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閉め切っても意外な場所から入り込む!花粉・黄砂を除去するための
春にすべき掃除術

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春は気温も湿度も過ごしやすい季節ですが、一方で、花粉や黄砂が空気中を飛散する時期でもあります。この季節は窓を締め切っているという人も多いかもしれません。ところが、外気はさまざまな“死角”から室内へ入り込み、意外な場所へ花粉や黄砂、粉塵が滞留しているのです。

「お掃除スペシャリスト」「クリンネスト」資格の事務局代表を務め、自身も掃除のエキスパートである白井佳子さんに、外気の汚れが気になる春にやっておくべき掃除術を教えていただきました。

どこからやってくる?
花粉・黄砂が溜まりやすい場所とは

窓を閉め切っている部屋でも、くしゃみなどアレルギー反応は出るもの。いったいどこから侵入してくるのでしょうか?

「花粉や黄砂は、窓や玄関ドア、換気用の小窓から換気口に至るまで、外気に接するあらゆる場所から室内に侵入します。これらは換気には必要な箇所ですが、同時に屋外の空気の汚れも室内に持ち込んでしまうのです。
さらに、外出から戻った人の衣服にも付着していることがあります。人の出入りだけでも、花粉や黄砂は簡単に家の中へと運び込まれてしまうのです」(クリンネスト講師の白井佳子さん、以下同)

では、家の中に入ってしまった花粉や黄砂は、どこに溜まっているのでしょうか?

「花粉や黄砂は空気中を漂い、次第にゆっくりと床に舞い落ちてきます。ですから、平らな場所であればどこにでも落ちていることになります。たとえば、以下のような場所が挙げられます」

・玄関
帰宅時にカバンを置いたり、コートを脱いだりすることで、外出先で付着した花粉や黄砂が飛散します。また、意外にも人の髪の毛にも多くの花粉や黄砂が付着しているため、部屋に持ち運んでしまいます。

・窓周り
サッシに窓ガラス、網戸まで外気と接する窓周りには花粉や黄砂がびっしり付着しています。

・床
面積の広い床にはその分、多くの黄砂や花粉が落ちています。フローリングであれば、空気の対流により吹き溜まりになる壁際や部屋の隅に溜まりやすくなります。カーペットの場合は、部屋の中心に溜まりやすく、またラグが敷いてある部屋であれば、フローリングとラグの境目に多く溜まります。

・キャビネットやテレビ台
キャビネットのような物の移動が少ない場所では、掃除の頻度も低く、黄砂や花粉が溜まりやすくなります。またテレビ台は静電気を引き起こしやすく、そのため黄砂や花粉を引き寄せがちです。とくに手が届きにくいテレビの裏側は、非常に汚れが溜まりやすいため、注意が必要です。

・ファブリック製品
ソファやカーテン、クッションにベッドなどの布製品には、凹凸があり、花粉や黄砂が付着しやすく、とくに座面と背板の隙間など溝になっている箇所には多く堆積しています。

そのほか、「巾木(はばき)や空気清浄機のフィルター、エアコンフィルターなどにも付着しやすい」のだとか。

花粉や黄砂の掃除に最適な時間帯

掃除をするにあたり、適した時間帯はあるのでしょうか?

「よく“朝”が適していると言われますが、それは、多くの家庭で夜は人の動きが少なく、その間に花粉や黄砂が床に落ちているからです。ただ、ライフスタイルによっては、朝でなくてはならないということもありません。仕事などで、日中に長時間家を空けるのであれば、帰宅直後でもいいでしょう。

掃除の頻度は、汚れ具合や周辺環境によって大きく異なります。窓周りの掃除であれば、最低、季節の変わり目ごとに年に4回程度はしておくと良いと思います。また、汚れやすい場所は回数を増やし、それほど気にならない場所であれば、回数を減らすなどの組み合わせを考えましょう。

なお、乾燥の気になる季節であれば加湿器を使うのもおすすめです。空気が乾燥しすぎていると、花粉や黄砂がなかなか落ちてこなかったり、反対にすぐに舞い上がってしまったり。適度な加湿をすることにより、床に早く落ちるようになります」

