【うど】【こごみ】
下処理はどうする?
続いては、うどとこごみの2種類の山菜を使ったレシピです。
うどとこごみについては、下処理はしなくてOKだと蓮池さんは言います。
「うどは、酢水にさらすレシピもありますが、さらしているうちに風味も飛んでいってしまいます。市販されている軟白のウドなら、そのまま使うのがちょうどいいと思います。皮にも風味があるので剥かずに使います。ちなみにうどは、白いものの方がアクは少なく、緑色のものは風味もアクも強いのです。煮物や炒め物にするなら白いものの方が食べやすいのですが、ジェノベーゼにするときなど、濃い山菜の味が必要なときは、緑色の方がおすすめです。
こごみは、くるくると巻いたところにごみが入っていないか、手にまとめて持ってパサパサと振るくらいで大丈夫。茶色く変色してしまったところは、つまんで取り除きます」
「うどとこごみの帆立あんかけ丼」
「山菜ととても相性がいいのが、実は貝類なんです。貝の出汁が出た煮物は、山菜の苦味や独特な香りとよく合います。福島県には、帆立の出汁で野菜を煮る“こづゆ”という郷土料理があるのですが、それをアレンジして山菜を入れ、あんかけ丼にしました。旨味の出た出汁を余すことなくいただける、優しい春の味のどんぶりです。うどもこごみも下処理がいらないので、簡単に作ることができますよ」
【材料(2人前)】
・うど……1本
・こごみ……6~7本
・昆布……5cm長
・油揚げ……1/2枚
・帆立(缶詰)……1缶(65g)
・しいたけ……1枚
・酒……大さじ1
・しょう油……小さじ1と1/2
・塩……適量
【作り方】
1. うどは細く斜めに切る。油揚げとしいたけは細切りにする。
「うどは、白い部分を薄切りにし、緑色のところはざく切りにします」
2. 昆布と水を沸かしたら昆布を取り除き、帆立、しいたけと油揚げ、うど、酒を入れる。
「帆立は生のものでも構いませんが、缶詰を使う場合はだし汁ごと入れます。その方が旨みが出るので、缶詰の方がおすすめですよ」
3. ひと煮立ちしたら、しょう油とこごみを入れて、さっと沸かして火を止める。
「こごみはあっという間に火が通るので、煮すぎないよう注意しましょう」
4. 水溶き片栗粉を入れる。
「とろみづけをしたら完成です。どんぶりにかけるので、スープのようにゆるくなりすぎないよう、しっかりととろみづけします」
【花わさび】
最後に紹介するのは、花わさびという山菜。花わさびとは、わさびから生えた茎が蕾をつけた部分を収穫したものです。
花わさびのしょう油漬け
「花わさびは本当に不思議な植物で、買ってすぐに生のまま食べても、全然辛くないんです。ただの葉っぱといった味がします。でも、これを叩いたり振ったりして刺激を与えると、どんどん辛味成分が出てきて、わさびのような香りと辛みが出てくるんです。
アク抜きはしませんが、辛みを出すような下処理をする必要があります。この時期にしか食べられない貴重な山菜なので、ぜひ挑戦してみてください。しょう油漬けにしたものは、2週間程度冷蔵庫で日持ちします。ローストビーフなど牛肉と合わせて食べるのもおいしいですし、今回はしらすをかけてオリーブオイルを垂らしてみました」
【材料(2人前)】
・花わさび……250g
・塩……小さじ1
・しょう油……50ml~
【作り方】
1. 花わさびを2cmほどの長さに刻み、塩揉みをする。
「揉み込むことで辛みが出てくるのですが、あまり強く揉んでしまうと、シャキシャキした歯応えもなくなってしまいます。ここでは塩を全体に馴染ませるように、さっと揉むだけにしましょう」
2. 1を沸騰直前のお湯に20秒ほど浸けて、すぐに引き上げる。
「沸騰したお湯でぐらぐら茹でてしまうと、風味があっという間に抜けていってしまいます。必ず沸騰直前のお湯か、沸騰したお湯に水を差して、少し温度を下げてから使います」
3. 水切りした花わさびを密閉容器に入れて、しっかり振ってから5分ほど置く。
「花わさびの茎のすべてに刺激がいくよう、まんべんなく振ります。この作業を地元では“怒らせる”とか“痛める”と言うんですよ」
4. 食べてみて辛みが出てきていたら、だししょう油をまぶして瓶に入れる。
「保存瓶にぎゅうぎゅうに入れておくと、花わさびが空気に触れず劣化を防ぐことができます。空気に触れると、どうしても香りが飛んでしまうので、密閉容器よりも完全に密閉できるのに近い瓶や保存バッグがおすすめです」
下処理が難しいと思っていた山菜も、ひとつひとつの特徴が分かれば手を伸ばせそうですよね。山菜の旬は本当に短く、ついこの間まで並んでいたと思っても、あっという間に市場から姿を消してしまいます。見かけたら逃さず、春の味を楽しんでみてください。
Profile
料理家 / 蓮池陽子
ビストロ勤務の後、料理教室で講師を務める。アウトドアが好きで、山菜や貝などの食材集めを楽しんでいたなか、自然の恵みとその土地にあるストーリーを大切にしたいと考えるようになる。現在は、”食の物語を紡ぐしごと”をコンセプトにケータリングや料理教室を開き、フードコーディネートやメニュー開発などを行っている。また、月に数度は「めしと酒 はすいけ」を開店、見つけてきた旬の食材を使ったおつまみを出している。
HP https://www.atelierstory.jp/
Instagram めしと酒 はすいけ 山菜料理教室
取材・文=吉川愛歩 撮影=安藤佐也加(料理) 編集協力=Neem Tree