2019年9月20日から、約7週間かけて48試合が行われる「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。4年に一度のワールドカップが日本で開催されるとあって、ラグビーへの注目度が高まっています。
とはいえ、ルールまで把握している人は意外と少ないのではないでしょうか? そこで今押さえておきたい、ラグビーの基礎知識と楽しみ方を、1972年創刊のラグビー専門月刊誌『ラグビーマガジン』の編集者、田村一博さんに教えていただきました。
まずは、これを知っておかなければ始まらないという、超基本的精神から。
「One for all, All for one(ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために)」
日本のラグビーには、そのプレーの根底にさまざまなスピリット(信念)があります。最も有名なのは「One for All, All for One」という言葉ですが、実は元はフランスの小説「三銃士」の中に登場したもの。
「ラグビーのメンバーにはそれぞれ役割があり、全員が協力することが求められるスポーツです。得点につながるプレーをした人だけでなく、チーム全員の努力があってこそ勝つ、という言葉です。また、ノーサイドの精神という言葉もラグビーでは有名です。試合中はお互いに目を吊り上げて戦っているのに、試合が終わったら握手をして、お互いの健闘を称え合うスピリットが大切にされています」(『ラグビーマガジン』編集者・田村一博さん、以下同)
日本のラグビーが愛される理由
ラグビーの選手は、スポーツ選手の中では体格の大きな人が多いのですが、他国のラグビー選手と比較すると、とても小柄です。つまり日本人選手は、その身体的ハンディを負いながら戦っていると言えます。
「日本ラグビーには、他国とは違う、テンポのある素速いプレーをすることが求められます。小さい者が大きな者に勝つために、身体的な特徴をハンディではなく活かせるようなプレーを確立しながら、日本は強くなってきているのです。また、元フランス代表の主将だったジャン=ピエール・リーブが言った、“ラグビーは少年をいち早く男にし、大人にいつまでも少年の心を持たせる”という言葉があります。ラグビーが愛されている理由は、この言葉通りである気がします」
3分で分かる! ラグビーのルール
ラグビーは1チーム15人で構成され、15人対15人で戦う「陣取りゲーム」です。ひとつのボールを奪い合いながら相手チームの陣地に攻め入り、ボールを持って前進していくことで陣地を広げていきます。相手のゴールラインの向こう側(インゴール)にボールを持ち込んで、地面にタッチすると、トライとなり得点が入ります。
【知っておきたいポイント-1】プレーによって得点が違う
サッカーなどと違って、トライすれば一点が入る、という得点方法ではありません。トライは5点で、またトライが成立すると、キックで2点の追加得点が得られるチャンスが与えられます。また、ワンバウンドさせたボールをキックするドロップキックによる得点は3点になります。さらに、相手が反則したときに与えられる“ペナルティーゴール”というチャンスでは、キックしてゴールすると3点が追加されます。
「試合の残り時間が少なければ、5点が入るトライを狙わないと逆転できないでしょうし、反対にこちらが勝っているときは、ペナルティーゴールのチャンスを向こうに与えてしまわないよう、反則に気をつけるなど、場面場面で戦い方が変わっていくのがおもしろいところです」
【知っておきたいポイント-2】ボールを自分より前に投げてはいけない
持っているボールを自分より前に投げると反則になります。「味方にパスするときは自分のいるラインより後方に投げて、ボールをつなぎます。また、持っていたボールを前に落とすと、それだけで“ノックオン”という反則になってしまいます。たったこれだけのミスでも、相手にペナルティーゴールのチャンスを与えることになってしまうので、時間がなく焦るような場面でも、正確さと慎重さが求められるスポーツなのです」
【知っておきたいポイント-3】各ポジションの基本的な役割と特徴
ラグビーでは、15人のうち8人がフォワード、7人がバックスという役割につきます。「選手同士のぶつかり合いを避けることができないのがフォワードです。バックスより体が大きく、力の強い選手が求められます。一方、フォワードの獲得したボールを得点につなげることが多いバックスは、ボールまわしのテクニック力が高いことや、足が速いことなど、華麗なプレーを得意とする選手が多いです」
●フォワード(FW)
前線で体を張ってチームを下支えするため、身体的に優れた選手がつくことが多いポジション。
・プロップ(PR/背番号1、3番)
スクラムの最前列で相手とぶつかり合い、押し合うポジション。丸く大きな体の選手がつくことが多く見られます。
・フッカー(HO/背番号2番)
プロップ同様にスクラムの最前線でぶつかり合いますが、ラインアウトのスローイングや、スクラムの中でボールを後方に送るために蹴る役割を果たすため、器用さも求められます。
・ロック(LO/背番号4、5番)
空中戦と言われるラインアウトでボールを競い合うため、背が高い選手が多いです。また、スクラムの真ん中でパワーを発揮する必要もあります。国際的には2m超の選手も多く、男の中の男のポジションと言う人もいます。
・フランカー(FL/背番号6、7番)
常にボールと一緒に動きまわり、真っ先にタックルします。動き続け、タックルし続ける勇気とタフさが求められます。
・ナンバーエイト(NO8/背番号8番)
フランカーの仕事に加え、もっとボール前に出る攻撃力が求められます。自由さもあり、フォワードのスターポジションです。
●バックス(BK)
グラウンド後方でゲームをコントロールしてチームをリードしていくため、足の速さやボールを蹴る能力の高い選手がつきます。
・スクラムハーフ(SH/背番号9番)
フォワードとバックスのつなぎ役です。試合中は、ずっとパスをし続けるので、小柄ですばしっこく動き続けることが求められます。
・スタンドオフ(SO/背番号10番)
チーム全体を動かす司令塔と呼ばれ、ゲーム全体をデザインする役目です。パスもキックもうまく、広い視野も求められる花形ポジションです。
・センタースリークウォーターバック(CTB/背番号12、13番)
ボールを持って前に出ることが多いポジションです。タックルする機会も多く、頑健な体躯も求められます。
・ウイング(WTB/背番号11、14番)
仲間が運んでくれボールをトライにするポジションです。チームでいちばん足が速い人が多いです。
・フルバック(FB/背番号15番)
キックを蹴ったり、相手キックを受けたりするポジションです。また、チームの後方に立つので、全体を動かす指示の声も重要です。ディフェンダーとしては「最後の砦」と呼ばれています。
ラグビー観戦の楽しみ方とは?
ラグビーを見るのが初めての人には特に、スタジアムで観戦することをおすすめします。
「大きな体の男性同士が本気でぶつかり合う姿は、格闘技を思わせる場面もあり、迫力があります。タックルしてぶつかり合う音を感じたり、スタジアムのお祭りのような賑わいを味わったりすることで、試合観戦がより楽しめるでしょう。ラグビーには細かなルールもあり、席から見えづらい場面などでは、試合を見ていてわかりにくいところもありますが、最初からルールをすべて勉強していかなくても、そのリアルな迫力を楽しみに行ってみてください」
では、いよいよ開幕した日本大会ではどう楽しんだらいい?