花粉や黄砂が溜まりやすい場所の掃除術

いよいよ本題の、花粉や黄砂が多く集まる場所の具体的な掃除方法について教えていただきます。

・玄関の掃除方法

「外と接している玄関扉、下の画像の白い線で囲んだような場所に花粉や黄砂が付着します。外から持ち帰ってしまった花粉や黄砂も定期的に掃除しましょう」

【準備】
・濡れた布(床以外用)
・サッシ用ブラシ
・濡れた布(玄関床用)
必要に応じて
・乾いた布
・ハンディモップ

【掃除手順】

1.玄関扉を濡れた布で拭く

「玄関扉を濡れた布で上から下へと拭きます。とくに汚れがひどい場合は、サッシ用ブラシで花粉や黄砂を落としてから濡れた布で拭きましょう。その後に、乾いた布で二度拭きします」

2.ほうきで掃く

「玄関扉を開け、玄関扉を拭いたことにより上から落ちた花粉や黄砂を、ほうきで掃き出しましょう」

3.水拭きする

「濡れた布で、部屋側から外に向かって拭き上げていきましょう。タイルの目地に残りやすいので絡めとるように拭いていきます」

・窓周りの掃除方法

「窓周りは、黄砂や花粉が多く目につきやすい所です。換気をした時に付着したままの花粉や黄砂が室内に入ってくる可能性もあります。飛散のピークを過ぎてからでいいので、キレイにすると気持ちよく換気できるでしょう」

■ サッシ

【準備】
・濡れた布
・サッシ用ブラシ

【掃除手順】

1.サッシに積もった黄砂や花粉をブラシで掃き出す

「乾いた状態で、ブラシでサッと掻き出すようにブラッシングします。このときに花粉や黄砂の舞い上りが起きるので、脇に掃除機を添えて吸い込むようにしましょう」

2.サッシの溝を濡れた布で拭く

「濡れた布をサッシレールに当てながら、サッシレールの隙間に入る細い棒状のもので、押し付けながら拭くことでしっかりと水拭きすることができます」

網戸

【準備】
・乾いた布
・濡れた布
・サッシ用ブラシ

【掃除手順】

1.乾いた布で黄砂や花粉を拭き落とす

「はじめから濡れた布で拭いてしまうと、そのまま網の目の中に花粉や黄砂が入り込んでしまいます。まずは、乾いた布で除去しましょう。とくに汚れている場合は、ブラシを網戸の目に沿って、縦へ横へと動かし使えばよりしっかりと落とすことができます」

2.濡れた布で拭く

「仕上げに濡れた布で、上部から下部に向かって拭き取っていきます」

ガラス戸

【準備】
・スクイジー
・濡れた布

1.濡れた布で汚れを拭き取る

「たっぷりと水分を含ませた布で、上から下へと拭いていきます。水滴が透明になるくらいまで繰り返し拭きましょう」

2.スクイジーで水気を落とす

「スクイジーを使って上から下へと水分を落としていきます。枠周りは硬く絞った布で水滴を拭き取りましょう」

・床の掃除方法

「『掃除機をかけるとホコリを舞い上げてしまうので水拭きする』という方もいらっしゃいますが、実は花粉や黄砂は水拭きしただけでは、床にくっついて筋状になり取りきれません。しっかり取り除きたい場合は、次の手順で掃除しましょう」

【準備】
・ドライのシートを装着したワイパー
・掃除機
・掃除機ノズル(アタッチメント)……先端が細くなっているもの。ブラシ付きでもOK。
・水拭き用クロス……スポンジクロスがおすすめ。吸水性が高く、水滴が残りにくいメリットがあります。

【掃除手順】

1.ドライシートを装着したワイパーでさっと拭く

「フローリングの溝の目に沿って、水平に拭くのがポイントです」

2.掃除機をかける

「掃除機もフローリングの溝の目に沿って、Wを描くように動かしながらかけます。部屋の奥から入り口に向かってかけていくことで、自分の前にきれいな空間を作っていくイメージです」

