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二重家賃や過剰な修繕費の請求を抑えるには?賃貸物件の退去時に押さえておくべきポイント

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賃貸物件から引っ越しする場合、気になるのが退去時の金銭的負担などのルールやマナー。「退去日と入居日はどうやって決めればいい?」「退去通知はいつ行うべき?」「原状回復はどこまで必要?」「二重家賃の負担を減らすには?」など、解約・退去時に備えて知っておくべき知識を、住宅・不動産のポータルサイト「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」のエグゼクティブアドバイザー・加藤哲哉さんに教えていただきました。

 

新居を探す前に、まずは契約書で「退去可能日」を確認すること

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引っ越しを思い立ったら、まず新居の物件探しから始める人がほとんどでしょう。35年以上不動産業界に従事してきた加藤さんは、新居探しの前に、現在の賃貸物件の契約書を確認することをすすめます。

「契約書を見返すことは普段あまりしないかもしれませんが、退去に関わる重要事項が記載されているので、確認することが大切です。まず、賃貸物件の契約には『普通借家契約』と『定期借家契約』の2種類があります。賃貸物件の多くは普通借家契約で、2年ごとなど一定期間を設けて契約更新をしていく方法です。普通借家契約の場合、一般的には退去の30日前までに、解約通知書を提出するという条件が多いでしょう。

一方、定期借家契約というのは、契約時に解約時期が決まっている借家契約です。定期借家契約の場合、基本的には最初に取り交わした期間が契約満了日になるので、原則として途中解約はできません。まずは、ご自身の契約書の種類と、解約がいつから可能になるのかを確認しましょう。もし、気に入った物件が即入居という条件であったなら、まず退去可能時期を新居の不動産会社に伝えることで、契約日のタイミングを交渉することができるかもしれません」(LIFULL HOME’S加藤哲哉さん、以下同)

用語解説

【普通借家契約】

一般的には2年ごとの契約更新が条件。中途解約をする場合には、解約希望日の何日前かに解約通知書を提出するという条件が決められています。
「UR賃貸住宅では、解約希望日の14日前までに解約通知書を提出すればOKという統一ルールがあります。一方、大家さんの希望で、2〜3か月前には解約の予告が必要というケースも。解約予告の期間や解約時に支払う金額などは、特約で条件が異なるので、契約書を確認しましょう」

【定期借家契約】

契約時に退去日まで決まった状態での契約方法で、日本の賃貸物件ではレアケース。原則として、途中解約はできません。
「貸主が転勤などにより一定時期のみ空き家になる家を貸したい場合や、近いうちに売却を考えているけれど、しばらくは貸していたいというような場合に、こちらの契約形態を選ぶことがあります。貸主の都合で期間が決まっているため、賃料の安い物件が出ることが多いので、条件が合えばお得な場合もあります。ただし、再契約ができない場合がありますので、契約期間と契約内容には注意が必要です」

【解約通知書】

借主が賃貸物件を退去するときに、大家さんか管理会社へ提出する書類のこと。退去届とも言います。
「解約通知書は、入居時に受け取った契約書類の中に入っている場合が多いでしょう。見つからない場合は、大家さんか管理会社に問い合わせてみましょう」

 

「二重家賃」を回避するためのチェック事項

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現在住んでいる賃貸物件の契約書に沿って、解約通知書を条件期間内に提出すれば、解約日が確定します。ただし、契約書に記載された内容で、退去に関わる内容は他にもいくつかあるので確認しておきましょう。

引っ越し日によって現在の賃料と新居の賃料の両方がかかる可能性があります。これを『二重家賃』といい、できれば回避したいものです。解約月の家賃の条件は、月割りと日割りのケースがあります。日割りの場合は、月初に退去した場合に残りの日数分の費用が戻ってきます。3月の下旬は繁忙期で、引っ越し費用が高額になる場合があります。二重家賃や引っ越し費用、新居の入居条件などを合わせて、どのタイミングで引っ越しをするのが適切かを検討するようにしましょう」

 

新居の契約書でもしっかりと確認を!「原状回復」の借主負担は?

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契約書の内容で退去時に確認したい事項は、もう一つ。原状回復に関する項目です。

「ハウスクリーニング、エアコンクリーニング、物損、傷などに関して、借主の負担条件は特約で記載されていることがあります。原状回復に関しては、貸主側が貸したときの状態に戻すように借主に請求するといった、多額の費用が発生するトラブルが起きることもありました。しかし、平成10年に国土交通省が定めた『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』が取りまとめられてからは、賃借人が借りた当時の状態に戻すのが原状回復の条件ではないと明確化しているので、貸主側からの多額の請求によるトラブルは激減しています。さらに2020年度からは、原状回復に関するルールが民法にも明記されました。

契約書の内容以外では、入居時に契約した火災保険や家財保険の解約も忘れずに行う必要があります。火災保険や家財保険が満期を迎えずに退去する場合、日割り計算で費用の一部が戻ってきます。基本的に不動産会社で保険の解約代行はしないので、自分で必ず解約手続きを行うようにしましょう」

