ここ数年、冷凍室の容量不足を補う“セカンド冷凍庫”の新モデルが次々と発売されています。コロナ禍によってライフスタイルが急激に変化したなかで存在感を増したことがうかがえますが、行動規制が緩和された今もなお、需要が衰えないのはなぜでしょうか?
家電プロレビュアーの石井和美さんに背景を聞くとともに、手に入れるならどのように選べばいいか、またおすすめモデルとは? くわしくお話を伺いました。
セカンド冷凍庫がなぜ注目された?
セカンド冷凍庫が注目されるようになりましたが、そのきっかけはやはり、2020年に始まったコロナ禍。
「2020年1月以降、たちまちさまざまなタイプのセカンド冷凍庫が発売され始めました。それ以前は、横長で上扉が開くタイプ、いわゆる業務用の冷凍庫が主流であり、家庭で使うにしては大きすぎる上に、取り出しにくいため、ニーズはほとんどありませんでした。
その後すぐにステイホームとなってスーパーに買いものに行く回数が減り、まとめ買いが増えました。大きな冷蔵庫を持っていても、冷凍スペースは限られています。まとめ買いした食品を長期保管するために、冷蔵庫機能より冷凍庫機能の需要が増えたのです。このような背景のなか、セカンド冷凍庫の人気に火がつきました」(家電プロレビュアー・石井和美さん、以下同)
アフターコロナでも、セカンド冷凍庫が人気の理由
新型コロナウィルスの収束の兆しが見えるなか、セカンド冷凍庫の需要が続いているのはなぜなのでしょうか?
理由1.家計節約のためにまとめ買いをするようになった
「新型コロナウィルスの収束とともにセカンド冷凍庫の需要もだいぶ落ち着いてきたところはありますが、日常的に大型倉庫店舗や業務用のスーパーを利用する人は多く、まとめ買いが習慣化している人たちにとってセカンド冷凍庫が重宝します。また、食品や生活用品などの値段が高騰していくなかで、まとめ買いをして少しでも家計の負担を小さくしようとする傾向が強まっています。まとめ買いは、今後の食品の買い方として、ますます定着していくでしょう」
理由2.食品の冷凍技術の向上
「冷凍技術の進化により、短時間で食品を冷凍することができるようになりました。その結果、冷凍食品のクオリティが上がったことで冷凍食品を買う人が増えました。無添加でヘルシーかつバランスのとれた冷凍食品が豊富に販売されています。共働き世帯や小さなお子さんのいる世帯を中心に冷凍食品を賢く取り入れて、生活をラクにしたいというニーズが増えています」
理由3.デザイン性の向上
「家庭用として、居住空間で使いやすい前開きで縦長のデザインが主流となってきました。縦長の冷凍庫であれば場所をとりません。またデザイン性にも優れており、インテリアに馴染みどこにでも違和感なく設置することができます。キッチンのみならず、個室や廊下など場所を選ばずに置くことができるようになりました」
理由4.収納性の向上
「小分けの引き出し式のデザインになったことで冷凍食品を整理しやすく、目的の食品がすぐに見つけやすくなりました。
現在の大型冷蔵庫の冷凍室もそうですが、一昔前の冷凍庫は、冷凍スペースはただ大きなカゴになっているものが多く、どこに何が入っているかわかりにくかったり分類しづらかったり、整理しても中で崩れてしまったりすることも。コロナ禍以降に発売した冷凍庫は、コンパクトで、中の収納が4段から5段の引き出し式のカゴになっているものが多いです。引き出しが細分化されたことで、扉を開ければどこに何があるのかが分かりやすく、むやみにいろいろなカゴを引き出さなくても良くなりました。また、可動棚になったのもポイント。大きな食品を購入した場合、食品の大きさに合わせて、棚を外して入れることも可能です。
ご家庭によって買う食品の種類は多種多様なため、それぞれに合わせられるように融通をきかせている点が人気の一つです。家庭で使う冷凍庫ならではの工夫ですね」
買う前に知っておきたい!
