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欲しいものを必要な分だけ。注目の「バルクショップ」を
賢く活用する方法

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「バルクショップ」という単語を聞いたことがあるでしょうか? 一言で言えば、量り売りの店のこと。食料品や日用品を、欲しい分だけパッケージフリーで買えるのです。このスタイルは古くから存在しますが、それが昨今注目を浴びています。

バルクショップが注目される理由と、メリットとは? また日本、そして地域社会で果たす役割にいたるまで、北海道ニセコエリアでバルクショップ『Pyram Organics & Plants(ピラムオーガニクスアンドプランツ:以下ピラム)』を営む小長井真樹さんに解説いただきました。

必要なものを、必要なときに、必要な分だけ買う。
バルクショップの魅力

オーストラリア・メルボルンのオーガニックストア「テラマドレ」の店内。

「バルク」とは、直訳すると大きさ・容量を意味する言葉。流通や小売の分野で、「バラ売り」を指します。バルク品の対義語は「パッケージ品」。つまり「バルクショップ」とは、バラ売りを行う店、店舗が仕入れた商品を消費者が持参した容器に必要な分だけ詰めて購入できる、量り売り専門店のことをいいます。これにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

「この買い方は、一般的なパッケージ商品と比較すると、梱包材を用意する必要がないのでコストカットにもつながる、というメリットがあります。また使い捨てられるビニール袋や包装紙などのごみが出ないため、環境への負荷を大幅に減らせるのです。近年バルクショップが増えている一因に、2015年国連サミットで持続可能な開発目標SDGsが採択され、サステナブルな暮らしに国際的関心が高まったことがあると言われています」(『ピラム』店主・小長井真樹さん、以下同)

バルクショップは、環境先進国と言われるドイツや北欧諸国はもちろん、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでもすでに一般化。小長井さんも、長い海外生活のなかで日常的にバルクショップを利用していたそう。

「アメリカの大学を卒業したあと、カナダやオーストラリアでも暮らしていた期間が長いのですが、どこでも身近なところに、オーガニック食材が売られているバルクショップがあったんです。大きなスーパーでも、店の一角にオーガニック食材が量り売りスタイルで売られているのは普通のこと。都市部に限らず、田舎でもそういうお店が1軒はありました。海外では、選択肢のひとつとしてオーガニック食材の量り売りが身近に存在しているんです」

ニセコに移住したとき、海外の移住者が多い地域でありながらバルクショップがないことを残念に思っていた小長井さん。ないなら自分で始めようと思いたち、2019年にピラムをスタートさせました。

食料品から日用品まで
バルクショップで手に入る商品

ピラムでは、さまざまな商品を量り売りのスタイルで購入することができます。オーガニックのナッツやドライフルーツ、オリーブオイルや菜種油、醤油や酢などの調味料、スパイス、小麦粉、北海道産のお米やそばの実、生はちみつ、生分解性100%の洗濯洗剤や食器洗剤など、種類も多彩。現在、国内にあるバルクショップではどのようなものが売られているのでしょうか?

「やはりオーガニックの食料品を取り扱っているお店は増えていますね。また、お米や野菜、調味料などはもちろんですが、洗剤の量り売りを専門にしているお店、小麦粉やシロップ、チョコレートなどの製菓材料を専門に取り揃えているお店も。日本でもバルクショップの需要は伸びているのではないでしょうか」

小長井さんは、バルクショップを運営するにあたり、販売する商品をどのように選んでいるのでしょうか?

「大切にしているのは、地域の方が必要とする日用品を揃えていくこと、そしていま自分が暮らしている北海道の生産者さんとつながりながら、地元の商品を取り扱うことです。“地産地消”を目指すことで、無駄な梱包も輸送コストも削減され、環境へのインパクトを大幅に減らすことにつながります量り売りのお店が地域の需要に応えることで、消費者が必要なものを必要なときに、浪費や無駄のないスタイルで購入できることは、とてもすぐれた買い物のスタイルだと考えています」

容器持参でお店へ。
バルクショップでの買い物方法

バルクショップでは、どのように買い物をするのでしょうか?

