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昭和レトロブームで存在感際立つ!「モンチッチ」が50年も
日本と世界で愛される理由

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1974年の発売当初から日本で大ブームを巻き起こし、その人気が海外へと広がっていったモンチッチ。2023年の今なお世界で愛され続け、いよいよ2024年には“50歳”を迎えます。なぜモンチッチはこれほど人気者なのか?___誕生した背景から隠された魅力、そして今若者の間でどのように受け入れられているかまで、モンチッチを生み出した玩具メーカー、セキグチを直撃し、解き明かします。

「まったく新しい人形」として
受け入れられたモンチッチ

発売当初のモンチッチ。「製造が難しいこともあり、実は今でもモンチッチ以外で、ボディはぬいぐるみ、顔と手足はソフトビニールで作られている商品はあまり見かけません」

モンチッチは、1974年にセキグチから発売。ボディはぬいぐるみ、顔と手足はソフトビニールで作られている点が「今までにない」と話題になり、たちまちブームになったといいます。ヒットの要因となった“新しさ”はどのようにして生まれたのか、まずはモンチッチ誕生の背景に迫ります。明かしてくれるのは、株式会社セキグチ マーケティング部 シニアマネージャーとして、モンチッチのコラボレーション企画やライセンス業務、広報など、モンチッチに関わる業務を担当している幡野友紀さんです。

「セキグチは1918年に創業し、昔からソフトビニールを使った人形の製造販売を行ってきました。そんな当社がぬいぐるみにチャレンジし始めたのは、1960年代の後半ごろ。当時から人形を海外にも輸出していたのですが、世界に幅広く展開していくためには、人形だけでなく、動物やかわいらしいキャラクターのぬいぐるみにもチャレンジしたほうが良いのでは、と考えたことがきっかけでした」(幡野さん、以下同)

とはいえ、最初は苦労も多かったのだとか。

「人形とぬいぐるみは作り方がまったく異なるため、最初は苦労することも多かったようです。その状況を打破するきっかけになったのが、現・会長が当時のヨーロッパで見かけたというぬいぐるみ。しっかりとした型紙で作られていない、クタッとしたぬいぐるみのかわいらしさに感銘を受けたのだそうです。その後、当社でもそれをヒントにぬいぐるみ作りが行われるようになりました。しかし、ぬいぐるみの“表情”を作ることはどうしても難しかったため、当社がこれまで人形の会社として培ってきた技術を活かして顔はソフトビニールで作ることに。そして1972年に、ボディはぬいぐるみ、顔と手足はソフトビニールで作られた『くたくたシリーズ』が誕生しました。これがモンチッチの前身となるぬいぐるみです」

1972年に誕生した「くたくたモンキー」

『くたくたシリーズ』の翌年に発売した『マドモアゼル ジェジェ』も、モンチッチの誕生を語る上で欠かせない存在。

「ジェジェは、ソフトビニールで作った人形で、表情の愛らしさはもちろん、指しゃぶりをしているところがかわいいと評判になりました。指しゃぶりの仕草を取り入れたのは、当時女性が外に働きに出ることが増え始め、『お母さんを待っている間に指しゃぶりをする子どもが増えた』と言われていたから。こうした社会的な背景を取り入れたところも、人気の理由の一つになっているのではないでしょうか」

1973年に誕生した「マドモアゼル ジェジェ」

「そして1974年、赤ちゃんをイメージした新たな『くたくたシリーズ』を作る際に、ジェジェの指しゃぶりの仕草をヒントにして誕生したのがモンチッチです。フランス語で『私の』を意味する『モン』と『小さくてかわいいもの』を意味する『プチ』、またモンキーのモンとおしゃぶりをチュウチュウ吸っているところから、『モンチッチ』と名付けられました

クマ、タヌタヌ、チムたん、チャムは、「くたくたシリーズ」の時からいるキャラクター。現在も「モンチッチフレンズ」としてグッズなどを展開している。

海外でも人気者に!
モンチッチが愛される理由とは?

