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家でワインを楽しむための基礎講座ワインの入り口 第5回
—今さら聞けない、
「赤ワイン」の基礎知識—

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自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、他人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるのは、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

第3回からは、ワインの種類や製法、産地などをそれぞれ取り上げ、解説していただいています。スパークリングワイン、白ワインと続いて、今回は「赤ワイン」がテーマ。

 

第5回 赤ワインの代表品種とその特徴

僕が初めて赤ワインを口にしたのは、子どものころ、近所の喫茶店でのことでした。その喫茶店のくるみの入ったチョコレートケーキは絶品で、ちょっとしたご褒美というような機会にねだって連れて行ってもらったりしていました。たとえばテストで良い点をとったとか、習い事で思っていたよりうまくいったとか、そんなような時のことでした。

ショーケースには色とりどりのケーキのほか、脚付きのカクテルグラスに入れられた紫色のワインゼリーが、ずいぶん大人びた装いで並んでいました。そんなワインゼリーに興味をそそられていたのですが、「あれは大人向けだから」と、注文してもらえることは長い間なかったように記憶しています。けれどいつのことだったか、ある時懲りずにワインゼリーをねだると、仕方のなさそうな顔をして注文してくれたことがありました。もしかしたら両親にも、なにかいいことがあったのかもしれません。

これが僕の初めての赤ワイン体験、目の前に運ばれてきたカクテルグラスは少し大人になったような錯覚さえ感じたように覚えています。けれども味わいは最悪。渋くて、とても食べられたものではありませんでした。おまけに、たった数口、口にしただけなのに頭痛はするわ、気持ちは悪くなるわで、帰宅後寝込んでしまうという顛末。

「赤ワインが苦手」という話を伺うことがあると、きまって僕は、その時の出来事を思い返します。きっと多くの方は子どものころに限らず、そういったトラウマ的な体験をされているのかなと思うと、苦手というのもわからなくもないのです。

そうはいっても、今ではワインを仕事にしていて毎日のように赤ワインを口にして、心を躍らせたりしています。ワインは産地と造り手、ブドウ品種の掛け算でもあります。もちろん、造り手もブドウ品種も産地に根差したものですが、シンプルにお伝えしようと思うとまず品種の話にならざるを得ません。自分の好みの赤ワインがわかるようになるとワイン選び、ワイン体験をより一層楽しめるようになると思います。例えるなら、新しい読書体験をしたときのような、観たことのある映画を観て新鮮に意図が伝わってきたときの感動に似ているかもしれません。ワインは難しいと思われるかもしれませんが、このコラムが苦手意識をやわらげる一助になれば幸いです。

 

ピノ・ノワール」

千円から数百万円まで、誰もがとりこになる黒ブドウ

「ロマネ・コンティ」という言葉は、ワインを嗜まない方でも耳にしたことがある響きなのではないでしょうか。サッカーでいうところのマラドーナ、芸術分野でいえばピカソやベートヴェンのような、一般名詞のようになっている存在のように思います。このロマネ・コンティはブルゴーニュ、コート・ドール地方の最上とされる一枚畑ロマネ・コンティに植えられたピノ・ノワールから造られる最高級赤ワインです。

ピノ・ノワールの果実は小粒で密着型の房を付けることから、黒い松かさ(PinotNoir)が語源と言われています。皮の薄さが特徴的。それはそのままワインの色に反映し、より鮮やかで透明に近いルビー色のワインになるのですが、暑い地域では早く成熟してしまい、その魅力的な風味成分が表れてこないことから、現在でも栽培地域が限られています。フランスのブルゴーニュ地方をオリジナルとして、アメリカ・オレゴンやカリフォルニアの冷涼地域、ニュージーランドでは成功を収めていますが、他の産地では意欲的な生産者による限定的な栽培に留まっています。

基本的にピノ・ノワール単一のワインとしてリリースされることが多く、ブルゴーニュを除いて他の産地では、ラベルに「Pinot Noir」の表記があるのでワインショップでも見つけやすく、皮が薄いことから比較的タンニンの渋みも少なく、初心者の方でも親しみやすいのではないでしょうか。リーズナブルで自分好みのピノ・ノワールを見つけるのは、愛好家にとってもワインの楽しみ方のひとつでもあります。


「Pinot Noir L’insolite2012 / Sato Wines(ピノ・ノワール ランソリット2012 / サトウ・ワインズ)」
希望小売価格=9800 

【Info】
・生産国=ニュージーランド
・生産地=セントラル・オタゴ
・ブドウ品種=ピノ・ノワール
・輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

「ガメイ」

ヌーヴォー人気はひと段落も、ガメイは徐々に人気ワインに

世代によっては、ひと時のボジョレー・ヌーヴォー・ブームを知らない方も多いかもしれません。1980年代に始まり、とくに’90年代には、毎年11月第3木曜日と定められたボジョレー・ヌーヴォー解禁日には日本中の繁華街を沸かせ、メディアもその饗宴ぶりを伝えるほどでした。

