疲れが取れにくい、風邪をひきやすい、理由もなくイライラする……。足裏をマッサージするだけで、これらの不調が改善すると言われたら驚きませんか。一見関係なさそうに思われる「足の裏」と「体と心」。そこにはどのような関係があるのでしょうか?
セラピストとして30万人以上の足を診断し、いまや足の裏を診るだけでその人の不調がわかるという足裏研究家の鈴木きよみさんに、足で行う健康診断の方法と不調別のケア方法を教えていただきました。
CONTENTS
体と心の状態がわかる?
「足相診断」とは
「その人の体と心の健康状態は、ポジティブなこともネガティブなことも足のシワや色、触感、形などに表れるんです。それを『足相』と言います。手相とは異なり、1日のうちに何度も変わるのが特徴です。
例えば、便秘のときは土踏まずのあたりに縦ジワができ、気持ちが落ち込んでいるときはじめっと湿ります。そういった足に表れた特徴から、その人の今の状態を診断するのが足相診断です」(足裏研究家・鈴木きよみさん、以下同)
「足の裏は、気の通り道である『経絡(けいらく)』と足ツボと呼ばれる『反射区』が張り巡らされているところ。そのため、体の反応が表れやすいのです。加えて、つねに私たちの全体重を支えてくれているので、重力の影響により老廃物がたまりやすい場所でもあるんです。
足はとっても正直なんですよ。『今日はどんな足かな?』 と足を眺める習慣をつけると、日々の体調管理ができるようになるでしょう」
まずは足の温度をチェックする習慣をつけよう
足相診断では、足の状態を様々な角度からチェックして総合的に診断するため、ひと目見て「ここが悪い」と診断できるようになるには経験が必要です。そこでここでは、初心者でも簡単にできる簡易のチェックポイントをご紹介します。
「まずは、足の裏を触ったときの『温度』を確認しましょう。体が元気なときは、足裏もぽかぽかと温かくピンク色。
それに対し熱がこもり、熱く感じるときはエネルギーがありあまっている状態です。ストレスが上手に発散できていない可能性があるので、やさしくマッサージしてあげましょう。
反対にひんやりと冷たいときは、血液が滞り気力が低くなっている状態。足全体を手のひらで温めて、心地いいと感じる強さでもみほぐしてあげるといいですよ」
鈴木さんによると、足の裏の「色」も大切なチェックポイントとのこと。どのように判断したら良いのでしょうか?
「足の色は、足相のなかでももっともよく変化する要素です。免疫力が下がり心身のエネルギーが足りていないときは真っ白に、ストレスが強くかかっているときは黄色に、血液の循環が悪いときはあざができたかのような赤紫色に変わります。そして心身ともに元気なときは、ハリのあるピンク色。
朝起きたときや夜寝る前などにぜひチェックしてみてくださいね」
働く女性におすすめ!
不調別のゾーンセラピー6選
ここからは、働く女性の悩みをより具体的に解決するべく、不調別の「ゾーンセラピー」をご紹介します。「ゾーンセラピー」とは、鈴木さんが30万人以上の臨床経験から導き出したマッサージ方法で、足裏全体の観察を通じ、体と心の不調を見つけ、反射区を刺激し改善へと導くものです。
今回は、6つの不調を改善するためのゾーンセラピーをご紹介します。
「ゾーンセラピーを行うときは、全身に血液をめぐらせている『心臓』のゾーンがある『左足』から行いましょう。これは東洋医学のエネルギーラインである経路の流れに合わせるため。
最初は痛いと感じるかもしれませんが、それが『痛気持ちいい』感覚に変わるまで刺激していきましょう。クリームやオイルをつけてマッサージしてあげると少ない摩擦でできますよ」
ゾーンセラピーは朝昼晩いつやっても構いませんが、おすすめはお風呂上がりや寝る前。気になるゾーンを5〜6秒押してあげると、翌朝の目覚めが変わり効果を実感しやすいそうです。ただし、38度以上の熱が出ている場合は、熱がさらに上がってしまう可能性があるため避けた方がよいとのこと。
