「ここにちょっとした棚があったら……」「殺風景な壁にアクセントがほしい ……」など、住み始めてから生まれる、収納や壁への要望を叶える方法として、昨今、注目を集めているのが「ニッチ収納」です。本来、ニッチ収納は新築やリノベ物件の設計段階で取り入れるものですが、賃貸住宅住まいで「収納を増やしたい!」という人も多いはず。
そこで今回は、建物自体には手を加えずにできる「ニッチ“風”収納」をご紹介します。教えてくださったのは、顧客の潜在的な悩みを解消する内装デザインとインテリアコーディネートの提案力に定評のある、インテリアコーディネーターの祐紀子(ゆきこ)さんです。
CONTENTS
収納力を上げながら魅せる!
ニッチ収納とは?
はじめに、ニッチ収納とはどういった収納なのか、その特徴やメリットをみていきましょう。
「ニッチ収納とは、壁の厚みを利用してつくる収納スペースや飾り棚のことです。壁の内部には水道管や配線が通っていますが、デッドスペースになっていることも多く、そうした空間を有効活用しようという発想から生まれた収納方法です。
とくに部屋を仕切っている壁は、構造上、くぼませて収納スペースを作ることが可能な場合が多くあります」(インテリアコーディネーター・祐紀子さん、以下同)
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「空間を有効活用することができ、モノを置くスペースが増えて暮らしやすさが向上する、部屋のインテリア性が高まるという2つのメリットを得られます。私がインテリアを担当しているお客様のなかにも、“ニッチ収納”を希望される方がここ数年、増えているんですよ」
賃貸でも今すぐ実践できる!
ニッチ“風”収納実例集
「ニッチ収納」の魅力がわかったところで、賃貸住宅でも取り入れられる「ニッチ“風”収納」を、実例を交えながらご紹介します。
[実例1]デザイン性のあるウォールシェルフで自分らしさを演出
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「上の画像は、キッチンからダイニングに続く殺風景な壁に、簡単に取り付けられるウォールシェルフを設置した例です。そこにお気に入りの植物や小物を飾れば、空間がぐっと華やかになり、自分らしい部屋づくりが楽しめます」
ディスプレイに初めて挑戦する場合、「センスに自信がないし……」と悩んでしまう人もいるかもしれません。小物をおしゃれに飾るには、何かコツがあるのでしょうか。
「まず、棚選びにもこだわりましょう。おすすめは、今回の段違いのデザインの棚のように、遊び心のあるデザインの棚を選ぶことです。
アイテムを並べるときは、所狭しと並べるのではなく、空間に余裕を持たせること。頭で考えるよりも、実際に手を動かしてさまざまな配置を試したほうが、しっくりとくる構図が見つかりますよ」
[ディスプレイのワンポイントアドバイス]
・見せたくないものは、飾れるボックスに入れて収納する
・小さい雑貨類は、同じ種類のものを選んだり、高さや色味を揃えると統一感が生まれる
・植物を取り入れ、葉を上から垂らすなどして動きを加える
[実例での使用アイテム]
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イケア「LINDÅSEN/リンドーセン ディスプレイシェルフ」
3999円
棚の側面がデザインとしても効いたアート風シェルフ
「段違いの棚を取り入れた、遊び心のあるデザイン。単体はもちろん、2つ用意して、高さを少しずらして並べたり、それぞれのシェルフに同じ小物を配置しストーリー性を持たせたりしてもいいでしょう。奥行きが13 cmとコンパクトで動線を邪魔せず、それでいて小物を置くのに十分なスペースを確保できます。写真のように、キッチンに置いて調味料を置くのもおすすめです」
[その他のおすすめアイテム]
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アイワ金属「WIRE SHELF Short ホワイト」
オープン価格
ワイヤー素材による抜け感と豊富なサイズ展開が魅力
「石膏ボードの壁にも簡単に取り付けられるウォール収納。奥行きは15㎝、ミニ、ショート、ロングの3種類あり、設置場所に合わせて最適なサイズを選べます。工具不要で手軽に取り付けられるので、ウォール収納初心者にもぴったり。お気に入りの小物を並べたり、タオルや洗剤を置いたりと、気軽に使いたいものを収納してみましょう」
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FLYMEe「WALLIE WALL DRAWER」
