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いつもは脇役の野菜を食卓の主役に!夏野菜の定番「きゅうり」の
おいしさ再発見レシピ

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一年中手に入るきゅうりですが、旬は7月。これから一年でもっともおいしい季節を迎えます。ところが、きゅうりの出番というと、サラダやお漬物など代わり映えのしないものになりがちで、アレンジ料理を思いつきにくい食材の一つではないでしょうか。

夏野菜の定番でお財布の味方でもあるきゅうりをごちそうにする、いつもと一風変わったレシピを、ベジタブル&フルーツアドバイザーの高橋千帆さんに教えていただきました。

夏バテの強い味方!
実はきゅうりにも栄養がたっぷり?

きゅうりは水っぽく栄養価がないと言われていますが、実際はどうなのでしょうか?

「たしかに、きゅうりの95%は水分でできています。それが、栄養価はないと思われがちな理由かもしれません。東洋では生で食べると余分な体の熱をとってくれると言われています。必要な水分を体内に取り込みながら、熱を体の外に逃してくれるきゅうりを、中国では子どもたちが遠足に持っていくほどです。
また、カリウムや植物に存在する緑色の天然色素である葉緑素の1種、イソクエルシトンが含まれており、加熱することで効力を発揮します。これらには利尿作用があり、体内の毒素や老廃物を排出する作用があるので、むくみの予防と改善に役立ちます。
暑さの続く夏に、自然の恵を受けて育った旬のおいしいきゅうりをいただくことで、効率的に栄養をしっかりと摂ることができるんですよ」(ベジタブル&フルーツアドバイザー 高橋千帆さん、以下同)

おいしいきゅうりの見分け方と保存方法

続いて、店頭でよりおいしいきゅうりを見分ける方法と、旬のおいしさを逃さない最適な保存方法を教えていただきました。

■ おいしいきゅうりの見分け方

1.濃い緑色をしている
「太陽の光を多く浴びたきゅうりは色が濃くなります。黄緑や黄色のきゅうりは日照不足のため栄養が不足していることも」

2.触ると痛いぐらいに尖ったイボがある
「手できゅうりを持った時にチクチクとした感触あるものは新鮮で、実がぎっしりと詰まっている証拠です」

3.太さが均一
「太さが同じきゅうりは、実の中の水分量が均一で良質です。逆に、どちらかが膨らみ、反対がしぼまっているとス(空洞)ができていることがあります」

4.両端が、しなびたりしぼんでいたりしない
「端がふにゃっとしていたり、細くしぼまっているきゅうりは、元気がなかったり、すでに食べごろを過ぎてしまっています」

■ きゅうりを長持ちさせる保存方法

「きゅうり、トマト、なすのようにぶら下がってなる野菜を『ぶら下がり野菜』と呼びます。ぶら下がり野菜は寒さに弱いため、1本ずつをキッチンペーパーや新聞紙にくるみ、ザルなどの風通しの良い容器に入れて10℃前後で保存するのが適しています。冷蔵庫に入れると、黒く変色をしたり、食感が変化したり、味が低下したりする低温障害になることもあるため注意が必要です。気温の高い夏場は冷蔵庫の野菜室に、気温の低い冬場には冷暗所で保存するのがおすすめです。
また、きゅうりは切ると痛みが早くなります。切ったきゅうりはラップでくるみ、10〜13℃の冷蔵庫の野菜室で保管しましょう」

きゅうりが苦手な原因!?
青臭さをとる方法

独特の青臭さが苦手という人も多いきゅうりですが、ひと手間かけることでとてもおいしく食べられます。この青臭さを取り除くにはどうしたら良いのでしょうか?

「きゅうりの青臭さの正体はピラジンという成分です。このピラジンには、血液をサラサラにして血栓を防ぐ効果もあり、きゅうりの皮や種の部分に多く含まれます。青臭さを取るには次のような方法があります」

1.皮や種を取り除く
「もっとも手っ取り早のが、皮と種を切り取ってしまうこと。こうすると、きゅうりが苦手な方や子どもでも食べられるようになります」

2.塩でこすり熱湯をかけ水気を拭く
「たっぷりの塩できゅうり全体をやさしくこすり、水気が出てきたところで熱湯をサッとかけたら水分を拭き取りましょう。皮や種を残して食べたい場合にはこちらがおすすめです」

