余っているもの、いつもは捨ててしまうものを、何か使えないかな? と考える時間も楽しいので、ぜひ家の中をちょこっと見回してみてください!」
キッチンペーパーの芯で作る、
ピローボックス
最後は、タブレットタイプのチョコレートやアクセサリーなどの小物を入れるときにおすすめの、ピローボックスの作り方をご紹介。少し手間はかかりますが、キッチンペーパーの芯でできているとは思えない、本格的なボックスに仕上がるのでぜひチャレンジしてみてください。
【材料】
・キッチンペーパーの芯 1本
・お好みのペーパー(今回は15センチ角の折り紙1枚を使用)
【使用する道具】
定規、カッター、丸い小皿、鉛筆、ハサミ、両面テープ、スティックのり
【作り方】
1.芯をつぶして平らにする
キッチンペーパーの芯をつぶして平らにします。定規などを使ってしっかりと折り目を付けましょう。
2.芯をカットする
入れるものの大きさに合わせて芯をカットします。今回のように15センチの折り紙を外側に巻き付ける場合は14センチにカットしましょう。
3.丸い小皿を使って線を引く
写真のような丸い形の小皿を使って、芯の端に弧を描くように線を引きます。
4.線に沿ってカットする
両端に線を引いたら、ハサミでカットしていきます。
5.カッターで筋を入れる
両端を丸くカットしたら、先ほどの小皿を3とは逆の向きで端に合わせ、切らないように注意しながら、両端・両面の計4カ所にカッターで筋を入れていきます。
6.芯に折り紙を巻き付ける
芯の下に折り紙を置き、5で入れた筋の少し内側に両面テープを貼ります。両面テープを写真のように2カ所に貼ったら、芯の端に片方を貼り、引っ張りながらぐるっと巻いて貼り付けましょう。
7.両端の折り紙をカットする
折り紙を巻き付けたら芯のカーブに沿って両端の折り紙をカットします。
8.両端の折り紙を芯に貼り付ける
両端の折り紙を芯に貼り付けたら完成! スティックのりを使うと作業がしやすく、見た目もきれいに仕上がります。
【アレンジの例】
パッケージの一部を切り取った、オリジナルのラベルを貼ってアレンジしました。ラッピングがコンパクトなので小さめのラベルでも十分なワンポイントに!
さらに、手芸用のゴムで輪を作って斜め掛けにしました。
「黄色と反対色の青系をプラスし、ボックスの形とドット柄の曲線にゴムの直線を加えました。異なる色とデザインを少し足し、変化をつけることでおしゃれ感が増します。手芸ゴムの代わりにリボンや麻紐を使ったり、紐にタグを通したりしても!」
おしゃれにラッピングするコツは?
今回ご紹介したラッピングは家にあるもので気軽に始められますが、材料選びやアレンジが難しそう……と感じる方もいるはず。そこで正林さんに、初心者でもラッピングを素敵に仕上げるためのコツを教えてもらいました。
「ラッピングの材料やアレンジに使う素材は、ラッピング全体のテイストをイメージしながら選んでいくのが良いと思います。例えば、大人っぽい雰囲気にしたいなら、クラフト素材や落ち着いたトーンの色を選んでみる。そうすると、少し派手なデザインや柄を入れたとしても、イメージに近いものに仕上げることができるはずです。
色の組み合わせに悩むときは、単色や同系色、反対色を組み合わせて1~3色でまとめたり、封筒や袋の地の色をラベルや紐などのアレンジの一部に入れたりすると、統一感が生まれ、洗練された印象に見せることができます」
「また、ラベルやリボンなどのアレンジは2~3個を目安に入れるのがおすすめ。ボックスの大きさなどにもよるかもしれませんが、あまり入れすぎると野暮ったくなってしまうので、『足しすぎない』ことも意識するといいと思います」
「こういうラッピングもアリなんだ!」と気軽にチャレンジしてほしい
そもそも正林さんがサステナブルなラッピングに関心をもったきっかけを聞きました。
「私が『エコ』を意識したラッピングを始めたのは、自分で作ったお菓子を、お金をかけずにかわいくラッピングしたいと思ったことがきっかけでした。でも最近は、それだけではエコとは言えないんじゃないかと考えるようになって……。例えば、安価だからと言ってラッピングの材料を大量に購入したり、プラスチック素材のものばかりを使ったりすることは、本当にエコなのかとか、疑問に思うことが増えてきたんですよね。そこから、自宅で余っている紙モノなど、身近なものを上手に活用したラッピングを考えるようになりました」
では、サステナブルなラッピングの魅力はどこにあるのでしょうか?
「私がこのラッピングにハマった大きな理由は、エコ・ラッピングでプレゼントをすると、中身を見る前から、ラッピングだけでとっても喜んでもらえるから。身近にあるけど、普通はラッピングに使わないようなもので包んであることに驚いてくれて、お金もかからず気軽にできそうだから『私もやってみよう!』という気持ちになるみたいです。そして、その人なりの個性あふれるラッピングで、お返ししてくれたりするんですよね。リユース素材や余ったものなどを活用したラッピングは、自分の手でアップサイクルをするということでもあります。エコ・ラッピングでプレゼントすることは、無理なく、楽しみながら、サステナブルな包装を広めていくことができるのも魅力だと思います」
ぜひ、多くの人にやってみてほしい、と話す正林さん。
「今回ご紹介したラッピングは、環境のために皆がやらないといけないものではなくて、ラッピングの一つの選択肢として考えてもらえたらうれしいです。『家に余った紙モノがあるからちょっとやってみようかな』『こういうラッピングもアリなんだ!』という気軽な気持ちで、ぜひ楽しくチャレンジしてみてほしいなと思います」
バレンタインデーだけでなく、日頃のちょっとした贈り物や手土産にも、活用していきたいですね。
Profile
包装作家 / 正林恵理子
お菓子作りを学ぶため、パリに1年留学する。その時に出会った暮らしの中にあるかわいらしい包みに感動し、帰国後、身近な素材を使って新しい包み方を考案するようになる。現在は、ワークショップなどでエコ・ラッピングを広める活動を行っている。 著書に『エコ・ラッピング』『もっとエコ・ラッピング〜思わず誰かにプレゼントしたくなる』(大和書房)ほか。
Instagram
※「包装作家」は正林恵理子さんの登録商標です。
取材・文=土居りさ子(Playce) 撮影=泉山美代子