掃除機はますます軽量化とスリム化が進んでいます。その軽さや操作性のよさは大きな魅力ですが、一方で、掃除機本体のコンパクト化を目指したことによりダストボックスも小さくなる傾向に。すぐにゴミがいっぱいになってしまうことを不便に感じるという声も聞かれます。
そんな悩みを解決するために誕生したのが、充電台に自動ゴミ収集ドックが搭載された掃除機。この「自動ゴミ収集ドック付き掃除機」を中心に、最新の掃除機事情やおすすめのモデルについて、家電ライターの田中真紀子さんに教えていただきました。
自動ゴミ収集ドック付き掃除機が人気なのはなぜ?
「掃除機の進化として、とにかく吸引力を上げる時代や、コードレスススティック型掃除機であれば軽量化を進める時代がありました。しかし、どこか性能を上げることで他の性能が犠牲になることも多くあったのです。例えば、軽量化を進めた結果、吸引力が下がったり、掃除をする床面への掃除機の安定性が減ってしまったりするといった現象。そのような紆余曲折を経て、より使いやすい掃除機とは何かを各社、追求し始めました」(家電ライター・田中真紀子さん、以下同)
そうして、自動ゴミ収集ドック付き掃除機が日本の市場に初めて登場したのは、8年前だそう。
「8年前に登場しましたが、広く出回るようになったのは3年ほど前からです。ロボット掃除機の最大のメリットは、ほったらかしておいても掃除をしてくれること。にもかかわらず、ダストボックスが小さくてすぐにゴミが溜まってしまうのがデメリットでした。掃除をしている途中でゴミ箱が満タンになり、エラー停止することも。この問題を解消するため、自動ゴミ収集ドック付きのロボット掃除機が開発されたのです。
この自動ゴミ収集ドック付き機能は、コードレススティック型掃除機にも応用されました。もともと軽量化したコンパクトデザインを売りにしてきたスティック型掃除機はどうしてもダストボックスも全体的に小さい傾向にあったからです。本体とは別に自動ゴミ収集ドックを設けることで、手元の掃除機本体のゴミが溜まったままになることがなくなりました。パナソニックが自動ゴミ収集ドック付きスティック型掃除機の先駆けとなり、各社から徐々に発売されるようになっています」
ドックのゴミ捨ての頻度は?
ゴミを自動で集めてくれることはとても便利な機能ですが、ドックのゴミはどのくらいのペースで捨てる必要があるでしょうか?
「今までゴミ捨てを面倒に感じていた人のニーズにマッチしました。掃除機本体を充電ドックに収納すると、ゴミはドック内の紙パックのなかに自動で集まっていきます。紙パックはだいたい1〜3ヵ月に一度交換するだけ、なかには1年間交換不要のものもあります。紙パック式はホコリの舞い散りがほとんどないので、ゴミ捨てのときに出るホコリに困っていた人も紙パック式のドック付き掃除機に買い替える傾向にあります。
いつでも手軽に掃除できるように、今は『いかに使いやすいか』を追求した掃除機が増えています。その1つの選択肢が、自動ゴミ収集ドック付き掃除機なのです」
掃除機選びのチェックポイント
スティック型掃除機やロボット掃除機、そしてキャニスター式掃除機などさまざまな種類の掃除機があります。では、自分にはどの掃除機がよいのか、種類が多いだけに迷うことも。「各社が価格帯に幅のあるモデルの掃除機をさまざま出しており、比較するのも難しいですが、相対的な傾向として」という前提で、選び方のコツを解説いただきました。
・吸引力
「吸引力を優先させるのであればだんぜんキャニスター式です。スティック型が主流になりつつあるなか、一定数のニーズがあるのはやはり吸引力が優れている点です。ペットのいる家や、徹底的にホコリを取り除きたい方におすすめです」
・軽さ
「軽さを重視するなら、スティック型です。スティック型は重心が手元にあると持ち上げるときに負担が少なく、ヘッドにあると床面をしっかりと捉えて安定性があります。使ったときの操作性が変わるため、実際に手にとって試してみるといいでしょう。スティック型は部屋数の少ない家や、階段のある戸建てに適しています。一方でキャニスター式は本体部を床に置いているため、手元が軽く取り回しやすいメリットがあります。懸念される本体の重さも最近では軽量化されており、本体を持ち上げて運びながら掃除できるものも多く出てます。ただ、コードを引っ張るのを面倒に感じる人も多いですね」
・バッテリーの持ち具合
