中国をはじめ世界では、ヘルシー志向も相まって魚の消費量が増えているといいます。一方、古くから魚を食べてきた日本では、年々減少の一途をたどっているのが現状(農林水産省水産庁調べ)。魚は「扱い方や調理法がわからない」と、食卓にのぼりにくい食品となってしまっているのです。
でも、魚は栄養価が高く、調理法にも多彩なバリエーションがある魅力的な食材。まずは、苦手意識を抱えるきっかけになっている“さばき方”について、基本をマスターしてみましょう。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、魚料理の基本となる3種の魚のおろし方を教えていただきました。ここでは、一番扱いやすいとされる「アジ」を取り上げます。
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魚を“さばく”と“おろす”の違い
ちなみに、魚を“捌く(さばく)”とは、水洗いを含む魚の解体作業全般を指し、魚を“下ろす(おろす)”とは魚を決まった形で切り分けることを指します。魚を左右の身と骨に切り分ける“三枚おろし”などがあります。
包丁は特別なものが必要?
今回は、一般の家庭にある三徳包丁を使って魚をおろしていただきました。魚をおろすには、出刃包丁や柳刃包丁など、魚専用の包丁があった方が上手にできますが、このくらいのサイズの魚であれば、三徳包丁でもおろすことができます。よく研いだ包丁で行いましょう。
もっとも調理しやすいのは「アジ」
魚の中でもっとも調理がしやすく、魚を下ろすときに基本となるのが「アジ」。アジは身がそれほど柔らかくないので崩れにくく、大きさもほどよいので、初心者が扱うのにもっとも適しています。また、アジを下ろしながら魚の構造を理解してしまえば、他の魚も下ろせるようになります。
「アジはどのスーパーでも手に入りやすく、いろいろな食べ方ができる魚です。3枚下ろしにせず、内臓だけ取って塩焼きにすることもできますし、3枚に下ろせば、アジフライやムニエルなど洋風にいただくこともできますよ」(日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜さん、以下同)
アジを3枚におろす方法“大名おろし”
アジは、“大名おろし”というおろし方で、上身・下身・中骨の3枚にします。大名おろしとは「大名がおろしたみたいに大胆なおろし方」という意味で、一般的なおろし方よりもざっくりとした切り方をするのが特徴です。
「このおろし方は、骨に身がたくさん残ってしまうのですが、スプーンで骨のまわりの身をこそげて別の料理にしたり、骨ごと素揚げにして食べることもできます」
【おろし方】
1.アジをよく洗ってぜいごを取る。
魚の表面には腸炎ビブリオ菌が付着している可能性があるので、まずはよく洗ってから水気を取り、まな板にのせましょう。「頭を左側に置き、両側にあるぜいごを尾の方から削ぎ取ります」
2.頭を落とす。
胸ビレを頭の方につけて三角になるように包丁を入れ、下まで一気に頭を落とします。「中骨が切りにくいのですが、包丁を動かして切るよりも上から押して叩くイメージで切ってみましょう。関節の間にうまく入ると、すぐに落とすことができますよ」
3.お腹を開いて内臓を出す。
お腹の部分に包丁を入れたら、内臓を出しましょう。「このときあまり内臓を傷つけずに一度に出すと、まな板が汚れずきれいに取り出すことができます」
4.上身をおろす。
尾の方から中骨に沿って包丁を入れ、一気に上身をおろします。「骨にしっかり包丁を沿わせていくと、骨に残る身も少なくなり、きれいにおろせます。また、包丁はギリギリと細かく動かさず、一度入れたら一気に引き切りするといいですよ」
5.下身も同じようにおろす。
下身も尾の方から包丁を入れて、中骨に沿って切っていきます。
6.腹骨を削ぐ。
上身と下身についた腹骨は、包丁を斜めにして削ぎ(そぎ)ます。
7.小骨を抜く。
中心に残っている骨は、骨抜き用のピンセットで抜いていきます。ここまでできたら、あとは調理するだけです。「どこに骨があるか、指でなぞりながら探していくと、抜きやすいですよ」
以上の工程でアジを3枚におろせたら、実際にそのアジを使って調理してみましょう。今回は「アジのムニエル」を教えていただきました。