冬に旬を迎える長ねぎは、「風邪を引いたら、ねぎを首に巻けば治る」などの伝承があるように、風邪に効くイメージがあります。それもそのはず長ねぎは、血行促進効果や殺菌効果のあるアリシンに加え、緑色の部分にβ-カロテンやビタミンCを豊富に含んでいて、体のバリア機能を高める効果があるのです。
今回は、脇役になりがちな長ねぎなどの薬味を使った“薬味レシピ本”を出版し、イタリア・フランス料理にも造詣が深い料理研究家の尾田衣子(おだきぬこ)さんに、長ねぎの基本的な取り扱い方や長ねぎをメインに使った料理を教えていただきました。長ねぎの緑色の部分を活かしたレシピも注目です。
CONTENTS
緑色の部分は、緑黄色野菜!?
免疫力を高める成分がたっぷり
まずは、長ねぎに含まれる栄養素をみていきましょう。尾田さんによると、長ねぎは部位によって含まれる栄養素が異なるのだとか。
「緑色の部分は緑黄色野菜といわれるほど、β-カロテンやビタミンCが豊富。β-カロテンは、体内でビタミンAとして働き、皮膚や粘膜を丈夫にして免疫力を高めます。ビタミンCも同様に、免疫力を高める効果が。
また、ねぎ特有の刺激的な辛味成分『アリシン』には、血液をさらさらにする効果や、血行促進効果、殺菌・抗菌作用があります」(料理研究家・尾田衣子さん、以下同)
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_01.jpg)
さらにアリシンには、ビタミンB1 の吸収を高める効果もあるそうです。
「豚肉や大豆などビタミンB1 が多く含まれる食品と一緒に摂取すると、消耗した体力や疲労を回復することができます。これが、昔から『風邪のひき初めにはねぎが効く』といわれるゆえんです」
ビタミンCは、熱に弱く水に溶けやすいため、生で食べるのがおすすめとのこと。
「アリシンは揮発性があるので、生で食べたほうが効率よく栄養を摂取できます。汁物や主菜に薬味としてトッピングするなど、生と加熱の両方でバランスよく食べられるといいですね」
白い部分にツヤがあるかをチェック!
保存するときは寝かさずに“立てる”
長ねぎに含まれる栄養素がわかったところで、おいしい長ねぎの選び方や栄養を逃さないための保存方法も教えていただきました。
「鮮度のよい長ねぎは、根に近い白い部分にツヤがあります。触ったときにふかふかしていないかどうかもチェックしましょう。よくしまっていて弾力があるものがおすすめです。また、表面の皮や刃先が、茶色く乾燥しすぎていないものを選びましょう」
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_03.jpg)
「保存をするときは、横向きにすると本来の姿勢である『縦』に戻ろうと栄養を消費してしまうので、立てて保存するのがポイント。とはいえ、1本まるまる立てて置ける場所を確保できない方もいるでしょう。その場合は、3つに切り分けてチャック付きの保存袋に入れましょう。
緑色の部分は薬味として使用することが多いので、後々の使いやすさを考え、白い部分とは別にして保存するのがおすすめです」
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_02.jpg)
「長ねぎは、ひげ根と乾燥して茶色く固くなってしまった部位以外は、全部食べられます。根はひげ根のギリギリのところで切り、茶色く変色し乾燥した部分は、ひと皮むく、切るなどして取り除きましょう。緑色部分の付け根に土が入り込んでいることがあるので、よく洗ってくださいね」
緑色の部分まで堪能!
長ねぎの主役レシピ3選
それではいよいよ、レシピのご紹介です。緑色の部分までしっかり食べられる、長ねぎをメインにしたレシピを3つ教えていただきました。
・「ライ麦パンの長ねぎチーズカナッペ」
・「長ねぎとレンコンのカレーアンチョビ炒め」
・「長ねぎたっぷりの鶏鍋」
長ねぎの苦味や辛味をはちみつの甘味が包む!
「ライ麦パンの長ねぎチーズカナッペ」
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_10.jpg)
「長ねぎのなかでも捨ててしまいがちな緑色の部分を、生で食べられるレシピです。チーズの塩気としょうがはちみつソースが、長ねぎの苦味や辛味をうまく調和させ、やみつき必至。甘味のあるライ麦パンとの相性もばっちりです。さまざまな食材が合わさって、簡単なのに複雑な味わいが楽しめます」
【材料(2人分)】
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_04.jpg)
・長ねぎ(緑色の部分)……1/2本分
・スライスチーズ……2枚
・紫玉ねぎ……20g
・ピーナッツ……10g
・チューブしょうが……小さじ2
・はちみつ……大さじ1
・黒こしょう……適量
・ライ麦パンのスライス……2枚
【作り方】
1.スライスチーズは2等分にする。長ねぎは小口切り、紫玉ねぎはみじん切りに、ピーナッツは粗切りにする。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_07.jpg)
「トッピングしやすいように、細かく刻みます。ピーナッツは1個ずつではなく、いくつかまとめて手で押さえながら刻むと、飛び散らず切りやすいです」
2.チューブしょうがとはちみつを混ぜ合わせてソースをつくる。ライ麦パンにチーズをのせ、紫玉ねぎ、長ねぎ、ピーナッツを散らす。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_08.jpg)
「紫玉ねぎの辛味はまろやかで、長ねぎの苦味や辛味を引き立ててくれます。どこから食べてもおいしく感じられるように、全体にまんべんなく散らしましょう。見た目がカラフルで、彩りがよいのもこの料理の魅力です」
3.2のソースをかけ、黒こしょうをふる。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_09.jpg)
「甘辛いしょうがはちみつソースが、それぞれの食材の味をうまくまとめてくれるので、しっかりと全体に行き渡らせましょう。仕上げに、お好みで黒こしょうをふってください」
とろっとした長ねぎにスパイシーなカレーがマッチ!
