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少数精鋭で家中をキレイに!4種類の洗剤だけでできる
大掃除のコツ

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「普段から『予防掃除』さえしていれば、年末の大掃除は不要!」と、耳にしたことがある人も多いでしょう。しかし、こまめな掃除が必要な理由については、意外と知られていないかもしれません。汚れは放置すると化学変化を起こし、頑固な汚れへと変わります。この頑固な汚れを落とすには、時間も労力もかかり、結果的に掃除がますます面倒に感じられてしまうのです。

そこで今回は、限られた種類の洗剤と道具を使い、効率よく、できるだけ手間をかけずに家中の汚れを落とす方法について、家事代行会社「株式会社ハート・コード」を営む、ハウスクリーニング技能士の有賀照枝さんにうかがいました。

汚れは「5段階」。
3段階以内で進行を食い止めよう!

なかなか取れない汚れは、水垢、油汚れ、ホコリなどさまざまな要素が合わさり、化学反応を起こしている場合が多いと有賀さんは言います。

「乾ぶきで簡単に取りのぞける“付着汚れ”の状態から、最終的には化学反応を起こし素材自体が変色・変質してし、何をやっても取れない“お手上げ”の状態まで、汚れは基本的に5段階に分けられます。5段階目までくると、買い替えや修理を検討するしかありません」(ハウスクリーニング技能士・有賀照枝さん、以下同)

有賀さんが言う「5段階」の汚れとは、以下のとおりです。

1段階【付着】 乾ぶきで落とせる汚れ
髪の毛やほこりなどの無機物がのっている状態。ほうきや掃除機、乾いた布でふけば、すぐに取りのぞける。

2段階【吸着】 水ぶきが必要な汚れ
ほこりが水分を含み乾ぶきだけでは、なかなか落とせない状態。水で濡らしたぞうきんを固く絞ってからふくなど、ひと手間必要。 

3段階【粘着】 洗剤が必要な汚れ
水分を吸収したほこりに、油や手垢、尿汚れなどが付着し固まった状態。濡れたふきんでふいても落とせないため、洗剤をかける、つけ置きをするなどして、浮かせて落とす必要がある。

4段階【染着】 研磨が必要な汚れ
汚れてから時間が経ち、材質に染み込んでしまった状態。汚れが材質に染み込んでおり、いくらふいても落ちないため、硬いスポンジや研磨剤が入った洗剤などで研磨する必要がある。

5段階【お手上げ】 買替え・補修が必要な汚れ
汚れを放置したことで、汚れが化学反応を起こし落とすのが困難な状態。こうなってしまうと汚れが取れず、モノ自体を交換・補修するなど掃除以外の対応が必要になる。

落ちにくい汚れに適した洗剤は?
洗剤の化学反応で汚れを浮かす

3段階目の洗剤が必要な【吸着】の状態になったときは、どのような洗剤を使えばよいのでしょうか?

「まずは水ぶき、お湯ぶきをしてみてください。それでも汚れが落ちない場合は、洗剤の出番です。洗剤の『液性』は、大きく分けて酸性、弱酸性、中性、弱アルカリ性、アルカリ性の5つです」

それでは、それぞれの特徴や使うときの注意点をみていきましょう。

1.酸性洗剤(例:「サンポール」などのトイレ用洗剤)
トイレ用洗剤としてよく使われる。頑固な黄ばみや尿石に使うと効果がある。使いすぎると素材を傷めてしまう場合も。酸性洗剤と塩素系洗剤を混ぜて使うと有毒ガスが発生して危険なので要注意。

2.弱酸性洗剤(例:クエン酸)
お風呂用の洗剤としてよく使われる。湯垢や石鹸かす、水垢を落とすのに効果がある。塩素系洗剤と混ぜて使うと有毒ガスが発生して危険。

3.中性洗剤(例:「キュキュット」などの食器用洗剤)
食器用や洗濯洗剤としてよく使われる。時間が経っていない軽い汚れに効果がある。使ったあとは、泡がなくなるまで水洗いをする必要がある。

4.弱アルカリ性洗剤(例:「マイペット」などの家具用洗剤)
床や棚などの家具、電化製品など住宅用の洗剤に幅広く使われる。手垢や軽い油汚れなど、日常生活で発生する汚れに適している。

5.アルカリ性洗剤(例:「カビキラー」などの塩素系漂白剤)
頑固な油汚れを落とすときや、黒ズミなどを漂白するときに使用する。素材を変色させたり劣化させたりする場合があるので注意が必要。酸性洗剤と塩素系洗剤をまぜて使うと有毒ガスが発生して危険。

