仏壇はあるけれど神棚は置いていない、そんな家は多いでしょう。とくに実家を離れてひとり暮らしをしている人に「神棚」は、縁遠い存在かもしれません。それが最近では、3万円ほどで一式が揃う手軽でコンパクトなタイプや、洋室中心のインテリアにも合うデザインで、マンションにもまつりやすい“モダン神棚”と呼ばれる神棚が登場。2021年には、東京・日本橋の商業施設「COREDO室町」に専門店がオープンするなど、いよいよ神棚が、現代の暮らしに溶け込む存在となるかもしれません。
デジタルが暮らしの中心になり便利さが優先される時代に、神棚がもつ意味とは? 「神棚マイスター」の窪寺伸浩さんに、まつり方などとともに教えていただきました。
まずは、神棚をまつる際の、基本的なルールから。
神棚の基本ルール1. まつる場所と必要なもの
神棚をまつるには、基本となるルールがあります。
「まず、神棚をまつる場所は南向きか東向きが好ましく、北向きは避けるようにします。そして、神棚にお供えするのは、お皿2枚、水玉1個、徳利1対、
榊の水やお供えした食物は基本的に毎日取り替え、榊の木は毎月1日と15日に新しいものにするのが好ましいです。このほかに、神棚にはお燈明(とうみょう)と言って、ろうそくの火を対に灯してお祈りします。火は繁栄を意味します。火は扱いに注意が必要なので、電池式を用意してもいいでしょう」(神棚マイスター・窪寺伸浩さん、以下同)
【ポイント】
・神棚をまつる場所は北向きを避ける。
・お供物や榊の木の水は、毎日取り替えるように心がける。
・榊の木は毎月1日と15日に取り替えるのが本来の流れ。
神棚の基本ルール2. 祈り方
日々のお祈りにも決まった流れがあります。
「拝礼の仕方は神社と同じく『二礼、二拍手、一礼』です。まずは、神棚に向かって2回お辞儀をして手を2回叩き、お祈りをします。そして最後にもう1回お辞儀をしましょう。
祈る内容は自由ですが、『給料が上がりますように』とか『恋人ができますように』というような個人的な願いではなく、今日も元気でいられる感謝をお伝えするのが好ましいです。そして、家族や世の中の平和や幸福を祈ることを心がけてみましょう。神棚に手を合わせる行為自体は、わずか15秒ほど。1日1回、神様に感謝や祈りをお伝えすることが習慣になれば、平穏な日常へのありがたみを感じるようになり、他人を思いやる行動へとつながるはずです」
【ポイント】
・神棚には毎日手を合わせる。
・神社の拝礼と同様に、二礼、二拍手、一礼をする。
・神様にお願いごとをするのではなく、感謝と祈りを捧げる。
正しいまつり方やお手入れを怠るとバチが当たる?
神棚の存在はとても神聖なもの。以上の神棚のルールに反する行為をしてしまったり、お手入れを怠ってしまったりすることで、バチが当たるのではないかと心配になります。
「神棚にまつるのは天照大御神で、私たちの大いなる親だとお伝えしました。親が子どもを不幸に陥れようとすることがないように、バチを与えるということはありません。もちろん、神棚をまつるためのルールやしきたりはありますが、すべてを正しくできなくても、3日坊主で終わってしまうことがあっても、災いが起きることはありません。昔から神棚は一家の主が祀る存在だと捉えられがちですが、女性や子どもが触れたりお手入れをしたりするのも、まったく問題ありません。会社の神棚ならば、社員が触れるのももちろんOK。
私の会社では神棚キットを販売しているのですが、これは小学生でも作れるような簡単なものにしています。神棚は神様をまつるお部屋。気持ちを込めて手作りをするのもオススメです。神棚をまつろう、1日に1回手を合わせようと思う姿勢に意味があるのです」
続いて、正統派から、ひとり暮らしの家にも取り入れられそうなコンパクトタイプ、マンションなどにも違和感なく馴染みそうなモダンタイプなど、実際に購入できる神棚を紹介します。
正統派からモダンタイプまで、豊富な神棚ラインナップ
窪寺さんの会社の神棚を見てみると、とても大きな天狗様がまつられていました。
「かなりのインパクトがありますよね(笑)。『
正統派の神棚は長さ1100ミリ、幅360ミリで、使われている木は樹齢数百年の節のない無垢の一枚板です。神棚は“志の大きさを表す”とも考えられているので、会社にまつるときには、存在感のある標準サイズのものが好ましいですが、自宅にまつるのは、無理なくまつれるサイズのものを選べばいいでしょう。とはいえ、とても神聖な場になるので、小さな神社が自宅の中にあると感じられるくらいの存在感があるといいですね」
会社にまつるなら古来の正統派神棚
クボデラ「正統本格セット しめ縄付き」
9万3280円(税込)
「幅1100×奥行き360×厚さ34mmの桧無垢板に、屋根の異なる三社造です。中央の社に天照大御神、向かって右に住む地域の氏神様である産土神社、左に生まれ故郷やつながりを大切にしたい崇敬神社のお神札をまつります」
省スペースで存在感のある神棚を飾るならコンパクトな三社造タイプ
クボデラ「ありがとうセットA」
3万4100円(税込)
「幅1100×奥行き360×厚さ34mmの桧無垢板に、屋根の異なる三社造です。中央の社に天照大御神、向かって右に住む地域の氏神様である産土神社、左に生まれ故郷やつながりを大切にしたい崇敬神社のお神札をまつります」
予算をおさえて本格的な神棚をまつるならシンプルな一社造タイプ
クボデラ「ありがとうセットB」
3万1944円(税込)
「幅500×奥行き300×厚さ30mmのハギ合わせの無垢板に、一社造のお宮がセットになったタイプです。お神札は3枚まで重ねてまつることが可能で、手前から天照大御神、産土神社、崇敬神社の順にお神札を重ねます」
子どもと一緒に「神棚」を考えるのにぴったりの手作りキット
クボデラ「手作り神棚キット」
3850円(税込)
「実際の木に触れながら、自分だけのオリジナルのモダン神棚が作れるキットです。国産の間伐材を使用しているので、環境保護にも貢献できます。お子さんがいる方は一緒に作ってみるのはいかがでしょうか」
おしゃれでインテリア映えする「モダン神棚」も注目!
神棚専門店のオンラインショップなどでも購入することができます。新しいデザイン性で注目されているモダン神棚は、洋風のインテリアやマンションでもまつりやすいことで注目されています。
・グッドデザイン賞受賞の、オブジェのようなモダン神棚
神棚の里 「かみさまの線 SANSHA NF フルセット」
5万50円(税込)
※榊・米・塩は付属しない
細い桧材を頑丈に組む「三方留め」という木工細工の技法で作られています。繊細な線のようなデザインが洋風のインテリアにも馴染みます。
・今の暮らしに合うミニマルな神棚
神棚の里「かみさまのたな かみさまのおみや」
1万9800円(税込)
石のような丸みの「かみさまのたな」シリーズ。やさしい印象で、洋風のお部屋にも溶け込みます。小さな穴を空けて壁にまつるほか、棚の上に置いてまつることもできます。
以上のように、現代の家にも違和感なく取り入れられる神棚が増えていますが、そもそも神棚にまつわる歴史や、今なぜ求められているのかなど最新事情をうかがってみました。