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これから「断捨離したい!」という人へ。やましたひでこさんの人生から見えてくる、
本当の「断捨離」-第4回-

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家にいる時間が増えたことで「断捨離を始めた」という話も多く聞かれるようになりました。この「断捨離」に関連する著書やセミナー、テレビ・雑誌などのメディアを通じて広く一般化させた“生みの親”が、やましたひでこさん。現在も、日本国内はもちろん世界で活躍し、“片付けられない人たち”にそのメソッドを伝えています。この連載では、やましたさんのこれまでを振り返りながら、真の断捨離とはなにかを語っていただいています。

さて、緊急事態宣言が解除され、少しずつ日常を取り戻し始めたように思えます。しばらく自宅にいることが多かったため、今まで目をつむっていたことが我慢できなくなったり、家族との問題に悩んだ人も多かったのではないでしょうか? その証拠に「コロナ離婚」という言葉も新たに生まれ、本来安らぐ場所であった我が家が、新型コロナウイルスで“耐えがたい場所”になってしまった、という人もいるかもしれません。

この連載も、今回からはモノの断捨離から発展して、“人間関係”など目に見えないものと断捨離について。現代人が抱える心の悩みを、「断捨離」の発想によって、どのように解決していけばいいかを教えていただきます。

 

第4回 人間関係にも「断捨離」は必要?
———部屋を見れば、夫婦関係が見える———

———先日の緊急提言の時にも少し伺いましたが、新型コロナウイルスによって断捨離をする人が増えました。その影響なのか、「コロナ離婚」なんて言葉も登場しましたが、断捨離と人間関係にはどの様な接点があるのでしょうか?

「はい。この話題に入る前に、ちょっと考えてもらいたいのですが、東日本大震災の時は『絆』という言葉がフォーカスされましたよね? 同じ“自粛”という言葉が使われている今回の新型コロナウイルスですが、絆どころか批判したり、ギスギスしていたり、震災の時とは違う感情がうごめいています。どこに違いがあるかわかりますか?」

———そういえばそうですね、考えたことがありませんでした。何が違うかと聞かれると……明確な答えがわかりません。

「これは私の考察なんですが……。東日本大震災は“自然災害による命の危機”でしたよね。圧倒的なパワーで、人間にはどうにもできない自然からの脅威で、命の危機を肌で感じていました。一方、今回の新型コロナウイルスは、日本だけのことで考えればたくさんの感染者は出ていますし、亡くなる方もいらっしゃるのですが、多くの人は直接生死に関わる命の問題以上に、感染してしまったことで“社会から疎外される危機”の方が、恐ろしく感じているのではないでしょうか? たとえ運良く命が助かっても“社会的な命が奪われてしまう”のが、今回の新型コロナウイルスだと感じました」

———なるほど。生死に直結する命の危機と、社会的立場が奪われることによる命の危機との違いがあると言うことですね。

「新型コロナウイルスで命を落とされた方も、全世界的に見れば本当にたくさんいらっしゃいます。でも日本では、体は元気なのに、営業ができなくなってしまい閉店せざるを得ない店舗や、倒産してしまった企業など、経済的に立ち行かなくなってしまう恐怖を日々の報道や情勢から感じ取ってしまっています。このような状態では、どう頑張っても“絆”を結んでいくのは難しい。だって、社会的立場や危機感は、人によってそれぞれ異なっているわけですから」

———国中のみんなの意識が散り散りになっているというのを感じていた部分があるので、社会的な命が奪われるという感覚は納得です。

「それに『3密(密閉・密集・密接)』という言葉も出てきました。すべての“密”がいけないように報道されていましたが、密接ではなく“接触”がいけないのであって、人間関係、とくに家族から『密接』を取ってしまったら家族ではなくなってしまうと思いませんか? ソーシャルディスタンスとも言われますが、家族間での距離の取り方が上手に保てなくなってしまったことで、『コロナ離婚』や『コロナDV』が浮き彫りになったとも考えられます」

———家庭内の距離感の作り方はコロナ以前から悩みのひとつとしてありましたが、今回は一緒にいる時間が長くなった方もいるので、さらに悩みが大きくなったという感じでしょうか?