セカンド冷凍庫の選び方と注意したいポイント
実際にセカンド冷凍庫の購入を考えた場合、どのような基準で選べばいいのでしょうか? チェックポイントを教えていただきました。
・使用目的はなにか
「セカンド冷凍庫に何を入れたいかを把握しましょう。例えばチャーハン、ピザ、お肉なのか、それによりパッケージのサイズも違います。普段、何を多く買うかにより、収納するカゴの理想サイズが見えてきます。カゴ内側の寸法を検討することが大切です」
・サイズをしっかりと検討する
「最近では冷凍庫をネットで購入してしまう人が多いですが、いざ家に置いてみるとサイズがいまいち合わないということをよく聞きます。意外と多いのが、幅が狭いわりに奥行きがある場合です。家具と並べたとき、冷凍庫だけ突出してしまい不格好です。設置場所の幅や高さはもちろん、奥行きもしっかり測っておきましょう。
また、冷凍庫はしっかりとものを詰めておいたほうが電気代が安くなります。大きいサイズを買ってスカスカになっている位であれば、購入する食品がちょうど収まるサイズ感を選びましょう。実物を見て購入するほうが間違いがありません」
・右開き/左開きか
「置く場所によっては開き方により、とても不便になるので注意が必要です。購入前に、開く側を選べたり、設置後に自分で左右に扉を付け替えられるタイプも出ています」
・温度調整設定の機能があるか
「冷蔵、チルド、冷凍と庫内の温度調整設定を変えられるものも多くなってきています。季節によって温度調整をしたいなど希望があるのであれば、温度調整設定の有無を確認することをおすすめします」
・セカンド冷凍庫の上に物を置くか
「冷凍庫の上にコーヒーメーカーやトースターを置く人も多くいます。置く場合は、耐熱性能があるかカタログでチェックしてください」
・霜が付着しにくいか
「冷凍庫には直冷式とファン式があります。価格の安いもののほとんどが直冷式で、価格が高くなるにつれてファン式になります。
直冷式は価格が安いぶん、霜がつきやすいのが難点。定期的に中に入っている食品をすべて取り出し、付いている霜を取り除く作業が発生します。これがとても大変です。カタログを見れば必ず直冷式かファン式が書いてあるので、そこは必ず購入前に見てほしいです」
・運転音が静かか
「運転音は何デシベルとカタログに記載されているのですが、実際にはあまりあてにならないのです。普段は静かですが、急にパチッなどと音がなることがあります。音の原因は、冷凍庫の背面にある気体冷媒を取り込み圧縮する役割を果たす、コンプレッサーです。値段の高い機種はコンプレッサーにカバーが付いていますが、廉価品には付いていないことも。リビングや寝室に置くのであれば、音の静かなものを選ぶのが良いでしょう。静音性を前面に押し出している商品のほうが、静かというのは実感としてあります。あまり音のことには触れていないような商品はそこまで静音性を重視していない可能性があります」
・アース線の有無はどうか
「アース線とは、電化製品から漏れ出た電気を地面に逃すための線のことです。プラグの脇に細い線が出ているのを見たことはあるのではないでしょうか。アース線のある冷凍庫にも関わらず、アース付きコンセントがない場合、電気工事専門の人にアース付きコンセントを取り付けてもらう電気工事が発生します。しかし最近ではアースのない漏電対策の処理がされている機種がほとんどです。このような機種を選べば、コンセントに差し込むだけになるので心配いりません」
