いまや家を建てる際は、住宅メーカーにとっても「風水」は無視できない重要なファクター。その風水とは実は、自然の摂理をベースとした立派な学問です。
では風水において何がポイントなのか? 家の方角や立地が大きなポイントと思うなら、それは半分正解で半分間違いです。立地や間取りを変えようのない賃貸物件でも、ラッキーアイテムやカラーで補う風水の考えを取り入れれば、きっと運気が上がるはずなのです。
この記事の案内役は、開運セラピストとして著書を多数出版する紫月香帆先生。基本的な知識から暮らしに役立つコツまで、風水をマスターして、開運体質になりましょう!
風水は環境学。
自分の環境を整えることで運気を上げましょう
———よく家を引っ越したりすると風水を気にされる方もいますが、そもそも風水って家に関する“占い”なのでしょうか?
紫月さん:いいえ、風水は占いやおまじないではありません。統計学や環境学に類するものですから、理論がしっかりしています。
元々風水は自然界の地脈や水脈、山や川の位置などから一番環境のいいところを割り出すための知恵でした。時の権力者たちはそうした統計から一番エネルギーの高いところに城を築き、富と権力を得てきたのです。
風水を取り入れていた国では、どこでも一番エネルギーの高いところにお城があります。いま皇居がある場所、江戸時代に徳川家康が入城した江戸城も、東に隅田川があり、西に台地があるというパワースポットです。家康は自分の死後、江戸城の北側の山に霊廟を作りました。それが日光東照宮です。死んでもなお自分がパワーを送り続けたということだと思います。だからこそ江戸時代、徳川幕府も265年も続いたのでしょう。
日本の風水学はそうした大きな自然界の環境学を個人レベルに落とし込んで、自分の環境を整えることで運気を上げましょうという方向に発展しました。すなわち、個人にとって影響が大きい場所、それが“住まい”。運気を上げる場所を考える例として、桜の木を思い浮かべてみてください。桜の木を植えるのに適した場所は、土がよく、日当たりがよいところ。そういう場所なら毎年きれいな花が咲くでしょう。もしも条件の悪いところに植えたなら、木は枯れて花を咲かせることもありません。このように考えると、自分に合った場所に根を張ることがとても大事なことだとわかるはずです。人間にとっての根を張る場所とは、つまり住まいということになります。
———風水は「住まい」の環境に限定した学問なんでしょうか?
紫月さん:実は風水では食べることも、話すことも、誰と会うかなども「環境」としてとらえます。すなわち自分の身の回りのことすべてが風水なのです。ビジネスマンは職場にいる時間がとても長いですから、職場環境を整えることも運気を上げる重要な要素になるでしょう。しかし、風水においては「眠り」をとても重視します。ですから、やはり大切なのは自宅。自宅の環境を整えることが、風水として一番大切です。
家を整えていい家に住むと運気が上がるとされています。ですから、引っ越しで動く方角とか、土地の持つエネルギー、日当たりや風通しを考えることはとても大事なことです。ですが、何でも自由にできたらいいのですが、予算は交通など、色々な面で希望が叶わないこともあるでしょう。マンションだったらどんなに条件が整ったとしても85~90点くらい。70点だったらよしとしましょう。いいところはさらによくする。理想どおりにはいかないところがあるから、カラーやアイテムで補いましょうというのが風水の考え方なのです。
自宅の運気を上げるために
していいこと、してはいけないこと
———よく、“良い気”とか“悪い気”とかいう言葉を耳にしますが、これはどういうものですか?
紫月さん:“気”というのは、目に見えないのでわかりにくいとおっしゃる方もいますが、簡単なことです。例えばゴミ置き場は“悪い雰囲気”が充満しています。大規模な集合住宅のゴミ置き場なんて、ひとりで入るのも気が引けますよね。そんなところでくつろごうなんて思う人は、普通いません。反対に、朝の清々しい散歩などをすると体に“いい気”がみなぎってくると感じるでしょう。出張先で初めて泊まるホテルでも、部屋に入った瞬間に、清潔でなんだか気持ちがいいなと思えることがあるはずです。訪問したお宅に通された瞬間、なんかスッキリとしているなと思うこともあるでしょう。これらが体感できる“いい気”です。このように、気というのは本能的にわかるものなのです。
———それでは、自宅の運気を上げるためには、最低限どのようなことを心掛ければよいでしょうか?
紫月さん:まず自宅の中では最低限の整理整頓をしましょう。ただし、潔癖症になる必要はありません。頑張りすぎて「もうムリ!」と思うくらい負担になるとマイナスのパワーを発してしまいますので、ほどほどで大丈夫です。ただしホコリ、カビ、ヌメリの除去は、運気アップのポイントなので特に気にかけておきましょう。
食器のようなものも種類別に分けて整理整頓しておくことが大切です。ただし風水は断捨離とは考え方が少し違います。風水では物があることは生活を豊かにするからOKです。むしろメリハリがあることをよしとします。だからそれほど頻繁には使わなくてもお客様用の食器などはあったほうがいいと考えます。そのかわり、大きさごとに取り出しやすいように整理したり、頻繁には使わないものは棚の上などにしまっておいたりすればいいのです。忙しいとついぐちゃぐちゃになりがちなので、最低限整理しておきましょうということなのです。
方位ごとにあるエネルギーを知って
自宅の運気を上げましょう
———風水では、方位がよく出てきます。方位を知ることはなぜ必要なのですか?