「そうですね。まず理解していただきたいのは、住空間には限りがあるということ。その住空間には、時間も流れています。この“生活時空間”を高い密度で共有するのが、夫婦であり家族なのです。冷静に考えてもこの中で揉めないわけがありません(笑)。満員電車に乗っていて『私はいつも心穏やかですよ〜』なんて人がいないのと一緒です。そもそもこの“生活時空間”を共にしているのだ、ということ理解できていない人が多すぎるんです」

———自分だけの空間ではなく、家族で空間を共有しているとは考えてもいませんでした。

「さらに厄介なのが、この“生活時空間”を共にするだけではなく、『家族だから』『夫婦だから』というなんの根拠もない『だから』。友情を築くためにはお互いが努力をするでしょう? 仕事を円滑に進めるためにも協力し合いますよね? 家族『だから』と甘えに加えて、コントロールや支配まで発生している。揉めないわけがありません」

「断捨離」を提唱し、活動するやましたひでこさん。断捨離はモノだけでなく、人やお金などより概念的なものにも応用できると説きます。
「断捨離」を提唱し、活動するやましたひでこさん。断捨離はモノだけでなく、人やお金などより概念的なものにも応用できると説きます。

 

「結婚」だけが社会的な制度に縛られている人間関係

———今までの家族生活を振り返ると、身につまされる気持ちがします。

「自分がそばに“いて欲しい時”にだけいて欲しいと思う一方で、“いて欲しくない時”だってある。それは相手だって一緒なのです。自分の気持ちと同じ様に、相手も『一緒にいたい』『ひとりになりたい』とそれぞれ思っている時があるのだということに気がつかないといけません。もっと砕いて言うなら、『いてくれてうれしいけれど、面倒くさい』『うっとうしいけど、ありがたい』という両方の感情が共存していて、普段バランスを取れているのですが、新型コロナウイルスの影響を受けて一緒にいる時間が増えて、『面倒くさい』『うっとうしい』が勝ってしまった、というわけなんです」

———なるほど。まずは前提を理解しておくことが大切なんですね。

「理解する、気づいてあげる、ができればいいのだけど、空間を共有しているという感覚がないと『あ、今はこの人はひとりになりたいんだな。そっとしておこう』がわからなくなってしまう人が多いんです。『妻だから』『夫だから』の『だから』に縛られているようでは、つらくなってしまうだけだと思いませんか? お互いが信頼し合っていく関係をつくる努力が必要なんです」

———結婚する前に知りたかったです……(笑)。結婚はスタートだとよく聞きますが、一緒に暮らしてみて気づくことやわかることってたくさんありますからね。お互いに『だから』の幻想を抱くことなく、同じ“生活時空間”にいることを理解しておかなければいけませんね。

「今からでも遅くないし、結婚から学べることはたくさんありますから(笑)。あと、人間関係において“制度”があるのは結婚だけ。法律に基づいて恋愛したわけでもないのに、結婚したら離婚するためにも許可が必要で、なかには裁判所で争う夫婦もいる……いろいろなドラマや映画、音楽でこれだけ恋愛の楽しさ、素晴らしさ、自由を表現されているのに、結婚すると一気に不自由さが出てしまうんです。『結婚』という制度のせいで『離婚が悪いもの』と思われている部分も多くあると感じます」

———たしかに、結果だけ見たら付き合っているカップルが別れるのと同じようなことなのに、離婚となると一気に腰が重くなってしまいますよね。

「さらに『夫婦=一緒にいるもの』という誤解。一緒にいてもいなくてもお互いを尊重できていて、お互いに良い関係に進化・発展したのだと考えればいいだけのことなのだけど、離婚することが善悪でしか議論されていません。仲良くなることだけが関係改善ではなくて、“一度離れる”という選択も関係改善につながります。考えた結果『私たちは、離婚します』で、なんの問題もありませんから」

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モノの量・質・有様・置き方で夫婦関係がわかる?

———極端な質問かもしれませんが、実際に「断捨離したことで、離婚しました」、と言う方もいらっしゃるんですか?

「元に戻るか、離婚するかは結果論です。相手のことを尊重した上でみなさん結論を出されているので、一概にどちらになるというのはありません。でも100%共通して言えることとすれば、『どの結論になっても仲良くなっている』と言うことですね。自分の状態が以前よりも心地よい状態になれればいいのであって、結婚や離婚にとらわれずに考えて結論を出されています」

———素敵ですね! ちなみに、良好な夫婦関係だと思うご家庭はどんな状態なのでしょうか?

