SUSTAINABLE 私たちを取り巻くSDGs

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80億人が何を引き起こす?世界の“人口爆発”が
人と地球に与えるインパクト

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人口爆発を鎮めるために

人々にとっても地球環境においてもさまざまな問題が懸念される人口増加の加速を抑えるために必要なこととはなんでしょうか?「先進国としてできることとして、途上国への医療と教育の支援があります」

1.乳幼児死亡率を減らす

「一人の子どもがしっかりと成長できる環境を整えることが大切です。そのためには途上国での、医療をはじめ保健衛生の向上が必要です。先進国は途上国に対し医師、助産師を派遣するなどの支援をすることが乳幼児死亡率の減少につながります」

2.女性の識字率を向上させる

「女性が教育を受け、文字の読み書きができるようになれば、さまざまな情報を手に入れることができるようになり、女性の就業機会が増えます。女性が働けるようになれば婚姻年齢が上がります。先進国の事例が示す通り、これが結果的に乳幼児死亡率を下げ、子どもの数の適正化につながっていきます。途上国の女性の低い識字率を上げるためには、教室の数を増やす、学校に女性用トイレを建設する、教員に研修を行うなどの支援で、すべての子どもたちが教育を受けられる環境を整備していくことが大切です」

私たちができることとは

地球全体の人口問題を考えたとき、私たち一人ひとりができる行動はあるのでしょうか?

「人口問題は、世界そして国として取り組むべき課題であり。実際のところ一人ひとりができることは限られています。しかしながら、他人事では状況は好転していきません。人口増加で地球環境の悪化が懸念される今、すぐにできる環境保全対策を日常的に行うことが大切です。できることから始めていきましょう」

1.“消費者”としての意識を高める

「多くの利益をあげている企業の中には、途上国の劣悪で安価な生産環境のもとで成り立っている場合があります。価格の安い商品は、なぜ安いのかを考える必要があります。そこには、低コストで販売できる理由があるわけです。ヨーロッパでは児童労働をはじめ劣悪な環境下で作られた衣類を買わない不買運動が盛んに行われています。私たち消費者がそのような衣類を買わなければ、労働者が劣悪な環境下で働くこともなくなります。
このように、私たちは対価に見合わない労働を強いられている人びとのことを考える必要があります。近年、経済的弱者である途上国の労働者と、先進国の消費者が対等な立場で取引をするようにフェアトレード(公正な貿易)の概念が広がりつつあります。
私たちはものを買うときに、その企業へ投票するのだ、という意識を持つことが大切です。これが途上国の貧困の撲滅への第一歩です」

2.当たり前のことに疑問を持つ

「たとえば捨てたゴミはどこにいくのでしょうか? 流した水はどこに向かうのでしょうか? 暮らしの中の当たり前にできていることに疑問を持つことが必要です。今手にしているものが、どこからきてどこにいくのかを知れば、簡単に捨てる行為もできなくなります。
なんでも欲しいものが簡単に手に入る環境の中では、そのサイクルも早い。豊かになったが故の状況を今一度見直してみましょう。少し値が張っても、本当に気に入ったものを長く使うことは環境保全にもつながります」

私たちが日常生活の中で人口増加を実感する場面はほとんどありませんが、人口増加が途上国の貧困の拡大や、地球環境の悪化につながるとわかりました。そしてそれは必ず、巡り巡って私たちの暮らしにも影を落とします。すべてはつながって成り立っており、けっして他人事ではありません。出生動向と死亡動向は比較的予測しやすい統計であり、事前に対策をすることが可能。世界人口デーをきっかけに、人口問題に目を向け、暮らしの中でできることを探してみませんか。

Profile

子どもの環境・経済教育研究室代表 / 泉美智子

株式会社六次元(子どもの環境・経済教育研究室代表)。京都大学経済研究所東京分室、公立鳥取環境大学経営学部准教授を経て現職。環境・経済・絵本・児童書関連書籍を多数執筆している。
HP


『やるべきことがすぐわかる今さら聞けないSDGsの超基本』(朝日新聞出版)

取材・文=癸生川美絵(Neem Tree)