その年の収穫を祝う意味合いがあるヌーヴォーの解禁日は、日本が時差の関係でいち早く迎えることから異例の盛り上がりを見せ、ワインを飲まない多くの日本人にとって“赤ワイン=ボジョレー・ヌーヴォー”だったといっても過言ではありません。

ただ、ヌーヴォーは短期間で造られるゆえ、フレッシュさが前面に出たチャーミングなワインもあるのですが、中には未熟果由来の青さの目立つワインも多く、苦手意識を抱いた方がいることも否定できず、そのためか現在ではピーク時の半分ほどの輸入量となりました。

長くヌーヴォーの話になりましたが、ガメイはそのくらいボジョレー特有の品種であり、日本人に親しまれてきたワインなのです。残念ながらヌーヴォーのブームを経て、愛好家のなかにも「ガメイは苦手」という方もいます。けれども近年、潮目が変わったと感じさせるふたつの流行があります。それは、ボジョレーという産地でより良質なワインを造ろうという機運、もうひとつはガメイ本来の軽やかでフレッシュ、フルーティーで飲み飽きずフードフレンドリーという個性を、アメリカやオセアニアといった国々のワイン生産者も注目し、高品質なワインを造りだし始めたという点です。アルコール度数もやや低めで健康志向の食事にも合わせやすく、これからワインに親しむ方にはおすすめできます。

ラベルに「Beaujolais」とある赤ワインは全てガメイ、そのほかの国では「Gamay」の表記がされています。ワインショップに行かれたら、是非ガメイを探してみてください。


「Morgon2013 / Bret Brothers(モルゴン2013 / ブレット・ブラザーズ)」
希望小売価格=4900

【Info】
・生産国=フランス
・生産地=ボージョレー
・ブドウ品種=ガメイ
・輸入元=ヴァンクロス

【関連記事】今年もいよいよ解禁! マナーとして知っておきたい「ボジョレー・ヌーヴォー」のこと

 

「カベルネ・ソーヴィニヨン」

世界に広まった赤ワインのイメージの代表格

赤ワイン用品種としては、もっとも有名な品種かもしれません。フランス・ボルドー原産として知られ、第二の故郷ともいえるアメリカやチリでも、高品質のワインの主品種となっています。いわゆる「フルボディ」というような濃い色調に、カシスなどの黒系果実、重厚なタンニンが特徴として挙げられます。

温暖な地域を中心に世界中で栽培されているため、だいたいのワインショップの棚には並んでいますが、“自然派”というフレーズのお店には少ないかもしれません。健康志向とワインの品質とはまた別の話なのですが、軽やかで素材の味わいを、と料理を考えた時には敬遠されてしまうブドウ品種なのかもしれません。

ただ、近年のボルドーは、1000円~2000円台のワインの品質向上には目を見張るものがありますし、1000円以下でスーパーマーケットに並ぶチリワインの高品質には驚きを隠せません。料理の相性としてよく牛肉が挙げられますが、意外に幅広い料理が考えられるワインでもあります。ラベルに、ボルドー、そしてカベルネ・ソーヴィニヨンと書かれたワインは、世界中に広まっただけあって安定感抜群なのです。もちろん銘醸ワインは素晴らしいことも付け加えておきます。


「Cabernet Sauvignon2014 / McKenzie Mueller(カベルネ・ソーヴィニヨン2014/マッケンジー・ミューラー)」
希望小売価格=8700

【Info】
・生産国=アメリカ
・生産地=カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
・ブドウ品種=カベルネ・ソーヴィニヨン・その他
・輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

「メルロー」

カベルネ・ソーヴィニヨンの弟分? こちらも世界中に広まった品種

フランス・ボルドー原産で、父は「カベルネ・フラン」という「カベルネ・ソーヴィニヨン」の弟分的な立ち位置で、ボルドーのほぼすべてのワインは、カベルネとメルローのブレンドを主軸にしています。違いはというと、味わいはタンニンがより柔らかくなめらかと言われますが、何より生育のしやすさが挙げられます。日本ではカベルネ・ソーヴィニヨンよりもメルローが選ばれる傾向があるのは、雨の多さと、カベルネに比べ収穫が早いためと考えられます。

カベルネ・ソーヴィニヨンのタンニンがあまり得意ではないという方は、フランスであれば「サンテミリオン(Saint Emilion)」という表記、それ以外の産地であればメルローの表記のあるエチケット(ラベル)を選んでみてください。よりスマートな味わいで、リーズナブルな価格からワインショップに並んでいます。

“弟分”という表現をしてしまいましたが、高級なイメージのあるボルドーでもっとも高価格帯ワインのひしめくポムロール(ボルドーの一地域)は、メルロー主体でワインが造られているので、もしかしたら“賢弟”の表現のほうが正しいかもしれませんね。


「Chateau du Breuil(シャトー・ド・ブルイユ2011)」
希望小売価格=3300

【Info】
・生産国=フランス
・生産地=ボルドー オー・メドック
・ブドウ品種=メルロー・その他
・輸入元=ヴァンクロス

Profile

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ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

撮影=中田 悟