5月下旬になり、夏日予報が出される地域も増え、全国的に初夏の兆し。汗ばむ季節には、酸味の効いた爽やかなドリンクが恋しくなるものです。そこでおすすめなのが、フルーツビネガー。お酢は疲労回復効果も期待でき、夏バテ対策にもピッタリ。
実はこのフルーツビネガー、「フルーツ・お酢・甘味料」の3つがあれば簡単に手作りできるんです。今回は、そんなフルーツビネガーの基本の作り方を、ヴィーガン菓子・料理研究家の今井ようこさんに教えていただきました。
CONTENTS
「果物」×「お酢」は
暑い季節の不調対策に最適

柑橘とビネガー、両方の酸味が重なった爽やかな味わいで人気のフルーツビネガー。今井さんは、「暑さで食欲が落ちたときにぴったりな飲み物」だと言います。
「夏バテ気味のときに、“酸っぱいものなら食べられる”と感じた経験はありませんか? それもそのはず、酸味は唾液や胃液の分泌を促してくれるんです。フルーツビネガーの場合、お酢の酸味がその効果をもたらし、さらにフルーツの香りが嗅覚を刺激するため、自然と食欲が湧いてきます。
加えて、お酢と糖分を一緒に摂ることで、エネルギー源となるグリコーゲンが速やかに再補充されるので、疲労回復にもつながります」(ヴィーガン菓子・料理研究家の今井ようこさん、以下同)
そのうえ、柑橘類に豊富に含まれるビタミンCやカリウムも暑い季節の不調対策に役立つ栄養素。
「ビタミンCは紫外線による肌ダメージの軽減に、カリウムは細胞の水分バランスを保ち、熱中症予防にも役立ちます。また、お酢にはビタミンCの酸化を抑え、吸収を助ける働きもあるんですよ。フルーツビネガーは素材のおいしさがぎゅっと詰まっているので、炭酸水や牛乳、豆乳で割ってドリンクにしたり、サラダのドレッシングにしたりと、アレンジが自在なのも魅力ですね」
フルーツ・お酢・砂糖の3つがあれば
簡単に手作りできる!

最近は、市販のフルーツビネガーの種類が増えていますが、今井さんは「実は簡単に手作りできる」と話します。
「用意するのは、フルーツ・お酢・お砂糖などの甘味料の3つだけ。お酢と砂糖はご家庭に常備されていることが多いので、あとは手頃なフルーツを用意するだけで、すぐに作り始められます。保存は冷蔵庫でOK。瓶はきれいに洗ってしっかり乾かし、アルコールで消毒すれば十分。煮沸消毒の必要もないので、手間がかからないのも魅力です。保存期間は約1ヵ月と、日持ちするのもうれしいポイントですね」
酢も砂糖も“お好み”でOK!
自分だけのフルーツビネガーを楽しもう

お酢や砂糖にも様々な種類がありますが、特別なものを用意する必要はないそうです。
「フルーツビネガーの材料に、『これじゃなきゃダメ』という決まりはありません。お酢ひとつとっても、米酢やりんご酢などさまざまな種類がありますが、好みに合わせて自由に選んで構いません。甘味料も、氷砂糖、てんさい糖、黒糖、はちみつ、アガベシロップなど、種類によって味わいが変わるので、ぜひ“好きな甘味”で試してみてください。
また、フルーツも定番は柑橘類ですが、実はバナナやスイカなど水分の多いものでもおいしく仕上がるんです。意外かもしれませんが、どちらもちゃんと合うんですよ。
使うお酢や砂糖、そして漬ける時間によって、味はもちろん色も変わっていくので、見た目の変化を楽しめるところもフルーツビネガーの魅力のひとつですね」
「柑橘」 × 「お酢」 ×「甘味料」の組み合わせを楽しむ
フルーツビネガーレシピ3つ
今回は、お酢は米酢・りんご酢・ワインビネガー、甘味料はてんさい糖・氷砂糖・アガベシロップを使ったフルーツビネガーのレシピを教えていただきます。それぞれに個性があり、組み合わせ次第で味わいの幅が広がります。具体的なレシピをご紹介する前に、それぞれの特徴をご紹介します。
お酢の種類と特徴
・米酢……酸味がしっかりしているため、酸っぱいものが好きな方におすすめ
・りんご酢……フルーティーでまろやか
・ワインビネガー……爽やかで軽やかな酸味
甘味料の種類と特徴
・てんさい糖……甘味が強く感じられるため、量は控えめでOK
・氷砂糖……クセがなく、すっきりとした甘味
・アガベシロップ……コクがあり芳醇。GI値が低く、血糖値の上昇が緩やか
また、使用する柑橘は河内晩柑(かわちばんかん)・甘夏・グレープフルーツの3種類。今回はこれらを掛け合わせ、次の3つのフルーツビネガーの作り方をご紹介します。
・【河内晩柑×米酢×てんさい糖】 キュッと味の効いた河内晩柑ビネガー
・【甘夏×りんご酢×氷砂糖】すっきり甘くフルーティな甘夏ビネガー
・【グレープフルーツ×ワインビネガー×アガベシロップ】ハーブともマッチ! 洋風グレープフルーツビネガー
フルーツビネガーは、基本の作り方はとてもシンプルですが、選ぶ素材によって仕上がりはさまざま。必ずしも上記の組み合わせでなければならないというわけではないので、ぜひ作るたびに組み合わせを変えて、お気に入りを探してみてください。
【河内晩柑×米酢×てんさい糖】
キュッと酸味が効いた河内晩柑ビネガー

