自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて各テーマ手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるソムリエは、渋谷にワインレストランを構える宮地英典さんです。
第1回は「ワインボトルの開け方」を、コルクタイプ、スクリュータイプ、またスパークリングワインのそれぞれについて、宮地さんに解説していただきました。第2回のテーマは、こちらです。
第2回 スマートな「ワインの注ぎ方」
こんにちは、宮地英典です。少しずつ自粛ムードが緩和され、レストランやバーも営業を再開し始めたので、久しぶりに外食を満喫している方も多いのではないでしょうか?
お客さまからもあらためて「美味しいものが食べたかった」というありがたいお言葉もいただいていますが、この期間に自宅で手料理を作ってみたり、レストランのデリバリーを注文しながらも、ワインを飲む回数も増えたと伺いました。
今回はワインを注ぐコツということで、はじめにお伝えしておきたいのは、生きたワインは感情を投影するということ。思いやりをもって注げば、優しく、ふくよかな味わいになり、ワインを試すような気持ちで注げば、味わいは閉じこもります。ワインと、そしてなによりグラスをご一緒に酌み交わす方への思いやりを意識して、より素敵なワインライフをお楽しみいただければと思います。
・スマートなボトルの持ち方
栓を開けたら、あとはワインを楽しむ時間。ワインは繊細な液体なので、優しく丁寧にボトルを手に取ってください。
Step1. ボトルを持ち上げる
無理をして、レストランサービスのように片手で瓶底を持って、という必要はありません。不安定に感じるようでしたら、片手をネック部分に添え両手でボトルを扱ってみてはどうでしょうか? ボトルによっては厚みも重みもあるタイプもありますし、両手で扱うことがマナーに反するということもありません。
Step2. ラベルを上にして、自分が持ちやすいように持つ
注ぐ際にボトルを持ち上げるときには、ラベル(エチケット)を上に向けます。ワインの銘柄がグラスの持ち主によく見えるように、また液だれによってラベルを汚したりしないための気遣いです。
ボトルの中のワインを意識して手に取れば、自然とスマートなボトルの扱いになります。安定した持ち方をした方が、ワインをこぼしたり、グラスのふちにボトルを当ててしまったりといったことのないように気配りをしてみましょう。
Step3. 白いナプキンを用意する
清潔なナプキンを用意しておきましょう。冷たく冷やしたワインボトルの結露を拭き取ったり、ワインを注いだ後、ボトルの口を拭き取ったりするのに便利です。
・スマートなワインの注ぎ方
続いて、グラスにワインを注ぎ入れます。
Step1. グラスがもっとも膨らんだラインのやや下を目安に注ぐ
通常サイズのワインボトルには750ccのワインが詰められています。一般的にレストランでは、おおむね6杯から8杯に分けて提供するので、グラスワインはおおよそ90ccから120ccの分量ということになります。
サイズ、容量にもよりますが、グラスのボウル部分の最も膨らんでいるラインのやや下あたりが100cc前後という風にデザインされたグラスが多いです。自宅のグラスで試してみると、感覚をつかみやすいかもしれません。
Step2. ボトルをグラスのふちに当てないよう注ぎ入れる
さぁ、ボトルからワインをグラスに注ぎます。注意するポイントは、ボトルをグラスのふちに当てないこと。ワイングラスは薄手に造られているものも多いので、ワイン同様繊細に扱いたいものです。
グラスを置いて、数センチ上からゆっくりと注ぐ、もしくはグラスを手に取って、斜めにした状態で丁寧に注ぐ方がこぼれることもありません。ここでも液体に意識を集中してボトルからワインをストレスなく移しかえるイメージを持ってみてください。
白ワインの酒石や赤ワインのオリ(澱)が瓶底にたまっていることもありますので、最後に注ぐ際はより丁寧に注ぐことを意識してみてください。ただグラスに入ってしまったからといっても、ワインの成分が結晶化、堆積したものですので害はありません。オリもワインの一部なのです。
ちなみに、注いでもらう側になった際に注意したいのは、グラスを手に取ったり、持ち上げたりしないこと。グラスを動かすとこぼれたり、ボトルがグラスのふちに当たったりします。注ぐ側としては、グラスは動かない方が注ぎやすいですから、何もしないのも気遣いというものです。
Step3. 注がれたワインをよく見る
グラスにワインを注いだら、液体を眺めてみましょう。白ワインならグリーンがかった淡い色合いや、濃密な金色かもしれません。赤ワインならフレッシュで鮮やかな透明感のあるものから、引き込まれるような深みのある濃い赤、古酒ならガーネットがかった経年を感じさせる色合いかもしれません。
ワインの味わいは他のどんなお酒よりも幅の広いものであるのと同時に、色彩もさまざまです。ひとつひとつグラスに注がれたワインを眺め、味わいと合わせて感想を伝え合うのは、ワインの楽しみ方の醍醐味といえます。
Profile
ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)
カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/
撮影=我妻慶一