いまや、至るところで目にするようになった「断捨離」という言葉。最初に提唱し、著書やテレビ・雑誌などのメディアを通じて広く一般化させたのが、やましたひでこさんです。
そんな正真正銘の“生みの親”が、日々思うこととは何なのか? 日常における、断捨離にまつわる気づきをしたためたエッセーをお届けします。前回は「快適な空間」を定義、さて今回は……?
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なぜ、片づけても片づかないのか?
たかが、片づけ。
されど、片づけ。
私たちは、どこまでも片づけに難儀するもの。そう、片づけが得意で、片づけが大好きで、なんて人はほんの数える程くらいにしかいない。大抵は、片づけは苦手で、嫌いで、したくないもの。けれど、だからといって、片づけはしたくなくても、片づいた部屋を望んではいるもの。けっして、片づいていない部屋を好んでいる訳ではないのです。
さて、この心理的にも物理的にも面倒な片づけ。その面倒が積み重なっていくと、私たちは、いつしかすっかりあきらめモードに。どうせ、片づけたってすぐに元どおりの有様、やるだけ無駄、片づいていなくたって別に死ぬ訳でもなし……と、なんだかんだと自分に言い訳をしたりもする。
その言い訳の根っこは、やはり、片づいた部屋の方がずっと良いことがわかっているから。そして、片づけられない自分をどこか心の奥で責めているから。
「面倒」が「あきらめ」を呼び、「責め」ながら「言い訳」をする。そんな負のスパイラルからは可能な限り速やかに脱出しなくてならない。
なぜなら、それは、生きることさえ面倒で、人生をあきらめてしまうことに繋がってしまうから。
だとしたら、なぜ、片づけがそんなにも面倒なものに成り果ててしまった理由を考える必要があるのです。
その理由は様々あるにしても、こうやって断捨離という「引き算」の解決法というメソッドを提供させていただいている立場からみると、これだけ片づけを難儀にしている一番の原因は、これにつきる。
モノの量
片づけ上手であれ、片づけ下手であれ、量が大きな障壁となって立ちはだかっていることは同じ。
しかも、残念なことに、そのモノの多さは自分が思っている以上のモノの堆積であることに、実は、ほとんどが気づいてはいない。
モノが散らかっているのではなく、モノは溢れて出しているのです。
住まいが片づいていないのではなく、モノが堆積しているのです。
手にあまるモノの量。
手に負えないモノの量。
それらが、私たちの片づけを難儀なものにしているのです。
そして、もっと問題なのは、夥しいモノの量であるにもかかわらず、私たちが「しまえば片づく」と思い込んでいることの方。そう、しまう先の収納空間はすでにモノがキチキチに詰まっているにもかかわらず。
だから、収納グッズをさらに増やしてモノをしまおうとする。そう、その収納グッズも実はモノであるにもかかわらず。
片づけ=整頓=収納、この図式ほど、私たちの空間をかえって損なうことはない。揃えれば片づく、収めれば片づくという思い込みほど厄介なものはない。
なぜなら、大量のモノをいくら揃えても、大量のモノをいくらしまっても、それは、モノがカタチを変えて移動しただけに他ならず、モノが大量であることにはなんら変わりがないのだから。
繰り返し見極めなくてはならないのはモノの量。量が多ければ多い程、整頓が大変で面倒で、しまうのは厄介で面倒で大変なのは当たり前のこと。
繰り返し見切っていかなくてはならないのはモノの量。量を見切って減らしていかないかぎり、モノから空間を取り戻せはしない。
要するに、余計なモノを捨てていかないことには、不要なモノを捨てていかないことには、住まいがスッキリとした空間にはなり得ないのです。
揃える前に捨てる!
しまう前に捨てる!
それが、根本療法。
捨てるという行為なくして、空間は荒んだまま。
捨てるという行為なくして、空間は淀んだまま。
そうですね、この「片づけ苦」から、「収納苦」から、自分を解放していくには、モノをひたすら小さく畳んで納めることこそ、つまり、この対症療法にいつまでも執心していることこそ、断捨離していかなくてはならないのです。
Profile
クラターコンサルタント / やましたひでこ
東京都出身、早稲田大学卒業。学生時代に出合ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を、日常の「片づけ」に落とし込んで応用提唱し、誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築した。断捨離を、人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置付け、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。また『新・片づけ術「断捨離」』(マガジンハウス)をはじめとするシリーズ書籍は、中国、台湾でもベストセラーを記録し、国内外累計400万部を超え、ヨーロッパ各国の言語でも翻訳されている。
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