「まず、商品を入れる容器を持参してお店に行くのが基本スタイルです。当店では、什器に入っている穀類やグラノーラ、調味料や洗剤なども、持参していただいた容器に自分で詰め、風袋を引いた中身の重さだけで購入いただけます。また、地元の人から使用済みのガラス瓶を回収して消毒し、ドネーションボックスに置いて無料提供も。万が一容器を忘れた場合でも、自由にこちらの容器を利用していただけます。ガラス瓶を提供してくれた方は自宅のゴミを削減できるし、買い物に来た方もゴミを出さずに買い物ができるという、環境保全のためにも効果的な方法ではないでしょうか」

バルクショップ愛用者の活用方法

ピラムのリピーターは普段、量り売りで購入した商品をどのように暮らしの中で活用しているのでしょうか?

「ニセコエリアは外国出身の方も多いので、量り売りのスタイルに慣れた常連さんが多いですね。オートミールやシリアルなど、主食となるものをキロ単位でまとめ買いされていきます。ほかには、スパイスやハーブなど、日々のお料理に使用する食材をリピート購入される方が多いです。基本的には暮らしで日常的に食べるもの、使うものをご購入いただいています」

とはいえ、日本ではまだ、入店してからどうしたらいいのか、戸惑う人は多いそう。

「日用品を買うというより、ナッツやドライフルーツをお菓子感覚でちょっとずつ購入する感じの方も多いですね。海外と日本の、量り売りに対する感覚の違いをよく感じています」

小長井さんがおすすめするバルクショップの活用方法は?

「僕は、『日常的に必要なものを必要な分量だけ買う』ということ自体が当たり前になれば、と思っています。そのために、容器を持参し、量り売り専門店で普段使いのお米や調味料や洗剤を購入するというスタイルが浸透していけばいいと思うんです。とはいえ、いろいろな価値観や考え方があるので、量り売り専門店が普段使いの選択肢のひとつになるまでには、それなりに時間がかかるのでは、とも感じています」

注目のバルクショップ 5

全国に広がるバルクショップ。ここでは環境保全への取り組みも注目されているバルクショップを紹介します。

■ 斗々屋京都本店

「地球一個分の暮らしを全国に」日本初のゼロウェイストスーパー
斗々屋の京都店は、2021年に誕生しました。鴨川に程近い、京都本店の広々とした店内では、「オーガニック」「フェアトレード」「ゼロウェイスト」の基準で選ばれた生鮮食品、野菜、調味料、乾物、洗剤など700品目を販売。国内最先端の量り売り機械システムを導入し、初めての人でもスムーズに容器持参での買い物ができます。「地球一個分の暮らし」をコンセプトに、サステナブルな消費や生活のあり方を全国に広めることを目指しています。

【Shop Info】

所在地=京都府京都市上京区河原町通丸太町上ル出水町252番地 大澤事務所ビル1F
営業時間=スーパーマーケット11:00〜19:00、カフェ11:00〜14:00、イートイン11:30〜18:00、ワインお料理&夜カフェ「pas mal」18:00〜23:00
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■ ビオセボン麻布十番店

バルクフーズをもっと楽しく!「地球環境に優しいお店」
「オーガニックを日常に」をテーマに品揃えした、パリ発のオーガニックスーパーマーケット「ビオセボン」。2016年の日本上陸1号店「麻布十番店」をはじめ、全店とオンラインストアで量り売りを導入。無漂白・砂糖添加なしのドライフルーツやチョコレートなどが90種も並びます。その中身は本格的で、世界一基準が厳しいと言われるオーガニック認証「デメター」取得のトルコ産イチジク、自家発電で工場機器の運転をまかなうDixon Ridges Farms社の生クルミなど、環境保全を理念とする企業の商品のみを販売。専用の紙袋を使用し、プラスチック包装資材削減に貢献。自由が丘店、旗の台店では持ち込み容器にも対応しています。

【Shop Info】

所在地=東京都港区麻布十番2-9-2
営業時間=9:00〜22:00
定休日=年中無休
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■ オリエンステラ横浜元町店

環境と社会に配慮した美の追求
東洋人に合うオーガニック成分を厳選し、生分解性の高いシャンプーやコンディショナーを販売するオリエンステラ。ポンプを別売りとして再利用を推進し、ボトルにも燃やすときの二酸化炭素を軽減するバイオマスプラスチックボトルを使用することで環境負荷を低減。横浜元町店ではシャンプーとコンディショナーを量り売りで購入することができます。安心安全な成分のシャンプーを、必要な分量だけ購入し、容器も再利用する。美の追求と同時に、エシカルな消費の形を実現しています。

