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狭い部屋を広く見せ、片付けやすくするには?家具レイアウトのルール

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引っ越しをしたり気分転換に模様替えをしたりと、部屋の変化が多くなる新生活の時期。しかし、どうすれば快適な部屋にできるのか、悩む方も多いのではないでしょうか。そのお悩みを解決するポイントの一つが、家具のレイアウトです。

一級建築士のしかまのりこさんに、レイアウトの考え方や、部屋を広く見せたり片付けやすくしたりするためのレイアウトのコツを教えていただきました。

部屋のレイアウトは、
『空間分け』『動線』『収納』を考える

「部屋に家具を置くときに『なんとなく』で置いてしまっている人は意外と多い」としかまさん。部屋が散らかりやすかったり、居心地が悪かったりするのは、そのせいかもしれません。では、片付けや掃除がしやすい快適な部屋にするためにはどうすれば良いのでしょうか。レイアウトを考えるときの3つのポイントと、具体的な手順を教えてもらいました。

「部屋全体のレイアウトを考えるときのポイントは、『空間分け』『動線』『収納』の3つです。そもそも部屋が散らかってしまう大きな要因は、くつろぐためのリビングや食事をするためのダイニングなどの空間が分かれておらず、ごっちゃになっているから。これにより、物もそれぞれの空間に入り混じってしまい、果てしなく散らかってしまいます」(一級建築士・しかまのりこさん、以下同)

くつろぐ場所、食事をする場所など、部屋の機能がきちんと分かれていないと、物もそれぞれの空間に散らばってしまいます。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「そのため、部屋の機能を分けて、動きやすさを考えながら家具を配置し、空間ごとに収納場所をつくることが大切です。具体的なステップをご紹介していきましょう」

STEP1 部屋の機能を洗い出す

「まずはお部屋をどのように使いたいのかを考えます。例えばリビングダイニングであれば、食事をする、テレビを見てくつろぐ、洗濯物を干す・収納する、仕事や家事作業をする……など、自宅の間取りや生活スタイルに合わせて考え、洗い出していきます」

STEP2 機能ごとに空間を分ける

図の「キッズゾーン」スペースは、「テレワーク」などのスペースとして考えてもいいでしょう。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「続いては、機能ごとに部屋をざっくり空間分けしていきます。クローゼットの位置やテレビの設置位置など、あらかじめ決まっているところから考えていくと良いと思います。分け方は、ご飯を食べたりテレビを見たりする『リビングダイニングゾーン』、洗濯物を干したり収納したりする『洗濯衣類ゾーン』など、ざっくりでOK!」

STEP3 動きやすい動線を考えて家具を配置する

(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「次に、動線(=人が通るための空間)を考えながら、家具を配置していきます。基本的には、扉から扉、扉からベランダ、家具と家具の間、機能ごとに分けた空間と空間の間などに、動線を確保しておくと良いと思います。動線をふさがないか確認しながら、家具を移動・配置してみてください」

STEP4 各空間に専用収納をつくる

(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「最後に、機能ごとに分けたそれぞれの空間に、専用の収納をつくります。例えば、リビングダイニングゾーンには、キッチンカウンターの下にすきま収納をつくったり、洗濯衣類ゾーンはクローゼットのほかにチェストを置いたりして、それぞれの空間にあるものを収納する場所を考えましょう。デッドスペースを活用したり、空間同士の間仕切りも兼ねた収納家具を使ったりすれば、より機能的な収納場所をつくることができます。レイアウトは、このような4STEPで考えていきましょう」

Before(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)
After……手順に沿ってレイアウトを変えた部屋。家具の数が増えても狭く見えず、片付けやすいすっきりとした空間に。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

家具レイアウトのNG例

続いては、ついやってしまいがちな家具レイアウトのNG例をご紹介。それぞれの解決策についても教えてもらいました。

NG例1 部屋のサイズに合っていない家具を置いている

お店で見て良いと思った家具をいざ自分の部屋に置いてみると大きすぎた……。そんな経験はありませんか? しかまさん曰く、「部屋が狭く感じる一番の要因は、部屋のサイズに対して家具が大きすぎたり、家具を置きすぎたりしているから」だそうです。

