都内を中心に続々と建設が進んでいる超高層マンション(タワーマンション)。交通の便がいい場所に建てられることが多いため人気があり、いつかは住んでみたい! と憧れる人も多いのではないでしょうか。とはいえ、タワーマンションは買うには高額で、いきなり購入を検討するのはハードルが高いもの。アットリビングは、まずは“賃貸”で住んで、その暮らしを“お試し”してみることをおすすめします。
そこで、予備知識として知っておきたいタワーマンションのメリットや選び方について、不動産コンサルタントの長谷川 高さんに教えてもらいました。
タワーマンションに憧れる理由
タワーマンションとは、「およそ20階建て以上の超高層マンション」を指し、塔状の外見をしている建築物のことを言いますが、特別な基準や定義はありません。「戸数の多い分譲マンションであることがほとんどで、駅前のマンションを中心に再開発が行われ、周辺の環境が整備されることがあり、タワーマンションには他のマンションにはないメリットが存在するのです」(長谷川 高さん、以下同)
1. 外観が華やかで見栄えがする
エントランスが広く、二層吹き抜けのロビーラウンジが用意されているマンションもあります。「玄関はマンションの顔ですから、各マンションが競って美しいエントランスの企画設計をしています。季節ごとに花や装飾が入れ替わったり、コンシェルジュが迎えてくれたりと、他のマンションと比べると、圧倒されるものがあります」
2. 共用部分のサービスが充実している
タワーマンションには、入居者がシェアできるような共用部分がさまざま設けられていることが多いそう。「たとえばトレーニングジムが入っていたり、ゲスト用の宿泊ルームがあったり、最上階にパーティールームやラウンジがあるマンションもあります。ホテルのようにフロントで宅配便の受け取りをお願いできたり、クリーニングやデリバリーの手配などをしてもらえたり、サービスの充実は各社が競っている部分でもあります」
3. 自宅が誰でもすぐわかるランドマークに
他のマンションと違って、タワーマンションは建物自体が目立つので、誰に言ってもすぐにわかるというのもメリット。「タワーマンションは駅前に建設されることが多いので、人の目につきやすく、“あの高級マンションに住んでいるの!”と記憶に残るでしょう。また、駅前の物件であれば、駅近くで広大な土地が売り出されることは稀で、新しいマンションが次々に建つ可能性は低くなります。そのため、ずいぶん前に建ったタワーマンションでも価格が下がりづらい傾向にあります」
どこがおすすめ? タワーマンション人気エリア
さまざまな場所に建設されているタワーマンションですが、次に紹介する3つのパターンに分け、自分の好みと照らし合わせてチョイスすると、ぴったりの良物件が見つかるかもしれません。
・郊外駅前エリア
国分寺や立川など、特急に乗れば都心まで30分ほどで行けるエリアは、街自体が静かで住みやすいと人気です。「このエリアのタワーマンションが、都内では価格的にいちばん買いやすいでしょう。郊外と言っても、新宿や渋谷まで電車ですぐですし、なおかつ駅と直結していたり、駅まで徒歩数分の距離に建っていたり、傘を持たずに電車に乗れるなどのアクセスのよさが魅力で、都心に比べれば相対的に安くなります」
・湾岸エリア
豊洲、汐留、品川などの湾岸エリアには、続々とタワーマンションが建設されています。もとが工業地帯なので、広大な土地が一気に売りに出され、戸数の多い大型マンションが建てやすい土地です。「東京駅周辺や銀座へのアクセスが大変よく、職場がその付近にある方に人気の場所です。以前は周辺に何もなかったのですが、再開発がどんどん進み、10年前にはなかった大型スーパーマーケットや商業施設ができ、街から出なくても買い物がすんでしまう便利さが近年整ってきました」
・都心人気エリア
都心や、代官山や中目黒、東横線沿いなど、人気の高いエリアにあるタワーマンションは、交通の利便性だけでなく、周辺にもおしゃれなお店が立ち並んでいます。「観光や買い物客で賑やかな街です。どのマンションにも言えることですが、家賃の価格が上がれば、それだけ収入のある方が住んでいると予想ができるものです。都心のタワーマンションは価格的にもっとも高い物件なので、そういった層の方々が入居しているのも魅力のひとつかもしれません」
タワーマンションに住むときに注意したいこと
それでは実際に、賃貸でタワーマンションに住むときに注意したいこととは? 物件の選び方や契約条件の確認方法などを聞きました。
1. 内覧は二度すること
タワーマンションに住む多くの人が物件に求めるのは、眺望でしょう。ひと口にタワーマンションと言っても、階数によって見える景色はさまざまです。「普通のマンションでは見られないような夜景や東京タワーなどが窓から見える、という点が、タワーマンションの最大の人気理由だと思います。ですから方角を確認するだけでなく、必ず内覧して窓から何が見えるのか自分で確かめておきましょう。また、夜景が見えると思っていても、実際は明かりがそう多くなかったり他の建物に邪魔されていたりする場合もあるので、昼と夜の景色をきちんと見てから契約することをおすすめします」
2. 低層階には低層階のよさがあることを知る
