LIFE 健康・美容・仕事・遊び・家事

シェア

手軽なバッグ型・段ボール型が登場!生ごみを資源に変える、
最新「コンポスト」でサステナブルな暮らし

TAG

昨今、注目されている「コンポスト」。生ごみや落ち葉を活用して堆肥をつくることをいい、もともと家庭菜園を楽しんでいる人にはお馴染みでしたが、マンションのベランダでもできるバッグ型など手軽なタイプの登場によって、身近になってきています。

生ごみや落ち葉を、ゴミとして廃棄せずに活用する……そんなサステナブルな仕組みと、メリット・デメリット、活用法などについて、バッグ型のコンポストを手がけている、LFCコンポスト代表のたいら由以子さんに教えていただきました。

 

忙しい日々に癒しをもたらす!? 都会のベランダにも取り入れたい「コンポスト」

20220411_atliving_compost_001

たいらさんが都会のベランダで始められるコンポストの開発と普及に力を注ぐきっかけとなったのは、約28年前の、お父様のガン宣告だったそう。

「食養生のための無農薬野菜が必要になり、いざ探してみると、近くのスーパーではほぼ手に入らない。おまけに高価で、家計への負担も大きい。安全な野菜を手に入れるのが困難な社会に憤りを感じつつも、この状態に反対運動をするよりも改善策を考え、行動することが大切だと感じました。

現代人の多くは、日々の忙しさに追われ、コンビニやスーパーで安易に手に入る無農薬とはほど遠い食材に頼り、食べ残しや調理くずは可燃ごみとして処分しています。これは自然界の循環を止めてしまっている行為なのです。わたしたちは自然の中の一部。食べ物で栄養をいただいたら、生きている間は排泄物でお返しし、死ぬときは自分自身が栄養素として土に戻っていくようにできています。人間も例外ではありません。

実際に、コンポストを始めたお客さまの中には、イライラや不安の解消効果が得られたという声も少なくありません。これは、自然循環を取り戻すアクションが、人間の心にも好循環の働きをもたらしてくれたと言えます。土や自然に触れる生活からかけ離れている方にこそ、コンポストを体験してもらいたいです」(LFCコンポスト代表・たいら由以子さん、以下同)

たいら由以子さん。
たいら由以子さん。

 

生ごみが分解されるまでは臭う? 土にどんな影響がある?

20220411_atliving_compost_003

家庭から出る生ごみを資源として有効に活用する「コンポスト」。でもコンポストを使うことで、生ごみ臭や虫がわくトラブルはないのでしょうか?

「水気を含んだ生ごみをビニール袋に入れて保管すると、嫌な臭いが発生しますが、コンポストは微生物が分解していく上に、水分を含んだ生ごみが腐敗していくわけではないので、悪臭に悩まされることはありません。また、密封しておけば、ハエが飛び回るような状況も起こりません」

 

ちなみに、生ごみの臭いを防ぐものでは「乾燥式」の生ごみ処理機があります。温風で生ゴミの水分を蒸発させて乾燥させることで、腐敗の進行を防ぎ、臭いにくくするもの。ただしこれは、燃えるゴミとして廃棄する前提。生ごみをごみとせず、土壌に循環させて有効活用できるのが、「バイオ式」の生ごみ処理機で、これを「コンポスト」と呼びます

【関連記事】夏は虫がわいたり臭ったり……生ゴミをエコに処理する「生ゴミ処理機」を取り入れるには?

 

では、コンポストで作られた堆肥は、土にどのようなメリットをもたらすでしょうか?

「コンポストで作られた堆肥は、土壌の肥沃度を保つ働きをします。化学肥料を使う必要がなくなるので、結果的に、安心安全の野菜が育てられる上に、味が濃く、栄養価の高い収穫物が実ります。

家庭から出る燃えるゴミの約4割は、生ごみが占めています。これを家庭で堆肥に変えることができれば、ゴミの量が減らせる上に、自給率が上がり、化学肥料の使用量も減らすことができるのです」

 

コンポストを使う手順とは?

1.生ごみを集める

20220411_atliving_compost_004

調理などで出た生ごみ。一口大よりも大きいものは、細かく切っておきましょう。ちなみに、コンポストに入れない方がいいものもあります。

・余分な水分
・分解しにくいもの…とうもろこしの芯、カニの殻、貝がら

 

2.コンポストの中に生ごみを入れ、よく混ぜ合わせる

20220411_atliving_compost_005
コンポストの中に生ごみを入れて、よく混ぜます。生ごみは1日300g~500g程度に。これを1.5〜2か月間続けます。投入する生ごみの量は規定内にしましょう。生ごみの量が多すぎると分解や発酵が進みづらく、悪臭や虫がわく原因にもつながります。

 

3.約3週間、熟成させれば完成

20220411_atliving_compost_006
週に1~2回、500mlほどの水を入れ、週に2~3回全体をよく混ぜれば完成。熟成しきらずに残った卵の殻も、そのまま堆肥として使用可能です。

 

初心者にはバッグ型がおすすめ! 取り入れやすい主なコンポスト

20220411_atliving_compost_007

コンポストにはさまざまな種類があります。

「初心者におすすめなのは、ベランダで手軽に始められるLFCコンポストかダンボール型コンポストですね。お子さんのいるご家庭なら、ミミズコンポストも楽しめそうですね。ただ、ミミズコンポストは、ミミズが嫌いな柑橘系を入れるのはNGなのと、虫の出入りもあるので、初心者にはややハードルが高いかもしれません。電気式の生ごみ処理機は、床に直接置けて室内に設置できるのが便利です。ただし、本体が高額で継続的に電気代がかかります。電気式の生ごみ処理機に関しては、助成金のある自治体もあるので確認するといいでしょう」

コンポストの設置には、どのような点に注意したらいいでしょうか?