季節の変わり目に覚えておきたい! 風邪予防のゾーンセラピー
急な気温の変化などが起きる季節の変わり目に気をつけたいのが「風邪」です。それを予防するために日頃からやっておきたいゾーンセラピーをご紹介します。
【こんな足相のときは要注意!】
・足の甲、親指、人差し指の延長線上を押すと痛い
・指が細い
・土踏まずの色が白い
【マッサージの方法】
1.「胸部のリンパ腺」と「胸部」に対応するゾーン(写真の1)を3回さする
2.「脳」のゾーンが集まる親指全体(写真の2)を3回さする
※ 右足も同様に行う
「反射区は、足の裏だけでなく甲にもあるんです。胸や喉などの気管を司るゾーンは甲の部分に集中しているので、風邪を予防したいときには特におすすめですよ。さすったときにゴリゴリとした感覚がある方は、その感覚がなくなるまでさすりましょう」
疲労を回復し、免疫力をアップさせてくれるゾーンセラピー
休んでも疲れが取れない、なんだかいつも元気が出ない。そんな人は免疫力をアップさせてくれるゾーンを刺激しましょう。
【こんな足相のときは要注意!】
・足裏を触ると弾力がない
・足の幅が細い
・足の厚みが薄い
・足が小さくなった
【マッサージの方法】
1.「腎臓」のゾーン(写真の1)を3回押す
2.「腎臓」のゾーンから土踏まずの下側に向かう「輸尿管」のゾーン(写真の2)を3回さする
3.土踏まずの下側にある「膀胱」のゾーン(写真の3)を3回押す
4.足を手で左右から握ったときにできるくぼみの部分にある「腹腔神経叢」のゾーン(写真の4)を3回さする
※ 右足も同様に行う
「足が全体的に華奢な方や、なかなか疲れが取れないという方に実践いただきたいマッサージです。4つのステップをすべて行っていただくのが一番ですが、全部やる時間がない・気力がないという方は1つめの『腎臓』のゾーンだけでも押してみてください」
生理痛など女性特有の悩みにアプローチするゾーンセラピー
生理痛やPMSなど、ホルモンバランスの崩れによる悩みを抱えている人も多いでしょう。女性特有の不調には、かかとへの刺激が効くそうです。
【こんな足相のときは要注意!】
・足首の色が赤黒い
・かかとの幅が狭く小さい
・かかとに角質が多い
・かかとの色がどす黒い、またはまだらになっている
【マッサージの方法】
1.かかとにある「生殖腺」のゾーン(写真の1)を3回さする
2.内くるぶしの下にある「子宮」のゾーン(写真の2)を3回さする
※ 右足も同様に行う
「このゾーンセラピーは、生理痛がつらいがときや妊活中にもおすすめです。足裏のかかと部分が、ぶつけていないのにあざができたかのような色になっているときは、子宮の中に異物があるサイン。
強い痛みを感じたときや、マッサージを続けても足の状態に変化が見られない場合は、病気が隠れているかもしれないので、婦人科を受診しましょう」
むくみがスッキリするゾーンセラピー
足は体のなかでも一番むくみやすい場所。靴下の跡がなかなか消えない人や、日頃から着圧ソックスを手放せない人は、このゾーンセラピーを取り入れてみてください。
【こんな足相のときは要注意!】
・足裏を押すと跡が残る
・足首が回りにくい
・触るとぽちゃっとした感じがする
・アキレス腱が埋もれている
【マッサージの方法】
1.足の内側面のかかとの少し前側にある「内尾骨」のゾーン(写真の1)を3回さする
2.足の外側面のかかとの少し前側にある「外尾骨」のゾーン(写真の2)を3回さする
※ 右足も同様に行う
「むくみを取るためには、尾骨の反射区を刺激しましょう。尾骨は体の中心にあり、体を支える背骨の末端にあたる部分。老廃物をグッと押し流すように強めに刺激してあげましょう」
肌の悩みを解決してくれるゾーンセラピー
便秘や下痢など腸の調子が悪い人は、肌トラブルも起こりやすくなります。土踏まずの付近に縦のシワがいくつも入っていたら、それは腸が弱っているサイン。しっかりと刺激してあげましょう。
【こんな足相のときは要注意!】
・土踏まずの色が黄色っぽい