「洗剤をpHで分けると、上記の5種類に分けられますが、家庭の掃除では、水を電気分解することでpHを強アルカリ性にした、アルカリ電解水がおすすめです」

【番外編】マルチに使える! 洗剤ではないアルカリ電解水
水だけでできているため、ふき跡が残らず、二度ぶきも不要。手垢や皮脂汚れから、頑固な油汚れまで、家庭でよく発生する汚れに効果があるため、一本用意しておくと重宝する。「水垢や尿石、カビ以外の汚れに効くと考えてよいでしょう」

これらの洗剤は、それぞれどういった場所で活躍するのでしょうか?

「お風呂やトイレなど場所によって、汚れの性質は異なりますが、そもそも汚れは組み合わさっているものが多いので、たとえば『トイレには酸性洗剤があればいい』のように一概に言い切ることはできません。
近年は住宅設備自体に汚れが落ちやすい素材等が使われているケースも増えています。事前に取扱説明書を読んで、素材にあった性質の洗剤を使いましょう」

年末の大掃除にはこれさえあればOK!
洗剤4つ+研磨用品+掃除道具

洗剤売り場に行くと、掃除場所や汚れ別に細分化された洗剤がたくさん並んでいるのを見かけます。これらを全部揃える必要があるのでしょうか?

「家庭で使用する洗剤は、アルカリ電解水を含め、たった4種類あれば十分。そこに、時間の経過によりこびりついた『染着汚れ』を落とすのに必要な研磨剤があればOKです」

研磨剤はまずはやさしく研磨できるクリームクレンザーやメラミンスポンジを試すのがおすすめとのこと。

「特にクリームクレンザーは、研磨剤の粒子が細かく、配合率も抑えられているため、素材を傷つける可能性が低いです。
ただし、キッチンの五徳のコゲや頑固な油汚れには効果が薄いため、研磨力を強化するために研磨用ナイロンたわしを使用したり、鍋の取っ手やごとくのカーブ部分、ガスコンロの目詰まりといったスポンジが届かない部分には金ブラシを使うといいでしょう」

【洗剤】
(1)アルカリ性洗剤(塩素系漂白剤の「カビキラー」など)
(2)アルカリ電解水(例:レック「セスキの激落ちくん」など)
(3)トイレ用酸性洗剤(例:「サンポール」など)
(4)弱酸性洗剤(例:クエン酸)

【研磨用品】
(5)クレンザー(研磨剤)
(6)メラミンスポンジ
(7)研磨用ナイロンたわし
(8)金ブラシ

【掃除道具】
(9)スポンジ
(10)サッシブラシ
(11)両面ブラシ
(12)スクイジー
(13)ゴム手袋
(14)マイクロファイバークロス
(15)毛羽立ちが少ないやわらかい木綿のクロス
(16)ハンディモップ

〝お手上げ〟になる前の4段階を実践!
洗剤と道具を駆使した掃除方法

今ある汚れの段階を見極めることができれば、掃除にかける時間も手間もぐっと減り、大掃除の段取りもつけやすくなります。段階に合わせた具体的な対処方法をみてみましょう。

1段階【付着→乾ぶき】テレビの上や棚の上など

有賀さんによると、第1段階の汚れと付着は、ホコリや髪の毛など水分を含まない汚れのため、サッとふくだけでいいそうです。

[用意するもの]
(16)ハンディモップ

「ホコリを溜めなければ、汚れが付着し固まることもないので、こまめにホコリを取りのぞけば長期的にきれいな状態をキープできます。
ハンディモップなど、サッと簡単にホコリを除去できる道具を取り出しやすい場所にセッティングしておくなど、日常的に継続できるよう工夫しておくことが大切です」

2段階【吸着(ホコリ+水分)→水ぶき】窓の桟や窓ガラス

窓の桟や窓ガラスは、第2段階の吸着汚れがよく見られる場所。有賀さんによると、「窓周りの汚れは、ホコリや砂に水が含まれているだけのため、基本的に洗剤は不要」とのこと。

・窓の桟

[用意するもの]
(10)サッシブラシ
(14)マイクロファイバークロス

1.サッシブラシで、桟の砂やホコリをはいてかきだす。
「窓の桟から砂やホコリを取りのぞくには、細くて深い溝からしっかりと汚れをかきだせるサッシブラシを使いましょう」