各モデルの機能や特徴だけでなく、あらかじめチェックしておくべきこともあります。
・設置場所を事前に確認しておく
「冷凍庫の熱を逃す放熱スペースを設ける必要があるか否かは冷凍庫によって異なります。狭い場所に置く場合、放熱スペースのいらない機種を選ぶようにしましょう。放熱スペースをしっかりと取る必要がある機種にもかかわらずスペースを設けることができない場合、電気代が上がってしまうリスクも。注意が必要です。
また、コンセントの位置もあらかじめチェックしましょう。冷凍庫はずっとつけているものなので、延長コードを使ってつなぐことは大変危険です。壁にあるコンセントに直接つなぐようにしてください」
・電気代を念頭におく
「セカンド冷凍庫の電気代は、現在、各メーカーが出しているフラッグシップモデルの省エネ性能の良い冷蔵庫と同等にかかることを念頭に置いておきましょう。フラッグシップモデルは、技術を集結させているため大容量でありながら電気代はとても安い。現在、家庭の冷蔵庫のにかかる電気代はおおよそ、1ヶ月あたり600円〜1000円位です。セカンド冷凍庫を入れた場合は、その2倍となる1ヶ月あたり1200円〜2000円くらいに電気代が上がります。電気料金自体がこれから上がってくるので、ランニングコストを考慮し購入を検討する必要があります。まとめ買いでうまく節約ができたり、冷凍おかずを買って時短したいなど、電気代がかかってでも導入するメリットを感じるかどうかがポイントです」
家電プロレビュアーがすすめる
最新セカンド冷凍庫と冷凍付冷蔵庫 7選
まとめ買いをした冷凍食品を収納しやすく、サイズもコンパクトな、最新の冷凍庫と温度調整機能のついた冷蔵庫を性能別におすすめしていただきました。
■ サイズで選ぶ
浅い奥行きで家具との相性も抜群
もう少しだけ保存スペースを増やしたい! がかなう冷凍庫
アイリスオーヤマ「奥行スリム冷凍庫66L IUSN-7A-W ホワイト」
実勢価格=6万5780円(税込)
・種類:冷凍庫
・外形寸法(mm):W552×D390×H800
・年間消費電力量:約256kWh /年
「奥行を390mmと浅くデザインされているので、家具と並べたときに前面が揃いやすく圧迫感なく置けるのがポイントです。庫内の壁を薄くすることで、しっかりと保存スペースを確保しており、買いものカゴ1.5個分は入ります。家庭用冷蔵庫にある冷凍スペースでは少し物足りないという方におすすめです。色は白と黒の2色、インテリアのテイストに合わせて選べます」
業界最小幅を実現!
狭いスペースに置けて、移動もできるキャスター付き
山善「スリム冷凍庫70L YF-SU70(S) シルバー」
実勢価格=4万9800円前後(税込)
・種類:冷凍庫
・外形寸法(mm):W335×D580×H1170
・年間消費電力量:約158kWh /年
「セカンド冷凍庫で、3パターンのサイズ展開があるのがめずらしく、ライフスタイルに合わせて収納力を選ぶことができます。今回紹介するのは中サイズの70L。またキャスターが付いているので移動するのもラクラクです。幅は業界最小※の335mmととてもスリム。スーパーでよく見かける小さめの冷凍食品を収納するにはちょうどよいサイズ感です」
※2022年7月26日時点でのメーカーの独自調査によるものです。
■ デザインで選ぶ
マグネットカバー着せ替え扉が新しい!