・土踏まずにシワが多い
・土踏まずの周辺に広がる「小腸」のゾーンを押すと痛みがある
【マッサージの方法】
1.左足の裏の中央あたりを横に走る「横行結腸」のゾーンからそのままかかと方向に縦に走る「下行結腸」のゾーンまで(写真の1)を3回さする
2.かかとの少し上の位置で横に走る「S状結腸・直腸」(写真の2)のゾーンを3回さする
※左足のみに存在するゾーンのため、左足だけをマッサージします
「こう見えて私は、若い頃、便秘がひどく毎日のように薬を飲んでいたんです。うまく老廃物を排出できていなかったので、ニキビもたくさん。
ですが、左足にある『S状結腸』と『直腸』のゾーンを刺激したら1日2回以上排便するようになり、肌トラブルも改善できました。内側からの刺激で、お肌のお悩みも解決していきましょう」
ストレスや疲労が過多なときのゾーンセラピー
鈴木さんのサロンを来訪する人には、疲れやストレスを溜め込んでしまっている人が多いそうです。人とのコミュニケーションに悩んでいる、本音を溜め込んでしまっているという人におすすめのゾーンセラピーをご紹介します。
【こんな足相のときは要注意!】
・左右の足の形が違う
・足がゴツゴツしている
・足を押すと痛みがある
【マッサージの方法】
1.右足の薬指と小指の延長線上にある「肝臓」のゾーン(写真の1)を上から下に3回さする
2.左足の「小腸」「大腸」のゾーンが集まる土踏まず(写真の2)を3回さする
3.2を右足でも行う
「ゾーンセラピーは基本、左足から始めていきますが、ストレスやイライラに関係する『肝臓』のゾーンは右足にだけ存在するので右足から始めます。
土踏まずをさすったときにゴリゴリとした感覚がある方は、3回といわず痛気持ちいいと感じるようになるまでさすってあげてください。
また、便秘の方は感情を溜め込みやすい体質ともいえます。しっかり腸を刺激して、足からストレスを発散させていきましょう」
時間がないときは“めん棒”を使うのがおすすめ
ここまでお悩み別のゾーンセラピーをご紹介してきましたが、鈴木さんは、めん棒を使って足裏全体を刺激するのもおすすめだと言います。なぜなら、足裏全体を“面”で刺激でき、不調の部分にまとめてアプローチできるから。
「足をよくつる方やなんとなく体調が優れない、元気を出したいという方には特におすすめです。こちらも左足から始め、トータルで30分以上やらないように気を付けていただければ、好きなだけ転がしていただいて構いません。テレビを見ながらなど、“ながら”でもできますよ」
足を温め巡りをよくすることが健康への第一歩
足の裏を刺激すると、次第に全身がぽかぽかしてくるのを感じる人もいるでしょう。実際に、ゾーンセラピーは「温活」にも有効なのだそう。
「足の裏の小さなシワや冷えに気づいたら、ぜひマッサージで温めてあげましょう。20代後半はまだまだ無理がきく世代ではありますが、頑張りすぎて足の裏が悲鳴をあげていることもしばしば。
続く30代はライフステージが変わる方が多いので、オンオフともに忙しく、自分の体と向き合う時間を取りづらくなる時期です。1日5分で構いませんので、足のマッサージを続けると体がラクになるはずですよ。
また婦人科のトラブルが起こりやすい時期でもあるので、かかとのかさつきや色の変化を見逃さないように。それらは骨盤の中で異変があるサインです。足の裏を刺激して、巡りのよい女性を目指しましょう」
Profile
足裏研究家 / 鈴木きよみ
東京・自由が丘を拠点に30万人以上の足を診てきた経験豊富なセラピスト。足を診て全身の不調を探る診断法「足相診断」と、足学に基づき不調を整える「ゾーンセラピー」を確立。インスタグラムやTikTokでも「足」にまつわる情報を発信している。
鈴木きよみオフィシャルサイト
Book
※「足相診断」「めん棒ゾーンセラピー」「きよみ式ゾーンセラピー」は鈴木きよみさん(有限会社オフィスキヨミ)の登録商標です。
取材・文=つるたちかこ 撮影=鈴木謙介