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バルサ、決勝で強豪アーセナルを撃破!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2018」が残したもの

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ジュニア年代の最高峰とも言えるビッグトーナメント、「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」の決勝戦が8月26日、大阪・万博競技場で行われました。国内外から集まった24チームがナンバーワンを競い合う同大会で、ファイナルに勝ち進んだのは、優勝候補のFCバルセロナとアーセナルFC。ヨーロッパを代表するビッグクラブの下部組織同士の対戦となりました。

↑今大会から会場は東京から大阪へ。バルセロナとアーセナルの決勝は、かつてのガンバ大阪の本拠地でもある万博競技場で行われた。
↑今大会から会場は東京から大阪へ。バルセロナとアーセナルの決勝は、かつてのガンバ大阪の本拠地でもある万博競技場で行われた。

 

バルサの苦戦に番狂わせを期待

大会初日は台風20号の接近にともない、あいにくの悪天候に見舞われました。選手や観客の安全確保を最優先した運営サイドの配慮で、一部の試合が2日目に順延となりました。そんな天候の影響もあってか、大会3連覇を狙うバルセロナは、ヴィッセル神戸U-12との初戦から苦戦を強いられました。

トップチームで長く活躍したバルセロナのレジェンドのひとり、アンドレス・ イニエスタが移籍したことでも知られるクラブのアカデミー部門相手に、1ゴールをもぎ取って辛勝。続くガンバ大阪ジュニアには3対1で勝利したものの、グループリーグ3戦目のワールドチャレンジ街クラブ選抜との戦いではなんと、1対1のドローに終わりました。

↑今大会から設置されたモスト・インプレッシブチーム賞にはヴィッセル神戸U-12が選出。ローマやパリ・サンジェルマンなど強豪チームが参戦するTorneo Internacional La Liga Promisesの参加権が与えられた。
↑今大会から設置されたモスト・インプレッシブチーム賞にはヴィッセル神戸U-12が選出。ローマやパリ・サンジェルマンなど強豪チームが参戦するTorneo Internacional La Liga Promisesの参加権が与えられた。

決勝トーナメントに入ると、さらに接戦模様に。準々決勝のFCパーシモン戦は前半にマルク・ギウ・パス選手の2ゴールで2点を先行したものの、後半に2点を奪い返され、2対2でPK戦へ突入。最終的には11対10という劇的な幕切れで、バルセロナが勝ち上がりました。

続く準決勝になっても、バルセロナの調子は上がってきません。メキシコのクラブ・ティフアナの粘り強い守備の前に、決定的なチャンスを作りきれず。スコアレスのまま、決着は3本制のPK戦へ。6人目のシュートをバルセロナのGKジャラール・クルト・スレー選手が止めると、後攻のキッカー、アレハンドロ・ドミンゲス・ガラテ選手が決めて5対4で勝利。準々決勝から2試合連続のPK戦勝利によって、辛くもファイナルへと進んだのでした。

↑準々決勝から2試合連続でPK戦での辛勝。苦しみながらもファイナルへと勝ち進んだバルセロナだが、決勝では本来のパフォーマンスを披露した。
↑準々決勝から2試合連続、PK戦での辛勝。苦しみながらもファイナルへと勝ち進んだバルセロナだが、決勝では本来のパフォーマンスを披露した。

 

眠れる獅子が目覚めたかのよう

迎えた決勝戦では、バルセロナは開始早々アーセナルに先制点を奪われたものの、早すぎる失点が引き金となったのか、彼らのエンジンに火がつきます。1点ビハインドを覆すべくトップギアで攻めたてると、本来の“バルサらしい”パスワークを披露していきます。アーセナルのプレッシャーを巧みなコンビネーション・プレーでかわし、6分にブライアン・ラミレス選手のゴールで同点に追いつくと、さらに4分後には早くも逆転に成功。21分に途中出場のマルク・ギウ・パス選手が強烈なシュートを突き刺してリードを広げると、その後もバルセロナは攻守両面でアーセナルを圧倒。

決勝でようやく本来の姿を取り戻したバルセロナが、質の高いパフォーマンスを披露し、結果的に大会3連覇を成し遂げました。

↑6回目の来日にして5度目の優勝。バルセロナは世界ナンバーワンクラブのプライドを示し、大会3連覇を成し遂げた。
↑6回目の来日にして5度目の優勝。バルセロナは世界ナンバーワンクラブのプライドを示し、大会3連覇を成し遂げた。

 

世界の強豪チームを本気にさせる大舞台

なぜ決勝戦で、バルセロナは本来の姿を取り戻すことができたのか——。試合後、記者から質問を受けたバルセロナのダビド・サンチェス・ドメネ監督は理由のひとつとして、「選手のモチベーション」を挙げています。「やはり、決勝戦ということで気持ちの入り方が違っていたのかなと思います。対戦相手がアーセナルだったこと。同じヨーロッパの強豪クラブということで負けるわけにはいかない、と。少なからず影響があったと思います」

確かに驚くべきは、その“本気スイッチ”が入ったあとのバルセロナの姿です。

大会MVPに選ばれたアーセナルのマイォルス・ルイス・スケリー選手の自由を奪うタイトな守備もさることながら、一見シンプルなパス交換も、“あ・うん”の呼吸のなかで高度なテクニックを発揮していくリズミカルな攻撃で、アーセナルの選手たちはもはやお手上げ状態。これぞトップチームさながらの“バルサ・スタイル”! 本気になったバルセロナはどのクラブも止めることができない——。そう思わせるほど、スキを見せない圧巻のパフォーマンスを披露していたのです。