4万4000円~4万7300円
※価格はカラーによって異なる
脱生活感! 木と金属を組み合わせたシックな掛け小物置き
「先ほど、見せたくないものを小物入れ、小物入れを飾る方法をご紹介しましたが、こちらは中身が見えない小物入れが一体化したニッチ風収納です。曲げ加工された木材とブラックメタルの組み合わせが美しく、お部屋をエレガントに演出してくれます」
[実例2]ミラーと小物置きを一体化させ、玄関周りを使いやすく
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「お客様から特によくいただくご要望が、カギ置き場のコーディネートです。カギは、小さいため、どこに置いたかわからなくなりやすく、それでいてすぐに取り出せないと困るアイテム。そんなカギの収納におすすめなのが、小物を置けるウォールミラーです。
カギを置けるだけでなく、出かける前に身だしなみをチェックできるのもメリット。リップクリームなど、外出時に必要なアイテムをまとめて置くのもよいでしょう」
[実例での使用アイテム]
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クラッシュゲート「ジャッカル ミラー 550」
3万800円
インダストリアルな雰囲気がクールなシェルフ付きミラー
「小物置きが付いた、壁掛けタイプのミラーです。棚の奥行き(鏡部分も含む)が14.5cmあり、ハンドクリームやミニ観葉植物などちょっとした小物を置けます。玄関はもちろん、寝室に設置してドレッサー代わりに使うのもおすすめです。スチールバーを曲げた無骨なフレームと古材が小慣れた雰囲気を演出してくれますよ」
壁がなければ間仕切りを
DIYしてニッチ収納に
祐紀子さんは、「思いきって間仕切りをDIYして、そこに収納を作るのも一つの方法」だと言います。
「市販のアジャスターを使えば、本棚を組み立てる感覚で簡単に間仕切りを設置できます。もちろん、壁や床を傷つけないので、退去時に原状回復も可能。次の写真のように有孔ボードを活用すれば、吊るしたり掛けたりと収納方法も広がり、用途に合わせたお部屋づくりを楽しめます」
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アジャスターのなかでも祐紀子さんのおすすめは、平安伸銅工業の「ラブリコ」シリーズだそうです。
「ラブリコは、部屋に間仕切りを作りたいときはもちろん、ちょっとしたくぼみに大きめの棚を設置したいときなどにも便利なシリーズです。1×4、2×4、2×6と棚柱に使う木材に合わせて3サイズから選べます」
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ラブリコ「2×4アジャスター」
オープン価格
色展開:オフホワイト、ブロンズ、 ヴィンテージ グリーン、マットブラック、モーヴピンク
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250205_atLiving_nich_01.jpg)
ラブリコ「1×4 アジャスター」
オープン価格
色展開:オフホワイト、ブロンズ、 ヴィンテージ グリーン
「アジャスターに加えて、柱や棚受けを別途用意する必要はありますが、ゆるみ防止のバネが内蔵されているので、天井と床にしっかりと固定でき、衝撃にも強く安心して使用できます。アジャスターの色も豊富ですし、木材の色とあわせて好みの色を選べば、より自分らしく空間を演出できますよ」
壁のくぼみや壁の空いたスペースにお気に入りの小物を飾ったり、キッチン周りの壁にスパイスを置いたりすることで、「生活がより快適になり、家がさらに好きになる」と語る祐紀子さん。この機会に、「収納があると便利だな」と思っていた場所を、ニッチ収納に変えてみてはいかがでしょうか。
Profile
内装デザイナー・インテリアコーディネーター / 祐紀子
リノベ会社やデベロッパー、ハウスメーカーにて10年以上の経験を積む。戸建て、マンション、新築、モデルルーム、レンタルスペース、オフィス空間など、多岐に渡るプロジェクトで内装デザイナー・インテリアコーディネーターとして活躍。空間プランニングから予算に応じた家具の提案から設置などトータルコーディネートを提供。施主自身が気づかない困りごとや要望にも気づく、希望を超えた提案が評判。
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取材・文=加賀美明子(Neem Tree)