「毎日、栄養バランスを考えた献立をイチから手作りする」。言葉にするのは簡単ですが、忙しく過ごす私たちにとって、それは時にとても高いハードルとなります。丁寧な暮らしからほど遠い現実に、どこか罪悪感を抱き、気づけば「原因不明のちょっとした不調」が続いている……。
そんな悩みに寄り添ってくれるのが、管理栄養士のおすぎさんです。彼女が提案するのは、未来の自分を助けるための「冷凍作りおき」。最新刊『管理栄養士おすぎの からだ整う冷凍作りおき』に込めた想い、そして今日から真似できるレシピを教えてもらいました。
週に一度の調理が、明日の自分を助ける。
暮らしの余白を作る「冷凍ストック」という貯金
おすぎさんは管理栄養士として、保育園での食育活動や企業での特定保健指導を通じ、一人ひとりに寄り添った健康支援やアドバイスを続けてきました。そのなかで、常々感じていたことがあるといいます。
「世の中には『理想の食事イメージ』があふれていますが、そのまま実践するのは、なかなかハードルが高いんですよね。『栄養バランスが整った食事を作らなきゃ!』と身構えてしまったり、一歩を踏み出しても続かずに断念してしまったりする方がたくさんいらっしゃいました」(管理栄養士・おすぎさん、以下同)
実際におすぎさん自身も会社員時代、多忙で自炊がままならなくなったことがあったのだとか。
「自分で食事を作らなきゃと思いながらも、その時間がなかなか捻出できず、結果、コンビニやお惣菜に頼る日々が続きました。すると、体重が短期間で増えてしまっただけでなく、『ちゃんとした生活を送れていない』という罪悪感で心までどんよりしてしまったんです。100%元気と言い切れない、“うっすら不調”の状態が続きました」
そんな経験から生まれたのが、週に一回、一種類でもいいからおかずをストックしておく「冷凍作りおき」です。毎日頑張るのではなく、余裕があるときに「料理の貯金」をしておく。その積み重ねが、忙しい日の自分を救う余白になる、とおすぎさんは教えてくれます。
「冷蔵の作りおきは消費期限が気になって、気分じゃなくても『早く食べなきゃ』というプレッシャーがありますが、冷凍なら『食べたいとき、いつでもそこにある』という安心感を与えてくれ、食事の自由度を拡大してくれます。このゆとりこそが、現代の暮らしに必要な『心の栄養』なのかもしれません」
自分の機嫌は自分でとる。
完璧主義を手放した、おすぎ流「食のルール」
多忙な日々を送りつつも、一時は毎日お弁当を作っていたというおすぎさん。しかし、「何品もおかずを詰めなきゃ」という固定観念に縛られた結果、ついに心が「やってられない!」と叫んだといいます。
「無理をして品数を揃えるより、一品に野菜もたんぱく源も詰め込んで、どんぶりスタイルにしてしまえばいい。そうマインドチェンジした瞬間、自炊がぐっと身近になりました」

自分を追い込む自炊ではなく、自分を労わる自炊へ。その潔さが、彼女のレシピが多くの人に支持される理由です。さらにおすぎさんの魅力は、その「完璧すぎない点」にあります。
「外食もしますし、ファストフードもよく食べます。日々の食事すべてを完璧なものにする必要はないと、私は思います。それでも、自炊を習慣づけることは、将来の自分のため。だからこそ、できるだけ手間をかけずにラクができる『冷凍作りおき』をおすすめしています。
一食でも『自分で作ったもの』を食べられたという手応えは、自己肯定感に繋がります。冷凍庫に“お守り”としての冷凍作りおきがあるだけで、焦りが消えて、心がラクになるんです」
暮らしを彩り、心を満たす。
『冷凍作りおき』の楽しみ方と簡単レシピ
今回の新刊では、おすぎさんの代名詞である「冷凍弁当」から一歩広がり、より日常の食卓に馴染む「おかず」が主役。特に、おすぎさん自身もヘビロテしているというおすすめレシピを教えてもらいました。
登場回数ナンバーワン!「切り干し大根とツナのさっぱりあえ」

「『切り干し大根とツナのさっぱりあえ』が、一番リピートしているレシピかもしれません。切り干し大根って煮物のイメージが強いと思うんですが、お湯をかけて水でほぐし、ツナと塩昆布、にんじんで和えるだけ。食物繊維もたんぱく質もしっかり摂れるので、作りおきしておくと助かります。私の場合はついつい食べ過ぎてしまって、ストックまで回らないことも結構あるんですが(笑)。
本でも一緒に紹介している『厚揚げとしめじ、小松菜のみそガーリック炒め』とあわせると、味の相性バツグンな献立になります」
「切り干し大根とツナのさっぱりあえ」(写真左)
【材料】5食分
・切り干し大根(乾燥)…70g
・ツナ油漬け缶…2缶(140g)
・にんじん(せん切り)…1/2本(75g)
・塩昆布…20g
A ごま油…大さじ2
鶏ガラスープの素…小さじ2
レモン果汁…小さじ2
黒こしょう…適量
【作り方】
1.切り干し大根はざるでよくもみ洗いし、熱湯(分量外)を回しかけて表面殺菌し、流水で冷ましてしっかり水けをしぼる。
2.ボウルに1、にんじん、ツナを缶汁ごと、塩昆布、Aを加えてよく混ぜる。すぐに食べられますが、10分ほどおいて味をなじませるとよりおいしい。
「厚揚げとしめじ、小松菜のみそガーリック炒め」(写真右)
【材料】5食分
・厚揚げ(絹ごしタイプ・2㎝の角切り)…2枚(600g)
・しめじ(小房にわける)…1パック(100g)
・小松菜(茎と葉に分け、4㎝長さに切る)…1束(200g)
・にんにく(みじん切り)…1かけ
・ごま油…小さじ2
・削り節…2g
A みそ…大さじ3
酒…大さじ2
砂糖…小さじ1/2
【作り方】
1.Aは合わせて混ぜておく。
2.フライパンにごま油、にんにくを入れて弱めの中火で熱し、香りが出たら厚揚げを加え、中火で各面を1~2分ずつ焼いて軽く焼き色をつける。
3.2にしめじ、小松菜の茎を加えて1分炒め、葉を加えてさらに1分炒める。
4.Aを加えて中火で1~2分からめながら水分を軽くとばす。火を止めて削り節を加え、全体をひと混ぜする。
お肉も野菜もしっかり摂れる!「豚ロースの塩麴グリル 温野菜添え」

