災害時の備えとして、大容量ポータブル電源とともに注目されている「ポータブルソーラーパネル」。スマホやモバイルバッテリー、ポータブル電源を屋外でも充電できる、“持ち運べる”ソーラーパネルが今、続々と登場しています。
このポータブルソーラーパネルが役立つシーンや選び方、さらにおすすめ製品について、備え・防災アドバイザーとして活動する合同会社ソナエルワークス代表の高荷智也さんに教えていただきました。
手軽に充電できる手段として注目される、
ポータブルソーラーパネル
住宅の屋根やビルに設置されているイメージが強いソーラーパネルですが、最近は折りたたんで持ち運べるようなコンパクトなソーラーパネルも数多く販売されています。この「ポータブルソーラーパネル」とはどのようなものなのでしょうか?
「その名の通り、持ち運びができるソーラーパネルのこと。『ソーラー充電器』『モバイルソーラーパネル』などさまざまな呼び方がありますが、基本的にはどれも同じものを指します。
ポータブルソーラーパネルは、大きく2種類に分けられます。一つは、スマホやモバイルバッテリーなどの充電に適した、A4サイズ数枚分くらいの小型サイズのもの。もう一つが、ポータブル電源の充電などに適した少し大きめのサイズのものです」(備え・防災アドバイザー高荷智也さん、以下同)
製品自体はポータブル電源より前から存在したそう。では、なぜ今あらためて注目されているのでしょうか?
「停電対策に欠かせないポータブル電源やモバイルバッテリーは、充電ができなければ使い切りになってしまいますよね。そのため最近では、これらの充電手段を持っておくことが大切だと考えられています。
とはいえ、ガソリンやカセットガスの発電機を用意したり運用したりすることはなかなか大変で、住宅用ソーラーパネルは設置できる環境に制限があります。そのため、手軽に備えておけるポータブルソーラーパネルに注目が集まっていると考えられます。モバイルバッテリーやポータブル電源の性能が上がったことで、ポータブルソーラーパネルもさまざまな商品が発売されるようになりました」
ポータブルソーラーパネルが役立つシーンとは?
モバイルバッテリーやポータブル電源の充電手段として重宝するポータブルソーラーパネル。具体的にどのようなシーンで役立つのでしょうか?
「ポータブルソーラーパネルがもっとも活躍するのは、停電が長期化したとき。短期間の停電なら、モバイルバッテリーやポータブル電源があれば充分かもしれません。しかし台風や大地震、突発的な停電が起こり、いつ電力が復旧するかわからないような状況になったとき、モバイルバッテリーやポータブル電源を充電できるポータブルソーラーパネルは大いに重宝します」
活躍するのは、災害時だけではありません。
「もちろん、キャンプなどのアウトドアレジャーでも役立ちます。スマホやランタンの充電くらいであれば小型のポータブル電源で充分ですが、使うものによっては電力が足りなくなってしまうことも。例えばホットプレートや冷蔵庫、ポータブルエアコンなど、消費電力が大きいものを使いたいときには、ポータブル電源と併用するといいでしょう」
ポータブルソーラーパネルは
電気代の節約になる?
非常時やアウトドアで活用するほか、日常使いで“電力の自給自足”ができるかどうかも気になるところ。ポータブルソーラーパネルを使うことによって、日々の電気代を浮かせることはできるのでしょうか?
「正直、ポータブルソーラーパネルを使うことがお財布に優しいかというと、微妙なところです。例えばポータブル電源につないで、1時間で最大100Wを充電できるパネルを使ったとします。仮に1日5~6時間フル充電できたとすると500Wを充電できますが、金額にするとだいたい10~15円程度です。もし1ヶ月間、毎日充電ができたとしても節約できるのは300円くらい。1年間で考えると数千円レベルにはなるかもしれませんが、元を取れるかを考えると難しいところです。
とはいえ、電力を自給自足して生活するのは“環境負荷をかけない暮らし”にもつながりますよね。節約のために使うというよりは、ライフスタイルの一つとして、日々の暮らしの中で使ってみるのはアリだと思います」
発電効率を上げるには?
