Q3. スマホだけじゃない! 5Gで社会はどう変わる?
5Gが普及すると、どのようなことが可能になるのでしょうか?
もちろん、もっとも身近な効果はスマホの通信速度が高速化することです。動画の視聴やテレビ電話が、より高画質になります。臨場感の高いVR映像や、情報量の多いAR映像なども、より充実するはずです。また、大容量通信を利用した高度なアプリも登場することでしょう。クラウド(インターネット上のコンピューター)が高速処理をしてくれるため、ナビゲーションや会話の同時通訳など、スマホのアプリもいっそう高機能化します。
そして、5Gの効果はそれだけではありません。これまで、移動体通信といえば携帯電話やスマホ、モバイルルーターなどに限られていました。しかし5Gでは、それ以外のさまざまな機器に組み込むことも想定されています。そうすることで、これまでにないサービスの登場が期待されているのです。その一部を紹介しましょう。
・自動運転
車載カメラやセンサーで収集した情報を、5G回線を利用して高速解析。フィードバックされた情報を元に、自動運転を行ないます。高速・低遅延の5G回線なら、「情報を得たが間に合わずに事故が起きてしまった」ということも防ぐことができます。
・ライブ観賞やスポーツ観戦
会場に多数のカメラを設置し、映像を配信。観客は手元のスマホやノートPCで、好きな視点のカメラを選択することができます。
・生活情報の取得
街中のセンサーやスマホから情報を収集し、よりピンポイントな、よりリアルタイムな情報を得ることができます。たとえば気象情報や渋滞情報、施設の混雑状況などがわかるようになるのです。
・多人数・高画質のビデオ会議
高速通信を活かして、スマホやタブレットでも4K画質・ハイレゾ音声・多人数でのビデオ会議が可能になります。「テレプレゼンス」と呼ばれる、まるで相手が目の前にいるような臨場感のビデオ会議も可能です。
・医療やヘルスケア
高解像度カメラや高感度センサー、ロボットアームなどを利用して、リモートでの処置や手術が可能になります。たとえば離島から搬送される救急ヘリの中で、医師が専門医からの指示を受けつつ緊急手術を行なう、といったことも可能になるわけです。わずかなタイミングのズレが命取りになる医療の現場でも、5Gの低遅延性が役に立ちます。
また、体重計や血圧計、活動量計などの情報を収集し、その膨大な情報を個人の健康維持に役立てるという使い方も考えられています。
Q4. 5Gはどのくらい普及している? 4Gから乗り換えるデメリットは?
NTTドコモ・au・ソフトバンクといった国内の大手キャリア(携帯電話会社)では、すでに2020年3月から5G回線での接続サービスを提供しています。新規参入の楽天モバイルでは秋頃から、その他のMVNO(格安SIMを提供する事業者)でも、今後サービスが開始される予定です。
5G回線を利用するには、「5G回線プランへの加入」と「5Gに対応した端末(スマホ)」が必要になります。現在、大手キャリアに加入しているなら、5G回線プランへの切り替えを申し込み、5G対応の端末を購入すればいいということです。
2020年6月現在、5G対応のスマホはNTTドコモで6機種、auで7機種、ソフトバンクで4機種(発売予定の製品も含む)。なお人気機種のiPhoneシリーズについては、5G対応製品はまだ正式発表されていません。発売は年末~2021年初頭にかけてとなるのではないかと予想されています。
一方、5G回線の弱点は、サポートエリアの狭さ。2020年6月現在では「エリア」といえるような広さすらなく、「特定の施設の付近で利用できる」という「スポット」の状況です。
【参照:各キャリアでの5G通信可能エリア】
・NTTドコモ https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/area/5g/5g_area.pdf
・au https://www.au.com/content/dam/au-com/mobile/area/pdf/5g_arealist.pdf
・ソフトバンク https://www.softbank.jp/mobile/network/area/map/
そのため当面は、5G回線を活用したイベントなど、特定のシーンでのみ利用できると考えたほうがいいでしょう。もちろん5G回線に切り替えたあとでも、4G回線を利用することで、4Gのエリアで通話や通信を行うことは可能です。
なお、総務省は各社に対して「5年以内に50%の基盤展開率の達成」を求めていますが、NTTドコモは97.0%、auは93.2%というさらに高い計画値を掲げているため、5Gのエリア拡大は急速に進むと考えられます。
もちろん海外でも、5Gの導入は進んでいます。
米国・韓国では2019年4月にサービスが開始され、中国でも2019年11月に開始されました。欧州では、スイスで2019年4月に開始されたのを皮切りに、イタリア、スペイン、イギリス、ドイツなどで提供されています。
現在の4Gと同様、世界中で5Gのスマホを利用できる時代がすぐそこまでやってきているといえるでしょう。
Profile
テクニカルライター / 湯浅顕人
1971年神奈川県生まれ、電気通信大学情報工学科卒業。パソコンムック『Windows究極の快適設定』『Windows深刻トラブル自力解決』(ともに宝島社)シリーズのほか、『アスキーPC』(アスキー・メディアワークス)、『家電批評』(晋遊舎)など多数のムック・雑誌に執筆。著書に『「捨てる! 」ほど快適になるパソコンのカラクリ』(宝島社)、『電撃PC[超解]Windows7たん』(アスキー・メディアワークス)など。