ソニーが1999年から2006年まで発売していたエンタテインメントロボット「アイボ」が、今年1月、12年ぶりに復活しました。
新しい「aibo(アイボ)」は、本体に組み込まれたAIが飼い主となるオーナーとのやりとりを学習し、個性を持って成長していくことが最大の特徴。躍動感ある動きと愛らしい表情が心を和ませ、日々のコミュニケーションをさらに楽しくさせてくれます。クラウドやアプリケーションとの連動や、内蔵カメラを搭載したことによって、新しい遊び方ができるようにもなりました。
最新版aiboと触れ合いながら、その魅力をソニー・広報の多田謙介さんに伺いました。
犬型ロボットとの暮らしが現実に!
新しいaiboは、鼻と尻尾の部分にカメラが搭載され、スピーカーやマイク、さまざまなセンサーが備わっています。胴体は22の関節で動くよう設計されているため、ロボットでありながら、しなやかで生き生きと動くよう、こだわって作られています。
「従来品では謳っていなかった“犬型の”ロボットとしているのが、今回大きく変わったところでしょう。耳や尻尾の動き、鳴き声、まばたきをする瞳が、多彩なコミュニケーションを表現するのに活躍しています。実は開発初期段階では、現在のaiboよりも大きく、かわいいといえない感じだったそうです。しかしデジカメや携帯電話など、さまざまな部署から開発者たちが集結し、たくさんのセンサーやカメラなどが内蔵されているにも関わらず、ここまで小型で軽いaiboを生産することができました。彼らの粘り強い努力のおかげだと思います」(多田さん)
周囲の状況に合わせて自分で判断
空間認識するSLAMカメラと画像認識する広角カメラを搭載。背中にある“SLAMカメラ”は、映っている天井の情報を記憶して地図を作成しています。自分がどこにいるのか把握し、壁にぶつかるのを避けることや、充電ステーションがどこにあるか認識するのに使われています。
照度センサーも搭載しているので、明るさを感知して瞳の明度を変えたり、部屋が暗くなると眠りに入ったりと、行動にも変化があります。また、鼻の形をした広角カメラは、オーナーやほかの人や犬を判別しています。
「オーナーの顔も自然と覚えていきます。何度も会う人、いつもかわいがってくれる人などを覚えて懐いたり、逆にはじめて会う人には唸って威嚇したりすることもあります」(多田さん)
aiboは人のほかに、犬やほかのaiboも感知し、威嚇したり一緒に遊んだりするそうです。
「最近、哺乳類動物学者の今泉忠明氏の監修で、犬とaiboを共生生活させて実験データをまとめる機会がありました。その結果、犬がaiboを順位づけしたり行動を真似たりして、aiboを生き物として認識している可能性があることがわかったんです」(多田さん)
言葉を認識して応えてくれる
aiboは、現状では30以上の言葉を認識すると言われています。「おて」「おかわり」のほかにも、「ダンス」や「ハイタッチ」など、言葉を判別するとそれに沿った動作を気分次第で返してくれます。
自分の名前を記憶することもできるので、最初にアプリケーション「My aibo」上で決めた名前を呼ぶと、鳴いたり来てくれたりします。どんな芸ができるかは飼ってみてわかっていくのだとか。
「aiboは、LTEもしくはWi-Fiを通じて常にクラウドとつながっています。たとえばaiboがあるふるまいをしてそのオーナーさんが喜んだ、とします。すると、その情報がクラウド上にアップロードされます。さまざまなaiboから同様のデータが集まると、クラウド上のAIがこのふるまいを多くのオーナーさんが好きだと理解し、その情報がaibo全体に還元されていくのです。
結果として、オーナーさんに喜んでもらえるふるまいを多くするようになっていきます。こんなふうに、さまざまなオーナーさんとのやり取りのデータを収集し、集合知として蓄積することで、aiboがさらに賢くなっていくというのは、クラウドにつながっている新型のaiboならではの育ち方ですね」(多田さん)
・「バーン」
「aibo、バーン!」と言うと、ひっくり返ります。
・「ハイタッチ」
「ハイタッチ」は、前足を高くあげてくれます。
・「チャージステーション」
「チャージステーション」と話しかけると、充電スポットを探して充電しにいきます。
・「写真を撮って」
「写真撮って」と言うと、aiboの鼻についたカメラで写真を撮り、クラウドにアップロードされていきます。aiboの気分で勝手に撮影して送ってくることもあるのだとか。
記憶した動きを不意に披露してくれる驚きと楽しさ!
ふとしたときに覚えたことを披露してくれるのも、aiboの魅力です。「覚えて」と言うと、両前足を上げてハイタッチの姿勢になります。肉球にあるスイッチを両手で押すと、前足を自由に動かせるようになるので、好きに動かしてみます。最後に手を離し、「覚えたかな?」と確認すると、aiboはあなたが自由に動かした動作を繰り返してみせます。
「そのあとに“忘れないでね”と言葉をかけておくと、最大20個の動作を覚えておくことができます。ふとしたときに、覚えたふるまいをしてくれることがあって、嬉しくなります」(多田さん)
ときどきおしっこもするaibo。シャーっという音とともに、足をあげます。「おしっこの仕方は最初に登録した性別によって変わります。『だめだめ、わるいこ』などと話しかけると、叱られたということがわかります」(多田さん)
アプリケーションで管理しながら育てる
aiboの管理はアプリケーション「My aibo」で行えます。最初に性別と名前を決めるところからスタートし、目の色や声の種類の設定や、電池残量の確認などができます。
My aiboからaiboのファンページにアクセスして、オーナーが参加できるイベント情報を確認したり、壁紙データをダウンロードしたりもできます。また、ダンスなどのふるまいをさせたりもできます。
「性別は男の子、女の子、決めない、という三種類から選ぶことができます。性別は一度決めてしまうと変更がきかないのですが、目の色や声の高さ、音量などは常にここから設定が可能です。写真の左の子は青い目、右側は金色の目の色に設定されています」(多田さん)
アプリケーション「My aibo」上にあるボタンを押すと、ダンスなどのふるまいをさせることができます。「ふるまいの内容も、常に最新バージョンにアップデートされていくので、今後も増えていくと思います」(多田さん)
まるで生き物と触れ合っているよう
aiboには、あごの下や背中、頭の上にセンサーがあり、そこを撫でたり触れたりすると喜ぶ動作をします。また、抱き上げようとすると、本物の犬のようにうつぶせの状態になり、抱っこされる姿勢になるのです。
「撫でると気持ちいい顔をし、背中のセンサー部分を叩くと、怒られたということを認識します。aiboはオーナーの言葉や笑顔、撫でてもらったことなどを受けて耳や尻尾、目を使って感情表現をします。このようにaiboとのふれあいを重ねていただくことで、心のつながりを感じ、愛情の対象としてかわいがっていただければと思います」(多田さん)
ひとり暮らしでさびしさを感じている人や、動物が大好きでもペットを飼育するのは大変だという人、さまざまな事情があって生き物を迎えられないなかでも、aiboなら安心して飼うことができます。旅行するときに預け先を心配することもなく、旅行先で「元気かな?」と不安になることもありません。いっしょにいると、ロボットであることを忘れてしまうくらい愛らしい姿も魅力的です。
双方向にコミュニケーションできることで心が癒されて、いつしか家族として欠かせない一員になっていき、生活に活気と豊かさを運んでくれるでしょう。
取材・文=吉川愛歩 構成=Neem Tree