「ロボット掃除機は自動でドックに戻るタイプが多く、充電を気にする必要がないのが便利な点です。スティック型は充電台に乗せるだけで自動で充電できるタイプと自分で充電ケーブルに差し込むタイプがあります。両掃除機どちらもコードなしで掃除できる点では優れていますが、バッテリーの持ち具合は、比較的値段に反映されやすいため、値段が安い分、バッテリーの持ちが悪いこともあります。コスパを考えて選ぶことがポイントです。なおバッテリーは着脱できるタイプもあり、2個用意しておけば連続して使えるほかバッテリーが消耗した際には交換していつでも使えるのは安心です」
・収納性
「スティック型は基本的に出しっぱなしにしておくことが前提にあるため、デザインを重視しておりインテリアにもなじみやすいものが多いです。最近ではロボット掃除機もドック付きになり始めてからその存在感が増してきているため、デザイン性が上がってきています。キャニスター式のデメリットはしまいづらさではないでしょうか。本体も大きいので収納の奥にしまってしまい、結果的に使わなくなる場合も。取り出しやすい場所をあらかじめ整えておくようにしましょう」
・お手入れ方法
「ロボット掃除機は吸い口からゴミの溜まる場所までの距離が最も短いため、手入れは比較的簡単です。キャニスター式はそれほど手入れに難はありません。スティック型はコンパクト設計のものが多く、ダストボックスが小さいためゴミが絡みやすい傾向にあります。
今はどのタイプの掃除機も、水洗いできるものが主流となっており、ダストボックス内の細かなホコリまで洗い流せるものが多く出ています」
家電のプロがすすめる最新ドック付き掃除機 6選
続いて、具体的に最新の自動ゴミ収集機能付きドックを搭載した掃除機を紹介していただきました。
1.コードレススティック型掃除機で初めて自動ゴミ収集機能付き充電台を搭載
パナソニック「セパレート型コードレススティック掃除機 MC-NS10K」
オープン価格(実売価格6万5340円前後・税込)
コードレススティック掃除機では業界初となる本機種。従来は掃除機本体に付いていたダストボックスを分離したことにより、軽さとスリムなフォルムを実現。重心がヘッドにあるため手元が軽くラクに操作することが可能に。さっと取り出して手軽に掃除ができます。
「デザイン性に優れていて白くスリムなフォルムはリビングに置いたときにインテリアとしても美しいのがいいですね。また、Panasonicの独自の微粒子イオン『ナノイーX』機能でドックの紙パックを除菌、脱臭します。清潔に安心して使いたい方におすすめです」
【Item Data】
・カラー=ホワイト
・製品重量=スティック:1.5kg クリーンドック:3.0kg(スティック時とは、本体・ハンドル・床用ノズル・バッテリーの合計質量)
・最長稼働時間=標準モード約10~15分/強モード約6分
・集塵方法=スティック:紙パックレス式、クリーンドック:紙パック式
2.軽さと吸引力の両輪で掃除をラクに「Shark EVOPOWER SYSTEM iQ+」
Shark(シャーク) 「EVOPOWER SYSTEM iQ+ コードレススティッククリーナーCS851JMVAE」
オープン価格(実売価格7万9750円前後・税込)
ハンディ部分が1kg未満の製品の中でもっとも強力な吸引力が魅力のSharkのスティック型掃除機。新開発の「iQテクノロジー」で検知したゴミの量に応じて、吸引力とブラシの回転スピードを自動調整します。
「一連の流れがスムーズにできるような操作性を実現した掃除機。コードレス掃除機でありながら、思い立ったときにワンタッチでハンディクリーナーに変身します。いつでもパッと掃除できる快適な使い心地で、楽しい仕掛けがたくさんある掃除機です」
【Item Data】
・カラー=モーヴグレイ
・製品重量=スティック本体:2.0kg ハンディ本体:0.9kg
・最長稼働時間(バッテリー2個連続使用時)=
コードレススティックでの使用時:エコモード約50分/iQモード約14~50分/ブーストモード約14分
ハンディでの使用時:エコモード約62分/iQモード約14~62分/ブーストモード約14分
・集塵方法=スティック:紙パックレス式、ドック:紙パックレス式
3.掃除の仕方を自ら学習し効率のよい掃除方法を提案するスタンダードモデル「アイロボット ルンバ i3+」
アイロボット「ルンバ i3+」
オープン価格(実売価格7万9800円前後・税込)
吸引力はルンバ600シリーズに比べて10倍にアップしました。最大1年間分(日本のクリーンベースユーザーの清掃結果よりメーカーが算出)のゴミをダストボックスに収納できるため、ドック無しのロボット掃除機のようなこまめなゴミ捨ての必要がありません。また、紙パックは花粉やカビなどを99%封じ込めます。