3.きゅうりのヘタの部分を切り、切り口をすり合わせる
「古くから行われてきた手法です。ヘタの部分を2つに切り、両方の切り口をクルクルと30秒ほどこすり合わせます。切り口をこすり合わせているとぶくぶくと白い液体が出てきます。しっかりと洗い流すことによって青臭さを解消できます」

【レシピ1】お弁当のおかずにもおすすめ
「きゅうりと高野豆腐の炊き合わせ」

水分量の多いきゅうりはどうしても足が早いのですが、煮物にすることでいつもより長く保存することができます。出汁(だし)に入れて煮るだけの簡単でおいしいレシピです。

「高タンパク質の摂れる高野豆腐ときゅうりの炊き合わせは、冷蔵庫に入れておけば3日間はおいしく食べられます。温かいままでもおいしいですが、夏は冷やしていただくのもおすすめです。多めに作ってお弁当の一品にすることもできるのが良いところ。お弁当に入れる際には高野豆腐を小さく切り、水分を少し減らしておけば液ダレの心配もいりません。今回は作りおきにもおすすめのため、4人分で紹介します」

【材料(4人分)】

・高野豆腐……4〜6枚
・きゅうり(大)……2本
・出汁……500ml
・醤油……大さじ2
・みりん……大さじ3
・酒……大さじ2
・塩……小さじ1/2
・しょうが(すりおろし)……適宜

【作り方】

1.高野豆腐をボウルに入れ50℃の湯を注ぐ。20分ほどつけておく。

「高野豆腐がふっくらともどせるように、たっぷり多めのお湯に浸しましょう」

2.しっかりと水気を絞り、半分に切る。

「高野豆腐が潰れないように両手でやさしくゆっくりと水気を出します。大きめに切ったほうが盛り付けたときにきれいです」

3.きゅうりはヘタを切り、ピーラーを使い皮をむく。

「皮に苦味があるのでしっかりと皮をきれいに剥き取りましょう。そのほうが食べやすい味に仕上がります」

4.きゅうりの長さを3等分にし、それぞれ縦に半分に切って包丁で種を切り取り除く。

「種の部分は熱を入れると形崩れしやすいです。きゅうりを煮物に入れるときは取り除くようにしてください。スプーンで取ることもできますが、包丁で切り取るほうがよりきれいな仕上がりになります」

5.鍋に出汁、醤油、みりん、酒を入れ火にかけ、一煮立ちさせる。味を見ながら塩を入れる。味が整ったら、高野豆腐を入れ、落としフタをして弱火で10分ほどふっくらとするまで煮る。

「しっかりと味を染み込ませたいので、落としフタをしましょう」

6.きゅうりを入れ、5分ほど煮たら火を止める。粗熱が取れたら器に入れ、冷蔵庫で冷やす。

「きゅうりが透明になったら火を止めます。冷やすことでさらに味が染み込みます」

7.器に盛り付け、お好みですりおろししょうがを添える。

「高野豆腐を並べてからきゅうりを添えていくときれいに盛り付けられます」

【レシピ2】海鮮と合わせてメインのおかずに変身!
「きゅうりとホタテの香り春巻き」

パリッとした食感のあとに、きゅうりと海鮮の味がジュワッと口いっぱいに広がります。大葉としょうがの香味野菜が味に深みを与え、まさにごちそうといえるでしょう。

「お刺身が少し余ってしまったときなど、きゅうりと一緒に巻いて春巻きにすると、一気に華やかなごちそうになります。しょうがを入れると味にアクセントがつき、食材の良さを引き立たせてくれます。小さなお子さんのいるご家庭では、しょうがをほんの少量にするなど調整をしてください」