2.ブラシの柄に濡らしたマイクロファイバークロスを巻きつけて、くぼみに沿ってふく。

「ある程度、汚れを取り除いたあと、ブラシの柄に濡らしたマイクロファイバークロスを巻きつけてふくと、くぼみの汚れをきれい取りのぞけます」

・窓ガラス 

[用意するもの]
(12)スクイジー
(14)マイクロファイバークロス
(15)毛羽立ちが少ないやわらかい木綿のクロス

1.マイクロファイバークロスを十分に湿らせ、窓に水分を塗りつけるように、窓の上のほうから順番にコの字を書くように隙間なくふく。

「窓についた汚れに、水分を含ませます。ふきながらあらかた汚れを取りのぞき、最後にスクイージーで残った汚れを一気に取りのぞきます」

2.水と混ざった汚れをスクイジーで取りのぞきます。取りのぞき残しがないよう、窓の上から下まで1列ずつ、隙間なく滑らせる。残った水滴を毛羽立ちの少ない柔らかい木綿のクロスでふき上げる。

「窓の掃除の注意点は、汚れのもととなる水滴を残さないこと。水滴が残ったままだと、乾いたあとに水と混ざった汚れの跡が残ってしまいます。仕上げに、毛羽立ちの少ない柔らかい木綿のクロスでふき上げれば、ふきムラや水滴の跡が残ることはありません」

3段階【粘着→洗剤】・4段階【染着→研磨】キッチン周り

キッチンをはじめ水回りは、油汚れ、石鹸かす、水垢、皮脂汚れなどが溜まりやすいので、基本的に洗剤が必要です。また時間が経ち、材質に染み付いた汚れは染着となり、研磨剤を使って研磨する必要があります。

・キッチンの五徳

[用意するもの]
(2)アルカリ電解水
(5)クレンザー
(6〜8)メラミンスポンジ、もしくは研磨用ナイロンたわしや金ブラシ

「五徳の汚れの程度によっては、必要な道具が変わってきます。普段からこまめに掃除をしている方は、お湯で濡らしたクロスでしっかりふく程度できれいになります。before写真のように鍋からこぼれた汁などに油が混ざり、長時間放置された頑固な油汚れは、アルカリ電解水をふきかけてラップで包みましょう。時間をおいて、汚れを浮かせる必要があります」

1.アルカリ電解水をふきかけラップをし、5分放置する。

2.汚れを浮かせたら、まずはスポンジで磨く。汚れが取れない場合には、クリームクレンザーやメラミンスポンジを使ってさらに磨く。

3.それでも落ちない場合には、研磨用ナイロンたわしやブラシを使う。

「炭化した焦げ付きは染着になるため、研磨する必要があります。スポンジで取れない場合には、メラミンスポンジ→研磨用ナイロンたわし→金ブラシと、汚れの進度に合わせて、研磨力も強めていきましょう。研磨力が強いほど素材を傷つける可能性が高まるので、いきなり研磨力が強いものを使うのではなく、弱いものから試していきます。また、最初は目立たない場所で試してみるのがおすすめです」

4.さらにひどい汚れは、アルカリ電解水で漬け置きをする。
「チャック付きの保存袋などに五徳を入れ、五徳がかぶるぐらいのお湯を注ぎます。そこにアルカリ電解水を15回プッシュほど入れ、約15分漬け置きしてから再度磨きましょう」

・シンクの水栓の水垢

[用意するもの]
(4)弱酸性洗剤であるクエン酸水(スプレーボトルに水100㎖とクエン酸5gを入れたもの)
(6)メラミンスポンジ
(11)両面ブラシ
・家庭用ラップ

「水回りは、水の中に含まれるミネラル分が乾いて硬くなりbefore写真のように、白く残ってしまうことがあります。長時間放置されたミネラル分は、硬く凝固し、簡単に取りのぞけないため、『クエン酸をかけ置きする→磨く』というのを何度か繰り返す必要があります。afterの写真は5分放置して磨くを、2回繰り返したものです。これだけでここまできれいになるんですよ。ここからさらに2、3回と繰り返せば、もっときれいになるでしょう」

1.汚れにクエン酸水をふきかけ、ラップをする。

2.面をメラミンスポンジ、水栓の溝部分は両面ブラシを使って磨く。

3.1から2を何度か繰り返し、時間をかけて汚れを取りのぞく。

「水垢は広範囲なので、クエン酸水にして液状にしたほうが塗布しやすいのですが、頑固な固まりは、スポンジなどに直接クエン酸をつけてこするのもおすすめです。その場合は、クエン酸が残らないようにしっかりと水洗いしましょう」