超高層だからできれば上の方に住みたい、と思う方も多いかもしれませんが、タワーマンションの価格は、上に行けば行くほど上がるものです。「階数は予算に合わせて決めるのがよいと思いますが、低層階には低層階でよい部分があります。まず、低層階でも共用部分は平等に使えるということ、そして地震などの災害時にも階段を使って上り下りでき、避難所に住まなくてもよい可能性があることです。価格的なことも含め、災害時のことを考えると、個人的には5〜6階あたりもよいのではと思います」
3. 防災対策について確認する
タワーマンションに住むときに気をつけたいのは、防災対策がどの程度行われているかという点です。「防災対策をする上で、それぞれのマンションがどのように建てられたのかを知っておきましょう。また、水や食料の備蓄、非常用電源が発動するかどうかなど、災害時や災害後の対策がなされているかが大切です。地震などでエレベーターが止まっても、自家発電で一基だけ動く場合もあります」
4. ペット可物件の規定を確認する
分譲なので、ペット可物件も多くありますが、ペットについても細かく制約が設けられていることがあります。「ほとんどの場合において、ペットの種類や大きさ、頭数などに規約があり、小型犬二頭までならOKとか猫ならNG、というような取り決めがあります。入居時に飼っていなくても、その後飼育する可能性がありますから、必ず確認しておきましょう」
タワーマンションに賃貸で住むメリット
タワーマンションはほとんどが分譲物件ですが、投資家が投資のために購入した物件など、分譲物件でも賃貸で借りられるケースがあります。「タワーマンションに住んだことがない方は、一度賃貸で入居して、雰囲気を体験しておくといいのではないでしょうか。200や300というたくさんの方が同じ集合住宅に住むことになりますし、人や駅前の賑わいなどが気にならないかなど、住んでみないとわからないことが確認できると思います。また、購入となると多くの方は30〜35年という長い期間かけてローンを支払っていくことになります。購入したあとの価格の上がり下がりも気になるでしょうし、現在は不動産価格が上がっている状態ですから、下がったタイミングまで待つのが得策でしょう。主なメリットを次にご紹介します」
1. 造りがしっかりしている
もともと分譲物件は、何千万、何億という金額を支払って購入することを目的に造られた建築物です。「今は賃貸物件でも分譲のように造られたものもあるので、すべてではないのですが、分譲物件は防音防寒に優れた壁材や床材を使用していたり、長年住むことを想定してバリアフリーになっていたり、高いお金を出して買ってもらうことを前提に造られています。一般的には賃貸用に造られたマンションと分譲物件であるタワーマンションとでは、造りそのものが違うことの方が多いでしょう」
2. 賃貸なら分譲物件に住んでも固定資産税などが発生しない
タワーマンションに限ったことではありませんが、マンションを買うとなると、純粋な購入額だけでなく、さまざまな税金がかかります。「購入するためのローンの他に、固定資産税・都市計画税がかかります。また、管理組合では老朽化に備えた修繕費を積み立てたり、管理組合の会議に参加したりと、入居者がしなければならないこともありますから、ご近所づきあいが苦手な方には手間がかかるでしょう」
3. 自由に引越しができる
分譲を購入するとなると気になるのが、ご近所にどんな方が住むかというところです。「新築の場合、事前に隣近所を確認することができませんし、すでに入居者がいる場合でも、事前に近隣にどのような方が住んでいるか知るのはなかなか難しいでしょう。分譲物件は基本的にペットや楽器可ですし、騒音トラブルなどがあった場合、引越しができる身軽さは賃貸のよいところですね」
タワーマンションに賃貸で住む場合の注意点
魅力的な共用部分が多いタワーマンションですが、賃貸で入居する方も同じように使用できるかは、確認が必要です。「ジムやラウンジなどを使う際、賃貸入居者でも使用できる場合と、使うごとに金額が発生する場合、または使用制限がある、ということもあり得ます。賃借人であってもサービスが受けられる契約なのか、きちんと確認しておきましょう。また、分譲で購入している方が多いので、マンションの景観に関することやさまざまなマナーなどについて、管理組合の取り決めがある場合も確認しておくとよいでしょう」
住まいは、疲れた体や心をリラックスさせる大切な場所です。広々としたゆとりある作りのマンションは、旅行先のホテルに来たような開放感を与えてくれます。憧れのタワーマンションで、新しい暮らしをはじめてみてはいかがでしょうか?
Profile
不動産コンサルタント / 長谷川 高
株式会社長谷川不動産経済社・代表取締役。大手デベロッパーにてビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わり、1996年に独立以来、一貫して顧客の立場で不動産と不動産投資に関するコンサルティング、投資顧問業務を行う。『家を買いたくなったら』『家を借りたくなったら』(WAVE出版)の「家」シリーズは、累計で10万部を突破。 雑誌や新聞等へのコラム執筆なども多数ある。
取材・文=吉川愛歩 構成=Neem Tree