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日常に溶け込むサッカー文化人と地域をつなぐ
「東京23FC」のクリーンプロジェクトに密着

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東京都江戸川区を拠点に活動する東京23フットボールクラブ(以下、東京23FC)は、2023年に取材したとおり、現在もJFL昇格を目指して戦い続けています。2024年度よりチーム体制が大きく変わりましたが、7月25日時点で8勝1敗1分と好調な成績。今年こそJFL昇格を! と多くのサポーターからも期待がかかっているところです。

そんな東京23FCは、10年以上「23クリーンプロジェクト」と称する清掃活動を続けています。毎月23日に、チームの拠点である西葛西の駅前に選手や地元住民、関係者たちが集まり、天候に関わらず約30分ほど町の清掃活動を実施しているのですが、なぜこのような活動を続けているのでしょうか?

今回は5月23日に行われた「23クリーンプロジェクト」、さらに6月23日に初めて実施されたパブリックビューイングに密着。東京23FCのサポーターや地域とのつながりに迫りました。

快進撃を続ける東京23FC
2024年こそJFL昇格を目指す!

まずは新生チームの戦いぶりを確認してみましょう。順調に勝ちを重ねている東京23FCは、得失点が27点(7月25日時点)と他のチームを大きく引き離し、上位をキープしています。今年の東京23FCは何かが違う……そんな期待感を抱かせる状況ですが、2024年の強さの秘密はどこにあるのでしょうか?

就任4年目の小松祐己監督は「新体制の東京23FCは一言で言えばアグレッシブなチーム。まだまだ始まったばかりですが、昇格目指して頑張りたい」と力を込めます。また、今年度からチームに加わった澤朋哉選手(MF)と梶山かえで選手(DF)にも話を聞きました。

DF・梶山かえで選手

「すごく勢いもあって、元気のあるチームです。サッカー中はもちろんですが、練習後も和気あいあいとしていて、のびのび楽しくサッカーができる環境だと感じています。今は、リーグ優勝という目標に向かってひたすら邁進するのみ。なかなか思うようなゲームにならなくても、今のチームなら乗り越えられるような気がするんですよね。一戦一戦に集中して、選手が成長しながら気持ちよくシーズンを終えられるよう大切に戦っていきたいです」(梶山かえで選手)

MF・澤朋哉選手

「選手たちがとにかく若いんです。まだまだ伸び代があると感じています。今年度のリーグ首位はどのチームにも譲る気はないですし、優勝してJFLに昇格することしか考えていません。今のチームはコミュニケーションを大切にしているように感じます。年齢、経験的にも自分が先輩なので、周りをリードしていきながら、サポーターそして地域のみなさんと一緒に最後は笑顔で終わりたいですね」(澤朋哉選手)

地域リーグに所属する選手は、試合だけで生計を立てるのは難しいため、約9割の選手がサッカー選手とは別の仕事をしていると言います。東京23FCに所属する選手も、毎朝7〜9時の合同練習が終わると、会社員として働いたり経営者として組織を率いたり、選手以外の顔を持っています。

練習に仕事にと忙しい選手たちも参加している「23クリーンプロジェクト」ですが、実は自主参加。それにも関わらず、多くの選手たちが「地域のために」と参加していると言います。どんな思いでこの活動を続けているのでしょうか?

MFの澤朋哉選手(左)と、DFの梶山かえで選手(右)。2人とも今年度から加入しており、清掃活動は5月23日で4回目とのこと。

「以前のチームでは清掃活動など地域と関わるようなことはありませんでした。初めてクリーンプロジェクトに参加した時は、『いいことをしたな』という気持ちで純粋に気分がよくなりましたね。クリーンプロジェクトは地域の方々と交流ができるので、チームのためにもとても意義ある活動だと思います」(澤朋哉選手)

梶山選手も「普段関わることのないスポンサーや地域の方、サポーターとお話できるのがうれしい」と話します。「ピッチの外の振る舞いが試合にも出るぞ」と伝えているそう。

ここからは実際の「23クリーンプロジェクト」の様子をお届けします。

「何事もやり続けることが大切」
地域とつながる清掃活動

朝の混雑が少し落ち着いてきた朝10時の西葛西駅。参加者が集合し「これから132回目の23クリーンプロジェクトを始めます!」との高らかな宣言とともに、約30分間の清掃活動がスタートしました。

このプロジェクトは、チームの本拠地である西葛西をもっとキレイな街にしたい、気付けないところにも気配りができる人になろう、とスタートしたと言います。晴れた日は道路を歩きながらゴミを拾い、雨の日には商店街のアーケードを清掃するなど選手たちが中心となり、自主的に行っている活動です。

実際にゴミ袋を片手に歩き出すと、駅前の植え込みの影にある空き缶や道路に落ちたタバコの吸い殻、なかにはコンビニのお弁当ゴミまで! さまざまなゴミが落ちていました。「ゴミ拾いをすると見えないものが見えてくるんですよ。そこに気づく力はサッカーにも通じるんです」と話すのは、東京23FCの斉藤裕之亮マネージャー。この2〜3年で関わる人が増え、今まで点だった活動が少しずつ広がり始めていると教えてくれました。

5月23日に参加したのは、朝の練習を終えた東京23FCの監督と選手、スタッフに加えてスポンサー企業の方々。45名ほどの人たちが二手に分かれて清掃活動を行います。

「今回で80回目かな? 江戸川区在住ではないですが、東京23FCが大好きでよく参加しています」と教えてくれたのは、東京23FCのファン歴8年目だというサポーターの女性。サッカー好きな息子さんの影響もあり、今では家族で応援のために遠征までするのだとか。