「どんなコンポストにも共通していますが、雨が当たらず、風通しのよい場所に置きます。コンポストの底面や床が湿らないように、床に直接置かず、網カゴの上などに置いてください」

・バッグ型コンポスト

20220411_atliving_compost_008
LFCコンポスト「LFCコンポストセット」
定期便初回=3278円、2回目以降1848円(税込)

https://lfc-compost.jp/product

「専用バッグに基材(生ごみと混ぜ合わせる材料)を入れ、1日300g~500gの生ごみを1.5~2か月の間、毎日投入してよくかき混ぜるだけ。微生物が生ごみを分解し続けてくれるので、バッグからあふれるようなことはありません。虫が入りにくいファスナー仕様。たんぱく質類はたまにアンモニア臭が発生することもありますが、酸素がよく行き渡るようにしっかり混ぜていれば、臭いは自然と収まっていきます。生ごみ臭や虫の発生で近所に迷惑をかけることなく、都会のベランダでも手軽に始められます」

・ダンボール型コンポスト

20220411_atliving_compost_009
たのしい循環生活「ダンボールコンポストセットプラス」
3940円(税込)/ NPO法人循環生活研究所提供

https://jun-namaken.shop-pro.jp/?pid=72901230

「ダンボール箱に専用基材を入れ、生ごみを投入してよくかき混ぜればOK。ダンボールコンポストの使い方をわかりやすく解説した冊子『堆肥づくりのススメ』や温度計、ファスナータイプの虫よけカバーも付いているので、初心者でも使いやすいタイプです。毎日500gの生ごみを約3ヵ月間投入でき、仕上げに3週間ほど熟成させると堆肥ができあがります」

 

暮らしも気持ちも満たされる!? コンポストがもたらす多大な恩恵

ベランダの一角で始められるコンポストが、暮らしの中に与える好循環は計り知れないというたいらさん。

「まず、ご飯や麺などの残飯、肉や魚の骨、野菜の皮やクズ、コーヒーのがらや茶がらなど、今までは家庭ごみとして捨てていた生ごみが堆肥となり、貴重な資源に生まれ変わります。作業は1日1回混ぜるだけ。コンポストを覗けば、微生物が野菜クズを分解し、土へと変えてくれている様子が見られます。毎日、コンポストのお世話をしているような気分や、地球にやさしい活動をしている感覚が得られてうれしいというお声もよく聞きます。

出典=ローカルフードサイクリング公式HPより
出典=ローカルフードサイクリング公式HPより

コンポストを始めて約3か月で堆肥ができますが、家庭菜園や観葉植物などで使いきれないときは、お友達やご実家にプレゼントをするのはいかがでしょうか? LFCコンポストでは、農家さんに堆肥を提供し、野菜と交換する機会も設けています。また、学校や施設、自治体で堆肥を回収しているところもあります。お近くの自治体に問い合わせてみるといいでしょう。堆肥と野菜の物々交換が当たり前にできる循環型の血の通ったやりとりが増えるといいですね」

 

不名誉な現状を変えられるか?
日本は、ごみ焼却量で世界No.1という現実

20220411_atliving_compost_012

コンポストを都会で普及させ、家庭ごみを減らしたい。たいらさんの思いは、日本の不名誉な現状を打破することと、日本人本来の暮らしを取り戻したいという切なる願いも込められています。

「国際機関OECD(経済協力開発機構)の2013年発表のデータによると、日本は世界のごみ焼却率No.1。1位の日本が77%に対し、2位のノルウェーは57%、3位のデンマークは54%という数値から見ても、ダントツトップという結果に。

日本がごみ大国になってしまったのは、戦後の高度経済成長以降です。昭和初期までの日本は、80%以上の人が農業に携わり、生ごみは畑の土に埋め、肥沃な土を作り出すための大切な資源でした。戦後、一気に都市化や欧米化する暮らしの中で、いつしか生ごみを焼却するライフスタイルが定着していき、自然と暮らしが分断されてしまいました。そして、元々清潔好きだった国民性に、このごみを焼却するシステムが合ったこともあるでしょう。国内にはごみ焼却炉がどんどん増えていき、現在に至ります。

ベランダでできるコンポストが都会の暮らしにも普及すれば、生ごみの焼却量を大幅にカットし、環境にも体にもやさしい脱炭素社会に大きく貢献できるのです」

 

コンポストに挑戦した方からは、「もっと早く始めればよかった!」という感想が多く届くというたいらさん。まずは、コンポストを始めることで家庭ゴミを減らして、サステナブルなアクションに参加しませんか。

Profile

20220411_atliving_compost_prof

LFCコンポスト代表 / たいら由以子

大学で栄養学を学び、証券会社に勤務。大好きな父とのお別れをきっかけに、土の改善と暮らしをつなげるための、半径2kmでの資源循環を目指し活動開始。青年団の仲間と循生研を立ち上げ、子どもから高齢者、外国人までコンポストでつながる美味しい食の輪をつくるのが生きがい。メンバーとのお茶の時間を一番大切にしている。行動を最良の学習手段とし、活動をスパイラルアップさせるが信条。趣味はイラストコミュニケーション、レコード・映画鑑賞、愛犬と遊ぶこと。

 

取材・文=今井美由紀(Neem Tree)