「柑橘の実200gに対して、酢は200cc、砂糖は150〜180gが目安です。砂糖の量は、甘味料の種類や味のお好みに合わせて調整してください。酸味の強い米酢は、甘味をしっかりと感じられるてんさい糖と相性抜群です」
【材料(作りやすい量)】

・河内晩柑……200g
・米酢……200cc
・てんさい糖……150g
【作り方】
1.しっかり乾かしたきれいな瓶全体にアルコールを噴きかけ、キッチンペーパーで拭く。

「冷蔵庫で保存するため、よく乾かしたきれいな瓶であれば、煮沸消毒の必要はありません」
2.河内晩柑の皮と薄皮を剥いて、輪切りにする。

「極端に厚くならなければ、お好きな切り方で問題ありません。柑橘の場合、白いワタの部分が残っていると苦味の原因になるので、皮を厚く剥いて一緒に取り除きましょう」
3.1の瓶に、輪切りにした河内晩柑とてんさい糖を交互に入れる。米酢を加え、そのまま常温保存。1日に1回程度ゆすって材料を馴染ませる。5~7日ほどで完成。

「てんさい糖はサラサラしているため、瓶底にたまりやすくフルーツに絡みにくいので、河内晩柑と交互に入れます」
【甘夏×りんご酢×氷砂糖】
すっきり甘くフルーティな甘夏ビネガー

「甘夏や文旦などの大きな柑橘は、白いワタを取り除き、果肉は小房のまま取り出すのがおすすめです。コツさえつかめば、簡単に小房を崩さず果肉を取り出せるようになります。また、ワタを取り除いた外皮を一緒に漬けると、風味がよくなるのでおすすめ。氷砂糖は、梅シロップづくりなどで余ったものを再利用するのもよいでしょう」
【材料(作りやすい量)】

・甘夏……200g(皮とワタを取り除いた実の分量)
・りんご酢……200cc
・氷砂糖……150g
・甘夏の外皮(ワタを削いだもの)……適量
【作り方】
1.しっかり乾いたきれいな瓶全体にアルコールを噴きかけ、キッチンペーパーで拭く。
2.甘夏の皮を白いワタごと剥く。小房のまま実を取り出す。

「果物ナイフで甘夏の皮を厚めにむいて、白いワタまで取り除きましょう。外皮をむき終わったら、小房の薄皮と果肉の境目にナイフを入れ、薄皮をむくようにして身を取り除きます」
3.瓶に甘夏をすべて入れ、氷砂糖を全量加えたら、りんご酢を加え、そのまま常温保存。1日に1回程度ゆすることで、材料を馴染ませる。5~7日ほどで完成。
【グレープフルーツ×ワインビネガー×アガペシロップ】
ハーブともマッチ! 洋風グレープフルーツビネガー

「グレープフルーツの白いワタも、甘夏や文旦と同様に苦味があるため、果肉だけを取り出して漬けるのがおすすめ。グレープフルーツは果肉自体にもほんのり苦味があるので、甘味の強いアガベシロップを合わせるとバランスが取れます。さらにお好みで、ローズマリーやレモングラスなどのハーブを加えると、香りが引き立ち、より爽やかな味わいにを楽しめますよ」
【材料(作りやすい量)】

・グレープフルーツ……200g(皮とワタを取り除いた実の分量)
・白ワインビネガー……200cc
・アガペシロップ……150g
※お好みでハーブを加えてもOK
【作り方】
1. しっかり乾いたきれいな瓶全体にアルコールを噴きかけ、キッチンペーパーで拭く。
2.グレープフルーツの皮を白いワタごと剥く。小房のまま実を取り出す。
3.瓶にグレープフルーツをすべて入れ、アガペシロップを全量加えたら、白ワインビネガーを注ぎ、そのまま常温保存。1日に1回程度ゆすることで、材料を馴染ませる。5~7日ほどで完成。
飲み頃はどう見極める?
完成後の保存のコツ

フルーツビネガーの飲み頃は漬けてから5〜7日ほど。どのように完成を見極めるとよいのでしょうか。
「写真の左の瓶は作ってすぐのフルーツビネガー、右は常温で5日ほど置いたものです。 砂糖が完全に溶け、味見をしてお酢の角が取れ、馴染んでいたら完成です。1週間以上経つと、フルーツから味が抜けてくるので取り出して、サラダやヨーグルトのトッピングにするのもおすすめ。
果実を取り除いた状態、かつ涼しい場所であれば、そのまま常温保存が可能です。果実を漬け込んだままの状態や気温が高くなってきた場合は、冷蔵庫で保存しましょう」
ここ数年、さまざまな銘柄が販売され、すっかり定番アイテムとして定着したフルーツビネガー。ご紹介したレシピを読んで、予想以上に簡単に作れることに驚いた人も多いのではないでしょうか。ぜひこの夏は、お好みのフルーツを使って、自分だけのオリジナルビネガー作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。
Profile
ヴィーガン菓子・料理研究家 / 今井ようこ
大阪の製菓学校卒業後、神戸の製菓店勤務を経て株式会社サザビーに入社。アフタヌーンティー・ティールームの店舗でベーカリーやキッチン業務を学び、アフタヌーンティーのメニュー商品企画開発を経て独立。独立後はパンやお菓子の受注、KIHACHIソフトクリーム・パティスリーの商品開発、サンリオのカフェメニュー開発等を行う。友人の病気がきっかけでマクロビオティックを学び、吉祥寺オーガニックベース等で講師を行う。現在は、野菜や豆・海藻だけの料理と動物性原料を使わないお菓子作りの教室 「roof」を主催。なるべく体に負担がかからない料理やお菓子を提案している。
HP
取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=鈴木謙介