紫月さん:風水でいう方位は、家の中心からの方位です。この方位を知ることが風水では大事です。たとえば、東は陽が昇る方位ですから発展のエネルギーがあります。ですから東側の部屋は子ども部屋にするとお子さんも明るく健やかに育ちます。西は穏やかな日没の方位。西側の部屋はお年寄りとエネルギーが合うので相性がいいですね。
南は皆さんも温かいイメージをお持ちだと思いますが、風水でも南は火のエネルギーの場所となります。ですから火のエネルギーと相性のいい物を置くと運気が上がります。木などの観葉植物は相性がよいです。また火は自分のよさを出すといいとされますので、鏡も相性がよいです。反対に南側に水回りがあると喧嘩をするのでよくありません。
このように風水では、まずは8方位を知り、それぞれの方位に相性のいい物を置くことをオススメしています。南が火、北が水、東が木、西が金、4方位の間は土ですが、西北は金、東南は木となり、中央は土の性質があります。それぞれ自然の摂理をもとに性質分けされています。
方位の中で特に気をつけたいのが、鬼門です。表鬼門は家の中心から見て北東の方角。裏鬼門はその反対側の西南です。表鬼門は悪い気が発生しやすい場所で、悪い気が入り込みやすいとされます。そのため表鬼門に玄関があるとあまりよろしくありません。裏鬼門は悪い気が発生する場所ではありませんが、通りやすい場所ですので、物をたくさん置きすぎるなどして悪い気がたまらないように意識しましょう。
幸運を呼び込む玄関。
運気上昇のコツは「明るく・清潔に・スッキリと」
———それでは、具体的にお部屋の場所に関するアドバイスをお願いします。今回は運気を上昇させるために最も重要な場所、玄関とリビングについてのポイントをレクチャーいただけますか?
紫月さん:まずは玄関。玄関はその家の顔ともいえますし、気が出入りする場所ですから一番気を遣わなくてはいけません。玄関のポイントは、「明るく! 清潔! スッキリと!」この言葉を覚えてください。物は極力置かないことが大切。それとなるべく無個性にしましょう。よい気には、スパッと家の中に入ってもらうのが一番です。
よく玄関に靴が散乱していたり、家族の人数以上の数の靴が出しっぱなしになっていたりする家がありますが、靴が多い玄関はよくありません。よい気を迎える状態にしていないと運気は下がってしまいます。本当は、靴は靴箱に入れて一切出ていないないほうがいいですが、それでは何かと不便でしょうし、災害時に迅速に避難するためということもありますから、玄関に出しておく靴は1人1足くらいの最低限にしましょう。
玄関に海外で買ったおみやげの置物を置いたりしているお宅もあるかと思いますが、それも良い気の寄り道になってしまいます。玄関は極力無個性がよくて、そういった趣味の物や個性を出す物はリビングに置きましょう。
また、玄関にはゴルフバッグやスノーボードなどもなるべく置かないようにしましょう。どうしても置き場所が玄関しかない場合には布をかぶせておくのがおすすめです。小さな赤ちゃんがいるご家庭ならば、ベビーカーを玄関に置くのはしかたがないでしょう。ただし、外出先で汚れてしまったベビーカーの車輪は帰宅したらキレイに掃除をしておくのがいいと思います。
———玄関に置いておくと幸運を招き入れるアイテムはありますか?
紫月さん:鏡です。いい気を呼び込むためにも鏡は最強のアイテムです。神道で神様をお迎えする三種の神器の中に鏡が入っていたことでもわかるとおり、鏡は尊いものなのです。カタチは丸、楕円、八角形の角を落した物がよいです。風水では鏡に限らず四角い物は「角が立つ」というように「角が立って、縁を切る」と連想されるので好まれません。せっかく玄関からよい気を入れようとしているのに、四角鏡ではねつけてしまっては意味がありませんから、角の取れた鏡を置きましょう。また鏡は磨いてきれいにしておくことが大事です。
玄関に植物を置くのもいいのですが、置く場合は生花にしてください。生花は呼吸しているので、悪い気を吸って良い気で満たしてくれます。造花、ドライフラワー、ポプリはNGです。これらは人間でいうとミイラを連想させるものであり、健康運が落ちてしまいます。
また玄関ドアに鈴をつけておくのも、邪気を祓ってよい気を呼ぶ効果が期待できるのでラッキーアイテムとしてオススメです。神社にお参りに行くと参拝の時に鈴を鳴らすのと同じ意味合いです。
———他に玄関で気をつけておくことはありますか?