↑2回目の参加にして準優勝に輝いたアーセナル。大会MVPに選ばれたマイォルス・ルイス・スケリー選手(中央)は未来のスター候補のひとりだ。
↑2回目の参加にして準優勝に輝いたアーセナル。大会MVPに選ばれたマイォルス・ルイス・スケリー選手(中央)は未来のスター候補のひとりだ。

世界中のスター選手が集まるバルセロナは、まさに名実ともに世界のトップレベルにあります。ジュニア世代においても、バルセロナは特別な存在であるようです。

メキシコのクラブ・ティフアナのハイメ・クルス・グティエレス監督は「バルセロナと戦えるのは選手にとってもコーチにとってもすごいいいモチベーションになっています。もちろん、ただ戦うのではなく勝利を目指して戦いました。残念ながらPK戦で敗れてしまいましたが、全力を尽くすいいゲームができたと自負しています」。

また、日本勢として唯一ベスト4に勝ち残ったJFAトレセン大阪U-12の監督も、バルセロナが今大会のなかでも抜けている存在だったと言います。「我々も準決勝でアーセナルに勝って決勝でバルセロナと戦えたら最高でしたが。バルセロナの選手たちを見て思うのは、どの選手も自分たちがやるべきことを理解していて、正しいプレーを選んで実行するスピードが速い。迷いがない。その判断の速さを生かす高い技術を持っている。ほかのチームと比べると、まだ力の差があるのかなと思います」。

↑日本勢で唯一ベスト4に残ったJFA大阪トレセンU-12。8人制しか経験したことのない選手ばかりだったが、今大会4位と大健闘!
↑日本勢で唯一ベスト4に残ったJFA大阪トレセンU-12。8人制しか経験したことのない選手ばかりだったが、今大会4位と大健闘!

 

大会を通じて子どもたちを大きく成長させる

決勝戦後、大会実行委員長である浜田満さんは「今回はPK戦が多くて、そういう意味で言うと、参加チームのレベル差が縮まってきて、レベルの高い大会だったと思います。バルセロナも苦しみましたけれど、最後は仕上げてきて気持ちの入ったゲームを見せてくれたと思います」と総括。ここからも伺えるように、決勝戦こそバルセロナの圧勝劇に終わりましたが、それ以外のチームも「打倒・バルサ」を合言葉に、勇敢なチャレンジャーとして素晴らしいパフォーマンスを見せ、手に汗握る白熱したゲームが繰り広げられたのは事実です。

子どもたちの成長スピードの速さも、バルセロナを苦しめた要因のひとつに挙げられるでしょう。ジュニア世代は、大きな可能性を秘めた“原石の宝庫”です。「大会を通して選手たちが大きく成長してくれる」、と国内外チームの指導者たちが口をそろえるように、ジュニア世代の成長スピードには驚かされるばかり。いわゆる“ゴールデンエイジ”と呼ばれる10歳前後の年齢帯は、子どもたちの感性がもっとも発達し、才能を開花させる絶好のタイミングなのです。刺激を与えれば与えるほど吸収し、この時期に身につけた技術や感覚は大人になっても忘れないとも言われています。

そうした最適な時期に、バルセロナをはじめとした世界トップレベルと対戦できるのですから、子どもたちが成長しないはずはありません。ただでさえ“世界”を体感できる機会が少ないなか、このような貴重な経験が日本でできるとは、あらためてこの大会を開催する意義の大きさを感じずにはいられません。

↑最終順位は、優勝がバルセロナ、準優勝がアーセナル、3位がクラブ・ティフアナ、4位はJFAトレセン大阪U-12。以下、中国サッカー協会U-12選抜、名古屋グランパスU-12、ヴィッセル神戸U-12、FCパーシモンと続く。個人表彰式では、6ゴールを決めた名古屋グランパスU-12の杉浦駿吾選手が得点王を受賞。ダイワハウスMVP賞には、アーセナルのマイォルス・ルイス・ケリー選手が選ばれた。
↑最終順位は、優勝がバルセロナ、準優勝がアーセナル、3位がクラブ・ティフアナ、4位はJFAトレセン大阪U-12。以下、中国サッカー協会U-12選抜、名古屋グランパスU-12、ヴィッセル神戸U-12、FCパーシモンと続く。個人表彰式では、6ゴールを決めた名古屋グランパスU-12の杉浦駿吾選手が得点王を受賞。ダイワハウスMVP賞には、アーセナルのマイォルス・ルイス・ケリー選手が選ばれた。

世界最強チームと戦える「U-12ジュニアサッカー ワールドチャレンジ」ですが、日本中の子どもたちに世界の強豪との対戦を経験させたいという思いから、今回もスペシャルチームが編成されました。前回大会同様、「街クラブ選抜セレクション」を全国4カ所(東京、静岡、大阪、熊本)で実施。選ばれた68名を、大会にグループリーグから参加する「ワールドチャレンジ街クラブセレクション」、エキシビジョンマッチに参加する「大和ハウスDREAMS」、「大和ハウスFUTURES」の3チームに分けて編成。「ワールドチャレンジ街クラブセレクション」はグループリーグでバルセロナに引き分け、DREAMSはバルセロナに0対3で敗れたものの、FUTURESはアーセナルに1対0で勝利しています。

「U-12ジュニアサッカー ワールドチャレンジ」での貴重な経験を経て、将来、世界へと羽ばたくスター選手が生まれる日もそう遠くはないでしょう。

 

取材・文=小須田泰二 撮影=真名子