「『お腹が重い』『野菜が足りないな』と感じるときは、『豚ロースの塩麴グリル』をぜひ試していただきたいです。グリルで焼くことで脂を落としてカロリーオフ、塩麴のパワーでうまみやコクがあり、温野菜も進みます」
『豚ロースの塩麴グリル』
【材料】5食分
・豚ロース肉(とんカツ用)…5枚(500g)
・塩麴…50g(肉重量の10%)
・酒…大さじ1
・ブロッコリー(房のみ・小房に分ける)…1株(200g)
・にんじん(小さめの乱切り)…1本(150g)
【作り方】
1.豚肉は筋を数か所切り、塩麴、酒と一緒にポリ袋に入れてなじませ、冷蔵庫で30分おく。
2.余熱した魚焼きグリルに1を一度に2~3枚ずつ、2回に分けて並べる。弱火~弱めの中火で両面焼きの場合は7~9分、片面焼きの場合は片面5~6分、裏返して3~4分焼く。フライパンの場合は油(分量外)を薄くひき、ふたをし両面を3~4分ずつ蒸し焼きにする。
3.耐熱容器にブロッコリーを入れ、ふんわりとラップをかけて電子レンジで1分30秒加熱する。にんじんも耐熱容器に入れてふんわりとラップをかけ、電子レンジで2分加熱する。
4.食べるときに2に3を添える。
彩りも栄養も満点!「枝豆&梅&ちくわのおにぎり」

「食事だけでなく、小腹が空いたときのために「おにぎり」や「蒸しパン」を冷凍しておくのもおすすめ。お菓子の代わりにこれらがあるだけで、罪悪感なくお腹も心も満たせます」
『枝豆&梅&ちくわのおにぎり』
【材料】3個分
・温かいごはん…1合分(330g)
・ゆで枝豆(さやつき)…100g
・ちくわ(4㎜幅の薄切り)…2本
・梅干し(種を取ってちぎる)…2個
【作り方】
ごはんにさやから出した枝豆、ちくわ、梅干しを加え、さっくりと混ぜる。3等分にしてそれぞれラップでにぎる。
目指すは「みんなの栄養の先生」。
10年後の自分のために、できることから、ひとつずつ
「“うっすら不調”は、体からの小さなサイン。病院に行くほどではないけれど、ベストパフォーマンスが出せない。そんなときこそ、食事を見直すタイミングです」とおすぎさんは語ります。
「でも、気負いすぎないでくださいね。厳しい食事制限をしなくても、完璧にやらなくても、大丈夫。私が不調のタイプ別に必要な栄養素を含んだレシピをお伝えするので、できることからひとつずつ取り入れてもらえたらと思います。皆さんの『栄養の先生』として頼ってもらえたらうれしいです」
食生活以外にも、おすぎさんはテニスを始めたり、7〜8時間の睡眠を心がけたりと、自身のケアを大切にしているとのこと。運動、睡眠、そして週に一度の自炊。その積み重ねが、10年後の元気を作ります。おすぎさんという先生を味方につけて、冷凍庫に作りおきという“お守り”を忍ばせる。そんな自分を労わる生活を、今日から始めませんか?
Profile

管理栄養士 / おすぎ
1995年生まれ。YouTubeで「がんばらない料理で、毎日の食事を美味しく健康に。」をコンセプトに冷凍弁当や作りおきレシピを紹介。「手軽に作れるのに栄養と満足感を両立できる」と多忙な社会人や主婦など多くのフォロワーに支持されている。SNS総フォロワー数は65万人以上(2026年6月現在)。
Instagram:@sugimeal
YouTube:@sugimeal
X:@sugimeal
『管理栄養士おすぎの からだ整う冷凍作りおき』(ワン・パブリッシング)
「冷凍弁当」でおなじみの管理栄養士・おすぎさんによる、初の冷凍作りおきレシピ本。平日のごはんをまとめて作るから調理も洗い物も一度で完結。毎日の時間と食費を節約できます。帰宅後はレンジで温めるだけであっという間に晩ごはんが完成! 多忙な人にぴったりの新習慣です。

取材・文=水谷花楓 カメラマン=難波雄史