紫月さん:玄関のたたきのところは、月に1回でよいですから水拭き掃除をしてください。毎日の掃除は、人間でいえば毎朝洗顔をするようなもので、たたきの水拭きはエステティックのようなものです。毎月1日とか15日とか日を決めてやるといいと思います。
———玄関に置いてあると運気を上げる色というのはありますか?
紫月さん:玄関のラッキーカラーで一般的によいといえるのは何か赤い物を置くことです。赤は厄除けになります。神社の鳥居も、結婚式のバージンロードも赤いのがわかりやすい例です。何も真っ赤でなくてはダメということはありませんから、例えば玄関マットの柄の一部が赤というのでもOKです。
リビングを整えると家族運、
コミュニケーション運がよくなります
————続いてリビングの整え方を教えてください。
紫月さん:リビングは一番自分らしくしていい場所です。何か目標のようなものがあるならそれをアピールしてもいいですし、趣味の道具や旅行先で求めた思い出の品、写真など個性を出す物も置いて構いません。ココに行きたいなどのアピールもしていい場所です。ただし、乱雑に置いていると運気が乱れるので整理整頓は心掛けましょう。
また、リビングはお客様をお招きする場所に象徴されるとおり、その人や家族のコミュニケーションを左右する場所でもあります。テレビを置いているご家庭も多いでしょう。それだけ情報を得るのにはいい場所なのです。ですから、リビングに置いてあるテレビや電話などの情報を取得する機器の画面や受話器はキレイにして、いい情報が入って運気が上がるようにしておきましょう。
また、たいていのお宅では、家の中で一番大きな窓はリビングではないでしょうか。大きな窓はいい気を取り込みやすいので、窓や網戸は定期的に拭き掃除をしてキレイな状態にしておくと、家族運、コミュニケーション運がよくなります。
———リビングに置いてはいけない物、やってはいけないことはありますか?
紫月さん:生ごみとかをそのまま放置しておかないことです。キチンと処理してごみの日に出す前の一時置きはキッチンだけにしましょう。
そして、リビングでしてはいけないことは、寝室があるのにもかかわらずソファで寝ることです。リビングは活動の場で、動のエネルギーが集まる場所です。風水は寝ることを非常に大事にしていますし、寝るということは静のエネルギーの中で気をチャージすることですから、リビングのソファで寝るのはNGです。コタツで眠るのもよくありません。
———リビングのテーブルで気をつかなければいけないことはありますか?
紫月さん:玄関に置く鏡の時に説明したように、風水では四角い物は好まれません。リビングに置くテーブルもできれば角の取れた楕円のようなカタチの物や四角でも角が丸い物を置きましょう。既に四角いテーブルを使っていらっしゃるのなら、テーブルクロスで覆うか、中心に角のとれたクロスを置くなどして凶作用を中和してあげましょう。
あと、ガラスのテーブルをリビングに置くのは要注意です。触るといつも冷たく、冷気をまとっているのがガラスの性質。温かい家庭を作るというのとは真逆です。もしもガラスのテーブルをリビングに置きたいのなら、実際に火を燈さなくてもいいので真ん中にキャンドルを置くなどしてください。
———リビングの開運グッズは何かありますか?
紫月さん:オススメなのがサンキャッチャーです。これをリビングに面した窓際のカーテンレールなどに掛けておくと金運がアップします。
———では、運気を上げる色は?
紫月さん:ラッキーカラーは厳密にいえば人それぞれ、部屋ごと、家の場所ごとに違います。ただ、一般的に家庭運を上げるのは茶系の色です。茶系の色は土を連想させ安定を表します。濃いベージュなどでもよいので、インテリアのカラーで迷ったら茶系の色にするのが安心です。観葉植物は土そのものですからリビングに置くのにとても適しています。
————風水とは、自然の摂理に非常に適った考え方なんですね。
紫月さん:風水はキチンと理解して取り組むととても楽しい学問です。まずは理由をしっかりと理解し、玄関をキレイにしたり、鏡を磨いたり、リビングの窓を拭き掃除するなど実践してみてください。後は継続あるのみ。やり続けて習慣になるころには運気が上昇しはじめます。
風水はダイエットと同じですぐには効果はないけれど、継続していると幸運体質が身に付き、ツイてる人になれます。サプリメントのようにジワジワ効果が表れてくるものですから、理解、実践、継続することが大切です。
Profile
紫月 香帆
幼い頃より、占いや風水に親しんで育ち、高校在学中から芸能活動をスタート。女優として活躍するかたわら、独学で九星気学を学び、その後師事して本格的に手相を学ぶ。手相、人相から風水、四柱推命タロット、姓名診断と、豊富な知識を駆使した占術は、 的中率の高さとわかりすいアドバイスに定評がある。さらに、四柱推命と風水をベースに研究を重ねた独自の「宿命カラー風水」を確立。 『紫月香帆のハッピー風水 』(学研プラス) 『やってはいけない風水』(河出書房新社 ) など著書多数。
取材・文=ナナイロ社 撮影=工藤ケイイチ(ブリッジ)