ポータブルソーラーパネルを上手に使うポイント
太陽光で簡単に充電することができるポータブルソーラーパネルですが、発電効率を上げるためにはどうすればいいのでしょうか? 押さえておくべき3つのポイントを教えていただきました。
1.直射日光を当てる
「ポータブルソーラーパネルに限りませんが、ソーラーパネルは屋外設置が基本。室内に設置する場合、設置場所や窓ガラスの種類によっては、発電効率が極端に下がる、もしくはほぼ0になってしまいます。南向きの庭や広いベランダを確保できるか、とくにマンションにお住まいの場合は購入前に確認しておきましょう」
2.パネルに対して太陽光を垂直に当てる
「発電効率を上げるためには、パネルを太陽の方に向ける、かつ太陽光に対して極力垂直に設置することが重要なポイントです。地面に対して垂直に置いてしまうと発電効率が落ちてしまいます。太陽の位置は意外とすぐ動くので、30分から1時間に1回程度は角度を調整するようにしましょう」
3.パネルの上に影を作らない
「製品にもよりますが、パネルの上に影がかかると発電効率が大きく下がってしまうものもあるので注意が必要です。一戸建て、庭、駐車場などの広い場所に置ける場合はそこまで問題はありませんが、マンションのベランダなどに設置する場合は、場所によってはうまく太陽光を当たらない場合も。『大きいパネルを買ったけど影がかかってうまく発電できない』とならないよう、場所に合わせてパネルの大きさを選ぶこともポイントです」
これらのポイントを押さえた上でパネルを設置したら、「どのくらい発電できているか」をあわせて確認してみましょう。
「製品によりますが、小型のポータブルソーラーパネルの場合は、電流計がついているものが多くあります。それを見れば、今どのくらい発電しているのかが一目でチェックできます。またポータブル電源に接続して使う場合は、ポータブル電源側にどのくらい充電できているかが表示されるので、それを確認しながら、発電効率の良い角度や設置する場所を調整してみてください」
ポータブルソーラーパネルの選び方
続いて、ポータブルソーラーパネルの購入時に知っておきたいポイントを紹介しましょう。パネルの大きさや発電量はどのくらいのものを選べばいいのか、ポータブル電源とセットで使いたいときに注意することなどを教えていただきました。
・なるべく大きなパネルを選ぶ
「ポータブルソーラーパネルは基本的に、大は小を兼ねるものです。曇りの日でも、ある程度の大きさのパネルであれば多少発電することができます。そのため、予算や設置場所が許す範囲で、大きいパネルを選ぶのがおすすめです。小型の場合でも、最低A4用紙1~2枚のサイズのものを選ぶのが良いと思います」
・スマホやモバイルバッテリーには20W前後が必要
「発電量は、スマホやモバイルバッテリーの充電に使いたい場合は、20W前後(15~30W)のものを選びましょう。これくらいの出力があれば、通常のUSB充電器と同じくらいの速度で充電することが可能です」
・ポータブル電源には最低100Wが必要
一方、ポータブル電源はそれなりに出力がないとそもそも充電できないので、最低でも100W以上あるものを選ぶようにしてください。ポータブル電源のなかには、パネルを2~3枚並列接続できるものもあり、例えば100Wのパネルを3枚並べて充電すると3倍の速度で充電することができます。とはいえ、100W発電できるパネルは両手を広げたくらいの大きさがあるので、設置場所や予算によって検討してみてください」
・ポータブル電源とソーラーパネルのセットならより手軽
ポータブル電源と併用したいときにおすすめなのが、ポータブル電源とポータブルソーラーパネルがセットになっているものを選んで買うこと。セットだとお得に買えることもありますし、間違いなく使うことができます。違うメーカー同士でも、ポータブル電源とソーラーパネルを接続するコネクタの形状と、入出力電圧が一致していれば使用することができます」
ポータブルソーラーパネルのおすすめ 4選
ここからは、高荷さんに教えていただいた選び方を参考に、編集部が厳選したおすすめのポータブルソーラーパネルを紹介します。最大出力100W以上のポータブル電源の充電に適した製品、スマホやモバイルバッテリーの充電に適した20W前後の製品をそれぞれピックアップしました。
Jackery「SolarSaga 100W ソーラーパネル」
3万4800円(税込)
ポータブル電源の大手メーカー「Jackery(ジャクリ)」のソーラーパネル。Jackeryポータブル電源の全シリーズに対応しており、最大100Wで充電することが可能です。本体にUSB端子がついているのでスマホやタブレットも充電することができます。
【スペック】
最大出力:100W(20V/5A)
USB-A 出力:5V/2.4A
USB-C 出力:5V/3A
収納サイズ:610×535×35mm
展開サイズ:1220×535×20mm
重量:約4㎏
Anker「625 Solar Panel (100W)」
3万4900円(税込)
Anker(アンカー)のポータブル電源シリーズの充電に最適なソーラーパネルで、3枚並列充電にも対応。USBポートがついているので、スマホやタブレットの充電も可能です。さらに、パネル連結部に太陽の位置測定器を搭載しており、太陽の位置に合わせて最適なパネルの向きを確認しながら設置することができます。
【スペック】
最大出力:100W (26.5V / 3.77A)
USB-A 出力:12W (5V / 2.4A)
USB-C 出力:15W (5V / 3A)
※USB-AポートとUSB-Cポートの合計最大出力は15W
格納サイズ:約525×470×85mm
展開サイズ:約1446×525×45mm
重量:約5㎏
EcoFlow「160W両面ソーラーパネルGen2」
4万7300円(税込)
パネルの素材には、高効率で低劣化の「N型TOPConセル」を採用。表面が160W、背面が環境光用の125Wの出力を誇り、スピーディに充電することが可能です。またポータブル電源との互換性が高いのも特徴。パネルの収納ケースは0~180度に調整可能で、スタンドとして活用できます。防水性&耐久性にも優れており、キャンプなどのアウトドアシーンでも活躍。
【スペック】
定格出力:正面160W(±5W) / 背面125W
格納サイズ:615×586×32 mm
展開サイズ:615×1628×25 mm
重量:5.1 kg
EXHEART「フォールディング ソーラーパネルミニ 28 EXP-M28GN」
1万5120円(税込)
最大24W出力する2つのUSBポートが付いたソーラーパネル。ベランダの物干し竿、リュック、テントに吊るしたり、付属の自立スタンドを活用したりと、手軽に設置できるのも特徴です。防滴性能があるので、突然の雨でも安心。
【スペック】
最大出力:24W
USB-A出力(2ポート):合計5V/4.8A
格納サイズ:約236×218×40mm
展開サイズ:約887×236×20mm
重量:約880g
Profile
備え・防災アドバイザー / 高荷智也
合同会社ソナエルワークス代表。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」を体系的に解説するフリーの防災専門家。講演・執筆・メディア出演も多く、防災YouTuberとしても活動をしている。著書に『今日から始める家庭の防災計画』(徳間書店)ほか多数。
取材・文=土居りさ子(Playce)