リニューアルを経た、現在のモンチッチ。モンチッチは現在も約30か国で販売されており、フランス・ドイツ・オランダ・ベルギーや中国・香港でとくに人気を集めているそう。

モンチッチは国内で発売された翌年、オーストリアを皮切りに海外への輸出もスタート。フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、アメリカなどにも進出し、世界中で人気者になりました。そんなモンチッチの特徴の一つが、詳細なプロフィールが作られていないこと。その理由について、幡野さんに伺いました。

「ぬいぐるみはたとえ量産品であっても、自分の家に迎えた一体に名前をつけたりかわいがったりしていくうちに、替えのきかない存在になっていきますよね。モンチッチも、手にした方それぞれに自由にかわいがってもらいたいという思いから、詳細なプロフィールは決めていないんです」

さらに、モンチッチが長年愛されてきた背景には、時代やトレンドにあわせて少しずつアップデートしてきたことがあるのだとか。

「モンチッチはこれまで大きなリニューアルを2回行っています。1回目は1985年で、それまでブルーだった目の色を茶色に変えました。当社ではもともと西洋的な人形を作っていたためモンチッチもブルーアイだったのですが、日本生まれだということがより伝わる茶色にしようと考えたことが、変更した主な理由です。

2回目は2016年で、時代やトレンドに合わせたビジュアルへと進化しました。例えば今の若者たちにも受け入れてもらいやすいよう、肌の色を赤みをおさえたナチュラルな色に調整しています。また、ぬいぐるみの生地もトレンドにあわせて変更。現在は柔らかくてふわふわした触り心地のぬいぐるみが人気になっているため、硬めの手触りだったモンチッチも、洋服を着せられるくらいの硬さは残しつつ、触ったときになめらかさを感じられるようアップデートしました」

イベントやコラボ企画を通して、
モンチッチと出会うためのきっかけをつくる

時代やトレンドに合わせて進化してきたモンチッチは、これまでさまざまなイベントやコラボ企画なども実施してきました。とくに代表的・特徴的なものを幡野さんに聞きました。

「モンチッチの歴史の中でも大きな挑戦だったのが、2010年にエアギターの日本大会に出場したこと。このときのことは、社内でも社外でも今なお語り継がれています(笑)。きっかけになったのは、モンチッチがたびたび売り場応援に行っていたお店で、エアギターのデモンストレーションイベントが開催されることになり、『モンチッチもやってみない?』と誘われたこと。迷いながらもステージに立ってみるとイベントは大いに盛り上がり、大会にも出場することになったんです。その後、モンチッチ自身が懸命にエアギターを練習した甲斐もあって、予選1位で日本大会に出場することができました。しかし世界大会への出場をかけて挑んだ日本大会は、1位と0.1ポイント差の準優勝という結果に……。私自身もすごく悔しかったのですが、エアギターに挑戦したことでモンチッチのパフォーマンスの幅が広がり、それ以降さまざまなイベントに参加するようになりました」

2010年エアギター日本大会決勝に出場したときの様子。

「そのほか、さまざまなコラボレーション企画も行っています。例えば、2019年に実施したのが『男はつらいよ』とのコラボ。作品の舞台である葛飾は、セキグチがオフィスを構える場所でもあり、『葛飾柴又寅さん記念館』で、寅さんの衣装をまとった『寅チッチ』のグッズを販売したり、イベントを実施したりしました。また、ティーンズメディアとのコラボでは、女子高生たちと一緒に商品開発を行ったことも。女子高生たちのアイデアを取り入れた『JOLモンチッチ』を制作しました」

寅さんとコラボレーションした「寅チッチ」。©松竹 ©SEKIGUCHI

女子高生たちのアイデアを取り入れて生まれた「JOLモンチッチ」

モンチッチのイベントやコラボレーションで意識しているのは、あまり縛りを設けず前向きにやってみる、ということ。モンチッチはぬいぐるみ商品なので、商品自体を手に取ってもらえなくなると、モンチッチが存在していることを伝える手段がどんどん減ってきてしまうからなんです。実際、お客様のなかにはコラボレーショングッズを購入して、そこからスタンダードのモンチッチを好きになってくださった方もいらっしゃいます。さまざまな層にアプローチできるようなイベントやコラボレーションを行うことで、今後もモンチッチと出会うためのきっかけづくりを積極的に行っていきたいです」

いよいよ50周年へ。
“レトロの象徴”を強みに、若者にもアプローチ!