3.隙間も入念に掃除する

「ラグとフローリングの間や、壁と床の隙間のように、とくに花粉や黄砂の溜まりやすい場所は、掃除機にノズルをつけて除去します」

4.水拭きをする

「かがみこんで作業できるなら、手で拭いたほうがよりきれいに拭き取れます。腰痛などで悩んでいる方は無理をせず、ウェットシートをつけたワイパー拭きでもかまいません」

ラグやカーペットは掃除機がけする

「カーペットや絨毯には、掃除機がけを行います。フローリングと同じように、部屋の奥から手前にWを描くように掃除機をかけていきましょう」

・キャビネットやテレビ台の掃除方法

「テレビの裏は静電気を帯びていたり、目が行き届かないことで、気づくとホコリや花粉、黄砂などが溜まりやすい場所です」

【準備】
・ハンディモップ
・水拭き用クロス……吸水スポンジクロスがおすすめ。吸水性が高く、棚の上を水拭きする時に水滴がつかないメリットがあります。
・乾拭き用のクロス……毛羽立ちのないものがおすすめ。私が愛用しているのは布おむつに使うドビー織りの布です。柔らかくて吸水性に優れ、使いやすく気に入っています。

【掃除手順】

1.ハンディモップをかける

「動かせる小物類は、いったん外すようにしましょう。テレビやテレビ台・キャビネットなどを、上部から下部にモップをかけていきます。とくにテレビの裏は入念にしてください」

2.水拭きをする

「水拭きをすることで静電気を抑えることができるので、しばらくの間は花粉や黄砂が付きにくくなります」

3.乾拭きをする

「水拭きをした後、濡れたままにしておくと、そこに再び花粉や黄砂がつきやすくなってしまいます。乾いた布でしっかりと水気を拭き取りましょう」

・ソファの掃除方法

布製ソファはとくに、花粉や黄砂などの粉塵が、隙間に溜まったり繊維に付着したりしやすいため、こまめにケアを。

「ソファは背もたれと座面の間や、肘かけなどに花粉や黄砂が溜まりやすいです。重点的に掃除しましょう」

【準備】
・粘着カーペットクリーナー
・サッシ用ブラシ
・乾いた布

【掃除手順】

1.溝に溜まった花粉や黄砂を掃き出す

「ソファの溝の部分にブラシを当てて、花粉や黄砂を掃き出します。生地が傷まないように軽く行ってください」

2.粘着カーペットクリーナーをかける

「広い面は、粘着カーペットクリーナーで全体を掃除します」

合皮や本革のソファの場合

「合皮や本革の場合は、ブラシを当てるとキズになる場合があります。乾いた布で軽くさっと拭き取るようにしましょう」

・巾木の掃除方法

巾木とは、壁と床の境目に取り付ける部材のこと。

「花粉や黄砂が意外と溜まりやすい場所の一つが巾木(はばき)の上です。頻繁に掃除する場所ではないため、気づいたときにはうっすら積もっていた……なんてことも。できれば一週間に一度は乾いた布やハンディモップをかけましょう」

【準備】
・乾いた布
・ハンディモップ

【掃除手順】

1.巾木の上をそっと乾拭きする

「乾いた布で巾木の上を拭いていきます。水拭きしてしまうと壁にシミが付きやすくなるので、必ず“乾拭き”で掃除してください。こまめに掃除しているのであれば、ハンディモップで軽く拭くのでもOK。掃除の頻度に合わせて掃除方法を調整してください」

「花粉や黄砂は、基本的なホコリ掃除と大差ありません。あまり気負わず、洗剤を使わずに水でゆるませるだけで簡単に落ちる汚れがほとんどです。ただそれを可能にするのが、とにかく掃除をこまめにすること。花粉や黄砂を溜めない環境を作れます」

黄砂や花粉が溜まってしまう前に、今回教えていただいたコツをもとに定期的に掃除をし、普段の掃除をラクにしましょう。

Profile

クリンネスト事務局代表 / 白井佳子

20代のころ、ドイツ留学をきっかけに掃除の面白さに興味を引かれる。帰国後、就職・結婚・出産などを経て家事代行会社に入社。その後、ハウスキーピング協会のクリンネスト2級講座の構築当初から携わり、初代講師となる。後に、クリンネスト1級講師を務める。心理学に基づいたわかりやすい話し方とモチベーションの上がる指導を得意とし、現在はクリンネスト事務局代表として、講座発展・講師養成・運営の全般を行う。

取材・文=癸生川美絵(Neem Tree) 撮影=鈴木謙介