ブラシやパフ、スポンジなど、メイクをするときに欠かせないツール類。よくないとはわかっていても洗うのが面倒で、汚れたまま使い続けている人も多いのではないでしょうか。なかには、そもそも正しいお手入れ方法を知らないという人もいるかもしれません。
そこで、「ツールを清潔に保つことは基本中の基本」と語る、ヘア&メイクアップアーティストの松田 陵さんに、メイクツールの正しいお手入れ方法を教えていただきました。
CONTENTS
スポンジは雑菌の巣窟!?
水分が多いものほど要注意
肌に直接触れるメイクツール。汚れたままにしているとどうなるのでしょうか。
「一度使ったツールを洗わずに再び使うということは、色汚れや雑菌を肌につけるということです。肌トラブルの原因は様々なので、汚れたメイクツールだけのせいにはできませんが、肌トラブルにつながる可能性はあります。人にもよりますが、たとえばニキビなどができやすい状態になるかもしれません」(ヘア&メイクアップアーティスト・松田 陵さん、以下同)
コスメを選ぶ際、崩れにくさを重視する人は多いでしょう。そのニーズに合わせ、コスメ自体もより落ちにくく進化しています。「つまり、コスメの進化に伴い、ツールに付着した汚れも落ちにくくなっているということです」と松田さんは言います。
「最近はラメが流行っているので、キラキラした色モノのコスメが増えています。これらのアイテムを使ったあとのブラシ汚れは、クレンジングウォーターで適当に拭いたくらいではまったく落ちません。
ベースメイクでいうと、昨今主流となったクッションファンデーションも要注意。パウダーファンデーションよりも水分が多いぶん雑菌が繁殖しやすいので、使ったまま放置したスポンジは菌の巣窟です」
コスメが進化し便利になったぶん、以前よりもメイクツールのお手入れは重要になっていると言えるでしょう。
使うたびに洗うのが理想のなか
手間を減らすには?
アイシャドウやチークなど、日によって使う色が異なり、色移りをするものは汚れが気になりこまめに洗うかもしれませんが、ファンデーションのように同じ商品に使うツールの場合、多少、洗う頻度は少なくてもよさそうと思う人もいるでしょう。
しかし松田さんは、「本当は毎回洗うのがベスト」だと言います。
「難しいかもしれませんが、本来は1回使ったら、その都度洗うのが理想です。もし、毎日洗うのが面倒であれば、たとえば同じスポンジを3つ用意して、毎日新しいものを使い、3日目にまとめて3つ洗うという形で手間を減らすという方法もあります」
それでも面倒に感じる人は、ブラシなどの高価なツール以外に限り、使い捨てタイプを使うのもひとつの選択肢だそう。
「ブラシは高級なので使い捨てとはいきませんが、チップやスクリューブラシなどは使い捨てタイプが便利です。高価なものを洗わずに使い続けるくらいなら、使い捨ての安物でも新品の清潔なツールを使うほうが安全です。『メイク・チップ・使い捨て』などでネット検索すると、安価に購入できるものがたくさんありますので、探してみてください」
「特に注意したいのは目の周りに使うもの。アイラインやシャドウ、マスカラは、目の粘膜に触れる場合もあるので、清潔なツールの使用がマストです。ちなみに僕は、マスカラに付属しているブラシは使わず、別売りのスクリューブラシを使用しています」
それでもやはり使い捨てには抵抗があるという人もいるでしょう。その場合は、通常のツールを多めに購入し、前述したように、まとめ洗いの導入を検討しましょう。
プロが教える!