選手を応援するのは「母親」のような気持ちもあるかな? とも。清掃活動後も、選手たちと「頑張ってね」「応援しているよ」と明るく笑顔で交流をしていました。

「サッカーチームを応援することで私もたくさんの元気をもらえているんです。何が魅力か? って聞かれると難しいけど、選手たちが悔しいと私も悔しい。うれしい時は、チームと一緒に心から喜べる。いくつになってもこんな気持ちになれるって素敵でしょ?(笑) 地域の人にも少しずつ知っていただけるようになって、私ももっと頑張ろうって思える活動ですよ」

監督就任時からほぼ欠かさず「23クリーンプロジェクト」に参加している小松祐己監督は、「サッカーも地域活動も、続けることが大切」と語ります。

東京23FCの小松祐己監督。

「毎月23日に清掃活動を続けていくことで、地域の方々から『頑張ってね』『この前の試合みたよ!』と声をかけてもらう機会も増えてきました。これはただサッカーをしているだけではできなかった経験なんです。地域の企業や住人、サポーターに支えられていることを知れる本当にいい活動だと思って参加しています。これからはもっと地域に必要とされる存在になりたい。サッカーも清掃活動も続けていくことで見えてくるものは必ずある。たった30分ですけど、地域と関わりがチームに与える力は大きいですよ」

5月23日の「23クリーンプロジェクト」に参加した選手たち。朝練のあと、企業で働いている選手も多いため自主参加が基本です。この日も「午後から仕事に行きます」と話す選手も。

またスポンサー企業である大和リビング株式会社からは合計17名が初参加。サッカー好きで、東京23FCの活躍を日頃から追いかけているという男性社員は清掃活動中、次のように話します。

スーツ姿で参加したのは大和リビング城東営業所のメンバーたち。清掃活動中、保育園の園児たちとすれ違うと「頑張る大人の姿を子どもたちにも見せましょう」と笑顔がもれるシーンも。

「西葛西駅周辺は営業車で走ることが多いエリアですが、こんなにもゴミが捨てられているなんて車内からはわかりませんでした。気づかない部分に気づかせてくれるいいきっかけになり、参加して本当によかったです。ちょっぴりミーハーかもしれませんが、一緒に清掃活動したチームが試合で活躍している姿を想像すると楽しみになります」

最後に記念撮影を行い、この日の「23クリーンプロジェクト」は終了しました。

たった30分間でも集まったゴミはこれほどたくさん。とはいえ、清掃活動を始めた当初はもっとたくさんのゴミが落ちており、今では見違えるように街がきれいになったといいます。

清掃活動中には「何しているの?」と地域の方から声をかけられ、趣旨を説明すると「頑張ってね」と笑顔で返されることも。「23クリーンプロジェクト」は、誰でも参加が可能です。毎月23日に開催されていますが、詳細については東京23FCのホームページやSNSを参照ください。

地元の人々が集い、声を上げた
「パブリックビューイング」

6月23日、133回目の清掃活動後に江戸川区立西葛西図書館とのコラボレーションで初めてのパブリックビューイング(東京23FC vs 南葛SC)が開催されました。この企画は西葛西図書館からの声かけにより開催が決定。サッカー初心者の方でも楽しめるようにと、元Jリーガーでサッカー解説者の中西哲生さんを招いた「サッカー観戦の楽しみ方」講座も開かれました。

西葛西図書館のギャラリーでパブリックビューイングが初開催されました。

パブリックビューイングでは、試合が動くたびに大きな声援が届けられ、大きな熱気に包まれていました。試合が行われていた味の素フィールド西が丘まで応援の声が届いたのか4-1の快勝! リーグトップを守りぬいた試合となりました。

お母さんと一緒に歓声を送る小川唯斗くん。最後まで集中力を切らすことなく、見ている私たちにも大好きな気持ちが伝わってきます。

小川唯斗くん(小学3年生)は、本拠地であるスピアーズえどりくフィールド(通称:えどりく)でのホーム試合前に行われる『キッズフェスタ』をきっかけに東京23FCのファンになったそう。以前はサッカースクールにも通っていましたが、現在はお休み中。「サッカーが好きだから」ということで今回のパブリックビューイングに参加しました。

家族で応援に駆けつけたという佐藤快成くん。サッカー経験はまだ少ないそうですが、「東京23FCが好き」というお父さんに連れられて家族で応援しているそうです。

また親子で東京23FCのファンだという佐藤快成くん(小学5年生)は、家族で佐賀県へ応援にいくほどのサポーター。一緒にきていた快成くんのお父さんは「最初は自分の趣味だったのですが、今では家族みんなで応援できてうれしいです」と話してくれました。

今回のパブリックビューイングでの熱狂を肌で感じ、地域の人たちにとって東京23FCはなくてはならない存在になっているのだと確信しました。選手と地域、スポンサー企業、そしてサポーターのみなさんの一丸となった応援が東京23FCの力になっているのでしょう。

10年以上活動を続けている「23クリーンプロジェクト」も地域の理解と参加する人々の支えがなくては続けられません。地域の応援が選手の力となり、選手の頑張りが地域の人を元気にすることで、東京23FCはより強く成長していくのではないでしょうか。

Profile

東京23フットボールクラブ

東京都江戸川区を拠点に活動するクラブチーム。2010年より現体制。スピアーズえどりくフィールドを本拠地としている。世界に視線を向ける一方、お膝元の江戸川区民との交流を大切に活動を続けている。

HP https://tokyo23fc.jp/
Instagram https://www.instagram.com/23footballclub/
Twitter https://twitter.com/tokyo23official

取材・文=つるたちかこ 撮影=鈴木謙介