「そもそも部屋の中には、目に見えない『動線』があり、動線を差し引いた空間が『部屋の本当の広さ』になります」

(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「例えば、リビングダイニングがあわせて11畳の部屋があるとします。このとき、『11畳のスペースに置く』想定でテーブルを選び、配置してしまうと、レイアウトはできても、動線が狭く、動きにくい空間になってしまいます」

(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「この部屋の場合、動線を差し引いた『本当の部屋の広さ』(=家具が置けるスペース)は、実質7.5畳程度。そのためテーブルも、動線を考えた一回り小さなものを配置することで、グッと動きやすい空間にすることができます。

とはいえ、部屋の本当の広さを把握したり、実際に家具を置いたときのイメージをしたりするのは、日頃から『空間』を意識している建築士などではない限りなかなか難しいもの。そこでおすすめなのが、新聞紙や模造紙を置きたい家具と同じ大きさに切り取って床に敷いてみることです。床に敷いた状態で部屋を歩いてみると、『ここに置くと、動線が確保できないな』というのもイメージしやすくなるはずです。

そしてもう一つ、もともとの部屋が狭い場合は、置く家具を最小限にすることもポイントです。例えば、狭いリビングダイニングには、ソファとリビングテーブル、ダイニングテーブルとダイニングチェアの4点を置くのではなく、ダイニングソファとリビングテーブルの2点にまとめてみる。このように物理的に家具の数を減らすだけで、部屋がすっきりして見えます。そのほか、収納機能が付いたテーブルやベッドなどを置いて、収納家具の数を減らすことも方法の一つです」

(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

NG例2 においがするものを風上に置いている

「部屋の中の空気の流れを意識していない人はとても多い」としかまさん。目には見えませんが、空気の流れはレイアウトを考えるときにとても大切なことの一つだそうです。部屋中がなんとなく臭い……と感じている方は、レイアウトを見直してみるといいかもしれません。

「空気の流れの風上(給気口がある場所)に、ゴミ箱やペット用品などを置いてしまうと、部屋中ににおいが広がってしまいます。そのため、悪臭がするものを風上の近くに置くのは避けましょう。逆にアロマなどは風上の近くに置くと、部屋に良い香りが広がりやすくなります。そもそも部屋の空気がどのように流れているのかわからないという場合は、お香などをたいてみて、煙の流れを確認してみると良いと思います。ぜひ、空気の流れを考えたレイアウトを心掛けてみてください」

部屋を広く見せるレイアウトのコツ

次にご紹介するのは、部屋を広く見せるためのレイアウトのテクニックです。今回は、すぐに実践できる2つのコツを教えてもらいました。

大きな家具は壁際に寄せる

「まず一つは、ソファやダイニングテーブルなどの大きな家具を部屋の中心に置かないこと。四方から視線が集まる中心に置いてしまうと、視線の抜け感がなくなり、部屋全体が狭く見えてしまいます。そのため、背が高かったり幅が広かったりするような、物理的に大きな家具は、壁際に寄せて配置するのがおすすめ。できれば、部屋の中心には何も置かないのがベストです」

■ 部屋が狭く見える家具配置

部屋の中央にソファを置くと視線の抜け感がないため、狭く見えてしまいます。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

■ 部屋を広く見せる家具配置

ソファを壁際に寄せたことで部屋の中央に視線を遮るものがなくなり、部屋が広く感じられるように。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

部屋の対角にフォーカルポイントをつくる

「二つ目は、部屋に入ったときにまず視線がいきやすい部屋の対角に、150センチ程度の『フォーカルポイント』をつくること。フォーカルポイントとは、『人の視線を集中させる場所』のことで、部屋の隅につくると、部屋に奥行きが出て広く見せることができます。フォーカルポイントとしておすすめのインテリアは、観葉植物、額装した絵画やファブリック、鏡、フロアスタンドなどです」

フォーカルポイントを置く前(左)と置いた後(右)。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「また、アクセントクロスを使用する場合は、ブルーなどの『後退色』を使うと奥行きが出てより広さを感じさせることができます。逆に黄色などの『進出色』を使うと、圧迫感が出てしまうので、注意しましょう」

後退色(左)と進出色(右)のアクセントクロスを使用した例。後退色はほかに紺・紫などの寒色系の色、進出色は赤・オレンジ・黄緑などの暖色系の色がこれにあたります。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

レイアウトを少し変えるだけで、
部屋の印象をガラッと変えるには?