【Shop Info】

所在地=横浜市中区元町1-18-5 レフィナード元町3F
営業時間=10:00〜18:00
定休日=不定休
HP

■ ecostore アトレ恵比寿店

自然由来の原料にこだわるニュージーランド生まれのエコブランド
ecostoreは、ニュージーランド発祥の地球にやさしいホームケアブランド。植物・ミネラル由来の原材料を厳選して調達し、家庭用洗剤にも食べ物と同等の安全性を約束しています。サトウキビ原料の外容器「カーボンキャプチャーパック」を採用し、環境への配慮を徹底。ecostoreアトレ恵比寿店は世界に2拠点しかないエコストアのスペシャリティショップで、プラスチックごみ削減を目的とするキッチン、ランドリーなどのリフィルステーション(量り売り)が設置されています。

【Shop Info】

写真はニュージーランドの店舗。

所在地=東京都渋谷区恵比寿南1−6 アトレ恵比寿西館2F
営業時間=10:00〜21:00
定休日=年中無休
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■ にじのおもちゃ屋レーゲンボーゲン

子どもにやさしいおもちゃ店の量り売り
北欧を中心とした自然素材のおもちゃを取り扱う、にじのおもちゃ屋レーゲンボーゲン。店主の小池さんは、木の実や落ち葉、トンボやトカゲなど、子どもたちと一緒に身近な自然に触れ合いながら遊ぶうちに、自然環境を守る大切さについて考えるようになったと言います。主業はおもちゃの販売ですが、自然を子どもたちに残したいという思いと同時に、今ある環境課題への気づきにつながればと考え量り売りコーナーを設置。お腹がすいたときに、必要な分だけ購入できる量り売りのお菓子は、オーガニックのナッツやドライフルーツなど、素材そのもののおいしさを感じられるラインナップ。やさしい味に満たされながら、親子で環境保全を考えるきっかけになっています。

【Shop Info】

所在地=千葉県千葉市若葉区大草町535
営業時間=月曜・火曜10:00〜16:00、金曜10:00〜20:00、土曜9:30〜13:00
定休日=水曜、木曜、日曜、祝日
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バルクショップで買うことが環境保護につながる

「僕は、バルクショップで買い物をすることが環境問題への関心を深めるきっかけになれば、と考えています。ピラムにはお客様が容器を持参してくれたら、商品購入額から1%割引するという容器持参割引システムがあります。容器を持参したお客様の数とその割引額を算出し、割引額と同額を環境保護団体1% for the planetに寄付します。実際賛同者も増えていて、このスタイルがきっかけになって容器を持参される方もどんどん増えているんです」

容器を持参することで商品が割引になる上に、ただ使い捨てられるだけの梱包材のゴミも出さず、いま必要なものを必要な分だけ購入することで無駄もなくなる……バルクショップでの買い物が環境保護につながっていくという好循環。お財布にも地球にもやさしい、理想的な買い物のスタイルがここにあります。

「バルクショップでの買い物が、お店にも、お客様にも、社会にも、地球環境にも良い、“四方良し”の形になっていく。これがオーガニック食材や量り売りがもっと身近に感じられるきっかけになればと思っています。表向きだけではない、真の意味でサステナブルな社会を作っていくために大切なことではないでしょうか」

各企業の真摯な環境保全への取り組みを理解すると、バルクショップで買い物をする意義をより実感することができます。ゴミを減らす以外にも、量り売りは少量から買えるので、気になる商品を気軽に試せる楽しみもあります。また、必要量を見極めたりじっくり商品を選んだりすることで、無駄買いを減らせるというメリットも。本当に必要なもの、好きなものに囲まれた暮らしは心地良いもの。まずは空き瓶を片手に、気になるバルクショップへ出かけてみませんか?

Profile

バルクショップ『ピラムオーガニック』店主 / 小長井真樹

アメリカの大学卒業後、ワーキングホリデーを利用し、カナダ、オーストラリアで海外生活を送る。メルボルン在住期間に、現地のオーガニックストア「テラ・マドレ」に大きな影響を受け、身近に環境負荷を減らすオーガニックストアがあることの大切さを感じるようになる。ニセコエリアに移住後、地元でオーガニックストアの必要性があることを感じ、オーガニックストア「ピラムオーガニクス&プランツ」をスタート。梱包費や輸送コストも大幅に削減できる地産地消を大切にし、ニセコエリアの人たちが本当に必要としているものを、環境負荷を減らすスタイルで提供している。

Store Info

Pyram organics & Plants

所在地=北海道虻田郡倶知安町3丁目北1条西11
営業時間=10:00〜19:00
定休日=木曜
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取材・文=江原香奈(Neem Tree) 写真提供=Pyram organics & Plants