2023年6月からスタートした、モンチッチの50周年プロジェクト。プロジェクトの具体的な内容や、若者を中心としたレトロブームとの親和性など、「モンチッチの今」について伺いました。

「2024年のモンチッチ50周年に向けて、今年6月に『株式会社モンチッチ』を設立し、『レトロで元気ッチ!プロジェクト』を発足しました。このプロジェクトは、“レトロの象徴”であるモンチッチが、少子化や高齢化といった課題を抱える日本の地域・地方を元気にするために、全国のレトロ文化を支援しようというもの。第一弾として、6~7月に浅草でスタンプラリーを実施しました。今後もさまざまな場所でイベントを開催していく予定です」

浅草で実施された「レトロで元気ッチ!プロジェクト」の様子。

「モンチッチは今の時代、『レトロを象徴する存在』『昭和を代表するおもちゃ』として捉えられることが多く、モンチッチを見た人からは必ずと言っていいほど『懐かしいね』と言われてきました。しかし、『懐かしい』という言葉にはポジティブな意味もある反面、『昔の方が良かった』『今の印象が薄い』という意味もあるような気がしていて……。今でも新たなグッズを販売し、さまざまなイベントやコラボ企画を実施している私たちからすると、昔のブームを追い越せていないのではと課題に感じていました。

しかしここ最近でレトロブームが到来し、昔のものが逆に新しくてかわいいと捉える人が若者を中心に増えていますよね。モンチッチがこれからも長く愛されるキャラクターでいるためには、若者への認知を広げていくことが不可欠なので、私たちは今の状況を大きなチャンスだと捉えています。そのため今は、50周年プロジェクトとしてレトロを全面に打ち出した企画を実施したり、レトロなテイストをグッズに取り入れたりと、“レトロの象徴”であることを強みとして活かしていく方法を考えているところです。レトロは一過性のブームではなくカルチャーになりつつあると感じているので、今後もレトロが好きな層に向けたアプローチも続けていきます」

モンチッチのおすすめグッズを紹介!

最後に、現在販売されているモンチッチのグッズの中から、幡野さんのおすすめをピックアップ、それぞれのおすすめポイントについても教えていただきました。

・50周年記念の第1弾

「レッツ!パレードモンチッチ」シリーズ
レッツ!パレード モンチッチ やわらかL 男の子 9680 円 (税込)
レッツ!パレード モンチッチ S 男の子/女の子 各3300 円 (税込)
レッツ!パレード ベビチッチ S 男の子/女の子 各3080 円 (税込)
レッツ!パレード モンチッチ 顔でかSSキーチェーン 男の子/女の子 各 2420 円 (税込)
レッツ!パレード モンチッチ マスコット 770 円 (税込)
レッツ!パレード モンチッチ ポーチ 1980 円 (税込)

「50周年記念の第1弾として販売しているシリーズ。『50周年の始まりを皆で行進して始めよう!』というイメージで、パレードのコスチュームを着たモンチッチや仲間たちのグッズを展開しています。ぬいぐるみのほかに、キーホルダーやポーチなども!」

・ポップなカラーリングとさらりとした肌触りが特徴

「モンチッチCOLORS キーチェーン」
左から、パープル・イエロー・ピンク
各1980 円 (税込)

「ポップなカラーリングとさらりとした肌触りが特徴の手のひらサイズのキーチェーンです。柔らかいボディなので、座らせることもできますよ。カラーは、パープル・イエロー・ピンクの3種類です」

・素材サイト『いらすとや』とコラボ

©Takashi Mifune ©SEKIGUCHI

「いらすとや×モンチッチ 顔でかキーチェーン」
(左から)うさぎ・いぬ・ねこ・くま
各2420円

「大人気の素材サイト『いらすとや』さんとコラボし、おなじみのキャラクターである、うさぎ・いぬ・ねこ・くまの着ぐるみを着たモンチッチのキーチェーンを展開しています。また、いらすとやさんに作画いただいたLINEスタンプも販売中です!」

50周年を迎え、さまざまなグッズが販売されたり、イベントが開催されたりと、盛り上がりを見せているモンチッチ。昔からのファンも新規のファンも、その魅力にあらためて触れてみてはどうでしょうか?

モンチッチ 公式サイト

取材・文=土居りさ子(Playce) 写真提供=セキグチ