3段階【粘着→洗剤】・4段階【染着→研磨】トイレ

トイレで汚れやすい場所といえば、ウォシュレット部分やそのフタ、便器内の水際、便器のふち裏。尿による黄ばみや尿石が主で、目に見えてわかりやすい汚れのため、ついゴシゴシとこすってしまいがちです。しかし、有賀さんは「トイレを強くこするのはNG」と言います。

「ゴシゴシこすると、 汚れ防止のために施されているコーティングを傷つけてしまう可能性があるからです。なるべく洗剤をかけ置きし、汚れを浮かせてから掃除しましょう。また、便器の素材によっては使用できない洗剤もあります。事前に製品の取扱説明書を確認しましょう」

[用意するもの]
(1)アルカリ性洗剤(塩素系漂白剤)
(3)トイレ用酸性洗剤
(11)両面ブラシ
(13)ゴム手袋

1.黄ばみ汚れや尿石には、トイレ用酸性洗剤をかけて5分ほど放置する。

2.両面ブラシでやさしく磨く。

「1から2を繰り返しても、汚れが取りのぞけない場合は、カビ汚れの可能性があります。その場合は、洗剤を十分に洗い流してから、塩素系漂白剤を使用しましょう」

3段階【粘着→洗剤】・4段階【染着→研磨】お風呂

「お風呂で発生する汚れは、人間から出る皮脂汚れや石鹸かす、水垢、そしてカビです。それぞれ性質が異なるので、適切に対処していきましょう」

・お風呂のカラン

[用意するもの]
(2)アルカリ電解水
(4)弱酸性洗剤であるクエン酸水(スプレーボトルに水100㎖とクエン酸5gを入れたもの)
(11)両面ブラシ
(6)メラミンスポンジ
(14・15)マイクロファイバークロス、もしくは毛羽立ちが少ない柔らかい木綿のクロス
・家庭用ラップ

1.アルカリ電解水をふきかけてラップをし、5分放置する。そのあとメラミンスポンジで磨く。
「まずは皮脂汚れを落とすために、アルカリ電解水をかけ置きしましょう。5分ほどしたらメラミンスポンジでこすります」

2.1を2回繰り返したらアルカリ電解水をしっかり洗い流し、クエン酸水をふきかけてラップをする。そのまま5分放置し、メラミンスポンジで磨く。
「1を繰り返しても水垢が残る場合は、アルカリ電解水をよく流し、クエン酸水をかけ置きします。洗ったあとに水滴を残したままでいると水垢の原因になるため、クロス等でふき上げましょう」

シャワーヘッドやホースの溝など取れにくい汚れは、おけにお湯とアルカリ電解水を15プッシュほど入れ、そこに約15分漬けてからブラシなどで磨くと、汚れが浮いて取りのぞきやすくなるとのこと。

・お風呂の黒ずみ

[用意するもの]
(1)アルカリ性洗剤(塩素系漂白剤) 
(11)両面ブラシ
(14)マイクロファイバークロス
・キッチンペーパー

「お風呂の黒ずみの原因はカビなので、塩素系漂白剤をふきかけて掃除しましょう。カビは湿気を好むため、掃除後はクロスなどでしっかりとふき上げることが大切です」

1窓を開けて換気をする。

2黒ずみに塩素系漂白剤をふきかける。黒ずみが広範囲の場合は、キッチンペーパーをのせて、その上から塩素系漂白剤を吹きかけ5~10分放置する。

3.水でよく洗い流し、マイクロファイバークロスなどで水分をふき上げる。

「汚れは時間とともに取れにくくなるため、普段からこまめな掃除を心がければ、大掃除にかかる手間と労力を大幅に削減できます」と 熱く語ってくださった有賀さん。大掃除できれいになったお家をキープするためにも、汚れの第1段階、第2段階を意識しこまめな掃除を習慣化しましょう。

Profile

ハウスクリーニング技能士 / 有賀照枝

株式会社ハート・コードの代表取締役。家事代行サービスをはじめ、整理収納関連事業を幅広く展開。「部屋磨きは自分磨き、職場磨きはスタッフ磨きに通じる」をモットーに、多方面からお片づけや家事に悩める多くの人を救うお手伝いをしている。豊富な現場経験とセミナー講師の経験を活かした分かりやすい解説が好評。

<保有資格>
整理収納アドバイザー1級
整理収納コンサルタント
整理収納アドバイザー2級認定講師
ハウスクリーニング技能士(国家資格) ほか

株式会社ハート・コード

取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=鈴木謙介