今年も新しい手帳を選ぶ時期がやってきました。来年、2018年の1年間をともに過ごすパートナーは、もう決まりましたか?
手帳といえば、自由に自分流のスタイルで書き込める「ほぼ日手帳」が大定番。2001年に2002年版「オリジナル」を発売して以来、「カズン」「weeks(ウィークス)」「weeks MEGA(ウィークスメガ)」と種類を増やし、15年以上にわたってヒットを続けています。こうも愛され続ける理由を、生みの親である「ほぼ日」代表の糸井重里さんに直撃しました。
いつも使ってくれている彼や彼女にとって
“手帳のある暮らし”が良かったんですよね、きっと。
―「ほぼ日手帳」、相変わらず大ヒットですね。どうしてこんなに愛されているのでしょう?
糸井重里さん(以下、糸井):うーん。わからない(笑)
——(笑)
糸井:むずかしい質問だなあ。でもたぶん、使っている人が、使っている間に“うれしく”なるからじゃないでしょうか。最近の世の中の流行商品って“短時間の喜び”を提供していて、『使ったけど、もういいや』っていう人が多いから早く姿を消してしまうんだけど、「ほぼ日手帳」は、少なくとも1年間は付き合わなきゃいけないんですよ。人もそうですけど、最初は不満とかがあっても1年も一緒に暮らせば、たいがいのことは慣れてきますよね。例えば旦那さんがイケメンじゃなくても別のいいところを見つけられたり、隣の子の方が我が子よりかわいかったとしても“うちの子には、うちの子なりのかわいさがある!”とかね。
―手帳が身内感覚になるんですね。
糸井:そう。「ほぼ日手帳」を毎朝開くのは、家族に“おはよう”と挨拶しているようなものでね。手帳だからこそ湧いてくる親近感があると思うんです。手帳が本来もっている親しみやすさや、しょっちゅう会っている身内感覚。それに、僕たちがずっとやってきたことが積み重なって、愛されるものに育ったんじゃないかと思いますね。
―「ほぼ日手帳」は、長く続いている人がとても多いようですね。
糸井:「続かないんです、どうしましょう」っていう人に対して、どうすれば長く続くか、僕たちも一生懸命に考えるんですけど、案外理由なく続いている人が多いんです。それはきっと、いつも使ってくれている彼や彼女にとって、“手帳のある暮らし”が良かったんですよね、きっと。付き合いが長い分だけ「よかったなぁ」と思う機会が多いんだと思うんです。だから1年でやめないで「来年も『ほぼ日手帳』を使おう」ということになるんじゃないかな。独自の健康法をやっている人が、いつまでもやめられないみたいにね(笑)
僕たちは「今年も絶対いいことがあるよなぁ」っていう言葉を
確信をもって365個探し出すことができるんです
―他社の手帳を研究することはあるんですか?
糸井:ありません(笑)。というのも、今世の中にある手帳って、「ほぼ日手帳」が世に出る以前からあったものと、出た後に登場したものの2種類しかないんです。僕は、以前からあるものとは違う手帳が欲しくて「ほぼ日手帳」を作ったわけですし、後から出てきたものはおそらく「ほぼ日手帳」を研究していると思うんですよ。であれば、それを見てもしょうがないかなと。
―「ほぼ日手帳」は、たとえ研究されても、なかなか真似できないんじゃないでしょうか。
糸井:作ってできないことはないと思うんです。ただ、よそが絶対に真似られないのは、ページの下に書かれた“日々の言葉”ですね。あれはうちでも、「ほぼ日刊イトイ新聞」をやっていなければ、抜き出す元がないですからね。あれがないとそこに“武田信玄の言葉”とかを書くことになっちゃう。それじゃあ、決まりきったサービスに見えちゃうと思うんですよね。でも、僕たちには元があるので、「今年も絶対いいことがあるよなぁ」っていう言葉を、確信をもって365個探し出すことができるんです。
―たしかに、あれは真似できないですね……。
糸井:もうひとつが、“待っていてくれている人がいる”ということ。そういう人がいてくれるから、手を抜いたらバレるぞって気合いが入るし、頑張れるんだと思います。手帳って1年ごとに変える商品だから、飽きられちゃうこともありますけど、僕らは飽きられちゃうのが当たり前ととらえていて、その上で何ができるんだろうということをいつも考えています。よそではやらないような面倒くさいことも、だからいっぱいやってるんじゃないでしょうかね。
―作っている喜びとは、どういったものですか?
糸井:僕たちは1種類だけを作っているわけではありません。だから、いろいろな人の顔を思い浮かべながら、待っている人を探したり、待っている人に提案したりできるのが楽しいんです。2018年版でいうと、ビートルズのカバーがそれ。「ビートルズだからなんなんだ」っていう人もいると思いますけど、「ビートルズなのか、ちょっと使ってみようかな」っていう人にとっては、まさに“待っていたもの”だと思うんですよ。1種類だけを押し売りをしなくていい分、使っている人と信頼関係を結びやすいのかもしれないですね。
―使っている人の出入りもありますよね。
糸井:それも面白くてね。今まで使ってた人がこぼれていくこともあるんだけど、ある程度時間が経って、また戻ってくる人もけっこう多いんです。「ごめんなさい、浮気してました」と告白されることもあります(笑)
―とにかくカバーの種類が豊富ですが、今年、これはびっくり! という手帳カバーはありましたか?
糸井:「シュタイフ」ですね。あれは驚きました。最初見た時、正直「これありなの?」と思いましたが、発売したらすぐに売り切れちゃいました。いやぁ、本当にわからないものです。