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きのこのスペシャリストが教えるしいたけ・まいたけ・エリンギの
下処理と、うまみたっぷりレシピ

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秋の味覚「きのこ」は、ビタミンやミネラル、食物繊維など栄養たっぷり含まれる食材です。種類によって見た目、味、食感も多彩なので食べ飽きることもなく、使い勝手も抜群。そんな魅力満載のきのこですが、下ごしらえや調理の仕方を間違えると、うまみも栄養も逃がしてしまうことに……!

日本きのこ学会代議員、日本きのこマイスター協会の講師でもあり、ご長寿料理番組「キユーピー 3分クッキング」の番組制作ディレクターでもあった料理研究家の木田マリさんに、前編では、きのこの誤った食べ方や正しい調理方法について教えていただきました。この後編では、もっとも扱いやすい基本の3種、しいたけ・まいたけ・エリンギを使ったそれぞれのレシピを教えていただきます。

定番きのこ3種の下ごしらえの方法

■ しいたけ

「どんな料理にもあう、うま味が強いきのこ。丸ごと加熱するときはひだを上に向けて加熱すると、しいたけから出た汁がこぼれません」

「軸についている黒っぽく硬い石づきを切り落とします。軸は捨てずに手で縦に割いて、煮物や炒めもののうま味として利用しましょう」

■ まいたけ

「包丁を使わず、手で割れるので、調理が簡単です。独特な香りとサクサクとした食感が人気で、食べ応えがあります。β-グルカンの含有量はトップクラス」

「スーパーで販売されている菌床のまいたけは、石づきがついてないものが多いので、捨てる部分がありません。包丁で切るのではなく、手でほぐすことで断面が複雑になり食感に変化が出ます」

■ エリンギ

「コリコリとした弾力のある食感で、クセがありません。きのこの中でも保水性が高く、噛んだ時にジュワッとジューシーで、加熱しても煮崩れしにくいのが特徴です。縦切りはシコシコと歯切れよく、横切りはプニュプニュとやわらかな噛み応え。同じ1本でも、下は輪切り、真ん中は縦ぎり、カサは放射状に切ると、3通りの食感が楽しめます」

「捨てるところはありません。大きいものは3等分、それ以外のものは2等分にして、切り方を変えてみましょう」

ここからは、下処理を行ったしいたけ・まいたけ・エリンギそれぞれのレシピを、木田さんに紹介していただきます。

エリンギのシンプルソテー

「輪切り、縦切り、乱切り、3つの食感が楽しめます。じっくり焼いたエリンギは香ばしくてジューシー。味つけは塩のみにして、まずはシンプルな方法でエリンギのおいしさを味わいましょう」

【材料(2人分)】

・エリンギ……太めのもの2~3本(100g~150g)
・油……大さじ1/2
・塩……少量
※お好みでレモンとブラックペッパーを適量

【作り方】

1.大きめのエリンギは長さを3等分、それ以外は2等分に切る。下の根元のほうは1.5㎝ほどの輪切り、真ん中は1.5㎝厚さの縦切り、上のカサに部分は乱切りにカットする。

「切らずに一本丸ごと焼く方法もおすすめ。断面が少ないため水分の損失が少なく、とってもジューシーなソテーになります」

2.オリーブオイルを入れたフライパンを中火で熱し、フライパンが温まったらエリンギを重ならないように並べる。動かずにじっくりと焼く。焼き色がついたら裏返し、両面を香ばしく焼く。

「箸で動かせば動かすほど、水分が出て、うまみと栄養が抜け出てしまいます。火の通りが均一になるよう、エリンギは重ねず、フライパンに広げてください。上下を一度だけひっくり返し、裏表を焼く感覚でソテーするとよいでしょう」

3.器に盛り、塩をふる。お好みでレモンや黒こしょうをそえて。

「調理中に塩をかけると、水分と一緒にうまみが抜けてしまうため、お皿に盛り付けたあとに塩をかけましょう」

きのこのドライカレー

「きのこがたっぷり入った風味豊かな、ヘルシーなドライカレー。煮込まないので15分で完成します。数種類のきのこを使うことで、さまざまな味わいと食感がある楽しい一皿です。粗めのみじん切りにすると消化しやすく、栄養も取りやすくなります。きのこに含まれるグアニル酸、トマトのグルタミン酸、鶏ひき肉のイノシン酸、と3種のうまみの相乗作用で満足感もたっぷり。きのこの栄養を丸ごといただきましょう」