冷蔵機能も併せ持つ2ドアデザイン
ハイアール「208L 冷凍冷蔵庫JR-SX21A(W)」
実勢価格=7万円前後(税込)
・種類:冷凍冷蔵庫
・外形寸法(mm):W453×D632×H1775
・年間消費電力量:約247kWh /年
置き場所を選ばないスリムサイズがメリット。さらに「2ドアの冷凍冷蔵庫で、扉にはドリンクの入れられるスペースがあるのも、セカンド冷凍庫としてはめずらしい。すぐに取り出したい食品をリビングに保存するのにはもってこいの商品です。独自の特徴としては、マグネットカバーで扉のデザインを気分により変えられること。海外ではすでに売られていたりするのですが、日本では初めての発売となります。こんな冷凍冷蔵庫の楽しみ方があってもいいですね」
扉の開きが左右自由につけ替えられる
置く場所を選ばない使い勝手のよさが魅力
シャープ「冷凍庫(ファン式)FJ-HM7K」
実勢価格=7万7000円前後(税込)
・種類:冷凍冷蔵庫
・外形寸法(mm):W495×D598×H770
・年間消費電力量:約277kWh /年
「扉を自分で左右どちらにも付け替えられるので部屋のレイアウト変更も自由にできます。引っ越しがあっても場所を選びません。冷凍から冷蔵まで9段階での温度調整ができるので保存温度にこだわりのある方には人気があります。例えばビールの保存温度の適温は6℃、日本酒には−5℃などお好みの温度に設定ができます」
■ 機能で選ぶ
寝室や個室におすすめ
静音性能の高い冷凍庫
三菱電機「Uシリーズ MF-U12H 121L」
実勢価格=5万5000円前後(税込)
・種類:冷凍庫
・外形寸法(mm):W480×D586×H1126
・年間消費電力量: 約400kWh /年
「静音設計を特徴としているだけに、運転音はとても静かです。寝室など、音が特に気になる場所に置くにはおすすめです。4段に分かれた大容量引き出し式収納ケースは、整理しやすく、食品を見つけやすいので、まとめ買い後の保管にも最適。トップテーブルも約100℃までの耐熱性があるので、冷凍庫の上に、コーヒーメーカーやオーブンレンジ※を置くこともできます。さらに、まとめ買い志向の方には、218Lの大容量冷凍庫(6月30日発売)MF-U22Jもラインアップされていますので、検討してみてください」
※オーブンレンジのタイプ・サイズによっては、置けない場合があります。耐荷重は30kgまでです。
共働き家庭にうれしい!
ソフト冷凍で食品を取り出したらすぐ切れる
ハイセンスジャパン「168L 冷凍庫 HF-A16S」
実勢価格=5万円前後(税込)
・種類:冷凍庫
・外形寸法(mm):W521×D626×H1346
・年間消費電力量:約511kWh /年
「ー7℃のソフト冷凍機能が特徴です。凍っていても解凍することなく、切ったりすくったりと、わずらわしい解凍の手間がなく、料理を作れるのがポイント。忙しい人や共働き世帯にはありがたい時短冷凍庫です。また、表扉の前面に温度調整のパネルがついているので、扉を開けずに中の温度を変えることができます。最大ー30℃まで設定でき、食品を急速に冷凍します」
作り置き派におすすめしたい!
食品を急速冷凍して保存できる
パナソニック「ホームフリーザー NR-FZ120D」
実勢価格=5万円前後(税込)
・種類:冷凍庫
・外形寸法(mm):W 480×D 586×H1126
・年間消費電力量:約365kWh /年
「省エネ性が高いところがポイント。アルミトレイが付いていることで、作り置きをした料理を即座に凍らせることができます。食品は凍らす時間が短いほど、味を保つことができます。最初に最上部のトレーで凍らせ、凍ったならば下の引き出しに次々に収納していけばとても効率的です。作り置き派にはおすすめの商品です」
まとめ買いや作り置き、冷凍食品の活用など、忙しく働く世代の救世主となってくれるセカンド冷凍庫。デザインもおしゃれで収納もしやすくなっているのであれば、生活の中に取り込むメリットは充分にあると言えそうです。
Profile
家電プロレビュアー / 石井和美
家電プロレビュアー歴15年。白物家電や日用品の製品レビューを中心に、新聞、雑誌、ウェブ媒体や企業のオウンドメディアなどでも多数執筆中。家電をテストするための一戸建てのレビューハウス「家電ラボ」のオーナー。
HP
取材・文=癸生川美絵(Neem Tree) 撮影=矢部ひとみ