「それはもう、すっきり・ピカピカ・うっとりです」

———断捨離されている状態ということですね! モノの配置がバランスよく心地よい空間になっていると言うことでしょうか? お子さんがいる家庭だと難しい様にも感じるのですが……。

「お子さんがいる家庭でも、一緒ですよ。お子さんが勝手に親のクレジットカードで買い物してきたり、おもちゃを集めたわけではないですから(笑)。モノの量と、質と、有様、置き方で、その家族の関係性が丸わかりです。玄関から奥さんのモノがバーッと置かれていたり、リビングが奥さんの趣味のカラーで統一されていたり、『旦那さん、よくこの空間にいられるね?』って思ってしまう時も(笑)。素敵な夫婦関係を築かれているご家庭だと、お互いへの配慮が感じられます。自分の好みでなくても『夫が好きなテイストだから、こんな風に飾るのはどうかな?』って自然に配慮できる関係性なんです。旦那さんが趣味で集めているフィギュアコレクションとかも、奥さんに配慮して空間に見合う“数”にしていたり、最初にも話した様に同じ“生活時空間”にいてもストレスがないような状態で過ごされています」

———なるほど。やましたさんにはたくさんの相談が寄せられると思うのですが、実際に家の片付けと夫婦関係がリンクされているケースも多いのでしょうか?

「『家が片付きません。どうしたらいいですか?』と相談をもらった方に詳しく話を聞いてみると、夫婦関係に問題があるケースはもちろんあります。そんな時は、『こんなに散らかった空間にいたらギスギスするし、イライラしちゃうよね?』って、片付けようとは言わずに今の現実を認識させます。自分がこんな残念な空間にいながら、『夫が……』『妻が……』って言っている人がほとんどなので、『どんなに機嫌がいい日でも、この家に帰ってきたら機嫌が悪くなるよ、あなたもそうじゃない? さわやかな空間にいたいよね?』と問いかけると、これまではいらないモノに圧迫されて、自分をいじめているような空間にいたんだと気がついてくれます。その後、断捨離をしていく中で、自己肯定感や他人への配慮や尊重が生まれてくるようになるのです」

———以前も「断捨離というのはキツいもの」とおっしゃっていましたが、あらためて感じました。自分自身が今の状況に“気が付く”“認識する”ということが大切なんですね。最後にひとつ。こんなことを聞いたら怒られてしまうかもしれませんが、一度断捨離できた! と綺麗に片付いて、夫婦関係が良くなっても、また戻ってしまう人もいるんでしょうか?

「繰り返しやっていくのが断捨離だから、終わりはないんです。毎日がトレーニングだし、繰り返して実践していくことで身につくようになります。スポーツに例えるなら、いきなり練習や稽古もしないで、全国大会には出場できないですよね? だけど、世間の人は『どうしたら全国大会で優勝できますか?』みたいな質問を平気でしてくるの(笑)。断捨離も部活動だと思って、日々トレーニングしてもらいたいです。結婚も同じように考えれば、誰だって最初は結婚初心者なんです。いきなりはうまくいかないんだから、失敗したっていいんだし、『一生守ります!』なんて結婚式で宣言してても、それはその時の気持ちであって、時とともに変わっていくもの。経験をしながら、自分を磨いていくのが人生ですからね」

———今回のお話は、夫婦関係や家族関係で悩んでいる方にとても力になったのではないでしょうか。ありがとうございました!

 

第4回の断捨離に関するキーワード

・家族は、同じ“生活時空間”の中にいると認識する
・家族だから、夫婦だからの“だから”に縛られてはいけない
・住空間を見れば、その家族の関係性がよくわかる。「すっきり、ピカピカ、うっとり」な空間を目指すべし

 

第5回は、お金と断捨離の関係について。「お金」をどんな“空間”思考で捉えれば、よい関係性を築ける様になるのでしょうか? ついつい無駄使いをしてしまう、なかなか収入が上がらないなど、身近なお金に関する悩みへの解決策を伺いたいと思います。

 

やましたひでこさんの「断捨離」に関する過去のコラムはこちら
https://at-living.press/tag/yamashitahideko-danshari/

Profile

クラターコンサルタント / やましたひでこ

東京都出身、早稲田大学卒業。学生時代に出合ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を、日常の「片づけ」に落とし込んで応用提唱し、誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築した。断捨離を、人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置付け、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。また『新・片づけ術「断捨離」』(マガジンハウス)をはじめとするシリーズ書籍は、中国、台湾でもベストセラーを記録し、国内外累計400万部を超え、ヨーロッパ各国の言語でも翻訳されている。
・やましたひでこオフィシャルサイト「断捨離」
日々是ごきげん 今からここからスタート http://www.yamashitahideko.com/
・やましたひでこオフィシャルブログ『断捨離』
断捨離で日々是ごきげんに生きる知恵 http://ameblo.jp/danshariblog/
・断捨離オフィシャルFacebookページ http://www.facebook.com/dansharist

※「断捨離」はやましたひでこ個人の登録商標であり、無断商業利用はできません。

 

取材・文=つるたちかこ 撮影=真名子

※取材はオンラインで行いました。写真は2020年1月中旬に撮影したものです。