ツール別の正しい洗い方
メイクツールを清潔に保つことの重要性がわかったところで、ツール別の正しい洗い方を覚えましょう。メイクツールを洗うときは、どのような洗剤を使えばよいのでしょうか。
「専用の洗剤が好ましくはありますが、シャンプーや洗顔フォームでも代用できますし、肌にやさしい無添加の固形石鹸もおすすめです。あまりに汚れがひどいときは、中性洗剤が便利。ただし、汚れが落ちるぶん刺激が強くあまりおすすめではないので、汚れが落ちにくいナイロン素材のブラシを洗うときだけ中性洗剤を使うなど、その時々で使い分けるとよいでしょう」
それではここからは、汚れを放置した際に危険レベルが高い順に洗い方をご紹介します。
放置危険レベル★★★/ファンデーション用のスポンジ
アイシャドウやチークなど、日によって色を変えるアイテムの場合、色移りが気になりますが、ファンデーションの場合、毎日同じアイテムに使うことのほうが多く、色も変わらないため油断をしやすいかもしれません。
しかし先ほどお伝えしたように、リキッドやクッションなど、水分を含んだアイテムに使うので要注意。「昨日と同じファンデーションに使うし」と面倒くさがらず、毎日、清潔なものを使いましょう。
[洗い方]
1.水かぬるま湯で十分に濡らし、よく泡立てた洗剤をつける
2.スポンジの中に染み込んでいる汚れを出すように、しっかりと揉み洗いする
3.中に洗剤が残らないようによくすすぐ
4.しっかり水気を切ってから乾かす
[乾かすときのポイント]
なるべく設置面が少なくなるように、立てかけて自然乾燥します。
放置危険レベル★★/ブラシ
ブラシは、ファンデーションやパウダー、チーク、アイメイクなどを、繊細に仕上げたいときに便利なアイテム。水分を含まないとはいえ、様々な部分に使用するので、使い終わったら最低限ティッシュで拭き取るなどして、キレイな状態をキープできるよう意識するのが大切です。そしてできるだけ高い頻度で水洗いをしましょう。
[洗い方]
1.水かぬるま湯で十分に濡らす
2.よく泡立てた洗剤で、毛の間に付着している汚れを落とすようしっかり洗う
3.洗剤が残らないようによくすすぐ
4.しっかり水気を拭き取ってから乾かす
[乾かすときのポイント]
毛を上に向けた状態で乾かすと、根元に水分が残るのでNG。毛が下になるように洗濯バサミなどで逆さまにして陰干ししましょう。
放置危険レベル★★/パフ
パウダーを朝一番のメイクだけでなく、日中のお直しにも使っている場合は、パフに皮脂汚れが付着している可能性があるので注意が必要です。その場合、朝だけ使用するパフよりもこまめに洗うように心がけましょう。
[洗い方]
1.水かぬるま湯で十分に濡らし、よく泡立てた洗剤をつける
2.パフの中に染み込んでいる汚れを出すように、しっかり揉み洗いする
3.中に洗剤が残らないようによくすすぐ
4.しっかり水気を切ってから乾かす
[乾かすときのポイント]
洗濯バサミなどで吊るし、風通しの良い場所で陰干しします。
放置危険レベル★/スクリューブラシ
アイブロウだけでなく、マスカラとしても使用できるスクリューブラシ。毛が固いため、ティッシュで拭き取る程度では汚れは落ちないので、しっかり洗いましょう。
[洗い方]
1.水かぬるま湯で十分に濡らし、よく泡立てた洗剤をつける
2.ブラシの間に付着している汚れもしっかり洗う
3.洗剤が残らないようによくすすぐ
4.しっかり水気を拭き取ってから乾かす
[乾かすときのポイント]
毛を上に向けた状態で乾かすと根元に水分が残るので、洗濯バサミなどで毛の部分が下を向くようにして吊るし、陰干しします。
どんなにお手入れをしてもあくまで消耗品。
買い替えのサインは?
どんなに丁寧にお手入れをしても、ツールは摩耗していくものです。持ちのよさは価格にも比例しますが、高級なブラシであっても消耗品であることには変わりません。買い替えのタイミングを見極めるポイントはどこにあるのでしょうか。
「スポンジは、ひびが入ったり切れたりしたら買い替えのサイン。ブラシは、毛が抜けてきたり、肌触りがチクチクしてきたら寿命です。毎日使っていると変化に気づきにくいので、ブラシの触り心地を確認する習慣をつけておくとよいでしょう」
洗うと劣化が早まりそうだからと、洗う頻度を減らすのは本末転倒。また、洗うのが面倒だからといって、コスメを指で直接つける行為もNGだそう。
「時々、アイシャドウなどを指で直接取ってつける人がいますが、あれはよくないですね。ツールは洗えても、プロダクト本体は洗えませんから。指で触るとコスメ自体に雑菌がつきますし、それをずっと使い続けなければならなくなります。
お手入れしていないツールに比べたら、洗った指のほうが清潔だと思うのかもしれませんが、どちらもNG行為。ちゃんと手入れをするか、使い捨てるか。“清潔なツールを使用する”のが正解です」
料理のあとに調理器具を洗うのと同じように、メイクをしたらメイクツールを洗うのが当たり前。このような感覚はなかなか浸透していないかもしれませんが、プロのヘアメイクさんにとっては当然の感覚です。さらに清潔なメイクツールを使えば、化粧ノリがよくなり仕上がりにも違いが出ます。
健やかなお肌にも、仕上がりの美しさにもつながるメイクツールのお手入れ。今年は面倒くさがらずに、習慣化してみてはいかがでしょうか。
Profile
ヘア&メイクアップアーティスト / 松田 陵
ファッション誌やタレント・アーティストのヘアメイクとして活動するヘア&メイクアップアーティスト。Y’s C 所属。東京モード学園卒業。その後渡米し、Make-up Desinoryn NY Master Make-up Programを経て、2010年の帰国後に独立。
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取材・文=鈴木まゆ 撮影=鈴木謙介