しかまさんが次にレクチャーしてくれたのは、家具レイアウトを少し変えるだけで部屋の印象を激変させる方法。「気分転換に模様替えしたい」「もっと快適な部屋にならないかな?」と考えている方は、ぜひ実践してみてください。

1.テレビとソファの位置を変える

「一番おすすめなのは、テレビとソファの位置を変えること。テレビはアンテナの場所が決まっているので大きく変えることは難しいですが、テレビの向きを少し変えることでソファの位置も自然と変わり、ちょっとした模様替えにはとても良いと思います。レイアウトを変えるだけで部屋の印象がかなり変わりますし、より部屋が広く感じられることもありますよ」

・Before

(画像提供:COLLINO一級建築士事務所)

・After

テレビの向きを変えたことで、ソファの位置も移動。ダイニングテーブル横の動線が広くなったことで、より動きやすい部屋に。(画像提供:COLLINO一級建築士事務所)

2.ダイニングテーブルやソファを壁に寄せる

ダイニングテーブルやソファを壁に寄せるのも、部屋のイメージが劇的に変わるのでおすすめです。特にダイニングテーブルは、部屋の中心に置いている家が意外と多いのですが、壁に寄せて動線の数を減らすことで、動きやすく、掃除がしやすい空間にできると思います」

・Before

(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

・After

ダイニングテーブルを中心に置くと四方に動線ができますが、全ての動線を頻繁に使うことはあまりないはず。壁に寄せると動線が減る代わりに広くなるので、動きやすい空間になります。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

「また、ダイニングの照明をペンダントライトにしている場合、ダイニングテーブルを壁に寄せるとペンダントライトの位置がずれてしまうことがあると思います。その場合は市販の『ペンダントサポーター』で位置のずれを解消したり、シーリングライトに付け替えて部屋全体に明かりが届くようにしたりすると良いと思います。レイアウトを変えたいけれど照明の位置が決まっているから動かせない……とあきらめる必要はありません」

・Before

(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

・After

右図のようにペンダントサポーターを使用することで、照明の位置のずれを解消できます。(画像提供=COLLINO一級建築士事務所)

3.家事動線を考慮して家具を動かす

「そのほか家事動線が短くなるように家具を移動させてみるのも良いと思います。例えば、ダイニングテーブルの位置や向きを変えるだけで、収納家具までの動線が短くなり、片付けなどの作業が楽になることも。頻繁に使っている収納家具があれば、そこまでの動線で邪魔になっているものはないか、見直してみると良いかもしれません」

新生活を機に
家具レイアウトを見直し、快適な部屋に!

最後に、しかまさんが考える「居心地の良い部屋」と、部屋づくりで大切なことをお聞きしました。

「私が考える『居心地の良い部屋』の条件は3つ。動きやすいこと(機能的)片付けやすいこと(実用的)イライラしないこと(健康的)です。今回ご紹介した家具レイアウトの方法を実践することで、これらの条件がそろった『居心地の良い部屋』にグッと近づけることができると思います。

また、私が部屋づくりで大切だと思うことは、『とりあえず』で家具を買わないこと。とりあえず安いから買ったけど結局すぐに壊れた、使わなくなった……となるのはもったいないですよね。処分するときにもお金がかかりますし、地球環境にもよくありません。家具を買うときには、自分の部屋に置いたときのことをよく考え、多少値が張っても気に入ったもの、ライフスタイルが変わっても使い続けられるようなものを選ぶことを重視してほしいと思います。さらに、目に見えない『動線』や『空気の流れ』は、意外と気にしていない人も多いと思うので、これらを意識した部屋づくりも心掛けてほしいです。

私は、住まいは『生き物』で、住む人が愛着を持って暮らしていれば、居心地の良い空間を提供してくれると考えています。ぜひ、新生活を機に家具レイアウトを見直し、快適な部屋づくりを実践してみてください」

Profile

一級建築士・模様替えアドバイザー / しかまのりこ

COLLINO一級建築士事務所代表。「地球にやさしい 家族にやさしい」をコンセプトに、狭い・片づかない・不快などの住まいの問題を「家具配置・模様替え」によって解決する模様替えのスペシャリスト。近著に『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社刊)がある。

取材・文=土居りさ子(Playce)