【参考】国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

 

感謝を込めてきれいに! 原状回復費用の負担を抑える掃除ポイント

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荷造りをしながら進めたいのが、部屋の掃除です。

「国土交通省の定めた『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』によると、経年変化による劣化は、条件を満たせば新調費用を借主に請求されることはありません。ただし、故意や不注意、手入れ不足で汚したり壊したりした場合などは、工費を請求されることがあります。ほかにも、引っ越し時に粗大ゴミを処分していなかったりゴミが置きっぱなしだったりした場合のゴミ処理負担や、カーペットのシミ、タバコのヤニ、結露を放置したカビによる壁の腐食、ハウスクリーニングにかかる費用などは請求の対象になります。小さなお子さんのイタズラ書きなどは磨いて落とし、ゴミ類はすべて処分してから退去しましょう。水回りや換気扇などはできる限りピカピカになるように掃除をしておいた方が、余計な費用を請求される可能性が低くなります」

【関連記事】引っ越しを効率よく行うための手続きから荷造りまでの5ステップ

 

引っ越し1週間前には済ませたい! 退去のスケジュールを確認する

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原状回復にかかる費用の目安を確認し、掃除の計画を立てたら、引っ越しに向けてやることをスケジュールにまとめていきましょう。

「引っ越し作業を依頼するときは、できるだけ多くの業者に連絡し、料金やサービス内容をチェックして比較する方がいいですね。ウェブからの一括検索で条件に合う業者を絞り込めるので、それらを活用するといいでしょう。引っ越し料金は、基本運賃や割増料金、実費、オプションサービスなどの内訳がはっきりしている明細を出してもらい、不明な料金請求がないことを確認することも大切です。

転出届、電気、ガス、水道の解約手続き、電話、インターネット、銀行、クレジットカード類の住所変更、郵便物の転送など、必要な手続きにもれがないように進めていきます。最近は、引っ越し業者からもらえるチェックリストのほか、ウェブでも引っ越しに関わる手続きのチェックリストが無料でダウンロードできるので、それらを活用するといいでしょう」

【参考】引っ越しに関する諸手続きチェックリスト

 

退去時の挨拶はお忘れなく! 引っ越し前日までに近隣住民に一報を

退去時、入居時に挨拶に行った件数アンケート(LIFULL HOME'S調べ)
退去時、入居時に挨拶に行った件数アンケート(LIFULL HOME’S調べ)

LIFULL HOME’Sが2016年に行ったアンケート調査によると、退去時に1件も挨拶に行かなかった人の数は、全体の47.9%という結果になっています。

「このアンケートでは、年代別に統計を取ったわけではないので、40代以降のファミリー世帯や60代くらいのシニア層も含まれています。20~30代の働く女性は、挨拶に行かない人の方が圧倒的に多いと思います。ただ、挨拶はやはり行った方がいいです。最近はリモートワークの人も増え、オンラインミーティングをしていることがあります。実際に、コロナ禍になってから、騒音のトラブルやクレームが増えています。引っ越し日を事前に伝えておくことは、近所へのマナーとして大切です。直接訪問するのが難しい場合や、接触を避けたい場合は、ポストにメモを入れておくだけでもいいので、一報を入れましょう」

退去時、入居時の粗品金額に関するアンケート(LIFULL HOME'S調べ)
退去時、入居時の粗品金額に関するアンケート(LIFULL HOME’S調べ)

LIFULL HOME’Sの同アンケートによると、近隣に挨拶をした人が粗品を持っていたケースでは、退去時も入居時も500円~1000円が相場という結果に。

「退去時も入居時も引っ越しのときの粗品としては、タオル、お菓子、洗剤などを渡すことが好まれているようです。退去時のケースでは、地域指定のゴミ袋を渡すという事例もアンケートの回答で複数ありました。仲良くしていたご近所さんなら、地域指定のゴミ袋も渡しやすいですね」

【アンケート資料】「過去5年以内に土地勘のないエリアに引っ越したことがある人」(2016年9月実施、回答数480人)

 

解約手続きや契約書の内容チェック、掃除や挨拶など、退去時に押さえておくべきポイントはさまざま。契約書のチェック項目は、次の契約時に確認するべきポイントでもあるので、すぐに引っ越しの予定がなくても、内容を読み返しておくことをおすすめします。

Profile

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LIFULL HOME’S事業本部 エグゼクティブアドバイザー / 加藤哲哉

慶応義塾大学法学部法律学科卒業。現在は、LIFULL HOME’S事業本部 エグゼクティブアドバイザーのほか、投資事業戦略室長、事業支援ユニット長を兼任。財団法人日本賃貸住宅管理協会の理事も務める。
LIFULL HOME’S https://www.homes.co.jp/

 

取材・文=今井美由紀(Neem Tree)