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外出先からスマホで確認・操作スマートホームで自宅警備
[前編] 空き巣対策の最新事情

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物騒な事件をニュースなどで頻繁に耳にするようになりました。旅行や出張などでいつもより長く自宅を不在にした際、「空き巣に入られていない?」「帰宅して、侵入者と鉢合わせしてしまったら?」など、不安を感じることがあるのではないでしょうか? とくに空き巣に狙われやすい秋の行楽シーズンや、夏・年末年始の帰省時には、事前の対策が大切です。

いま、住宅の防犯システムの分野でもにわかに注目されているのが「スマートホーム」。家のなかの家電や設備をインターネットに常時接続することで、自動化したり遠隔操作したりできるようにする仕組みです。

家を空けることが多いひとり暮らしなら、なおさら備えておくと安心。この「スマートホーム」による防犯対策について、警視庁から捜査協力の依頼を受ける防犯のプロであり、自宅でも実際に延べ300を超えるスマートホームデバイスを試しているという、公益社団法人 日本防犯設備協会 防犯設備士委員会 副委員長の松尾たけしさんにうかがいました。

前編ではまず、基本的な防犯対策について解説いただきましょう。

SNSの投稿から不在を狙う!
現代の空き巣の手口

侵入窃盗の認知件数は、過去最多を記録した2002年の約34万件をピークに2022年の約3万6千件まで毎年徐々に減少してきました。ところが、2023年の認知件数は約4万4千件と、前年比で+約21%もの増加傾向に転じています。全国で1日に約121件の侵入窃盗が発生している計算になりますが、その手口にも変化が見て取れると松尾さんは話します。

「2003年に警察庁やメーカー団体などが集まって行われた官民合同会議によって、耐ピッキング性能に優れたシリンダーなどが誕生し、2004年から加速度的に普及したことにより、ピッキングによる侵入は激減しました。その一方で、最近は合鍵を使った侵入手口が目立っています。これは、鍵に刻印されたメーカー名と鍵番号の情報を盗まれるとインターネット通販で合鍵が注文されてしまうためであり、耐ピッキングシリンダーというだけでは安心できなくなってきました。
現在は、合鍵の注文時に鍵番号とペアとなる暗証番号等が必要なシリンダーもありますので、そういった鍵であれば安心ですが、そうでない場合は、シールを貼るなどして普段から鍵番号情報が盗み見られないようにする必要があります」

また、被害者側の盲点も。

「現代はSNSの普及により、アップした写真のデータやたまたま映り込んだ看板などで、居場所が特定されてしまう時代。たとえば、SNSでリアルタイムに“旅行中”をアピールすることで、“留守”を知らせてしまうことから被害に遭うケースも珍しくありません」(公益社団法人 日本防犯設備協会 防犯設備士委員会 副委員長松尾たけしさん、以下同)

長期不在時の空き巣対策に
覚えておきたい「走るカレー」

長期不在中の空き巣対策を構築するにあたり、まず参考になるのが「走るカレー」という防犯フレーズだそう。

出典=セコム

「『走るカレー』とは、警備サービス会社のセコムが作成した標語です。外出前に行いたい防犯対策がわかりやすくまとめられています」

長期不在時の防犯フレーズ

「は」いたつぶつ(配達物)を止めておく
「し」ょうめい(照明)のタイマー設定で在宅を装う
「る」すばんでんわ(留守番電話)の応答は「在宅中」。またはスマホ転送
「か」ぎ(鍵)をきちんと掛ける。1ドア2ロック/窓にも補助錠を
「れ」んらく(連絡)を親しい隣近所、近くの親族などに
「え」すえぬえす(SNS)はすべて事後投稿

外出時、理想的な家の環境は?
装うのは「居留守」ならぬ「留守居」

「長期不在時でも、居留守ならぬ“留守居”、つまり『本当は不在だが、まるで自宅にいるかのように装う』ことができれば、空き巣狙いには抑止力になります。
たとえば、ポストに新聞が溜まってしまうと不在を知らせているようなもの。このような不在を悟られてしまう状態をなくし、夜間に照明を付けることで在宅を装う。そして、非常事態が起きたときに対応が後手に回るのを防ぐため、ご近所さんや近くに住む親族に不在期間や旅先での連絡先を事前に教えておくのも対策の一つです」

プロがおすすめする防犯環境とは?

「公益社団法人 日本防犯設備協会では、防犯対策を講じるにあたって、犯罪者が犯行をあきらめるような物理的デザイン『防犯環境設計(CPTED)』に基づく対策を推奨しています」

1.領域性の強化
建物外構の門やフェンス、「部外者立ち入り禁止」の立て看板等で「なわばり」の意思表示を行い、部外者に近づくことを躊躇させるような環境づくりを行うこと。

2.接近の制御
壁や窓から侵入される時に利用されるような足場になるものを置かない、庭に玉砂利等を敷いて侵入時に音が出るようにする、侵入を知らせるライトやアラーム、通報装置を設置する、など、扉や開口部への容易な接近を妨げること。
※「マンションのオートロック」や、「防犯カメラ作動中」「警報(通報)装置設置」のステッカー等を貼って威嚇するのも一種の接近の制御と言えます。

3.監視性の確保
防犯カメラの設置や、ベランダの壁を見通しの悪い全面壁ではなく内側に人が入った時に外から分かるガラス壁や柵状のフェンスにするなどして、見通しをよくすること。

4.対象物の強化
1ドア2ロック、防犯サムターン、窓用の鍵、割れない防犯ガラスや防犯用ガラスフィルム、窓格子といった、物理的に侵入を困難にする設備を設置すること。

「ただ、こういった対策は自由に施工を行うことができる建物に限ります。マンションなどの共同住宅にお住まいの場合、補助錠や防犯カメラといった防犯設備を後付けすることは、マンション管理組合の規定などにより勝手に行えない場合が多いですよね。賃貸マンションの場合はなおさらです。そこで、全国の都道府県には、防犯対策が十分に施されたマンションを『防犯優良マンション(※)』として認定する制度がありますので、物件を選ぶ時にそういった認定を受けているかどうかを基準にするのもよいでしょう。最近では、防犯設備が数多く設置されていることを謳っている物件や、女性向けのセキュリティに特化した賃貸物件も存在しています」

※都道府県によっては「防犯優良アパート」「防犯優良戸建」「防犯優良駐車場」といった認定制度もありますが、その評価基準や細則は微妙に異なります。

後編では、自宅の“スマートホーム化”による防犯対策を解説いただきます。

Profile

総合防犯設備士 / 松尾たけし

公益社団法人日本防犯設備協会 防犯設備士委員会副委員長 総合防犯設備士。カギと防犯設備、およびスマートホームに関する総合的なサービスを行う、株式会社目黒ロックサービスの代表取締役社長。公益社団法人日本防犯設備協会では防犯設備士テキストの編集に長年携わり、古今東西の防犯設備機器に精通している。本業では「安心してお客様に薦められる」商品のみを提供するべく、新製品はまず自宅に設置して徹底的に検証を行う。

取材・文=加賀美明子(Neem Tree)