「ルンバはシンプル機能の商品から、高機能の商品まで価格帯を広く設けていて選択肢を幅広く用意してくれているところがいいですね。ルンバの高い掃除力と賢さをカジュアルに享受したい人に。部屋数が少ない家なら十分なスペックを備えています」
【Item Data】
・カラー=ブラック
・製品重量=3.2kg (バッテリー含む)
・最長稼働時間(1回の充電につき) =最大75分
・集塵方法=掃除機本体:紙パックレス式、ドック:紙パック式
4.散らかった部屋も安心して掃除できるハイスペックモデル「アイロボット ルンバ コンボ j7+」
アイロボット 「ルンバ コンボ j7+」
オープン価格(実売価格15万9800円前後・税込)
物体を認識して回避しながら清掃します。コードやペットの排泄物などの障害物が見つかると清掃後にアプリに画像が送信され、今後どのように対処したらよいかをフィードバックし学習させることができます。
「ルンバで初となる水拭きもしてくれるロボット掃除機です。掃除機掛けと水拭き掃除を同時に任せられるので、短時間で効率的に清掃が終えてくれるのが嬉しいところです。カーペットを濡らさないためにモップを上げるなど、配慮のきめ細やかさが光ります。水拭き機能がシンプルゆえ、充電ドックもシンプルでインテリアになじみやすいと思います」
【Item Data】
・カラー=ブラック
・製品重量=3.4kg (バッテリー含む)
・最長稼働時間(1回の充電につき) =最大75分
・集塵方法=掃除機本体:紙パックレス式、ドック:紙パック式
5.モップ洗浄・給水・ゴミ収集の3way全自動ドック「ロボロック S7 MaxV Ultra」
ロボロック 「S7 MaxV Ultra」
オープン価格(実売価格21万7800円前後・税込)
水拭きやモップ洗いの水を自動で給水し、汚れたモップも自動で洗浄、さらには掃除後のゴミをドックのゴミ収集ボックスに自動で集める。3つの自動機能を搭載したハイエンドクラスのロボット掃除機。
「水拭きをはじめるとモップを洗うタイミングがつかめない。その悩みを解消してくれるのがこちらの掃除機です。毎回キレイにモップを洗ってくれるので、人がやると手間のかかるモップ掃除の時間を大幅に短縮してくれます」
【Item Data】
・カラー=ブラック
・製品重量=本体4.7kg /ドック8.5kg
・最長稼働時間=最大180分
・集塵方法=掃除機本体:紙パックレス式、ドック:紙パック式
6.技術の総力を駆使して誕生したフラッグシップモデル「エコバックス DEEBOT X1 OMNI」
エコバックス 「DEEBOT X1 OMNI」
オープン価格(実売価格19万8000円前後・税込)
自動ゴミ収集機能、モップへの給水機能、水拭き後のモップの自動洗浄機能に加えさらにモップを温風で乾かす機能までが付いた、まさに全自動ロボット掃除機の最高峰といえる機種です。
「すべてをおこなってくれる頼もしいロボット掃除機です。掃除機本体のお手入れに自信がないという方にぜひおすすめしたいと思います。ドックは大きいですが、有名デザイナーによるスタイリッシュなデザインなので、モダンな家具のように置けるのもポイントです」
【Item Data】
・カラー=ブラック
・製品重量=本体約4.4kg /ドック約14.3kg
・最長稼働時間=最大約260分
・集塵方法=掃除機本体:紙パックレス式、ドック:紙パック式
ボックスのゴミを頻繁に捨てる手間やそれにともなって発生するホコリの舞い散りの抑制、さらには手入れの大幅な時間短縮など、暮らしに取り入れてみると実感するベネフィットも多く、生活の質を格段に上げてくれることは間違いありません。購入を検討するタイミングで自動ゴミ収集ドック付き掃除機も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
Profile
家電ライター / 田中真紀子
白物家電、美容家電を中心に、雑誌、ウェブなどで執筆。家電製品の検証やレビュー記事では、主婦目線を大切にした感性に定評がある。家事やインテリア、生活雑貨など、暮らしにまつわる記事も手がける。近年は専門家としてコラム執筆やメディア出演も多数。
ブログ=https://makiko-beautifullife.com/
取材・文=癸生川美絵(Neem Tree)