【材料(2人分)】

・春巻きの皮……3枚
・きゅうり(大)……1本
・ホタテ貝柱大(刺身用)……3個
・青しそ……6枚
・しょうが(千切り)……40g
・醤油……少々

〈つけだれ〉
・梅干し(小)……1個
・お酢……小さじ1
・しょうゆ……小さじ1/2
・お水……小さじ2強

【作り方】

1.きゅうりはヘタを切る。ピーラーを使い皮をむく。長さを2等分にする。それぞれ縦に4等分に切って包丁で種を切り取り除く。

「皮と種があってもいいですが、しっかりと皮と種を取ることにより舌触りのいい食感になります」

2.春巻きの皮をキッチンバサミで対角線で半分に切る。

「皮を半分にカットすることで薄く巻くことができ、食材の食感が伝わりやすくなります」

3.ホタテは包みやすい大きさに細かく切り、醤油をかけ下味をつける。梅干しは種を取りたたき、お酢、醤油、お水と混ぜ合わせる。

「下味としてさっと醤油をかけなじませます」

4.春巻の皮に等分にした具材(青しそ、きゅうり、ホタテ、しょうが)をのせる。

「ホタテは一口サイズに切っておいたほうが食べやすいです。きゅうりの長さが春巻きのできあがりサイズになるので盛り付けのバランスを考えて調整しましょう」

5.両端の皮を折りたたんでから転がすように巻く。水でのり付けする。

「大葉で巻いてから、春巻きの皮で包むと具材を包みやすくなります」

6.揚げ油を熱して(5)を中〜強火で揚げ、皮がパリッとしたら取り出して油をよくきる。

「皮の巻終わりの面を下にしてフライパンに入れれば、形が崩れにくく揚げられます。ガス台に温度調整機能がある場合は170℃に設定しましょう。しっかりと火を通さなければいけない食材は入っていないので、外の皮がパリッとなるくらいがちょうど良い揚がり具合です」

7.揚げ終わったら、つけだれと別の器に盛り付ける。

「しょうがの香りがしっかりとあるので、そのままでもおいしくいただけます。梅肉の入ったつけだれでよりさっぱりとした味になります」

【レシピ3】シャキシャキ食感がクセになる
「翡翠きゅうりの卵炒め」

きゅうりの翡翠(ひすい)のような黄緑色と卵の黄色が美しい炒めもの。余ったきゅうりをまとめて使いたい時にも、炒めものなら多く使うことができます。シャキシャキとしたきゅうりの食感を楽しみながらいただけるレシピです。

「生できゅうりを食べると、体質によっては冷え過ぎてしまう方もいます。火を通すことで体への負担が少なくて済みます。きゅうりがきれいな色になったくらいが炒め具合の最適なタイミング。中国では定番の家庭料理の一つです」

【材料(2人分)】

・卵(小玉)……4玉
・きゅうり(大)……2本
・鶏ガラスープの素……大さじ1弱
・ニンニク……1片
・酒……大さじ1
・ごま油(太白ごま油推奨)……大さじ2
・塩……ひとつまみ
・胡椒……適宜

【作り方】

1.きゅうりはヘタを切る。ピーラーを使い皮をむく。縦に半分に切って包丁で種を切り取り除く。包丁を斜めに入れ2cmほどの削ぎ切りにする。ニンニクはスライスする。

「皮を剥いたほうが卵と味がなじみやすくなります。削ぎ切りにすることで見た目も美しく、食べやすいです」

2.ボウルに切ったきゅうりを入れ、鶏ガラスープの素と、酒、ニンニクを入れ混ぜ合わせる。

「鶏ガラスープの素とニンニクの量はお好みで調整してください」

3.ボウルに卵を割り入れ、塩を加えて溶く。フライパンに油を入れ中火にする。しっかりとフライパンが温まったら一気に卵を入れ混ぜながら炒める。半熟状になったら火をとめ一度、卵はボウルにうつす。

「後でまたフライパンに卵を戻すので、半熟くらいの火の通り加減にしておくことがポイントです。炒めすぎに注意しましょう」

4.フライパンに(2)を入れ、中火で炒める。きゅうりが透き通ってきたら、火を止める。(3)をフライパンに入れ、余熱で炒め合わせる。

「きゅうりは軽く火が通るくらいで大丈夫。さっと炒めるくらいがちょうど良いです」

5.器に盛り付け、お好みで胡椒をふりかける。

「色味も夏らしいきれいな色合いです。ほかにそうめんがあれば、一食の栄養バランスが摂れます」

マンネリ食材になりがちなきゅうりですが、皮や種をと取ることで味や食感が良くなり、さらに火を通してもおいしく食べられることを知れば、アレンジの幅が広がります。きゅうりが旬のこの季節に、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか。

Profile

料理研究家 / 高橋千帆

ベジタブル&フルーツアドバイザー。1980年、北海道生まれ。二女の母。調理、菓子の学校を卒業し、ベーカリー、パティスリー、カフェ、紅茶専門店など、さまざまな菓子と料理の経験を重ねる。2007年より、インターネット販売、店舗PR用の菓子製作など、菓子を中心とした活動に従事。その後、出産、子育てを経て、菓子、料理に関わる活動を再スタート。「季節を食べることを楽しみたい」「家族の『おいしい!』が聞きたい」をモットーに、日々おいしい料理を研究中。
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取材・文=癸生川美絵(Neem Tree) 撮影=矢部ひとみ