【材料(2~3人分)】

・きのこ(お好きなもの、できれば複数種類あわせて)……150g
・鶏ひき肉(ももがおすすめ)……100g
・玉ねぎ……1/8個(30g)
・にんにくのみじん切り……小さじ1
・しょうがのみじん切り……小さじ1
・クミンシード……小さじ1(なくても可)
・トマト中……2個(約200g)
・サラダ油……大さじ1

〈A〉

・カレー粉……大さじ1
・中濃ソース……大さじ1/2
・塩小さじ……1/4
・こしょう……適量、
・塩、こしょう……各適宜
・はちみつ、無糖ヨーグルト……各大さじ1/2

【作り方】

1.きのこは石づき部分があれば除き、1cm角のみじん切りにする。玉ねぎ、にんにく、しょうがもすべてみじん切りにする。

「数種類のきのこを組み合わせることで、さまざまな食感を楽しめます」

2.フライパンに油とにんにく、しょうが、クミンシードを入れて中火にかけ、油が温まってきたら火を弱め、香りがたつまで炒める。玉ねぎを加え、薄茶色に色づくまで炒める。

「クミンシードの香気成分は油に溶けるため、油で炒めることで香りを引きだします。ただし、焦げやすいため中弱火でじっくりと炒めましょう。玉ねぎは甘味を引き出すため、薄茶色になるまで炒めます」

3.きのこを加えて、しんなりするまで炒めたら、鶏ひき肉を色が変わるまで炒める。切ったトマトとAを順に加え、混ぜながら炒める。水分が足りないようなら大さじ3ほど足して、時々かき混ぜながら5分ほど煮込む。汁気がなくなったら、味をみて、塩と胡椒、はちみつとヨーグルトを加え、味を調える。

「きのこは食物繊維が多いため、水分が抜けカサが減ったとしても食感がしっかり残ります。ソテーとは異なり、ここではきのことトマトの水分を蒸発させるように、混ぜながらしっかり炒めましょう」

4.ご飯を器に盛り、カレーを添える。お好みで、スライスしたゆで卵をのせる。

「ごはんをイタリアンパセリライスにしてもいいですね。イタリアンパセリを温かいごはんに混ぜこむことで、湯通しわかめのようにふんわり鮮やかな緑に変化します。冷めても鮮やかなまま。いっしょに塩を適量混ぜこむことでお店で食べているようなカレーのライスにすることもできます」

マイタケの肉巻きレンジ蒸し

「マイタケの食感と香りが楽しめる、ヘルシーなおかずです。歯ごたえのしっかりとしたまいたけは、少量のお肉でも食べごたえがあります。レンジ調理のため、あっという間に完成。下に敷いた豆苗もマイタケと豚肉のうまみを吸って、シャキシャキとしたおいしさです」

【材料(2人分)】

・まいたけ……1パック
・豚バラ肉薄切り……3枚(60~80gほど)
・豆苗(小松菜や白菜でも)……1パック
・ポン酢しょうゆ……適量
※お好みで大根おろし、すだちを添えて

【作り方】

1.まいたけは手で大ぶりにほぐしわける。豚肉でくるむように巻く。

「小分けしたまいたけは、サイズがそろってなくてもかまいません。ざっくりとした調理法でもおいしく仕上がります。忙しいときの時短料理におすすめです」

2.耐熱容器に豆苗(根元を切り落とし、長さを半分に切る)を並べ、その上に1をのせ、ラップをふんわりとかける。電子レンジで4分ほど加熱する。

「まずは4分間加熱し、様子をみながら加熱時間を増やします」

3.器に盛り付け、大根おろしとすだちを添え、ポン酢しょうゆでいただく。

「大根おろしとすだちを加えることで、秋にぴったりの一皿になります。また薬味を添えるだけで、簡単な料理なのに豪華さもアップ。野菜もたくさん食べられるレシピです」

一般に出回るきのこは菌床栽培のため天候に左右されず、価格変動が少ないため、お財布にやさしい食材です。また、洗う手間もなく、手で割けるので下ごしらえも簡単。時短料理の強い味方にもなります。今回紹介したレシピのように、きのこを脇役としてではなく、ぜひメインの食材として使用してみてください。

Profile

料理研究家 / 木田マリ

テレビ料理番組「キューピー3分クッキング」のディレクターを経て、料理研究家・フードコーディネーターに転身。女子栄養大学非常勤講師。さまざまなジャンルの料理のレパートリーを持つ。なかでもキノコ料理に詳しく、日本きのこ学会代議員、日本きのこマイスター協会の講師としても活躍している。フードコーディネーターとして、テレビ、雑誌、広告などにも広く関わっている。

取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=真名子