「長ねぎとレンコンのカレーアンチョビ炒め」
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_16.jpg)
「私の専門はイタリア料理なんですが、実はイタリア料理でよく使うアンチョビとカレーはとても相性がいいんです。アンチョビの塩気とカレーのスパイシーさが、甘味が増したとろとろ食感の長ねぎによく合います。アンチョビと黒オリーブの塩味が加わるので、わざわざ塩を使わなくても深みのある味に仕上がりますよ」
【材料(2人分)】
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_05.jpg)
・長ねぎ……1本
・レンコン……1節
・アンチョビ……3フィレ
・黒オリーブ……8粒
・コリアンダーシード……小さじ1/2
・オリーブオイル……適量
・カレー粉……小さじ1/2
・黒こしょう……適量
【作り方】
1.長ねぎは5㎝幅に切ってから、縦に2等分にする。レンコンは皮をむき、串切りにする。アンチョビは粗く切り、黒オリーブは2等分に。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_11.jpg)
「長ねぎは短時間で火が通り、かつ、とろっした甘味を楽しめるように、大きめの2等分に切ります。レンコンは細めの串切りに。そうすることで、火を通りやすくするとともに、シャキッとした食感も残せます」
2.コリアンダーシードを潰す。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_12.jpg)
「包丁の面を使って上から押し潰すようにして割りましょう。潰し割ることで、炒めたときの香りや風味がアップします」
3.オリーブオイルを中火で熱し、長ねぎ、レンコン、黒オリーブを炒める。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_13.jpg)
「長ねぎにじっくりと火を通したいので、フライパンに入れたらしばらく動かさず、片面に焼き色が付いてから一つ一つひっくり返しましょう。レンコンも同様です。黒オリーブを一緒に炒めることで、塩気と風味が引き出せます」
4.3に火が通ったらカレー粉、アンチョビ、コリアンダーシードを加え軽く炒める。黒こしょうをふり、器に盛り付ける。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_14.jpg)
「カレー粉、アンチョビ、コリアンダーシードが全体にいきわたるように、ふりかけましょう。香りが立ち、まんべんなくいきわたったら完成です」
忙しいときのお助け鍋やおもてなし料理に活躍!
「長ねぎたっぷりの鶏鍋」
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_20.jpg)
「くったりするまで煮込むことで、長ねぎならではのおいしさを引き出したシンプルな鍋です。煮込まれた長ねぎの甘味と、鶏肉からでた出汁が効いたほっとする味わい。鍋のまま食卓に並べ、締めにそばを加えれば、簡単なのにごちそう感のあるおもてなし料理にもなります。レシピでは、4人分で長ねぎ2本としていますが、レシピよりも多く入れるのもアリです」
【材料(4人分)】
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_06.jpg)
・長ねぎ……2本
・鶏もも肉……2枚
[A]
・水……600ml
・醤油……40ml
・みりん……40ml
・昆布……4㎝
・そば…300g
【作り方】
1. 鶏もも肉を縦2等分に切りわけ、繊維に対して垂直にそぎ切りにする。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_18.jpg)
「鶏肉の繊維に対して垂直に切ることで、繊維を断つことができるので、柔らかく仕上がります。あまり小さく切りすぎず、食べ応えを感じられるようにしましょう」
2.長ねぎは斜め細切りにする。鍋にAを入れ火にかけ、沸騰したら鶏もも肉を入れる。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_17.jpg)
「長ねぎは、斜めに切ると表面積が増えて箸でつかみやすくなります。また、細切りにするのは、短時間で火が通るようにするためです」
3.鶏もも肉に火が通ったら長ねぎを入れる。
![](https://at-living.press/wp-content/uploads/2025/02/250213_atLiving_naganegi_19.jpg)
「長ねぎをシャキシャキのままいただくか、くったりとろっとした食感でいただくかは、お好みでOK。火を通す時間で調整してください」
4.鍋を食べ終わったら、用意したそばに残った具と汁をかけていただく。
「鶏もも肉に火を通している間に、そばを別で茹でておくと、鍋を食べ終わった後にスムーズにおそばを楽しめます。残った具や汁をかけてお召し上がりください。もちろん、茹でそばを購入してもOK。お好みの方法でどうぞ」
風邪予防や風邪のひきはじめにピッタリな長ねぎは、免疫機能が下がりやすい冬のお助け食材。生で食べることで効率よく摂取できる栄養も含むため、煮るだけではなく、刻んで薬味にしたり、今回ご紹介したカナッペにしたりと、生で食べる機会も増やしてみてはいかがでしょう。
Profile
料理研究家 / 尾田衣子
オリーブオイルソムリエ、OA認定分子栄養学アドバイザー、健康管理士一般指導員。ル・コルドンブルー東京校に入学し、料理ディプロムを取得。その後、イタリア・フィレンツェに渡り、家庭料理を学ぶ。フランス・イタリア家庭料理をベースに簡単にできるおもてなし料理や地中海料理を中心とした料理教室「Assiette de Kinu(アシェット ド キヌ)」を主宰する。また、受験生に特化した栄養サポートも行い、受験生のご家庭に「やる気・集中力向上」を目的に「合格できる食習慣」を提供している。著書に「薬味食堂(朝日新聞出版)」「柑橘料理の本(オーバーラップ)」「あまったパンで魔法のレシピ(世界文化社)」等多数。
HP
Instagram
取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=鈴木謙介